言わずと知れた名画、1964年の名作【素晴らしき哉人生】のオマージュ的な作品ということに興味を持って鑑賞したこの映画。
【素晴らしきかな、人生】は微妙にタイトル表記が違いますが、そもそもこのタイトルは邦題で、原題は『collateral Beauty(コラテラルビューティー)』ということです。
『付随的な美しさ』と言う感じの直訳になるのでしょうか?
劇中では『幸せのおまけ』という風に翻訳がされていましたね。
今回の記事では、【素晴らしきかな人生】の原題になっていて、劇中の台詞にも出てくる『幸せのおまけ』って結局なに??という部分が気になってモヤモヤしちゃったかたのために、その辺中心にゆるっと、考察していきたいと思います。
なお本記事ではネタバレを含みますので、是非、ご鑑賞後に一緒にモヤモヤを解決しましょう!
【素晴らしきかな、人生】作品の概要
- 2017年2月25日(土)公開
- 上映時間 97分
- 監督 デヴィッド フランケル (プラダを着た悪魔 他)
- 脚本 アラン ローブ (悲しみが乾くまで 他)
- プロデューサー マイケル シュガー (The Knick 他)
- 音楽 セオドア シャピオ (プラダを着た悪魔 他)
【素晴らしきかな、人生】キャスト
- ウィル・スミス(ハワード)
- エドワード・ノートン(ホイット)
- ケイト・ウィンスレット (クレア)
- マイケル・ペーニャ(サイモン)
- ヘレン・ミレン (ブリジット)
- キーラ・ナイトレイ (エイミー)
- ジェイコブ・ラティモア(ラフィ)
- ナオミ・ハリス(マデリン) 他
【すばらしきかな、人生】のあらすじ
ニューヨークの広告代理店のカリスマ経営者として脚光を浴び、順風満帆の人生を送っていたハワード。しかし不幸は突如訪れた。幼い愛娘を亡くしたハワードは、それまでとは一変、愛を忘れ、時間は止まり、自らの死をも恐れない、そんなハワードの人生は無になってしまいました。
それにより会社も大手の取引先がハワードの会社から手を引くなど、このままでは会社の存続も危ういため、ハワードを心配しつつ、困惑した友人であり同僚の3人は、ハワードと会社を守るために、ある計画を企てる…。
全ての人を繋げるのは愛と時間と死
かつては、全ての人を繋げる要素であるのは愛と時間と死であると豪語していたハワードでしたが不幸があってからは、それらを憎み嫌っていました。
そこで、もはや同僚たちと会話をすることもままならなくなったハワードを救おうと、ホイットは出会ったばかりの3人の俳優にそれぞれ、愛役・時間役・死役に徹してもらい、ハワードと会話をしてもらう作戦にでました。
この作戦、アリですか?
一見、サスペンス映画かと思うほど驚愕しました。
3人の同僚の願望としては、ハワードが復活するのを期待してのことだったのでしょう。
しかしながら結果的にはこの作戦に隠された目的=ハワードを失脚させることの方向へむかって動き出してしまいます。
なんということでしょう‼
会社は大事、お金が入ってこないと生活できない。そんな当たり前のことは重々承知ではありますが、
ここまで会社を大きくしたハワードの功績は大きかったはず。友人としての恩や想い出だってあるはず。
そんな友人を心神喪失病であるかのごとく役員会で証明するための作戦…ひどすぎるのではないか⁈と胸がしめつけられました。
ドミノはハワードの人生を象徴している
冒頭の勢いあるハワード、そして心の傷を負ってしまった後のハワードもドミノをしています。
昔のハワードは時間をかけてきちんと繋がるように愛情を注いで完成させたのち、終わりにむかってどんどん崩れていくドミノを作っていました。
しかし、変わってしまったハワードは仕事そっちのけで時間を無駄にして、ゼロハートで、ドミノを組み立て、完成後崩れ落ちるサマは無視して帰宅する。
まさに愛も時間も死も重んじなくなったハワードの人生をドミノが象徴しています。
幸せのおまけ
この作品の原題は『collateral Beauty』ですが、劇中では『幸せのおまけ』と訳されています。
では一体『幸せのおまけ』とは何だったのでしょうか?
このワードはマデリンの回想シーンで姿を現します。
幸せのおまけを見逃さないで
愛する娘を亡くす寸前のマデリンが絶望に打ちひしがれているその横でとあるご婦人がマデリンに向かって言うのです。
どんなに辛い出来事にも幸せのおまけはあるからそれを見逃さないで
…と。
当然不幸の最中ではその言葉の意味など考慮する術もないのですが、後にマデリンは、
自分を取り囲む周りの人たちによって立ち直りつつありました。
だから信じ続けたのです、『幸せのおまけ』を。
幸せのおまけとはなんだったのか?
他人として、同じ傷を抱える者同士として突如出会った風に描かれていた、ハワードとマデリンは実は元夫婦でした。
ビックリ仰天wwどころか、未だ忘れられない元夫に自分は忘れられている…なんて悲惨すぎませんか?と思ったのもつかの間。
そのカギはハワード夫妻が離婚する際にハワードがマデリンに充てた手紙に隠されていました。
もしも他人同士に戻れたら…
と書かれた手紙。ハワードがめったにマデリンに送ることがなかったという手紙をマデリンはむしろ嬉しそうに持っていました。
ハワードは元妻を忘れたのではなく他人に戻っていたのですね。
他人に戻って、二人の時間を取り戻し、もう一度始めよう…それこそがどんな状況に陥ったとしても確かに存在する2人の愛であり、それこそが娘の不幸があったから気付いた『幸せのおまけ』ではないかと思いました。
3人の天使は実在したのか?
マデリンに『幸せのおまけ』を見逃さないで…と助言したご婦人こそが、〖死〗を見事に演じきったブリジットでした。
これは偶然なのか?必然なのか?
ラストシーンの謎
過去シーンのブリジットの登場に、ざわざわしたまま迎えたラストシーン。
公園を楽しそうに歩くハワードとマデリン。そしてハワードが振り向いた先に見えたのは、
橋の上に笑顔でハワード夫妻を見守る、愛・時間・死の3人ではないですか。
あれは本物なの⁇
これはハワードの幻想だという解釈もあるでしょう。
明確な提示はなく、あえてそれぞれの好みの解釈ができるシーンでしたね。
筆者の好みは、あの3人は本当に天使だった…ですww
ハワードもマデリンも同僚の3人も救ったのですから。
ギャラは天使たちが人間界で色々ご入用なので、その資金にでもなるのでしょうww
【素晴らしきかな、人生】を観て思ったこと
ハワードの人生は壮絶なものですが、どんな人にも当てはまる、【愛と時間と死】。
筆者ももれなく、死は怖いです。ものすごく。
そんな筆者が以前、余命宣告をされたことがありました。
どん底の中思ったのは、〖もっとしたいことが沢山あった〗という時間をうまく使えなかった後悔。
幸い、治療によって今は生存できていますが、明日は当たり前に来ないかもしれない…ということを
身をもって味わい、だからこそ、生きているから消費できる時間の大切さを実感しました。
人との別れも経験している人は多いですよね。でもその悲しみを支えてくれる誰かが居るということも。
せわしない日常で当たり前のように受け取っていたギフトの存在を改めて思い出しました。
『素晴らしきかな、人生』というタイトルの通り、生きるということは楽しいことばかりじゃなく、むしろ辛いことや悲しいことの方が際立ってのしかかってくるけれど、それでも人生はまんざらじゃない…という感情を呼び起こさせてくれる…そんな映画でした。
たった今、人生に悩んでいるなら、何らかのヒントが得られるかも⁈しれません。
クライマックスに隠されたサプライズがあったり、名台詞も多い作品なので、2度3度見返すのがおススメです。