デップー(デットプール)で大人気の俳優と言うべきか
あの『ゴシップガール』のブレイク・ライヴリーのご主人と言うべきか
今や色んな形容詞の持ち主
ライアン・レイノルズが主演の
映画【白い沈黙】。
とにかく明るいコトが多いライアン・レイノルズが
失意の父を演じる本作では
残酷な現実に立ち向かう父親役で奮闘しています。
事件の怖さはもとより、
邦題に対し原題が存在するように
角度を変えて見てみると一層怖く感じる作品ではないかと思います。
この記事ではこの映画が角度を変えて見ると怖い理由を綴っています。
この映画の神髄とは何なのか?
この映画はあまり面白くなかった
そんな方のお役に立てたら幸いです。
【白い沈黙】作品概要
監督:アトム・エゴヤン
脚本:アトム・エゴヤン
デヴィッド・フレイザー
公開:2015年10月16日(日本)
上映時間:112分
キャスト
ライアン・レイノルズ(マシュー・レイン)
ロザリオ・ドーソン(ニコール・ダンロップ)
スコット・スピードマン(ジェフリー・コーンウォール)
ケヴィン・ドュランド(ミカ)
アレクシア・ファスト(キャス・レイン)
ミレイユ・イーノス(ティナ・レイン) 他
以下作品のネタバレを含みます。
8年間の【沈黙】
8年前のあの日、少女が誘拐されたのは、父親がパイを買いに行ったほんの一瞬の
出来ごとでした。
見当違いの疑いをかけることに躍起になって対応が遅れる警察。
娘から目をはなした父親を責め立てる母親。
そうしているうちにどんどん犯人は逃げて行く。
そして娘の行方は白い雪にかき消されてしまう。
それから8年という月日の途中で、白い沈黙は破られたのでしょうか。
父親を疑う刑事
父親に暴行の逮捕歴があり、お金に困っていることから
自らの娘を売りとばしたのではないかと疑っていた担当刑事のコーンウォール。
8年経っても父親にかけられたその嫌疑が完全に晴れる言動はありませんでした。
刑事としての仕事をきちんとしていたのが救いで
実際にキャスを保護するのはこのコーンウォール刑事でした。
夫を責める妻
時系列が順序通りに運ばない本作のストーリー。
事件から何年後なのかが良くわかりませんでしたが
冒頭の妻は依然、夫を責め、娘を探し続ける夫に協力することは
出来ませんでした。
8年の月日というのは
人の心が折れるのに十分な時間でした。
娘を探すことに協力しない妻は潜在的に娘の生存を信じる心が折れ
諦めてしまったのでしょう。
しかし娘を失った悲しみが癒えることはなく
見えない犯人の代わりに、きっかけを作ってしまった夫を責めることで
何とか自我を保っていたのかもしれません。
その結果、責めることも本意ではない妻は夫に対し沈黙を選択します。
後悔と懺悔の日々を送る父親
ちょっとした油断から悲劇が起こってしまったあの日以来、
底知れぬ絶望と悲しみの中、疑われ、責められ続ける父親。
時には娘と同じような年ごろの少女に娘の面影を描いては
また失意のどん底へと突き落とされる。
それでもという長い年月の間諦めることなく
懸命に探し続けていました。
原題『the captive』の意味するもの
本作の邦題『白い沈黙』は
降り積もる雪が
証拠も犯人の姿も遠くへ連れ去られてしまった娘も
かき消してしまった様子を象徴しているような物悲しい雰囲気です。
では本作の原題『the captive』とは
〖捕えられた〗
〖閉じ込められた〗
などの意味の他に
〖心を奪われた〗
〖虜になった〗
などの意味合いも併せ持っています。
そしてこのタイトルもそんな二つの意味合いを併せ持った
ダブルミーニングなのではないでしょうか。
この物語は角度を変えて見ると怖い
実際の事件がモチーフになっているという本作。
実際の事件で被害にあったのは18年間という年月捕らわれていた少女。
彼女は捕らわれていた長い年月の中でマインドコントロールにあってしまい
自ら逃げることを試みようとはしなかったようです。
幼い少女が長年捕らわれるということ
の本当の怖さが浮き彫りになっています。
もし本作のキャスの以下の行動、言動もまたそのような兆候を
表しているのならば、それは本作の最大の恐怖なのではないでしょうか。
①闇の組織の受付的な役目を笑顔で担っている。
・刑事に見つかった際の表情に違和感を覚える。
(本来ならば刑事が見つけてくれたのは解放のチャンス
なはずだが嬉しそうではない)
②8年間の時を経て再会した父親に話した言葉
・自分は大切にされている。自分は宝物のような存在であると話し
『この再会は夢だと思って欲しい。もう会えない。』 と父に別れを告げる。
③解放されてからのキャスの描写
・監禁されていた身では拒否できなかったことではあるが
事実上、悪事の片棒をかついでしまい被害にあった少女たちが存在すること
に対する 苦悩は描かれていない。
・精神的なケア、治療を受ける描写はなく
笑顔でスケートを楽しむところで幕が閉じる。
当初は犯人に逆らえば父親を・・・
と脅されて従っていたそんな描写がありますが
長い年月はどのようにしてキャスを変えてしまったのか。
その過程は描かれておらず、真実は想像の域を超えることはできません。
黒幕も『the captive』だった
キャスを誘拐した犯人・ミカ。
彼もまた幼い頃、被害者本人だったのです。
被害にあったにも関わらず、同じ悪行に手を染めるのは
囚われの身としての長すぎる年月に絶望を経たあと、
心を奪われ魅了されてしまった結果なのでしょか。
また
彼はキャスの母親が、娘を失くして苦悩する姿を
喜んで鑑賞する愉快犯と化してしまいました。
それは裏を返せば、見つけてくれなかった親に対するトラウマ的なものが
作用した結果なのかもしれません。
いずれにせよ
現在も世界中で多発するこのような事件の闇が深いことが示唆されています。
【白い沈黙】を見た感想
時系列が順序通りに描かれない本作の作用と
空白の8年間が描かれない演出。
そして黒幕の本当の正体は不明のまま。
そんな要素が見ている者の想像を掻き立て
最悪な憶測を呼ぶことも可能な恐怖を浴びせてくる。
そんな作品でした。
がっかりな邦題がつく洋画や海外ドラマって意外と多いですよね?ww
しかし本作においては、なかなかマッチした邦題だったのではないかな
と思いました。(上からの感想で失礼します)
冒頭すぐに判明する犯人。
悪人の彼が、さらった少女を大切にする様子や
8年経って少女の生存の証を見せつける意味不明な行動の
気味の悪さは半端ないです。
色々考えると怖い一作です。
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