ネタバレ考察【許された子どもたち】が怖い理由と『再生』の意味とは?

駐車スペース一人の男性 邦画
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人に心がある限り消滅することはないであろう
〖いじめ〗の問題。

これまでの人生で、いじめを知らないと言う人は
なかなか存在しないのではないかと思います。

そんないじめから発展した少年犯罪を描いた本作。

そして、いじめっ子である市川絆星を通して見る人の心をえぐってきます。

〖この映画が怖い理由〗
〖意味深なラストシーンの『再生』の意味はどう解釈するのか?〗



そんな疑問について個人的な見解をまとめました。

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〖許された子どもたち〗簡単なあらすじを紹介

血だらけで母の元へ歩いていく少年・絆星と傷ついた我が子を抱きしめる母親の姿。

時が経ち、中学生になった市川絆星(きら)をリーダーとする・小嶋匠音(しょーん)・松本香弥憂(かみゅ)・井上緑夢(ぐりむ)の4人グループは、川辺に同級生で彼らの『手下』的な対象である
倉持樹(いつき)を呼びだしました。

樹が作った割りばしで出来たボーガンを絆星に手渡すと、
最初は絆星が空き缶などに向けて打ち、飛ばした矢を緑夢に拾わせて遊んでいました。
すると突然、絆星はボーガンを緑夢に向けたのです。

周りが騒然とする中、樹が緑夢の前に割って入り制止するように
真っすぐ絆星を見据えました。

この行為が絆星にとっては反抗的だと判断され
次の瞬間、ボーガンの矢が樹に刺さりました。

その場に倒れて多量出血している樹を置いて逃げる4人。

その夜、行方不明になった樹の捜索が行われ無残な姿の樹が見つかります。

LINEの履歴や緑夢の証言から主犯格として連行される絆星。

しかし、無実を信じて疑わない母親の嘘と説得で、絆星は自らの証言を覆し、
無罪を主張し始めます。

証拠も状況的なものしかみつからず、『不処分』が下されました。

絆星は罪を裁かれることなく、日常を取り戻したかに見えましたが・・・。

この衝撃はHuluでご覧ください

以下、作品のネタバレが含まれます。
未視聴の方は今ならHuluにて視聴できますょ。

本記事の情報は2023年9月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

この映画が怖い理由

個人的には本作はホラー映画級の恐怖を感じました。

どんなところが怖かったのか。紹介します。

事件の描写が残酷すぎる

中学生という子供たちの幼い印象とは裏腹な残酷な事件の描写です。

冒頭の方で、かかしを躊躇なく壊して行く絆星たち。

人の物を意図せず壊してしまった時でさえ、慌てふためき、謝罪の念にかられる
のが通常の心理かと思いますが、

この器物損壊行為を娯楽として行う気持ちと暴力性が恐怖でした。

そしていうまでもなく、樹が殺される場面の描写ですね。
子どもが被害に遭う場面というのはあまり明確に描かれないことの方が多い
中で、本作のあまりにも残酷な映像は直視できませんでした。

事件を知らない人による断罪

法律では処分を受けなかった絆星でしたが
ネット社会からは許されませんでした。

残酷な方法で犯した罪を、ずるい方法で逃げ切った加害者家族に
嫌悪感を抱くものの、同級生や被害者の関係者ではなく
事件をニュースでしか知らない見ず知らずの他人に自分の所在がばれて、
公開処刑をうける様子はやはり恐怖です。

攻撃をうける被害者家族

終盤の方で、加害者だけではなく被害者家族もまたネット住民により
個人情報がさらされただけではなく、誹謗中傷の的
になっていたことが
明かされます。

これ以上の苦しみを受け止められるのだろうかと苦しくなりました。

いじめの問題を話し合うと必ずでてくる意見として劇中でもありましたが
〖いじめられる方にも責任がある〗
というもの。

ですが、命を奪われた被害者に何の責任があって責められるのか
理解不能でした。

ラストシーン〖再生〗の意味は?

絆星が母親に自分の見た不吉な夢が〖再生〗を意味するのだと、
談笑するラストシーン。

母親の頭部には絆星の家の突撃動画を流す若者に襲われた
痛々しい傷があるにも関わらず、全ては解決したかのような
清々しいサマに、気持ち悪さを覚えた人も多いのではないでしょうか。


この〖再生〗の意味は
自らの罪を懺悔して心を入れ替えたという
精神的な変化を表したものではないと思います。

悪意に染まる黒い心を何とか払拭しようと頑張ったが
黒い勢いが勝り、黒そのものになって生き返ったという意味
の〖再生〗だと思いました。

樹の両親に謝罪することを勧めた、いじめられっ子の桃子は
絆星にとって人の心を取り戻せる、いわば最後の砦でした。

そんな桃子に矢を放ち、それ以来、桃子(善意)との距離が出来ました。
そして悪に加担した母親と笑っている。

もう絆星の中に善の心はないという描写なのだと解釈しました。

きっとこれからも同じ過ちを繰り返し、罪の意識も感じることはないのでしょう。

何が悪で何が現実で何が本当で何が嘘なのか
分からなくなっていくのかもしれません。

そして償えない加害者としての人生は
これで終わりではなくこれからも続いて行く・・・。

では絆星の運命はこの一択だったのかというと

立ち直るきっかけは少なくとも3度あったのだと思うのです。

幼少の頃はいじめられっこだった絆星

冒頭で描かれる幼少の血だらけの絆星と母。

これは絆星が元々はいじめらている側の立場だったのだという描写なのでしょう。
いじめられて帰ってきた傷ついた我が子を抱きしめる母親。

ここからは推察になりますが、絆星の母親は、我が子がいじめられっ子である
という事実からも目を背けたのではないでしょうか。

いじめられていることを黙認してしまったのです。

いじめられている子を助けるのは相当難しいと思います。
でも、家族は、両親だけはそれを黙認してはいけなかったのだと思うのです。

我が子がいじめられたと知って憤慨し、悲しみや怒りを覚える。
何らかの尋常ではない行動を起こす両親を見て
いじめという罪の重大さを子供は把握するのではないでしょうか。

〖いじめ〗という大問題を母親が無視したことで、
絆星は、いじめられる者の痛みや、いじめそのものの悪意を認識する機会が
失われたのだと思いました。

そして、いじめられた側の痛みを知ることを怠った結果、
いじめっ子へと転身してしまいました。

母親のその行為は自らも歪ませる原因となりました。
きっと
あの可哀そうないじめられっ子の我が子を見たくはないから
いじめられていないならば、それで良かったのでしょう。
例えいじめる側になろうとも)。

罪をもみ消すということ

LINEの履歴や緑夢の証言によって一度は罪を告白した絆星でした。
ここできっちりと罰を受ければあるいは将来は違うものになったかもしれません。

しかし母親は自分の分身的な存在である息子の罪は
直視できなかったのでしょう。

犯すはずはないと信じたというよりも、あってはいけないという否定から、

『無実なんだから』

と決めつけました。

本来ならば、本人に本当のことを聞かなければいけなかったのです。

そして息子から何も聞かなかったことは同時に、何故そんなことをしてしまったのか?
という動機も聞き逃してしまったのです。

いじめという問題に向き合う上で、いじめっ子の動機は不可欠ではないでしょうか。

1人では抱えきれない問題があるからこそ自分勝手に他人に矛先を向けるケースも
少なくないと思うからです。

しかしながらまたもや、親によって罪はもみ消され、いじめ問題も解決することはなく
絆星自身も罪を背負うことも後悔をする機会も奪われてしまいます。

謝罪の意味

桃子に言われて初めて樹の両親へ謝罪に行った絆星でしたが
謝罪は受け入れられませんでした。

絆星が樹に対して本当に悪いことをしたと後悔し、悲しむ気持ちがないからです。

自分が苦しいからとか自分の罪を帳消しにするため
の様な自分本位の意味がこもった謝罪では被害者の心には届かないのです。

この謝罪を促すのはやはり母でなければいけなかったのではないかと思います。

そして
先に樹の眠っている場所へ会いに行き、自分は何をしたのか
確かめるべきでした。

もし相手の立場になって想像し考えることが出来れば

嘘をついて罪を逃れ、自分だけが成長している。

その姿を被害者家族に見せることすらいかに残酷であるか、

1度や2度の謝罪が受け入れられないのは当然のことだと理解できたのでしょう。

謝罪は自分のためであってはいけなかったのです。

〖許された子どもたち〗を見た感想

重い罪を犯してしまった少年は、その罪を償うことは許されませんでした。

それは愛情ゆえの母の行為であり、息子の依存であり、
改善しなければいけない社会の問題があるゆえだった・・・。

そして

安易に許されてしまった子供たちは、
それぞれ、

悪に染まって戻れない子ども
変わらず同じ過ちをし続ける子ども
後悔を背負って生きる子ども

罪の重さに比例するようにその後の人生は堕ちていきました。

この作品を通して何を伝えたかったのか?
は考えるまでもなく、見た人それぞれが何かを感じ取ってしまう本作。

いじめの問題だったり
家族の存在だったり
他人の正義感によるネットの攻撃だったり・・・

作り手が示してくれたのは何が悪か、何が原因だったか
という答えではなく今の現実だったのかもしれません。

こんなにも恐ろしいリアルを自分とは関係のないこととして、
知らんふりできる人が居ない。

そんな社会にこそ問題があるということでしょうか。

とてつもなく怖い、けれど目を背けてはいけない
そんな一作でした。

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