『プリティウーマン』で脚光を集め、『エリン・ブロコビッチ』では
アカデミー賞主演女優賞を受賞したジュリア・ロバーツ。
そんなジュリア・ロバーツがドラマにおいては初主演作となった
Amazonプライムオリジナルドラマ
〖ホームカミング〗
本作ではseason1の主演を務めるとともに、
製作総指揮にも携わっています。
本記事ではジュリア・ロバーツが主演を務めるseason1について
記憶と現実という2つの時間が交差する心理スリラーのラストと謎について
解説しています。
〖ホームカミング〗あらすじ
Prime Videoで明日から一挙配信!ジュリア・ロバーツ主演『ホームカミング』、サム・エスメイル監督のインタビュー到着!ジュリア参加の条件とはhttps://t.co/Pt60HuuWe5#海外ドラマ #ジュリアロバーツ #ホームカミング #サムエスメイル #HOMECOMING #Primevideo #Amazon #アマゾン #プライムビデオ pic.twitter.com/RlZT8UGYnB
— 海外ドラマNAVI (@dramanavi) February 21, 2019
母親と2人暮らしでウェイトレスの仕事をして日々を過ごしている
ハイディ・バーグマン。
そんな彼女のもとを国防省の審査官であるトーマス・カラスコが
訪れる。
彼はハイディにホームカミングを辞めた理由について尋ねる。
ホームカミングとはフロリダにある
〖ホームカミング帰国移行支援センター〗のことである。
兵士たちが戦地に赴いた際に負った心の傷やトラウマなど
のケアをし、兵士たちが日常生活に戻れるように支援している
施設だった。
トーマスはこの施設について、兵士の家族から受けた苦情
について調査していた。
その流れから2018年当時、ホームカミングでカウンセラーとして
働いていたハイディを訪ねて来たのだった。
しかしハイディ自身にその記憶はなかった・・・。
キャスト
ジュリア・ロバーツ、ボビー・カナヴェイル、ステファン・ジェームズ、
シェー・ウィガム、シシー・スペイセク 他
以下、結末のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意くださいませ。
本記事の情報は2024年4月時点のものです。
『ホームカミング』のラスト
2018年の記憶と2022年の現在を行き来しながら
物語が展開していくストーリー。
ついに真実が繋がります。
施設の秘密と真相
ハイディは働いていたホームカミング帰国移行支援センターで、
カウンセラーとしてウォルターという除隊したばかりの兵士を担当することになります。
ウォルターは戦地で仲間を失い、自責の念にかられ心に負った傷は深く
自分でコントロールできない暴力性と不眠といった
代償を生んでいました。
ハイディはウォルターを健全な心で社会復帰させるため
尽力している・・・そう思っていたのです。
ウォルターもまた、そんなハイディに対して徐々に
カウンセラーに対する以上の感情を抱き始めていました。
しかし、ハイデイを恐ろしい真実が襲います。
ホームカミングは傷ついた退役軍人の心をケアし、
社会復帰させるための施設ではありませんでした。
その内情は、政府と施設を運営するガイストが手を組み
退役軍人のトラウマとなる記憶を消し去り
再び兵士として戦場へ戻すことを目的とした
実験施設だったのです。
人体実験の対象となったウォルターは記憶と引き換えに
元気な心を取り戻したかのように見え
二度と戻りたくはないはずの戦地へ再び送り込まれる
準備は整っていきました。
真実を知らず記憶も失っているウォルターに同情したハイディは
ウォルターとの最後のランチで彼と自分に施設の薬物入りの食事
を出し摂取したのです。
ウォルターは薬物の過剰摂取により戦場復帰は白紙になり、
ハイディもまた記憶を失ってしまいました。
そして二人の記憶は封印されたまま
ウォルターは家族の元へ、
ハイディはウェイトレスに転身し、新たな人生を歩み始めて
いたのです。
国防省のトーマスがハイディを訪ねたのは
その後のことでした。
ハイディとウォルターの謎
自分の記憶を取り戻したハイディはウォルターを
思い出し謝罪をしに向かいますが、
彼の母親には近づくことも一連の出来事を思い出させることも
しないで欲しいと拒絶されます。
そうして1人で、かつてウォルターとのカウンセリング中に語られていた
思い出を辿る旅にでたハイディでしたが
そこでウォルターとの再会を果たすことができました。
元気そうな彼を目の前にしますが彼には
ハイディの記憶は戻ってはいない様子でした。
自分の素性を打ち明けることは、
辛い記憶も取り戻すことに匹敵するのかもしれない。
今の笑顔があればそれでいい。
そう思い初対面のようにふるまうハイディ。
そしてほんの少しの会話を交わした2人。
ウォルターは帰り際にフォークを傾けて行きました。
これは施設で、ハイディのデスク上の物を
わざと傾けてからかっていた行動でした。
このシーンの意味は何なのでしょうか?
実は二人とも互いの記憶を取り戻していた?
可能性もゼロではないのでしょう。
少なくとも
全ての記憶が消失したわけではない・・・
と言えると思います。
ウォルターはハイディの顔や名前は忘れてしまったけれど
交わした会話の一部や自分が穏やかでいられた気持ちと
分かち合った時間を
まるで夢のように心の片隅が覚えている。
ウォルターにとっては大事なイタズラ的な行為がその人を目の前にして
自然と出てしまった結果なのでしょう。
なぜならウォルターにとってハイディの存在はまさに希望だったから・・・。
そんなところが示唆されていたのではないかと思いました。
ドラマの世界観
ジュリア・ロバーツを初主演に迎えたドラマだけあって
その世界観は類をみないクオリティの高さが見所です。
なかでも昔の映画風の音や色づかい。
カメラワークが凝っており
エンドロールは何とも言えない不気味さもあいまって
心理的に追い込まれるようでした。
トラウマと記憶のテーマ
本作の中で問われる
〖記憶を操作することの是非〗
前提として本作のように会社の利益などを考え
兵士の不足を補う目的で勝手に記憶を操作し、
戦場へ戻すなどという所業はあってはならないことだと
いえます。
その一方で
生きていくのも辛いほどのトラウマや記憶を
抱えていたとしたら。
それがもし取り除けると打診された時
微塵の迷いもなく断ることが出来るのでしょうか。
辛い記憶だけを抹消するのだとしても
その時間を生きた証も消えるということに変わりはありません。
記憶を奪う行為は命の一部を奪う行為だと言っても
過言ではないのかもしれません。
さらに
記憶が消えたあとのウォルターの雰囲気の変化にも表れたように、
人格自体も変わってしまう可能性も否定はできません。
とはいえ人には誰でも弱さはあるのです。
ウォルターの母親はガイストが我が子にした
トラウマの記憶を消した行為をむごいこととしながらも、
謝罪に来たハイディには記憶を取り戻さないで欲しいと
言います。
ハイディもまた、記憶を取り戻すことはウォルターの幸せには
ならないかもしれない・・・とその目で見て判断したから
見知らぬ他人のふりをして別れたのでしょう。
けれどもウォルター本人には、
どんなにどん底の記憶にさいなまれようとも
その中に微かにでも幸せな記憶は存在したし、
またそれを乗り越えたり、助けてくれる人がいました。
人間とはそんな風に弱くて強くて可能性に満ちた生き物なんだという
尊さを感じ取った気がしました。
〖ホームカミング〗感想
今回の物語はジュリア・ロバーツの華やかなイメージとは程遠く、
視聴者は自身の記憶を探っていくハイディと共に
真実に辿り着くという心理スリラーです。
かつてのラブコメ女王の常に緊張感や衝撃と隣り合わせな
静かで影のある演技は見応えがありました。
ハイディもウォルターも共に辛い記憶を失い
新たな生活を始めていたわけですが
ハイディは一層のこと暗くて覇気のない様子と化していました。
やはり記憶や経験という貴重な人生の一部を
捨てることには大きな代償があるのだと思わされました。
ハイディの失くした記憶はペリカンの鳴き声という
記憶の中のほんのささいなきっかけをもって
再び取り戻すことができました。
そんな風に、あの頃のハイディとの
記憶が刻まれたウォルターの指がフォークを傾けたこと。
それ自体は無意識だったにも関わらず、
自分の車で帰ろうとしたウォルターは
なぜそんなことをしたのだろう
というほんのささいな自問から
ハイディの記憶を取り戻すのかもしれない・・・。
そんな怖さや緊張感だけではなく
人間というかすかな希望が共存した一作でした。