ネタバレ考察【MEN同じ顔の男たち】は意味不明?タイトルの意味と離婚の理由に迫る

洋画
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『ミッドサマー』などでお馴染みのA24が放つ
意味がわからないにも関わらず、ショッキングな映画が
【MEN同じ顔の男たち】です。

〖意味不明〗だと話題の本作ですが
それは裏を返せばその解釈はさまざまだということ。

そんな訳であまりにも難解作品のため、
本記事ではあくまで筆者の解釈を綴っていきます。

・マーロウ夫妻の口論の理由
・同じ顔の男たちが意味するもの

に着目して妄想的な推察をしています。

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『MEN同じ顔の男たち』あらすじ

ロンドンでキャリアウーマンとしての日々を過ごす
ハーパー

しかし口論のあと、転落していく夫ジェームズ
目があってしまったと感じたハーパーは
精神的に負ったダメージを修復するため、
豪華なカントリーハウス付きのイギリスの地方の町へ
癒しを求めに単身で旅立った。

そこでは管理人のジェフリーが案内してくれた。

自然豊かな町を散策しようと外出したハーパーだったが
出会った男性たちは皆ジェフリーと同じ顔をしていた。

廃トンネルの奥に入っていくとその先に不審な裸の男性を見つけ
追いかけて来るので引き返したハーパーだったが、
違う場所でカメラを構えたレンズが再び裸の男性をとらえる・・・。

キャスト
ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、
ゲイル・ランキン 

『MEN同じ顔の男たち』を視聴するには

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以下、ネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2024年7月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

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マーロウ夫妻の口論の内容とは

ことの発端はハーパーが夫のジェームズに愛想をつかして
離婚を切り出したことでした。

怒り狂い椅子にぶつけるジェームズですが
やり直したい様子でした。

離婚するなら自ら命を絶つと言うジェームズ。
しかし、自分の人生があると言って引かないハーパー
の決心は固いようでした。

口論がヒートアップする最中、
携帯で友人にジェームズへの恐怖を打ち明けるハーパーに対して
〖怖いのは君の方だ〗
と返すジェームズでした。

そして強い反論を返されたジェームズがハーパーを殴ってしまった
ことにより、別れは決定的になりました。

家を追い出されたジェームズ。

その後まもなく、窓を眺めるハーパーの目に飛び込んできたのは
落ちていくジェームズの姿でした。

そしてそのときジェームズと目が合ったと感じた
ハーパーは心に傷を負ってしまいます。

しかしながら発端となった口論の内容については
明確になりませんでした。

ジェームズの視点から口論の理由を考察

ジェームズはハーパーに対して、

なぜ被害者面をするんだ?
怖いのは君の方じゃないか

と言っています。

このことから推測できるのは、
離婚を切り出した理由はジェームズの不貞などでは
ないということです。

家を追い出された決定的な理由として
ジェームズの暴力がありましたが、
それに対してのハーパーの発言から
日常的にDVをする夫ではなかったことも伺えます。

つまりはつい殴ってしまったほどの
強烈な怒りを誘う何かをハーパーがしたという可能性が
否定できない描写なのではないでしょうか。
暴力は絶対ダメですが〗

加えて、被害者はむしろジェームズの方であり、
ハーパーは怖いことをしたという示唆ができる
主張から、
ハーパーは懐妊したが、自分の人生を優先させたい
という理由で秘密裏に中絶したのではないかという推察です。

以上のことから夫妻の口論はこの中絶を巡ってのもの
だったと解釈しました。

同じ顔の男たちが意味するもの

ハーパーは転落していく夫と目があったような気がしていました
そして落下した直後の夫の壮絶な姿も目にしています。

そのことがハーパーの中でトラウマとして
うまれる理由は明らかでした。

しかし芯の強いハーパーは自身に芽生えたトラウマや
罪の意識を認識せず心の療養の旅へと繰り出します。

その先で食べたリンゴが象徴するのは
アダムとイブの『知恵の木の果実』

本作でのその意味するところは
これまでの自分だけの考えや思いを最優先にし、
相手の意見がそれと異なるのであれば耳を貸さなかった
ハーパーの性質に、
客観的な視点から物事を考えられる能力
与えたのだと思いました。

その能力はハーパーの心の葛藤を描く同じ顔の男たち
となって彼女の前に現れるのです。

管理人のジェフリー

休養の地で最初に出会う管理人のジェフリー

彼は予約の名前が〖マロウ夫人〗なのに
何故おひとり様なのか?
など無神経な発言をしてきます。

〖マロウ夫人〗などという肩書はまるで夫のもの
みたいな気がして好きではなかったはず。
だから『ハーパーという人生』を名乗るために離婚にこだわった。

しかし〖夫人〗を名乗ってしまうハーパー。

実はそれほど居心地が悪くなかったサマを描いているのでは
ないかなと思います。

そしてもう夫人ではいられないこと、
夫はもう存在しないことを思い知らされます。

さらにジェフリーはハーパーに浴室の注意事項を言い渡した際も
〖女性は流す時は気を付けて〗
という感じの忠告をします。

この『流す』という言葉から連想されるのは
中絶したことを示唆しているのかなと感じました。

ということでジェフリーはハーパーの後悔の象徴なのでは
ないでしょうか。

裸の男

ハーパーが森を散策している最中
トンネルの向こう側に現れた裸の男は
ハーパーの生まれてきたはずの子供のメタファー
だったのではないかと解釈しました。

本作では全編を通して『出産』のイメージがちらつき、
トンネルもしかりだったように感じました。

そのトンネルの出口にたたずむ裸の男というのは
産まれたての赤ちゃんの象徴だったのではないでしょうか。

赤ちゃんは母を求め母を探すものです。
ハーパーがストーカーと称したその男は
ただ母と一緒に居たかっただけの赤ちゃんと考えれば
危害を加えないことや喋らないことにも
辻褄があいます。

お面を被った子供のような男

ハーパーに『遊ぼう』と言ってきかない子供のような男。

通りかかった神父に諭されるも
遊びの誘いに乗って来ないハーパーに悪態をつきます。

その男が被っていたのは女性の顔の面でした。

どちらかというと家庭を守るのは女性の役目
というイメージはまだまだ根強い昨今。

しかしハーパーは大都市で働くキャリアウーマンであり、
ジェームズを家から追い出したということは
あの家の名義もハーパーの方なのでしょう。

女性でありながら実際の立場や思考が女性らしくない
ともいえるハーパー。

ジェームズの意見を聞く前に友人に愚痴ったり
自分の主張を全面に押し出し人の意見を聞かない
子供っぽい一面もあるハーパー。



女性の面を被る男はハーパー自身の鏡のような存在
だったのかもしれません。

ハーパーの罪悪感を反映する神父

一見物腰が柔らかく、親身になって話を聞いてくれる
神父でしたが、初対面のハーパーの足に手を置くなど
やや積極的すぎる一面も・・・。

それに対し、ハーパーに特に嫌悪感が見られないのは
ハーパーが性に積極的だという示唆なのでしょう。

しかし神父はジェームズの件ではハーパーを責め立てます。

〖ジェームズを死に追いやったのはハーパーなのだ〗
と。

加えて神父が指摘する
〖謝罪の機会を与えなかった〗
というのはハーパーの罪の意識そのものではないでしょうか。

ハーパーは別れを告げただけ。
ジェームズが転落したのは自分のせいではない。

そう確信する強いハーパーの顔を保つ一方で
心の奥底では、ジェームズが見た最後の人物が自分であったこと、
壮絶なジェームズを見てしまったことに、
微塵の責任も感じないでいられる妻など居ないでしょう。

物理的にはハーパーに責任がないとする一方で
神父は、それに異論を唱えるハーパーの心の奥の声
なのだと感じました。

裸の男を釈放する警官

トンネルなどで目撃した裸の男が庭先に居るのを目撃した
ハーパーは警察へ通報します。

ストーカー行為があったとして、
逮捕され連行されたはずでした。

しかしバーで裸の男を連行した警官に話を聞くと
彼を釈放したと言います。

その理由はリンゴを食べただけで特に悪いことを
していない
からなのだと。

これを聞いて激高したハーパーは彼をののしりますが、
第三者に意見を聞いた場合、警官の意見はもっともだと
思うかもしれません。

ハーパーもまた離婚を切り出し、夫を突き放しましたが
それが罪であるのかと問われるとNOなのだと思うのです。

そんな警官の存在は
ハーパーにとっての正当性を認める存在なのではないかと思いました。

男たちの出産の集大成

『進撃の巨人』に影響を受けたと公言された本作の
ガーランド監督ですが、それはこのシーンかな?
と思わされるのが終盤の男性の出産シーンの連続です。

これはどう解釈したものか
本作で最も不可解なシーンだったのではないでしょうか。

筆者的にはこれはハーパーが乗り越えなければいけない
葛藤であり、向き合わなければいけない自分の罪の意識

そしてこの出産シーンの連続の末、
最終的に生まれたのは夫のジェームズでした。

ジェームズとは激しい口論を交わしたのが最後で、
そのこと自体は悔やんでいたと思われるハーパーが
生み出した幻想の夫は自分の死を
『君のせいだ』
と責めます。

そしてハーパーは
『私に何を求めていたのか』
をジェームズに問いただします。

するとジェームズは
〖愛だよ〗
と言い、ハーパーはため息をついて
〖そっか・・・〗
と返しました。

ジェームズの言う『愛』は恐らく『愛の証=子供』
そしてため息をついたハーパーはやはりそれをジェームズに
与えてあげることは出来ないのかもしれません。

それはもう2人の間に文字通り愛はないから

本来は自分の幸せ、自分の人生を追い求める
それがハーパーの願望なのでしょう。

しかしこの悲劇でどん底に突き落とされて
道に迷ってしまったハーパーは、リンゴの実を食べて
自分と向き合う世界に導かれ、葛藤と対峙した結果、
再生を手に入れたのかもしれません。

これからも自分の行きたい道を選んで良いんだと思う。
だって自分の人生なんだから・・・。

そんなハーパーなりの結末に辿り着いて
罪の意識も払拭したのかなと思えるラストでした。

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『MEN同じ顔の男たち』感想

やっぱりA24系は一筋縄ではいきませんね!

アレックス・ガーランド監督ご自身が
『如何様にも解釈できる作りになっています』
という趣旨の発言をされたように、
どんな立場でこの作品を見るのかによっても
意見は分かれる本作です。

筆者は、夫婦という形にはまれなかった1人の女性が
最後はその絆を強引に終わらせてしまったがために
起こった悲劇とそれに伴う葛藤からの
復活と再生を描いたものだと捉えました。

しかしハーパーが抱く、ジェームズを筆頭にした男性全般への
嫌悪感が現れているといわれればそれにも納得できます。

ラストシーンも難解で、
居場所を伝えることを妨害されていたはずの
ハーパーの友人がやってくる訳ですが
その時のハーパーの姿は晴れ晴れしていながらも
そこには血の惨劇が広がっています。

果たしてこの場面は幻想の続きなのか?
それとも現実の世界に戻ったのならば
誰の血なのかということも気になりますね。

そして友人が妊娠している・・・
という描写は出産に関しての拒絶的な気持ちは
変化してきているという示唆なのかもしれません。

監督が影響されたと語る『進撃の巨人』は筆者も大好きな作品
ですが、例のシーンはそれよりも断然グロテスクだった気がします。

温かい愛の物語では全くないですし、
大切な誰かと鑑賞するのはNGではないか?
と危惧する一作ですね(笑)

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