映画『イノセンツ』ネタバレ感想・考察/アナの最後の行動が意味するものとは

洋画
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ノルウェー発のホラー映画ながら、日本でも話題となった
『イノセンツ』

それは本作の脚本・監督を務めたエスキル・フォクト氏が
この映画は日本の漫画の中でも評価の高い『童夢』大友克洋氏)から着想を得た
と公言されたのも理由のひとつなのでしょう。

Huluで見放題配信中になっていたので視聴してみました。

『なぜ?』の多い本作ですが中でもラストシーンのアナの行動の意味に
着目して推察しています。

この記事のポイント
大人には秘密の遊びの結末
アナの最後の行動の意味とは

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『イノセンツ』あらすじ

アナイーダの姉妹は、家族でノルウェー郊外にある団地に引っ越して来た。

夏休み中のイーダは他の家族のように、旅行へ行きたいとせがむ。
しかし父親は引っ越しのため仕事先も変わり、
転職早々休みをとることはままならず、
母親は重度の自閉症であるアナに付きっ切りのため
イーダの願いは叶わなかった。

イーダは姉であるアナに母親を独り占めされている嫉妬心から
アナに意地悪を繰り返した。

アナは、痛みを感じることもないのだろうと、
腕をつねったり、靴にガラス片を仕込むこともあった。

遊び相手も居ないイーダが団地の外で退屈な時間を過ごしていると
同じ団地に住むベンが声をかけて来た。

『いいものを見せてあげる』
とイーダを森の中で連れて行くと、
物を動かす能力を披露してくれた。

自分にはそんなことできないと言うイーダは
その不思議な力に興味津々で、その日からベンとの交流を持つようになる。

一方で、イーダに連れられて外へ出たアナはイーダがベンと
遊ぶ間に、アイシャという友人ができる。

言葉を発することもないアナとアイシャが交流している光景に驚きを隠せない
イーダだったがアイシャには人の心を読める能力があるようだった。

だからアイシャにはアナが何を感じ、何を思うのかが理解でできたのだった。

そうしてイーダとベン、アナとアイシャの4人は
お互いの能力を生かして子供らしく遊んでいたのだが・・・。

キャスト
ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルバ・ブリンスモ・ラームスタ、
ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、サム・アシュラフ、
エレン・ドリト・ピーターセン、モーテン・シュバルベイト 

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地上波バラエティも楽しめるHuluでも見放題配信中です!

以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2024年12月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

大人には秘密の遊びの結末

団地の中で、退屈な夏休みを余技なくされた4人が
仲良くなり、偶然にも?!超能力を有した子どもたちの
幼い遊びはやがて善と悪を判断できずに暴走し狂気を帯びてきてしまいます。

親には内緒の交流は思わぬ方向へ。

アナとアイシャの関係

イーダは重度の自閉症を患うアナが
感情も痛みも皆無なのだと思っていました。

しかし団地で初めて出会ったアイシャは病気という先入観を持たず
アナと接した結果、その能力を駆使してアナの感情や痛みを見出したのです

そうして初めて本当の自分を知ってくれるアイシャに心を開き
〖ともだち〗の存在を知ったアナはアイシャとの空間に心地よさを実感します。

アイシャはアナに歓迎され、お互いに共鳴しあった2人は
心が通じ合い、テレパシーを送り合う、まるでお互いが自らの半身であるかのような
関係へと発展していきました。

そしてアナは言葉を発するまでに至ります。

そんなアイシャがベンの能力によって抹殺されてしまうと、
アナの感情や言葉を発する様子もなくなり、
アイシャと出会う前のアナに逆戻りしてしまいました。

団地という舞台の持つ意味

同じ団地に少なくとも超能力者が4人も存在する理由、
アナにもイーダにもその能力が開花したのは引っ越してきた後からである
ことを踏まえると、
その団地が経つ地にこそ何等かのパワーが備わっていると言えるのかもしれません。

そしてそのパワーは子どもにのみ表れるので、
無垢なる心にしか宿らないという暗示なのでしょう。

それはなぜか。

この団地に限った設定で言えば、
各家庭において何等かの問題を抱えている家族が多かったように思います。

そんな親たちの苦悩を子どもたちは知る由もないけれど、
大人たちの悲しみや苛立ちや怒りや喜びや愛情といった
絡み合う複雑な感情たちが力と化しその地に宿っているとすれば、
その力がまだ何のしがらみも持たない無垢な心に取り入るように反応し、
不思議な能力を発揮してしまうからではないでしょうか。

さて『私には能力がない』
と自負していたイーダでしたが、姉のピンチ時には、
叫んだ拍子にギブスが破壊され、ケガも治っているという覚醒が起きました。


そしてイーダをはじめ子どもたちの力が覚醒する要因に実はアナが関係している
と推察できるのかもしれません。

アナと友達になったアイシャが特別高能力だったというよりは、
アナがアイシャを受け入れたことにより二人がつながったのだと
考えられます。

イーダの覚醒もまた同様の見解ができるのではないでしょうか。

引っ越す前の姉妹はお互いの存在を疎ましく思い、アナは
自分に意地悪をするイーダを心の底では嫌っていたかもしれませんし、
イーダもまた母親の愛情を一心に受ける姉の存在は面白くなかったから
意地悪をしていたのでしょう。

しかし、ベンがアナを本気でつねる光景は耐え難い思いがあるいことに気づき、
アナには皆無だと勘違いしていた感情や痛みもあることを実感すると
これまでの行いの罪悪感も押し寄せます。

そうしてイーダが後悔の念とアナを姉として大切に思う気持ち
芽生えた時、アナもまたイーダを妹として受け入れたのです。

そうして通じ合い絆が生まれた姉妹はアナのパワーが妹にも供給され
アイシャがそうであったようにイーダもまた能力を覚醒するに至ったのかもしれません。

ともすれば、ベンとアナの最終決戦で
団地の子どもたちが異変を感じとったり、ベランダから出てきてアナに味方をしたことも
アナが彼らの内に秘めた能力を引き出した結果なのでしょう。

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『イノセンツ』アナの最後の行動の意味とは

ベンによってアイシャが抹殺されてしまい、
アナもまた魔法が解けたように無感情で言葉が喋れない元の状態に戻ってしまいます。

しかしベンに命を狙われることになると感じたイーダはアナ抜きで
ベンを突き落としますが、失敗に終わり逆にピンチに陥っていきます。

イーダの恐怖心を察したアナは再び能力を発揮し、
ベンと対峙します。

そして力が少し及ばず倒れこんだアナに加勢をしたのはイーダでした。

姉妹はしっかり手を繋ぎ、団地の子どもたちの元気玉を集め、
アナはベンを倒すことに成功します。

その後、再び、話すことも感情を表すこともなくなったアナを
見つめるイーダでしたが、母親が帰宅すると
涙があふれ出てしまい母に抱きつき号泣するのでした。

その次の瞬間、アナの方はそれまでぐちゃぐちゃに書いていたお絵描きボードをリセットし
ペンを握りしめて何かを書こうとする
ところで物語の幕は閉じました。

この衝撃的なラストシーンに鑑賞者は何を思ったのでしょうか。

再び覚醒する?!

アイシャの不在によって能力が失われたと思われたアナでしたが
イーダの存在で再びベンと対峙しました。

再び能力が持てたのは
アイシャの仇をうつという強い思いもあったかもしれません。

しかし、実は能力を保持していたイーダがアナの目の前で閉じた本
それがトリガーになったのだと推察しています。

そして気になるラストの現象ですが、

ベンを倒し、母親の前で泣き崩れたイーダの、
打ち勝ったという安心感
しかし人を殺めたことには違いないという罪悪感
そして姉と共闘したという姉妹である実感と達成感、など
いろんな思いが入りまじった涙だったのではないでしょうか。

そんなイーダの心情と叫びをアナが読み取ったという瞬間。
それがあのラストシーンであり
姉妹は大人には言えない同じ秘密を持った存在として繋がったのかもしれません。

裏テーマは大人にこそ浴びせられている

本作の裏テーマとして心に残るのは
純真な子どもたちが悪へと変わってしまうのも
命をかける争いへと身を転じてしまったのも
無垢な心を形成するのに必須な大人からの影響が無関係だとは
えない
ことでしょう。

アナは重度の自閉症で、彼女の両親は愛情を注ぎ付きっ切りで
育てていたと言えます。

しかし気付かぬうちに過保護になってしまえば、
症状が少しでも改善する道を妨げてしまう要因になることもあるでしょう。

そして妹のイーダはまだ親に甘えたり、接していたいさかりでもあると思うのです。
しかしそれが叶わない子どものうっ憤がたまり、その矛先が両親が大事に育てている
アナへと向いてしまうのは皮肉な顛末です。

アイシャの母は子どもに愛情は持っているようですが
隠れて泣いていたり、我が子から少し距離を保とうとしているようにも見えました。

アイシャの父親の存在が出て来ず、アイシャと距離を取りたいその理由が
父親にある
ことが示唆されています。

そしてそれ故にアイシャはまだ幼い子どもでありながら
どこか可能な限り母を支える存在でいたいと大人びる様子も垣間見れます。

ベンに関しては食事の用意もなされず、
日常的に虐待が行われていることが示唆され、そもそも親からの愛情を知りません

ベンは本作の中でただ一人の悪者であり、
最終的には倒されるという末路を辿ってしまいますが
ベンにとって、普通の毎日は虐待の日々であることを考慮
すれば、ベンが弱い者を虐待したり、能力を使って仕返しを行うなどの
残酷な一面を持ち合わせ、他社への思いやりが欠如しているのは当然の結果である
と言わざるを得ないのかもしれません。

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『イノセンツ』の感想

本作で最も物議をかもしだし、嫌われた場面と言えば
猫ちゃんへの虐待シーンだったのではないでしょうか。

筆者もあの場面は見るに堪えず、思わず目をふさいでしまいました。

しかし、本作のテーマの一つに、
元々は何者でもない無垢な心があのような残酷な心を保持するのも、
アイシャのように弱者にこそ優しくできる存在になり得るのも
その結果を握るのは大人と社会であるということ。

があるのではないでしょうか。

だとすればあの場面は見ている大人たちへの
皮肉と警鐘なのかもしれませんね。

ベンは鑑賞者からの敵意にさらされながら
その末路をたどる役柄でした。
しかし
誰しもの心に暗い一面が宿ってしまうことはあり得、
時には自分が殺めた母親を思って、後悔や罪悪感といった
感情をむき出しに号泣する場面は子どもならではの行動で、
その結果を生み出した社会や大人たちの責任は重大なのだと
示唆されているように思いました。

本作は日本の漫画『童夢』から着想を得ていると
公言されており、漫画を知る人ならば
その意味がわかりすぎるくらい似ているようです。

筆者はまだ未読なため、その辺には触れませんでしたが、
どうやら本作特有の設定として『子どもだけが能力を持する』
ようなので、『童夢』と本作においてはテーマが少し異なるのかな?
と予想しています。

俄然、『童夢』が読みたくなる一作です。

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