【ネタバレ感想】Netflix『ドント・ムーブ』ラストの言葉の意味を深堀り考察

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『スパイダーマン』シリーズの他、『ドント・ブリーズ』シリーズなどの
ホラーを手掛ける巨匠サム・ライミ氏が製作に関わったNetflix映画
『ドント・ムーブ』が配信されました。

タイトルが示すように
〖動けない〗恐怖が襲うサスペンスです。

そんな本作の気になる結末とラストの台詞の意味について
ネタバレありで解説、考察、感想を綴っています。

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『ドント・ムーブ』あらすじ

アイリスは夫が横で眠るベッドから1人起き上がり、
まだ薄暗い中、家を後にします。

赤いボートのおもちゃと小型のナイフだけを持参して、
アイリスが向かったのは、人気のない広大な森の中にある
マッセイ・ビッグサー州立公園。

到着したアイリスは頂上まで登って行く。

その崖の上は以前、アイリスが目を離した隙に彼女の息子である
マテオが転落して命を落としてしまった場所だった。

それからずっと絶望に打ちひしがれているアイリスは
自分もこの場所から飛び降りようと思っていた。

崖のすれすれのところに立ち、下を覗き込むアイリス。
少しずつ足を進めていくもその高さと恐怖に足が止まって動けない。

するとそこへ見知らぬ男性がやってきてアイリスに声をかけた。

彼はリチャードと名乗り、大学院時代に自身が運転する車で事故を起こし、
同乗していた恋人クロエを失くしたという。

〖干渉するつもりはないが今日は良い天気だ〗
と話すリチャードにアイリスもまたマテオのことを語り、
自分が身替わりになりたかったと話した。

リチャードとの会話を交わすことでその場は自ら命を絶つことを
諦め、共に車の場所まで戻った2人。

しかし、アイリスの車の横にあったリチャードの車は
まるで彼女の車を塞ぐように駐車していた。

少し不穏な空気を感じながらも反対側から乗り込もうとするアイリスだったが、
ふとリチャードがこの晴れた日に傘を手にしているのを目にした。

次の瞬間、それはスタンガンに成り代わり、
アイリスは気絶してしまう。

さらに筋弛緩剤を打たれてしまったアイリス。
動けなくなるまでの時間はわずかしかなかった・・・。

キャスト
ケルシー・チャウ、フィン・ウィットロック、モレー・トレッドウェル、
ダニエル・フランシス、ディラン・ビーム
 他

以下、作品のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の配信状況は2024年10月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

結末までの展開を解説

筋弛緩作用によって身体が動かせなくなったアイリスは、
川に飛び込み辿り着いた先でそこに暮らすおじいさんに助けられます。

おじいさんは察しが良く、アイリスが動けないが意識があることも
直ぐに認識し、瞬きによって意思の疎通をはかりました。

しかしすぐに後を追ってきたリチャードがおじいさんの家に
訪れます。

その時、激しい瞬きをするアイリスに異変を察したおじいさんは
アイリスを椅子の裏に隠し、リチャードと対峙します。

落ちていた刃物を拾ったリチャードがおじいさんに襲いかかり
望まぬ決着がついてしまいました。

リチャードは部屋を探しますがアイリスを見つけることが出来ず
おじいさんの亡骸ごと部屋に火を放ちます。

このままでは火にのまれてしまうアイリスは
リチャードに居場所を知らせ自分の命を救いました。

リチャードの二面性

その後ガソリンスタンドでリチャードが支払いのため店内に入った隙に
そこに居合わせた母子に救いの眼差しで訴えかけた甲斐があって
警官が2人の前に現れました。

しかしまたもやリチャードの攻撃が勝り
警官も犠牲になってしまいました。

再び車を走らせるリチャードの元に娘からの着信が入ります。
娘と会話をするリチャードは一変して優しいパパそのものでした。

ところが明日の朝、妻と娘が小屋にやってくるというのです。

焦ったリチャードはアイリスとの時間を楽しむことを諦め
湖に向かい決着をつけようとします。

アイリスに訪れる変化

湖に到着しボートにアイリスを乗せたリチャード。

号泣するアイリスにリチャードは
〖最初に会った時とは大違いだ〗
と言います。

そしてアイリスがリチャードの他の犠牲者と同じ末路を辿ろうとした
その時、アイリスはリチャードから盗んだナイフで彼を刺し、
湖に落としました。

さらにボートに這い上がってこようとするリチャードに
発砲します。

するとリチャードは再び湖に落ちますが、ボートに穴が開いてしまい
アイリスも拘束されたままボートと共に沈んでいくことになりました。

何とか自力で泳いで岸にたどり着き一息ついたアイリスは
リチャードもまた向こう岸に辿り着いたことを確認します。

瀕死のリチャードの元に行き、足であしらうと
アイリスは最後に
『ありがとう』
と言って去っていきました。

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『ありがとう』の結末の意味

結末まで鑑賞後、
リチャードは結局何がしたかったのか?
アイリスの行動は何故なのか?

という疑問が沸いてこないでしょうか?

その答えは2人の絶望の行方にあるのかもしれません。

リチャードの絶望

大学院時代に自らの運転で恋人のクロエの命を奪ってしまったリチャード。

自らも2週間病院から動けなかったという環境は
リチャードに自責の念を募らせたのではないでしょうか。

自分がクロエの命を奪ったこと

その絶望を、リチャードの生存本能は、
サイコパスを生み出すことで回避したのでしょう。

クロエの命を奪ったのではなくクロエは、
ずっと孤独だった自分に、人と通じ合う喜びを与えてくれた。
そして神は自分の中にいたのだと。

しかし本当は、
クロエの無残な姿に、神の存在を懸命に探したけれど、
その願いは叶わず、目の前には残酷な現実が広がっていたのです。

それ以上彼女を見ることに耐えられなかったリチャードの心が
真実を捻じ曲げて、その残酷な場面を変換した
のかもしれません。

アイリスの絶望

アイリスもまた息子のマテオをの命を自分が目を離したほんのわずかな
合間に失ってしまいます。

自分を責め、生きる気力を失くし、悲しむ事すら許されない
日々が待っていました。

リチャードの不幸の過去にすら
〖残念ね〗
というありきたりでた他人行儀な言葉しか出てきませんでした。

もう考えることすらも億劫で仕方なかったのです。

涙さえ出ない壊れた感情。

そんな彼女の絶望は、自らもマテオと同じ道を辿り、息子の元へ行けば
終わるはず
だと思ったのではないでしょうか。

絶望なら経験した

絶望に打ちひしがれたまま、生きていくために、
現実を捻じ曲げたリチャードは、
クロエの身代わりに何人もの女性を小屋に連れ込んでは
湖に沈める・・・。

という凶行をもってしか、生きて行くことも、
妻と娘がいる幸せな家庭の父親を演じることもできませんでした。

それはリチャードという人間性が壊れたのだと言っても過言では
ないでしょう。

優しいパパと殺人鬼という2役をこなすリチャードの人生は
自らの心の破壊が絶望へと舵をきった結果でした。

一方でアイリスは、自身の命を終わらせることによって
償いと絶望からの脱却を図ろうとしました。

しかし、リチャードに連れ去られ、目の前でおじいさんが殺され、
本当に自身の人生が終わってしまう・・・

そんな窮地に立たされた時、気付くのです。

もしも人生が終わったら、その時こそ
二度とマテオを思い出すことも悲しむことさえも
できない
ということを。

奇しくもアイリスの壊れた心を絶望ではなく、
希望へと背中を押してくれることになった
のです。

『ありがとう』の意味

リチャードは息絶える直前のクロエに『ありがとう』
と最後の言葉をかけました。

それは、今まで傍に居てくれて『ありがとう』などの愛情のこもった
意味ではなく、疎外感に苛まれていた自分に光をあててくれて、
神だと気づかせてくれて『ありがとう』
なのです。

そしてその気づきはクロエの不幸を持って成立するので
つまりは『(僕のために)命を捧げてくれてありがとう』という意味になるのです。

その成り行きを聞いたアイリスは自分本位の残酷な言葉を
最後に聞かせたリチャードに嫌悪感を覚えます。

しかしアイリスはそんなリチャードによって
奇しくも『生きる』気力を取り戻すのです。

アイリスが息絶える直前のリチャードにかけた言葉は
『(私を)生かすために命を捧げてくれてありがとう』
と言う意味がこもった言葉なのでしょう。

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『ドント・ムーブ』感想

元々アイリスとリチャードは大切な人を失くすという
心に傷を負った過去を背負っています。

それ故2人とも悲しみに押しつぶされ壊れてしまった人。

それでもその悲しみの入口が違った2人は
乗り越える出口も異なった
のだと思いました。

リチャードが自殺をしようとしていたアイリスを助けたのは
自らの餌食にするためだと考えられますが、
その裏には、死=孤独という概念のもと、
自分と同じ孤独に陥れることで自身の孤独感を満たしていたのかもしれません。

かたや
アイリスは悲しみに暮れて自らの命を絶とうとしていましたが、
リチャードの言う通り、あの崖の上で
〖生きることを選んだ〗
のは彼女自身でした。

人はどんな状況にあろうとも生存本能が働き、
崖の上でも、リチャードの脅威に対しても
アイリスの本能はきちんと働いていたのだと理解すると
本作のタイトルが
『キャント・ムーブ』ではなく『ドント・ムーブ』
だったのは、なるほどと思えた一作でした。

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