思っていたのとは違った
怖いだけじゃないホラー映画だった
と話題の【バーバリアン】
筆者も予想が裏切られるその展開に驚きを隠せませんでした。
しかしながら振り返ってみるとちょっとした疑問が多々
あることに気付きます。
そこで本記事では
・真夜中に開いていた扉の意味
・他にいもいるはずの犠牲者はどこへ?
という点に着目して解説・推察しています。
【バーバリアン】あらすじ
◆配信開始
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) May 2, 2024
映画『バーバリアン』(アメリカ)
面接のためデトロイトにあるバーバリー通りの家を訪れたテス。到着したときはすでに深夜。しかも、ダブルブッキングにより見知らぬ男が滞在していた。
そこは、絶対に選んではいけない宿〈ホーム〉だった。#バーバリアン pic.twitter.com/wslUrVEYmG
仕事の面接のためにデトロイトにやってきたテスは、
予約をしていた民泊宿へ訪れました。
するとそこにはすでにキースという男性が泊まっていたのです。
テスは仕方なく、他の宿を探し始めますが、
キース曰く、学会が開かれる関係で近くの宿に空きはないらしい
と言います。
ベッドは譲るから泊まっていけばいいというキースの
提案に躊躇しつつも、なすすべがなく、会ったばかりの男性と
一つ屋根の下に泊まることにするテス。
意外にも楽しい一夜を過ごしたテスは翌日、仕事の面接へ行きます。
すると面接官はテスの泊まっている地域は治安が良くないと警告します。
しかしテスは『自分はタフだから大丈夫』と言い、再びキースの待つ民泊の宿へ
帰っていく・・・。
キャスト
ジョージナ・キャンベル、ビル・スカルスガルト、ジャスティン・ロング、
ザック・クレッガー、マシュー・パトリック 他
以下、作品の結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご視聴後のご来訪をお待ちしています。
本記事の情報は2024年5月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。
真夜中に開いていた扉が意味するもの
就活のために民泊を手配したテスでしたが
ダブルブッキングというアクシデントに見舞われてしまいました。
到着したのが既に深夜だったこともあり、他の宿の予約も取れず
見知らぬキースという男性と同じ屋根の下にふたりきりの状況を
受け入れたテスは
部屋にカギをかけて眠ったはずでした。
しかし、ふと目を覚ましたその時、
閉めたはずの扉が開いていることに気付きます。
この扉は誰が開けたのでしょうか⁈
キースとは何者だったのか?
ストレートに考えると、寝ているフランクではなく、
マザーかキースと考えるのが妥当です。
しかし、地下への扉はマザーの居る内側からは開けることが
できないという描写があり、そうなると
扉を開けたのはキースということになります。
怪しさが駄々洩れしながらもわりと序盤で退場してしまった
キースに視聴者はがっかりしたことでしょう(笑)
でももし、この扉を開けたのがキースということになれば
その意味は、キースもまた何かを企んでいた人物であると推察できます。
テスの要望があって洗濯したはずのシーツは
実は洗濯済みだったのは、テスが来ることを
前もって想定していたからではないでしょうか。
AJが不動産を管理している女性に電話をするシーンでは
〖ここ何週間かは部屋を貸していない〗と
彼女は証言しています。
だとすればこのダブルブッキングは仕組まれたものと言えるでしょう。
『地下室に怪しい部屋があったくらいで出ていくわけにはいかない』
というような台詞も深読みしてしまいます。
地下でマザーに出くわした時にも
〖何かいる〗〖足を噛まれた〗〖あいつら…〗
などの言葉を言い残しています。
しかしながらテスが部屋へ通じる方へ誘導しているにも関わらず
マザーの居る方へ進もうとする意味不明な行動も意味深でした。
キースはそこへ何かを探りに来たのでしょうか⁈
はたまたマザーか最初の犠牲者の関係者なのか?
ミスリード要員として早々に退場したキースでしたが、
本当は何か特別な存在だったのかもしれません。
他にもいるはずの犠牲者はどこへ?
AJが逃走の途中で発見した地下室で寝ていたフランクが
実はこの惨劇の根源でした。
レーガン政権の時代のかつてのフランクは
ある女性に目を付け、水道業者を装って自宅に上がりこむと、
バスルームのカギを解放してその家をあとにします。
その後、彼女を拉致したことが示唆されていますが、
彼女が産んだと思われる子どもや、その孫にいたるまで数十人に対し、
暴行して記録していたという鬼畜ぶりなのです。
本作のマザーがフランクの子どもなのか孫なのか、
などの素性は明かされていませんが、当然、生まれたのは
マザーだけではないはずです。
本作の最大の謎は
他の犠牲者たちはどこへ消えたのか?ということです。
あのような生活環境なので、生き残れなかった子供たちも
多数いるのかもしれません。
しかしキースもアンドレも
〖あいつら〗と複数形で呼んでいた気がします。
そして『本当に怖い存在はマザーではない』とも。
もちろんフランクのことであるとも言えますが、
今となっては寝たままのフランクは脅威であるとは言い難いです。
あの時逃げていたキースがフランクに会ったとも
考えにくいと思うのです。
キースの足を噛んだのは誰なのでしょうか。
直後に惨殺しているマザーがその前に足を噛んだというのは
いささかしっくりこない気がします。
地味に気になる電動歯ブラシ
画面にこれ見よがしに映し出された電動歯ブラシは
気になりませんでしたか?
あれは他にも誰かが居ることの伏線なのかもしれません。
マザーは名を名乗ることもなく、(与えられているのかさえ
わかりませんが)服もまとわない原始的な存在と言えるでしょう。
そんな存在にそぐわない電動歯ブラシの意味は何か。
マザーのような存在が居る一方で、
運よく知識を身につけ外へ出た者も居るのかもしれません。
フランクの監視をかいくぐって
知識を得たり、抜け出す方法を模索できるとすれば
それはフランクが手を出さなかったと予想される
男性なのではないでしょうか。
まとめと感想
『BARBARIAN』の意味には『野蛮人』の他にも『教養のない人』
という意味もあるようです。
本作の『野蛮人』は母親のための教育ビデオしか見せられず、
母親になることしか与えられなかったために
たった一つの母親という役目を脅かす者に対して
凶暴な怪物になり果ててしまったマザーの物語でした。
母親としても大分やり方を間違えているマザーでしたが、
最後にテスを助けるために給水塔の屋上から迷うことなく飛び降りるという
姿には感服せざるを得ないのです。
自分の娘や孫にまで手を出す、じいさんフランクはもとより、
命がけで自分を助けに戻ったテスを囮に使うという卑劣なAJ、
に彼女を野蛮人よばわりする資格はないように思います。
ラストシーンで突き落とされたテスを追って飛び降りたマザーは
自分が下敷きになることでテスの命を救いました。
それでもなおテスの傷を気遣い、一緒に家に帰ろうと
促すマザーに、気付かれないように拳銃を拾い、
マザーの顔に押し当てるテス。
もしこの場面でマザーに同情したならば、それは、命の恩人を
躊躇なく殺めることができるテスもまた
野蛮人に見えたという証なのではないでしょうか。
拳銃を押し当てられる意味を、無教養なマザーがどれほど理解
できたかは不明ですが、テスの顔に触れ
『ベイベー』といった(と思う)台詞が
『バイバイ』に聞こえたのは筆者だけではないでしょう。
ホラーでありながらラスボスは人間の方だった
という展開に胸を痛める一作です。