2022年に公開されたR15+指定のラブコメディ
『愛なのに』を鑑賞しました。
脚本は『mellow』などの今泉力哉氏、監督を『ビリーバーズ』などを手掛けた城定秀夫氏が
担当しています。
主演の瀬戸康史演じる古本屋の店主・多田浩司を取り巻く恋模様を描いた本作。
多田に恋する岬との結末に着目して考察、感想を綴っています。
『愛なのに』あらすじ
🐈速報🐈#愛なのに
— L/R15 『愛なのに』『猫は逃げた』公式 (@Lr15Movie) December 3, 2022
🚢第44回ヨコハマ映画祭
㊗️主演男優賞#瀬戸康史 さん
㊗️助演女優賞#河合優実 さん
2部門で受賞です🎊
おめでとうございます🙌🙌🙌https://t.co/AbN34vhg5H pic.twitter.com/dmL1XYx1Qg
多田浩司が営む古本屋に一人の女子高生が訪れた。
挙動不審気味な彼女は、いきなり本の支払いをせずに店を後にする。
それを目撃した多田も店を飛び出し、走って逃げる女子高生を追いかけた。
彼女のスタミナは切れることなく、多田の方の足が限界になり
立ち止まってしまう。
すると女子高生はあっさり多田に捕まった。
彼女は矢野岬と名乗り、かねてから多田に思いを寄せていたため自身を認識して欲しくて
本を盗むような真似事をしたと言う。
そして多田に結婚して欲しいとプロポーズする岬。
しかし多田にとって彼女との年齢差は大きな弊害であり、
何より多田には忘れられない片思いの女性の存在があった・・・。
キャスト
瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実、中島歩、向里祐香、
毎熊克哉、イアン・ムーア、守屋文雄 他
★U-NEXT(31日間の無料トライアルあり)では今泉力哉氏×城定秀夫監督の『猫は逃げた』も見放題配信中です!
★Huluなら月額1,026円(税込)でドラマ、映画、アニメのほか多彩なバラエティも楽しめます!
以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年5月時点のものです。
最新の配信情報は各サイトにてご確認くださいませ。
多田と岬の結末はどうなる?
多田の古本屋へ頻繁に足を運ぶ岬は、
プロポーズの手紙をしたため続けました。
しかし多田には片思いの相手が存在し、岬はまだ高校生であることは
その一線を越える弊害となって立ちはだかっていました。
岬は最後にもう手紙は書かないから返事が欲しい
と多田にせがみます。
多田は岬への返事を悩みつづけ、何度も書き直して
完成させました。
手紙が意味するもの
岬への最初でおそらく最後の手紙に綴ったのは
いつかあなたを好きになれるかもしれない
というメッセージでした。
その言葉に込められたのは、恋が移り変わるものであるということ。
女子高の男性教師がモテるという現象は周知の事実であるように、
その時期の感情の起伏は激しく、親からの独立心なども芽生え、
他人との関係性にも敏感に貪欲になるのではないでしょうか。
そんな時期に身近にいた優しい大人というのは
同年代の無邪気な男子という比較対象があればこそ
輝かしく映るのかもしれません。
岬の思いは甘酸っぱい恋なのです。
しかしそんな岬も大学生、社会人となればより多くの大人との出会いが
待っています。
その時が来ても、岬の目に多田が変わらず輝かしく映るとは
多田自身、思っていないのでしょう。
『いつか』や『かもしれない』という未来をぼやかすことで
岬を傷つけないように配慮したものと思われます。
それでも友人たちに岬のことを
『常連さん』だと紹介した多田にとって岬が大切な存在になったことは
間違いないのだという結末でした。
2人の未来
ここからは深読み推察になりますが、
岬と多田に未来はあるのか?考えてみます。
筆者的には2人は店主と特別な常連さんという関係が
長きにわたり続いた後、恋とは違う別のものになるような気がします。
多田からの手紙が発覚し、岬の両親が殴りこんでくる場面で、
多田が怒りを見せたのは自分に対する罵声の言葉ではありませんでした。
それは岬の思いを否定する両親の言葉に激情したのです。
同じように、警察の取り調べの席でも
『それはプライベートだ』と言って真相を隠し通した多田でした。
しかし岬との関係が潔白なものであることを
証言することはむしろ多田にとっての優位になることだと考えれば、
この時に口をつぐんで黙秘を通したのも岬の思いを守るためだったと
いえるでしょう。
残念ながら、このどちらの場面も岬が目の当たりにすることは
ありませんでした。
もしもそんな多田の行動、言動を岬の目に焼き付けることが出来ていたら
それは確固たる愛情へと変化したのかもしれませんが・・。
『愛なのに』感想
登場人物が全員片思い状態に陥る本作で、
その輪の中から一番に抜け出したのは
岬を思っていた同級生の男子でしたね。
叶わぬ恋に縛られることなく、
幸せになる素質満点な彼なのではないでしょうか。
劇中で見せられた限り、亮介の良さは伝わってこないのですが、
それでもやっぱり多田ではなく亮介を選ぶ一花を見ていると
愛情には理屈とか理由など存在しないのだなと思わされます。
多田は片思いの切なさを痛感しているからこそ
岬の思いを大切にし、彼女の両親にも警察にも対峙しました。
けれどももしかしたらそれは
一花が結婚すると知った今も、叶わぬ恋にまっすぐに思いをぶつけている
自身に対する擁護でもあったのかもしれませんね。
岬は彼女の両親に対する言動も、警察に対する黙秘も
目にすることはありませんでしたが、
本当は見ていないところでしてくれている行動にこそ
その人の本質が見えるのでしょう。
彼らはこの先どうなるのでしょうか?
筆者的には一花と亮介のカップルは結局、夫婦になる選択をするものの
お互いに不貞を繰り返すのではないかと推察しています。
一方で多田の未来は、
岬はしばらく多田の店に通い続けるものの、
多田が岬に対してやっと情がわいてきた頃に、逆に
岬の恋はだんだん思い出へと変化していくような気がします。
タイミングが合わず結局、岬の恋は成就せず、多田はまた失恋してしまう。
けれども何年か後には、別々の幸せな家庭を築くに至るのではないかなと
妄想しています。
いわゆる『いい人』扱いされてしまうキャラの多田さん。
でも本当はこんな人との結婚が幸せなんじゃないかと
後から気づく人も多いのかもしれませんね。
まじめで優しくて誠実な、そんなパートナーなら
安心が得られることは間違いないのでしょう。
そうだとしても
そうそううまくは安定しないのが『愛』なのかと
切なくもなってしまう一作でした。