二宮正明氏の同名漫画を実写ドラマ化した『ガンニバル』。
主演の柳楽優弥が扮する警察官が供花村に左遷されて
駐在勤務となったのだがその村が大変なことになっている
というサイコスリラーなのです。
そんな本作の結末は原作漫画とは異なるものになりました。
そこで本記事では柳楽優弥版『ガンニバル』が迎えた結末に着目して
解説、考察を綴っています。
『ガンニバル』シーズン2あらすじ
\制作決定特別ビジュアル📣/
— ディズニープラス公式 (@DisneyPlusJP) September 20, 2023
🆕『#ガンニバル』シーズン2
これで
終わらせる
すべてを
完結に向け、シーズン2が始動❗️#ディズニープラス スターにて配信予定📺 pic.twitter.com/HR9Y7IszlC
かつて生贄にされたところを後藤藍によって助け出された京介からの忠告、
赤子を銀に奪われたという加奈子の証言から供花村に隠された秘密と
後藤家の謎に対峙する大悟。
そして警察署長が加わっている後藤を調査しているチームも動き出す。
後藤家の地下牢を探っていた大悟は『あの人』に襲撃される。
すさまじい身体能力と攻撃性のあの人から懸命に逃げる大悟は
湖に落下してしまう。
その頃、大悟が身の危険を案じ、警官の保護の元、別行動をとっていた
有希とましろだったが、後藤によって拉致されてしまった。
一方で警察署長が属する秘密のチームを訪ねて来たのは
村長を務める後藤清だった。
清こそが後藤の裏切り者だったのだ。
清は恵介と洋介の父親と認識されていたが
実は息子2人との血の繋がりはないと言う。
銀の養子だった清の妻、藍は、銀によって『あの人』の
子どもを産まされたのだった。
つまり恵介と洋介の父親は・・・
あの人だったのだ。
キャスト
柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、志水心音、高杉真宙、吉原光夫、北香那、杉田雷麟、
田中俊介、中島歩、六角精児、恒松祐里、倉悠貴、福島リラ、谷中敦、テイ龍進、
河井青葉、赤堀雅秋、利重剛、豊原功補、橋爪功、倍賞美津子 他

以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年5月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
柳楽優弥版『ガンニバル』原作とは違う結末
シーズン2の最終回となった第8話は
衝撃的な幕開けとなりました。
後藤銀の最後の真相
シーズン1ですでに亡くなっていた前当主の後藤銀ですが
恵介たち後藤家は熊に襲われた事故であると公言していました。
しかし8話冒頭では森の中を走る銀を追いかける村人たちが
映し出されました。
逃げ切れず転んで横たわる銀を村人たちは
一人一刺しずつ実行していくのです。
村人全員が共犯というわけです。
何度も刺されて瀕死の状態となった銀の視線に白銀の姿がありました。
白銀は銀の元へ飛び降りると、銀の身体をむさぼり食い始めたのです。
『うまいか』『生きろ』と言って自身の命を捧げる銀と、
『かあちゃん』と悲痛の声をはりあげるの白銀という
銀の最後に隠された真相がそこにはあったのでした。
あの人の最後
ましろを救うために立ち上がる大悟と、
『あの人』を抹殺して終わらせるために同行する恵介。
『あの人』を撃った恵介を後藤家の面々が裏切者とし、
攻撃を仕掛けようとしたとき、
その間にあの人が立ちはだかり恵介を庇ったのです。
恵介の頬をなでる父親の顔を見せるあの人の姿に
涙が溢れてしまう大悟でした。
あの人は恵介に『生きる』と言うと
自らの身体を食らいながら息絶えました。
その姿を見た後藤家の面々はあの人の亡骸にひれ伏し
拝み続けるのでした。
争いの終結
そんなあの人を冒涜しあの人の肉を口にした岩男は凶暴化し
自分を裏切った恵介が許せず襲いかかります。
何度も恵介を殴り続けた後、恵介の言葉に寄り添うように
静かに息を引き取ったのでした。
一方、ましろを連れて有希の待つ病院へ向かっていた大悟は
村人が後藤家を襲おうとしていると知り、引き返します。
後藤家を襲撃する村人が子どもでさえも殺そうとしている
ところを何とか食い止めた大悟は、村人に
次の世代は後藤とか供花村とかそんなしがらみは持たずに生きている、
余計な憎しみを増やすなと叱責しました。
警察が到着し、恵介をはじめとした後藤家の人や村人たちも
逮捕されました。
ラストに込められた意味とは
漫画原作とは異なるラストを迎えたドラマ『ガンニバル』
そのラストにはどんな意味が込められていたのでしょうか。
恵介の最後の言葉
供花村の事件が終結し、後日恵介の元へ面会に訪れた大悟。
大悟は、すみれのお腹の子が女の子であること、
洋介は村を出ると言っていることを告げます。
いつか子どもを抱っこしてやれ
と話す大悟に、その日が来ないかもしれないことが脳裏によぎった
恵介は涙を流します。
もう顔を見なくていいと思うとせいせいする
と憎まれ口をたたきながら出て行く恵介ですが
振り返ると『阿川』とだけ発し、去って行きました。
この後、何を言うつもりだったのか?
非情に気になるところですが、筆者は特別続く言葉は
なかったのではないかと思っています。
大悟のことを『駐在』と呼び続けた恵介(後藤の人間)が
彼を名前で呼ぶこと自体に大きな意味があるからです。
後藤以外の人間は『家畜』と言い放った銀の言葉通り、
後藤以外の人間を邪険にしてきたその風習を破った瞬間であり、
恵介が後藤の呪縛を解いたという証なのです。
そして最後に大悟を名前で呼ぶという意味の中に
大悟への感謝の気持ちが込められているのでしょう。
本当は大悟が現れたその時から、恵介にはその姿が
輝かしく映っていたのかもしれません。
大悟を表面上は冷たく突き放しながら、村から逃がしたいような
そぶりが垣間見れたことも最初から恵介は大悟のような人間を
嫌いではなかったことが示唆されているのではないでしょうか。
大悟が『あの人』になる
供花村には新たに狭山という駐在が赴任してきました。
加奈子に村を案内されていた狭山はふと向こうの一軒家に
暮らす3人家族らしき光景が目に入ります。
それは大悟と有希とましろでした。
その存在に興味を持つ狭山に加奈子は大悟のことを
『あの人』と呼び話を濁したのでした。
ハッピーエンドっぽく流れていくラストの
『あの人』というパワーワードに背筋を凍らせた方も多いのではないでしょうか。
これまで『あの人』と言えばそれは白銀のことであり、
供花村を支配する後藤家の象徴的な存在として君臨していました。
現人神ともされてきた『あの人』。
その存在を今度は大悟が担ったのだという意味が込められているのかもしれません。
しかしどちらかと言えば、あの人は恐れられていた存在ではないでしょうか。
ともすれば大悟も村人たちから、村を救ってくれた恩人のように感じながらも
その裏ではたった一人でそれを成し遂げた大悟を恐れてもいる
という描写なのではないでしょうか。
それが『あの人』が『白銀』から『大悟』に変わっただけ
という顛末になるのかならないのか・・・
そんな謎を秘めて幕は閉じられました。
『ガンニバル』最終回まとめ
原作漫画とは違う結末になった本作はいかがでしたか?
ドラマ版のラストはハッピーエンドなのかな?と思いきや
大悟が供花村に移住してしまったことや、
『あの人』を継承してしまったような示唆に怖さも感じましたね。
熊に襲われたと思っていた後藤家前当主の後藤銀は実は村人たちに殺されていた
という衝撃の事実も判明しました。
若き頃の銀を演じた恒松祐里さんが
銀だけが悪いわけではない
と擁護していたように、ある意味、銀を壊して怪物に育ててしまったのは
金次であり、村人であるのかもしれません。
しかしその痛みを憎しみに変えてしまった銀は再び
新しい憎しみを生んでしまったと言えるでしょう。
それは悲しみや痛みが起こさせた負のスパイラルだったのです。
その流れを変える少しの勇気が村人の中に存在することが大切なのだと
諭されているような一作でした。