1975年に公開された高倉健主演『新幹線大爆破』のリブート作品として
Netflixにて配信中の『新幹線大爆破』が世界中を震撼させているようです。
草彅剛が主演を務め、オリジナル版では叶わなかったJR東日本が全面協力したという本作。
しかしその評価は世界的におおむね好評ではあるものの、
一定数の酷評も見受けられています。
そのカギを握る、犯人像と動機などに着目して
解説、考察を綴っています。
『新幹線大爆破』あらすじ
個性的なキャラクターたちを演じるのは、
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) April 14, 2025
その魅力を引き出す選りすぐりのキャスト陣🚅
Netflix映画『新幹線大爆破』人物相関図を公開!
新幹線の内外で様々な登場人物が
奔走する今作は、4月23日より独占配信🎬#新幹線大爆破#BulletTrainExplosion#走り続けろ #草彅剛 pic.twitter.com/8qkxVhiiQv
盛岡新幹線運輸区の車掌である高市和也は
修学旅行生からの『なぜ運転手ではなく車掌なのか?』
という質問に答えていた。
その後、後輩車掌の藤井慶次に、おじさんの言葉はもう響かない
と話しながら新青森駅を発車する『はやぶさ60号』に乗り込んだ。
15時17分に『はやぶさ60号』は東京駅を目指し出発した。
しかしその後、JR東日本のコールセンターに一本の不穏な着信が入った。
『はやぶさ60号』に爆弾を仕掛けたという内容だった。
その犯人は爆弾は新幹線の時速が100㎞を下回ると爆破するという。
爆弾の解除を望むなら全国民から1000億円集めろという要求だった。
その犯人がいたずらなのか本物なのか、
判断がつかない職員たちをよそに、犯人の予告通り、
犯行を証明するべく先に仕掛けられた東青森駅で貨物車が爆発する。
キャスト
草彅剛、尾野真千子、細田佳央太、のん、大原優乃、黒田大輔、
田中要次、尾上松也、豊嶋花、大後寿々花、要潤、斎藤工 他
以下、重大なネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年5月時点のものです。
最新の配信情報は各サイトにてご確認くださいませ。
犯人の正体と動機が酷い?
誰を犯人にするのか
という点については熟考を重ねその人物像が完成したようです。
まさかの真犯人‽!
走行中のはやぶさ60号の車両を切り離し、救出車を連結させるという
作戦は成功し、乗員と乗客の計349名のうち、340名の救出を果たしました。
しかし、修学旅行生の一人が救出されていないことに気づいた高校教師や
高市らは60号に取り残されたままとなってしまいました。
そんな中、高校生の柚月はみんなの前でおもむろに電話をし始めたのです。
その会話に驚愕する面々。
爆弾を仕掛けたのは柚月だったのです。
柚月は、刑事の川越に自分が犯人で解除方法は自身の心臓を止めることだと言います。
『嘘の普通』を壊す
柚月の父親、刑事である小野寺勉は過去の新幹線に爆弾が仕掛けられた事件に
駆り出されていました。
しかし犯人は逮捕の寸前で自ら自爆してしまったのです。
犯人を捕まえることが出来なかった警察は、メンツを守るために、
自爆した犯人は小野寺が射殺したと偽装しました。
しかし妻を亡くした小野寺はその偽装に心酔してしまい、
新幹線の安全を守ったのは自分だと
強く信じ、周りにも吹聴し始めたのです。
それだけにとどまらず、柚月はそんな父親から
虐待を受け続けていました。
引率教員の市川は、柚月の家庭事情や闇にもうすうす勘付いており
柚月のことを気にするものの、何もアクションは起こさない、
そして柚月が何も問題を起こさないことを確認できると安心していたのです。
きっと人間なんてそんなものだ。
他人のために動こうとする者などいないのだ。
そんな疑心暗鬼にかられた柚月は、
人の優しい仮面の下の醜悪さを拝みたくて、
この事件を起こしたのです。
酷評の理由
序盤から意味深な表情が映し出されていた柚月ですが、
中盤で高市の落とした名札を届けに来たあたりで
彼女が犯人であることが強く示唆されています。
この時点を境に作品の評価が分かれるようです。
犯人は女子高生ということ。
一体どうやって、いつの間に?新幹線に爆弾を仕掛けることができたのか?
爆弾を隠し持つ荷物は怪しまれなかったのか?
動機が薄い
などがその評価の理由のようです。
柚月は利用されたのか‽!
しかしながら犯人はもう一人いるということは重大です。
柚月のバックには、過去の爆弾事件の犯人で、
小野寺が射殺したことになっている古賀勝の息子である勝利が協力者として潜んでいたのです。
爆弾をどうやって仕掛けるのか、怪しまれない方法、などは
勝利が細かに指示していたとも考えられます。
なにせ勝利に扮しているのはあのピエール瀧なのですから・・・www
そして勝利に事細かに協力を打診したのは柚月の方なのかもしれないと
推察しています。
勝利は取り調べで小野寺の口癖が『せめてオスなら』だと話していました。
『男』ではなく『雄』であり、いかに柚月が人間として尊重されていなかったか、
そしてその言葉は柚月が生まれてきたことさえも否定する意味を持っていました。
勝利が最初に柚月に近づいた動機は柚月が小野寺の娘だったからかもしれません。
しかしそんな内容を聞いて勝利は何を思ったでしょうか。
柚月の闇は勝利の思う以上に深く、不憫な子なのだと
同情した気持ちは本物なのではないでしょうか。
それでも、小野寺という人間を憎む標的は同じなのです。
むしろ自身の闇をさらけ出して、勝利の復讐心をかりたてたのは
柚月の方だったのかもしれません。
新幹線を狙ったのは柚月の意志だと勝利は証言しました。
それは『新幹線の安全を守った』という偽りを自負する
父への否定、嫌悪、憎しみがこもった柚月の復讐だったのです。
柚月は新幹線を選んだのならば、
小野寺の自宅に爆弾を仕掛け、新幹線を救えないまま爆破させたのは
柚月が勝利の希望を叶えたのかもしれません。
大人に利用された可哀そうな女子高生
それは大人が望む柚月の結末であり、本当は利用したのは柚月の方だったの
ではないでしょうか。
『新幹線大爆破』ネタバレ感想
本作の犯人が女子高生で動機がアレっていうので
酷評も一定数あるようですが、
筆者的にはテンポよく進むストーリーに飽きることなく、
豪華な俳優陣に魅せられ、動機部分も余計な想像をしちゃったりして
楽しめました。
JR東日本が全面協力したとあって、
様々な救出作戦が本当の職員さんがされているのではないか?
と勘違いするほどリアルでドキドキしました。
柚月は家族に絶望し、学校に落胆し、社会を憎んで
歪んでしまいましたが、そんな柚月たちを助けるために
集まったお金と、柚月のことも乗客の一人として笑顔で見送る
高市によってこの先の未来は変化するのかもしれません。
なんでも社会のせいにするな
という議員の言葉がありましたが、
少しずつでも思い切って動いてみれば小さな優しさや
変化がその社会の中に見えたりするのかなって思えるような希望が持てる
ラストでしたね。
後輩の藤井のピンチに気が動転して一瞬怖い顔になり
柚月の首を締めるものの、一転ハグしちゃうというシーンが、
登場人物の中で最も正しい存在だった
高市も色々な感情があふれてしまうことだってあるのだ
という印象的で嘘くさくない場面でした。
大迫力が味わえそうで、久々に映画館で見たかった作品です。
今度、新幹線に乗る時は、車掌さんが私を見送ってくれているという
自意識過剰になりそうな一作でしたwww。