考えれば考えるほど怖くなる・・・
それが〖哀愁しんでれら〗という映画。
童話のシンデレラも幸せになった後、残酷な結末が描かれているグリムがありますが、
こちらのシンデレラも負けず劣らず負の連鎖が止まらない。
それは視聴者までもを巻き込む疑いの連鎖
みなさんは何が真実なのか?わかりましたか?
この記事では
【哀愁しんでれら】の真実についてを深堀していきたいと思います。
この記事にはネタバレを含みます。
是非鑑賞後に再訪してくださいませ(^_-)-☆
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— 映画『哀愁しんでれら』公式 (@aishucinderella) December 23, 2020
”奇跡のワンカット” ダンス🩰
公式SNS限定でメイキングを公開‼️
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なかなかOKが出なかったこのシーン。
日も傾いてきた時、神々しい雲が現れ、
今だ!とカメラを回した所、
ノーミスで踊り切れたんだとか✨
カットの声がかかった瞬間の笑顔に注目👀#土屋太鳳 #田中圭#哀愁しんでれら🥀 pic.twitter.com/gonHtpE7vU
〖しんでれら〗は幸せになりたい
本作の主人公・小春(土屋太鳳)が働くのは児童相談所。
幼い頃に母が育児放棄して出て行ったトラウマからか、
その仕事ぶりは熱心という枠を少々超えていましたね。
冒頭から小春の〖危うさ〗は表現されていました。
そして間もなく、小春の仕事も、恋愛もダメになり、家族にも不幸が度重なり、
どん底気分を味わうことになります。
『幸せになりたい・・・』小春の理想から、どんどん遠のいていく現実。
それが始まりでした・・・。
小春のしんでれらストーリー
小春は、今にも電車が来そうな踏切で横たわる男性(田中圭)を助けます。
彼の名前は大悟。善良そうな開業医。
命を助けてくれたお礼に・・・と、高級な靴とドレスをプレゼントされます。
彼の娘のヒカリも小春になついていて関係も良好。
祖父の入院、父の仕事、妹の勉強・・・とひたすら小春の家族のために尽力する大悟。
その甲斐あって小春の父も大悟との関係を後押ししちゃって即結婚しました。
小春のシンデレラストーリーは完璧かに見えました。
友の助言
小春がシンデレラストーリーを駆け上がっていく最中、
小春の友人は疑問を呈してくれます。
足のサイズしかしらないのに結婚しちゃって大丈夫❓
はい・・・。
大丈夫ではありませんでした・・・。
友人ゆえなのか、他人事だからなのか、小春よりは遥かに冷静な思考のもと
発せられた助言をスルーした結果。
最悪の事態を招くことになります。
外車に乗った王子様の真実
大悟には3人で住むには広すぎる家があります。
けれども義理母は施設で暮らしています。
大悟は小学生の頃、いじめられっ子でした。
そんな大悟を母は助けませんでした。
それどころか大悟を叩いてしまい、そのせいで大悟の左耳は機能を失ってしまいます。
そして左耳を触るのが癖になる大悟。
そんな大悟は医者となり、
社会的に認められ、『先生』と呼ばれ、人の運命を握る存在になりました。
母親失格の親だったから、
自分の力で上り詰めるしかなかった。
上り詰めたからこその自信と揺るがない大悟の正義を持ち合わせています。
けれど大悟が上り詰めたと思うと同時に、他人は下に居る存在であり、
他人の立場になっては物を考えられないということ。
自分が絶対であるがゆえに…例えその相手が親であっても。
だから自分に逆らうものは許せない。
そんな人格を形成してしまったように思います。
踏切で酔って倒れていたのは真実か?
大悟が『子供の一生は母親で決まる』と言うように、
大悟の母がいじめられている息子に手を差し延べず、
叩かれて聴力を奪われたことを乗り越えられずに大人になりました。
その結果〖理想の母親像〗に執着するようになってしまいます。
自らが『ヒカリのためならば何でもできる』と断言するように、
妻になる人にも『母親ならば子供のために何でもするべき』と考えているのです。
その視点から見れば、小春の前で踏切で倒れていたのも、
自分の身の危険を顧みず人を助けてくれる女性なのかどうか?
それを確かめるため、仕掛けた大悟の罠だったのかも?
という疑惑がわいてきてしまいます。
皆さんはどう思いましたか❓
大悟の元妻の事故は真実か?
大悟の元妻についての話は、大悟サイドからしか聞くことはできません。
元妻の情報として以下のようなものがありましたね。
- 大学生と浮気をしていた
- 事故にあったときその男性も同乗していた。
- ひどい女だった
そして大悟は、元妻はひどいことをしたから報いを受けたと思っています。
何故、元妻が他の男性へはしったのか?
自分に何か至らない点があったのか?等は
考えないのです。
そもそも本当に浮気をしていたのかさえ疑問に思ってしまいます。
自分が好きすぎる
かつて大事にしていたウサギを剥製にした自分を自画自賛する大悟。
自らの裸体の成長ぶりを描いた自画像30年間分を
目立つ箇所に飾ってどや顔する自己愛ぶりがホラーでした。
その自画像たちが大悟の宝物であったように
一番好きなのは自分自身・・・そんな気がしますね。
小春を描いたスケッチ
小春が大悟の部屋で見つけてしまった【family】スケッチ。
その中には顔の部分が塗りつぶされている現妻・小春の不穏な絵が・・・。
小春は結局大悟の家族になりましたから絵の通りにはなりませんでしたが。
元妻はもしかして、大悟の異常性に気付き逃げ出そうとして、
逃げるのを手伝ってくれる大学生のバイトを見つけ、
まさに大悟の家から逃走している最中に事故に・・・それとも事故に見せかけられて・・・
そんな勘ぐりをしてしまいます。
ヒカリの真相
大好きな小春が母親になってくれると言ったから打ち明けた、
おねしょのこと、渉君が好きなこと。
それはヒカリにとっては重大なことで秘密にする約束だったのに、
小春は父親にばらしてしまった・・・。
そんな小春は理想の母親ではない・・・
そんな気持ちから小春を陥れる行動にでるようになります。
赤い靴の意味
童話にでてくる〖赤い靴〗は罪深さ。
フランスの歴史では『赤』色の染料自体が非常に高価だったため、
赤い靴を履けるのは、財力のある人だけ、そんな赤は権力の証。
信号機の赤は止まれの合図。
また、サスペンスものの悪女が赤い靴を履いていることもしばしば。
それは赤が近づいてはいけない危険人物の象徴だからでしょうか?
小春の母親像
小春も自分を捨てた母親の記憶がトラウマになっていました。
〖母親のようにはなりたくない〗と強く思うあまり児童福祉の仕事には積極的でした。
大悟の娘ヒカリの自分への嫌がらせも夫に告げ口することはありませんでした。
渉が盗んだはずのヒカリの筆箱が自宅のトイレに流されていたことを知っても、
そっと証拠を隠滅しました。
どんな母親像が最良なのか。
それに正解などはありませんが少なくとも娘が悪いことをしたのならば見ないふりをするのは
ヒカリの母親であることを放棄している方に近いのだということに気付けません。
全ては〖母親のようにはなりたくない〗という呪縛から逃れられなかった結果でした。
小春の中にも不安材料はあった
冒頭の、児童福祉の仕事で訪問した親子の描き方は虐待母と耐える子供のような描写でした。
しかし小春が大悟の家を追い出された際に再会した親子は仲良さそうにブランコで遊んでいました。
これは児童福祉の仕事に取り組み
〖理想の母〗〖理想のしんでれら〗
を夢見る小春と
〖しんでれら〗として、〖母親〗として
失格の烙印をおされた小春の
世界の視点が変わった描写なのかなと思いました。
一方踏切で倒れている大悟を小春が助けずにただ見つめて立っている
描写もありましたね。
これは小春が大悟を見放す選択肢もあった?
ことの示唆でしょうか。
ヒカリを叩いてしまったあと、大悟家を追い出されますが、
追いかけてきて泣いてすがるヒカリを自らの母親のように振り払い見捨てました。
そんな風にこれまでの小春は
様々な葛藤があり、それぞれの場面で小春なりの選択をしてきたわけです。
そして大悟と同じように踏切へむかう小春を今度は大悟が助けます。
大悟と小春とヒカリの3人家族をやり直すために・・・。
しかし、やり直すということは大悟の抱く完璧な母親になる道を進む
以外の選択肢はもうなくなったということ。
来実事件に犯人はいない
来実の事件はちょっとうやむやに描かれていましたね。
けれどもヒカリが犯人ではない証拠も以下のように描かれていました。
- 犯人はヒカリだと言ったのは『嘘つき』という伏線のある渉の発言。
事件現場に居なかったにも関わらず、ヒカリがやった・・・と証言しているのは、筆箱窃盗の罪をきせられた仕返しっぽい。 - 事故現場にいた同級生が『ヒカリは犯人ではないことを知っている』と手紙に書いている。
ですが・・・
ヒカリはふさわしくない場所にも自分の好きな赤い靴を履いて行きます。
ヒカリは継母小春にしれっと意地悪をします。
ヒカリは渉の気をひくためにひどい嘘をつきます・・・。
ヒカリは来実の不幸を悲しんではいませんでした・・・。
そんな行動を見せられて、無実の証拠の方を疑ってしまいたくなりました・・・
あんなことをするヒカリだからきっと、来実の事件の犯人はヒカリなのではないか?・・・と。
物語の罠にはまりましたww
小春は大悟の理想の母親になる
ヒカリを大切に思う大悟と小春ですが
それでも内心は
娘が来実を突き落としていない…という事実を
信じることができませんでした。
信じられなかったから、ヒカリを守る為にできること・・・
それが惨劇のラスト。
小春は見事に大悟の理想の母親になりました。
そして手に入れた教室内の3人だけの授業と幸せ・・・
それとは裏腹な教室の外の惨劇・・・
なんとも衝撃でした。
まとめと感想
〖しんでれら〗になりたかった小春は
〖母親〗に対して抱いた嫌悪感を乗り越えることができず、
過去に執着するあまり自分を見失ってしまいましたね。
人は完璧じゃない。
母親の事情も知っていた訳ではない。
過ぎたことを変えることも出来ない。
だから
忘れてしまうことが出来たらよかったですよね。
忘れるということは許すこと。
だとしたら、それも簡単なことではないのですが。
この映画の面白いところは、
かすかに真実は明かされているのにも関わらず、
誰を信じていいのか困惑してしまう点です。
事故の目撃者が、『ヒカリは犯人じゃない』と言っています。
にも関わらず、所かまわず自分の好きな赤い靴を履き、
人を傷つける嘘を平気でつき、
来実の不幸も当然の報いのように言い放った。
そんなヒカリがやったに違いない・・・そんな疑心暗鬼にかられてしまった人も多いのではないでしょうか。
これは潜在的に『都合のいいこと』や『信じたいと思っていること』を安易に信じてしまわないように気をつけて・・・的なメッセージが込められているのかもしれません。
メディアから流れるごく一部の情報、見ず知らずの人のネットの書き込み、
自分の思っていた通りだから信じてしまうのではなく、
きちんと見極める力をつけていきたいものだと反省しました。
結婚を控えているシンデレラにはおススメできない一作ですねww