今回は
【Fate/Stay night】の通称『桜ルート』と呼ばれる『Heaven‘s Feel』の劇場版です。
3部作から成る『Heaven‘s Feel』は
★第1章『presage flower』
★第2章『lost butterfly』そして
★最終章『spring song』となっています。
この記事では最終章である
【Fate/Stay night Heven‘s Feel Ⅲspring song】についてまとめてみました。
筆者同様、原作などは未読でありながら
難解な本作を楽しみたい方向けに。
本作の理解のヒントになるべく、
『Fate/Stay night』の核心的な部分についての解説や
ハッピーエンド未満?なラストの展開についてネタバレ考察しています。
なお
『Heaven‘s Feel』は、『Fate/Stay night』の集大成的な内容の作品となっているため
アニメシリーズの『Fate/Stay night』(セイバールートと呼ばれる物語)や
アニメや劇場版にもなっている
『Fate/Stay night【Unlimited Blade Works】』(凜ルートと呼ばれる物語)
アニメシリーズの『Fate/Zero』
の視聴を先にするのがおすすめです!
※本記事では以上のアニメシリーズ、劇場版、
および『Heaven‘s Feel』3部作の断片的なネタバレを含みます。
聖杯の真実
劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song
— ufotable (@ufotable) August 14, 2020
本日公開です。
劇場にて、お会いしましょう。 pic.twitter.com/YjDnHwWFvg
7人の選ばれしマスター(魔術師)たちが、7人のサーヴァント(英霊)を召喚し、
〖どんな願いでも叶えてくれる〗
聖杯を手に入れるための争い・・・
それを始めたのは
間桐・遠坂・アインツベルンの初代当主たちでした。
しかし第3次聖杯戦争の時、アインツベルンはルール違反をしてしまうのです。
それはアベンジャーのサーヴァント・アンリマユ(この世全ての悪)
を召喚してしまうというものでした。
更には、敗退した英霊の魂を取り込む聖杯が
敗退したアンリマユの魂も取り込んだことにより
聖杯はこの世全ての悪に汚染されてしまいました。
その結果〖どんな願いでも叶えてくれる〗はずだった聖杯は
〖願いを叶えてくれる〗後に、他の物をぶっ壊すという
忌まわしきものに変貌を遂げたのです。
第4次のマスターの一人だった衛宮切嗣は悲劇を防ごうと、
聖杯を破壊することに成功します。
しかし切嗣が破壊した
小聖杯の他にもう一つ、大聖杯と呼ばれる、
小聖杯を召喚するための聖杯が存在していたことが判明するのです。
この大聖杯が存在する限り、聖杯を巡る争いと
汚染された聖杯の副産物に終わりが来ることはなかったのです。
桜を操る影の正体
やがて聖杯を汚染したアンリマユは、7人のサーヴァントの魂を聖杯に集めることで
人類の全滅を成し遂げようとしていました。
さらに義兄を手にかけてしまった桜は、自己を保つことが困難になってしまい、
小聖杯と繋がってしまった結果、アンリマユは桜の影としてその姿を現していました。
アンリマユを手にいれたい間桐臓硯は、
汚染された聖杯のかけらを切嗣により破壊された聖杯から入手し、
桜に埋め込むことにより、桜を人間聖杯としていたのです。
桜だけの正義の味方になった衛宮士郎
義父の切嗣が士郎に残した言葉
『正義の味方になりたかったんだ…』
切嗣の意志を受け継ぐように正義の味方を目指す士郎。
しかしながら切嗣が残した
『誰かを救うということは誰かを助けないということ』
という意味深な発言に囚われ苦悩してもいました。
士郎の自己犠牲の精神
第3次の聖杯を懸けた争い時に冬木市に起こった大災害。
その唯一の生存者??である士郎は、
助からなかった大勢の悲劇を目の当たりにしました。
その後は士郎を救った切嗣の養子となり一見幸せに暮らすも、
見えない心の傷が癒えることはありませんでした。
そんな士郎は、他の誰かの助けになるならば、
自分のできることは何でもする・・・という精神の持ち主になりました。
それはとても善良な人間の精神であるのですが、
士郎の場合は誰かを助けられるならばその究極は、
〖自分の命に代えても・・・〗
があり得ることでした。
人間らしからぬその自己犠牲の精神が問題でした。
アーチャーの腕を使った士郎
イリヤ救出の際、闇落ちしたバーサーカーに追い詰められた士郎は
イリヤを救うためにアーチャーが士郎の身に託した腕を使うことを決意します。
例え士郎の身体も精神も耐えきれずに自滅しようとも・・・。
アーチャーの腕で投影魔術を使い
ナインライブズブレイドワークス
でバーサーカーを撃破しました。
桜だけの味方になるということ
桜がアンリマユと繋がって数々の罪を犯してしまったことを知ってもなお
士郎にとって桜がどんなに大切な存在なのかを確信した士郎は
桜だけの正義の味方になることを決めました。
できることなら全ての人を救いたかった士郎。
けれど決意した今、救いたいのは桜だけ。
そう決めた士郎は、かつての自身のサーヴァント、セイバーと対峙します。
闇落ちしていたセイバーでしたが、最後、闇から解放されたセイバーが
『士郎・・・?』
と悲痛な表情で語りかけるのを遮るように、
以前は確かな絆で結ばれていたセイバーに
アゾット剣でとどめを刺します。
誰かを救うということは誰かを助けないという覚悟を決めた悲しすぎる描写でした。
消えゆく中で
桜を倒せる力を持ちながら、最後の最後、妹に刃をむけることは出来ず、
倒れた凜。
凜の気持ちがやっとわかった桜は正気を取り戻します。
その隙をついてアンリマユを桜から切り離すことに成功した士郎でしたが
駆け付けたライダーを前にして、
『あんたか・・・』と。
ライダーの名前を思い出すことができなくなっていました。
セイバーとの戦いにおいて、共闘して傷を負ったライダーをねぎらうことも
なく、歩けるようなったらついてこいと言い放ったのも、
セイバーに問答無用でとどめをさせたのも
士郎がアーチャーの腕を解放したことによる、
士郎という魂の破壊が始まっていたということなのかもしれません・・・
士郎が消えようとしていました。
正義の理想と決別する士郎
士郎はそのまま犠牲になることを厭わない覚悟をしていました。
しかしそこへイリアがやってきて問います。
『生きたいか?』
と。
以前の士郎ならば、イリヤを行かせて自分が生き残るなんて
99.9%くらいあり得ないお話だったかもしれません。
しかし士郎は、大切な存在である桜を認識して、
それは同時に桜と一緒に生きたい自分も認識したのです。
イリヤに向かい
『生きたい』
と、涙ながらに絞り出すような声で告げた士郎からは自己犠牲の精神が消え
人間味があふれていました。
生きたいけれど、イリヤを犠牲にすることも出来ない。
そんな士郎の胸中を察したイリヤは
『姉は弟を守るの』だと告げ、
本物の魔法を士郎にかけて行きました。
魔法の名は【Heaven‘s Feel】(天の杯)
その場から逃げ切れなかった士郎の肉体は消え去りましたが、
イリヤは姉として弟を守っていきました。
イリヤにかけられた魔法によって
士郎の魂は守られたのです。
桜と士郎の結末
劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song
— ufotable (@ufotable) December 19, 2019
2020年3月28日、公開。
桜の咲く頃に―
劇場でお会いしましょう。
🌸#fate_sn_anime pic.twitter.com/k4DXq1eKAB
日常に戻り桜も学生生活を満喫していましたが
士郎の姿が現れることはありませんでした。
一方長年の姉妹の空白を埋めるように、
一緒に旅する凜と桜。
しかしそれはただの旅行ではなく、士郎を取り戻すための旅行でした。
イリヤがかけた魔法で守られた魂を入れる(士郎の肉体になる)器
を2人の姉妹は世界中探し回っていたのです。
そしてとうとう、見つけました。
復活した笑顔の士郎。
と共に、桜に・・・春がやってきました。
『Fate/Stay night Heven‘s Feel』の主題歌が聞ける音楽配信サービスは〖レコチョク〗ハッピーエンド未満?と思った感想
本作品は『Heaven`Feel』3部作の最終章であり
〖Stay night〗の集大成的な作品でした。
それ故
これまでのようにバトルの行方というよりは、
今までマスターたちが競い合って欲しがった聖杯とは
一体なんだったのか?
そもそも何故そのような争いが始まったのか?
など、〖Stay night〗の種明かし的な内容で見ごたえがありました。
そして、桜に起きていた悲劇は、まるでホラーでしたし、
士郎が取り戻す人間性はヒューマンドラマのようで。
イリヤと士郎が姉弟になった瞬間の別れは悲しき中に救いがあり、
そして凜と桜も、姉妹の絆が取り戻せて
全部含めて本当に胸熱な作品でした。
しかしながら、ラストの展開はハッピーエンドと言ってよいのかどうか?
私的には迷う演出でした。
復活した士郎が喋らない
守られた魂を凛と桜が探した人形?を器にすることで
復活した士郎。
しかし、復活した後も、物語の『語り手』が士郎に戻ることはなく、
士郎の出演も
笑顔で『桜・・・』
と語りかけただけでした・・・。
もしかしたら、復活したのは
士郎が消える寸前、
淡々とセイバーにとどめをさし、
重症を負ったライダーを気遣うこともなく
後から合流したライダーの名前を思い出せず、
桜のことだけを鮮明に覚えていて、
(イリヤが犠牲になったとしても)自分は(桜と)生きたい
と言ったあの時点での士郎の魂
だとしたら。
それももちろん士郎に変わりはありませんが、
桜が好きになったもともとの士郎ではありません。
桜以外のことはあまり記憶にない新しい士郎。
桜が凜に
『幸せです』
と答えたあのエンドもどことなく切なく感じたのは、
桜が背負っていくものが重いことには変わらないからでしょうか?
それとも、変わってしまった士郎に
自分の罪の眺めが見えてしまうからでしょうか?
そんなことを思うと
なんとなくハッピーエンド未満に感じてしまいました。
とはいえ圧巻の最終章
『Fate/Stay night』のアニメシリーズ、劇場版、『Zero』を鑑賞した後に
視聴した『Heaven‘s Feel』の3部作は圧巻でした。
黒化していたとは言え、セイバーと対峙しなくてはいけない士郎。
そして士郎と共闘するライダーがこれまでとは違い強くてカッコいい。
ここでは殆ど触れませんでしたが
言峰綺礼という〖悪〗しか愛せない複雑でありながら悲しい生き様。
宿敵・切嗣の娘であるイリヤを救済する姿が切嗣に想像できたでしょうか?ww
そして正反対のような切嗣の養子・士郎との対決もその背景を回想しながら観ていると
感慨深いものがありましたし、
『生きることを欲しなかった士郎』と
『生きることが許されなかった桜』の
2人で始める『生きること』
しかし何といっても、感銘を誘う2つの台詞がニクい演出でした。
1つ目は
『Fate/Stay night』での
倒せないとわかっているバーサーカーを相手にアーチャーが凜に言った優しい台詞
『アレを倒してしまっても構わんのだろう?』を彷彿とさせる
士郎の『倒してしまっていいんだな?』
は鳥肌ものでしたね。
2つ目は
犠牲という悲劇の結末を辿るイリヤが、
冒頭で、凛に尋ねる
『お姉ちゃんってどんな感じ?』
という台詞が、ラストの伏線になっており・・・泣かせてくれました。
これは絶対に
〖Fate/Stay night〗のアニメシリーズ、劇場版、そして、『Zero』を視聴してから
見るのがおススメな一作です。
★筆者は原作未読・未プレイにつき間違った解釈が多々あると思いますが、
その辺は、ご容赦くださいませm(__)m
※本記事は2023年5月時点のものです。
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