『シビル・ウォーアメリカ最後の日』ネタバレ感想とラストの考察/リーは何故ジェシーを助けた?

洋画
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『エクス・マキナ』『MEN同じ顔の男たち』
アレックス・ガーランド氏が脚本と監督を手掛け、『スパイダーマン』
キルスティン・ダンスト主演で制作された映画
『シビル・ウォーアメリカ最後の日』

合衆国から離脱した西部勢力と連邦政府による内戦が起こったアメリカで
ワシントンD.C.へ向かう4人のジャーナリストを通して戦争の裏側を描いた本作。

彼らを通して伝えたかったことは何か?
本作を鑑賞した感想を交えながら綴っています。

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『シビル・ウォーアメリカ最後の日』あらすじ

舞台は近未来のアメリカ合衆国。
連邦政府から19の州が離脱し、カリフォルニア州とテキサス州がタッグを組んで
結成した西部勢力(以下WF軍と記載)と連邦政府との内戦が勃発していた。

憲法を無視して任期の延長をし、FBIを解体させたりと
やりたい放題の大統領に反発したのだ。

これを受けて戦場カメラマンのリーとジャーナリストのジョエルは、
14か月にわたりインタビューを受けていない大統領に取材をするべく
ニューヨークからワシントンD.C.へ向かおうとしていた。

リーの恩師であるベテラン記者のサミー
危険だと警告するが、本心では自身もワシントンD.C.へ向かいたい衝動にかられ
目的地までの経路を調査しており結局、同行することを決めた。

ニューヨークでの取材時にリーに助けられた駆け出しの戦場カメラマン、ジェシー
リーへの憧れからジョエルに取り入り、彼らとともに
シャーロッツビルへ向かう車に乗り込む。

リーはこれから行く先が無法地帯であることを考慮すれば
まだ子どものようなジェシーを同行させるべきではないと反発したが
シャーロッツビルまで同乗させることを渋々了承した。

こうして4人のジャーナリストは大統領のもとへ向かうべく、
険しい道は避け、巡回する遠く過酷な旅路が幕を開けた・・・。

キャスト
キルスティン・ダンスト、ヴァグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、
スティーヴン・ヘンダーソン、ソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマン
 他

以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴のかたはご注意ください。

本記事の情報は2024年12月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

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『シビル・ウォーアメリカ最後の日』のラストとは?

ワシントンD.C.へ向かう4人に待ち受けていたのは
母国の悲惨な現状と自国で命を狙われる恐怖でした。

それでも戦場へ赴き残酷な記録を撮り続けたのは
何のためだったのか?!

ジャーナリストを通して描く争いの実態

本作は『ジャーナリスト』という目線から
(劇中の)戦場の実態を描いています。

若くして戦場カメラマンとして名声を得たリー
争いの場に感情を同行することを禁じていました。

そのため人命よりも記録やそこにある事実を優先することもしばしば。
それが人としていかに非情であると理解していても・・・。

劇中では大統領への取材を目的にワシントンD.C.に向かうべく
出発した4人は間もなくガソリンスタンドを見つけ給油することにしました。

しかしそこを仕切っていた店主は簡単には給油させてはくれず
その一角には強奪を目論んだ末に吊るされ拷問を受ける人の姿
あったのです。

ジェシーは恐怖におびえ呆然としてしまいます。
そこへリーがやって来ると、臆することなく
平然とその状況をカメラで記録しました。

この時のリーとジェシーの差が
ベテラン戦場カメラマンの精神と、まだ一般的な倫理や感情を持ち合わせている精神として
表れていました。

しかし、ある事件を境にリーとジェシーのその精神は逆転し、
駆け出しだったジェシーはリーの精神を継承するべく
戦場カメラマンとして一流への階段を上っていくのです。

どんなタイプのアメリカ人か?!

旅路の途中でアジア人ジャーナリストのトニーボハイに遭遇した一行でしたが、
ボハイとジェシーが武装した兵士たちに捕まってしまいます。

彼らは大勢の民間人を殺めて大きな穴の中へ隠していました。

捕まった二人を助けに入ったリーたちでしたが
ボハイは射殺されてしまいます。

そして一行に
『お前らはどんなタイプのアメリカ人だ?』
と問います。

出生地を答える面々でしたが、トニーが『香港』だと答えると
『中国人か』と言ってトニーを射殺しました。

このままではリーたちにも危険が及ぶことは明らかでした。

そこへ、二人を助けに入ることは自殺行為だとして離れて待機していた
サミーが車で突っ込んで一行を救います

ところがその際サミーは武装兵士が放った銃弾を浴びてしまい
シャーロッツビルへ到着前に絶命してしまいました。

そんなサミーの姿をカメラに収めるリーでしたが、
その画像を削除したのでした。

傷みを知る者と払拭する者

シャーロッツビルに到着した一行はこの内戦が政府軍の降伏というかたちで
終息に向かっていることを知ります。

多くの悲劇を黙認してきたはずのリーでしたが、
恩師であるサミーを自身が誘い、自身の命と引き換えのように失ってしまいました。

サミーの死は何の意味もなかった
と激高するジョエル。

一方でリーはそれがきっかけになって
これまで黙認してきた苦悩と傷みが怒涛のように押し寄せます。
いわゆるPTSDを発症してしまったのです。

ジェシーの方は自身が命の標的になったことはこの上ない恐怖を体感した
とともに、『生きている』実感や喜びが心の奥底から湧き上がると興奮していました。

ホワイトハウス陥落

最終決戦の場となったのはホワイトハウス。

ジョエルをはじめとし、戦場カメラマンとして万全ではなくなったリーと
突き進むジェシーもWF軍に同行します。

大統領補佐官は大統領を亡命させることを交渉しますが
WF軍はこれを飲まず、補佐官を射殺して大統領を追います。

大統領まであとわずかという廊下で中央に躍り出て
無防備にカメラを構えるジェシー。

そのジェシーを狙う銃口の前に立ち、ジェシーを助けたのは
リーでした。

ジェシーはリーに押され倒れた次の瞬間、
被弾するリーにカメラを向けシャッターを切りました

そのまま倒れたリーの様子を、少しだけ振り返ったジェシーでしたが
すぐさま切り替えて大統領の元へ向かいました。

大統領を捕らえたWF軍を制止したジョエルは大統領に
名言を求めます。

すると大統領は命乞いをしたのです。
ジョエルは『それでいい』
と言うと、WF軍の兵士が大統領を射殺しました。

その様子をジェシーはシャッターを切り、
振り返った兵士たちは大統領の亡骸と共に笑顔で
写真に収まった
のでした。

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『シビル・ウォーアメリカ最後の日』の考察

無駄な説明もなく、謎が不明なままという演出は
まさに視聴者もその現場にいるような緊張感をもたらしてくれました。

銃をかまえて撃ってくる敵の正体など説明できずに応戦したり、
時として何のために戦っているのかさえわからなくなる・・・
戦争とはそんな説明や理由が存在することばかりではない
ということなのでしょう。

それは承知の上で本作の謎を深読み推察してみました。

リーがジェシーを助けたのはなぜ?

冒頭、暴動の最中で懸命にシャッターを切り、
警察部隊に殴られてしまうジェシーを
ベテラン戦場カメラマンのリーが救助に向かいました。

ジェシーのまだ感情も倫理観も持っている
戦場カメラマンとしては使い物にならないが
善良な人であるその姿に、
かつての駆け出し時代の自分を重ねたのかもしれません。

戦場カメラマンをする自分の目的や
目指した当時の思いがよみがえったのでしょう。

ベテランとなった今も、リーの中の基本的な善良さは奥深くに隠されている。
そうしなければ何も伝えることはできず、生きては帰れないからです。

ジェシーにも彼女なりの使命を全うさせてあげたい。
でもそのためには生きて戻ることは鉄則なのだと。

そんな思いがとっさに危なっかしいジェシーを助けるきっかけに
なったのではないでしょうか。

しかしその場面こそが、その後のリーの運命を
少しずつ変えていく引き金となってしまいます。

かつての自分に言い聞かせるように、ジェシーに
感情を捨てなければいけない防弾チョッキを着て、
と指導していたリーでしたが
見ず知らずの人の悲劇を黙認できても
恩師の死はその心に深く突き刺ささったのです。

しかもその責任は自分にあることが決定打になりました。

同じ一件から、徐々に真の戦場カメラマンとなっていくジェシーとは
裏腹に、後悔や苦悩や感情に囚われはじめたリーは
戦場カメラマンとしては支障をきたしていました。

そんなリーは危険を顧みず飛び出してシャッターを切るジェシーを庇い
自身が銃弾に倒れてしまうのです。

リーの最後は絶命したのか?

銃弾に倒れたリーのその後は描かれていません。

ジェシーに防弾チョッキを着用することを助言していた
リーが、もし自身は戦場に立つ準備さえ怠ってしまったのならば、
それこそすでにリーが保持していた戦場カメラマンの精神が
崩れ去った証
なのかもしれません。

また防弾チョッキを着ていたとしても
全ての銃弾を防げるということではないようです。

あくまでダメージを軽くすることが目的であり、
運が悪ければ絶命に至るのだそう。

リーは倒れたまま動くことはなく、ストレートに受け取れば
銃弾に倒れ絶命したという解釈になるのでしょう。

戦場で起きることは何があったとしても自身の選択

そうジェシーに助言していたリーが戦場カメラマンとしては
誤った選択をしてしまったという最後。

しかし人としては、リーたちを助けてくれたサミーのように
人生の最後で成し遂げたのは若い命を救うことでした。

ジョエルはサミーの死に意味がないと激高しましたが、
鑑賞者はリーの死に意味がないとは思わないのではないでしょうか。

それでもすでに戦場カメラマンとしてしかるべき精神が備わった
ジェシーは、すべてが終わったのち、
リーの死を意味がないと激高するのかもしれません。

ラストのその後は?

法律を破り、自国民にも被害を及ぼす政府と大統領に立ち向かい
平和な日常下では相まみえないはずの州が手を組んだWF軍と政府との決戦。

結果はWF軍が勝利し、この戦いでの悪の象徴である
大統領には罰がくだされました。

しかし、その後は大統領の亡骸と共に
笑顔で写真におさまる兵士たち・・・
という描写で幕を閉じるのです。

悪いのは政府なのかもと思って見ていたはずの
WF軍兵士が悪になってしまった顔が映る瞬間でした。

その後WF軍指導のもと
新たに国家は立て直されるのでしょうか?

答えはノーであると考えます。


民主党支持者が多数を占めるとされるカリフォルニア州
共和党支持者が多数を占めるとされるテキサス州が手を組んだという
WF軍。

そんなばかな・・・と思ったのならば

それは共通の敵が陥落したその後は
カリフォルニアとテキサスこそが対立し、
再び内戦が始まる・・・
という伏線なのではないでしょうか。

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『シビル・ウォーアメリカ最後の日』感想

戦いの地に挑むリーが伝えたかったこと
その命を懸けたメッセージが裏テーマにもなっている本作。

リーは自国で内戦が起こってしまったことに際して、
自身が戦場カメラマンとしてしてきたことは
無駄だったのではないかと葛藤していました。

そんな風にリーが無情に、人命より残酷な真実を記録することに
専念し、伝え続けたのは争いを無くしたかったからなのでしょう。

人と人が命を懸けて争うことの残酷さ。

その真実を伝え、写真の力をもって悲劇を避けてもらうことが
目的でした。

一方でジェシーはリーに憧れ彼女のような戦場カメラマンになりたい
と望んでいましたが、
結果的にはリーとは似て非なるものだったように見えます。

リーは恩師の悲劇をきっかけに壊れていきますが、
ジェシーはリーの悲劇後もその勢いは加速していったのが
対照的でした。

ジェシーにとっては自身が生きているという実感や喜びに触れることができる瞬間、
それが戦いの場なのです。

物語の最後では
リーのような戦場カメラマンとして成長したジェシー
を映しだ出した結末のように描かれますが、
戦が終わった後の大統領の亡骸と兵士の笑顔の写真を
リーならば撮ることはなかったと思ってしまいました。

そして勝者が英雄のように描かれたラストのその後が
あるとするならば、それは新たな戦いにおいて次の
英雄を競う物語になってしまうのではないでしょうか。

そんなことを思う筆者は?といえば
劇中で『面倒なことには関わりたくない』
と言っていたショップ店員と同等なことに
うしろめたさを感じたりもしました。

それでも使命の名のもとに、あの場所へ踏み込める人は
多くありません。

戦争を認識していない者がその残酷さを知るために
彼らのようなジャーナリストは
命をかけて教えてくれるのだとするならば、
それは偉大な存在であるのは間違いなく、
だからこそ、こんな悲劇は二度と起こらないように
努力を持って応えることが
ちっぽけな筆者にもできる唯一のことなのかもしれません。

制作サイドもこの物語に命をかけてその地へ赴くジャーナリストへの
敬意を込めたのだとすれば、
本作を見て鑑賞者が恐怖におののいたことこそ
メッセージは届いたのだと思わされる一作です。

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