2003年に公開されるや否や、その恐怖は世界中が震撼し、
スティーブン・スピルバーグが史上最高となる額でのリメイク権を
勝ち取ったことが話題になりました。
その韓国版映画が『箪笥』です。
そしてハリウッド版は『The Uninvited(邦題「ゲスト」)』として
製作されました。
本記事では韓国版の「箪笥」における
不可解な謎を超個人的な見解で深読み考察しています。
後悔と復讐とが入り混じるストーリーの末路は?
ウンジュの犯した罪は何だったのか?
綴っています。
『箪笥』あらすじ

ソウル郊外に建つ屋敷に一台の車が止まった。
出て来たのは父親のムヒョンで、後部座席で眠る娘に出てくるように
声を掛けた。
車内から出て来たのはスミとスヨンの姉妹。
2人は屋敷を見上げると怪訝な表情を見せ、
屋敷に背を向け、湖まで駆けて行った。
湖で素足をひたし楽しんでいた姉妹だったが、
ムヒョンに呼ばれ屋敷に戻る。
スミとスヨンを出迎えた継母のウンジュは
歓迎の印に料理や掃除を頑張ったと言い、
スヨンには「ママに似てきたわね」と声を掛けたのだった。
姉妹はウンジュを良く思っていないので
関わることなく二階へ上がって行った。
自分の部屋に入ったスミは持ってきた日記帳をしまうために
デスクの天板を開けると中にはすでに同じ日記帳があった。
また箪笥を開けてみると、同じ服が何着もずらりと並んでいた。
その頃,ムヒョンは誰かに電話をかけ、
娘があまり良い状態ではないことなどを
伝えるのだった・・・。
キャスト
イム・スジョン、ムン・グニョン、ヨム・ジョンア、キム・ガプス 他
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以下結末のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年8月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
『箪笥』の謎を深読み考察
『箪笥』は一度視聴しただけでは意味が分かりにくい
難解ホラーだと評判です。
そんな難解ホラーではありますが初見の筆者なりの
個人的な推察を綴っています。
実在していたのは誰なのか?
物語の冒頭で屋敷に到着し、車から降りたのは実際は
ムヒョンとスミだけだったというのが真実だったのです。
つまりはラストの方でスーツを着て現れた
ウンジュが登場するまでこの屋敷には
ムヒョンとスミの父娘だけだったということです。
スミはある事件がきっかけで解離性障害のような病に
犯されてしまい、自身を守るための別人格を作ったのです。
それがウンジュであり、彼女を悪党というキャラに設定することで
自身の後悔から目を背けていたのでした。
またスヨンはスミの別人格ではなく、この屋敷に存在する幽霊
なのでしょう。
スミがこれまで通りスヨンを実在する存在として接することで
スヨン自身がそれに気づかなかったのです。
スミの前に現れたのは何者なのか?
ある夜、スミが寝ていると成人女性と思われる存在が
近づいてくる。
それはスミの前でに仁王立ちするが
その足からは血が流れ、小さな手が垣間見れた。
この存在の正体はおそらく実母なのだと思います。
スミに何かを訴えていたのではないでしょうか。
また寝ているムヒョンに会いに行き布団を掛け直したり
頬に手を当てていたスミには実母が入っていた?
のかもしれません。
スミがウンジュの腕を掴んだ理由
自分が多重人格者であることの気づいたスミは
目の前の薬を飲み、精神病院へ送られました。
見舞いに訪れた本物のウンジュでしたがその思惑は
スミの正気状態を確かめるためだったのかもしれません。
また来るからと言って帰ろうとするウンジュの腕を
突如スミが掴みます。
なかなか放してくれないその腕の力にウンジュは焦りを見せました。
筆者はこの時、意識がもうろうとしているような表情のスミの中に
実母が入っていたのではないかと考えています。
恐らく今は屋敷には住んでいないウンジュを
娘の身体を借りてやっと捕らえたということなのではないでしょうか。
ウンジュの犯した罪とは
ラストでウンジュはこの屋敷の箪笥に飲み込まれてしまいます。
これはスミとスヨンの実母の復讐であったのだろうと
思います。
そんなウンジュはどんな罪を犯してしまったのでしょうか。
実母の介護を引き受けたウンジュの思惑
スミの実母は生前、病気がちで、忙しいムヒョンは自身で面倒を見る
のではなく、同僚のウンジュに母の介護を要請したのです。
ところがウンジュの方はムヒョンを慕っており
この要請は絶好の機会でした。
ウンジュは介護の枠を超えて家事を担うなどまるで継母のような
態度に出始めたのです。
一方、実母が持っていた写真を見たスミは
ウンジュがムヒョンの同僚で、集合写真の後に
わざわざ2人だけで撮った写真が存在することから
ムヒョンとウンジュのただならぬ関係を察知します。
実母にとってこのような写真がどれだけショックだったのか
語るまでもないのでしょう。
庭の鬼灯を育てたのは誰か
冒頭で屋敷に到着したスヨンが、庭に沢山植えられた鬼灯を
ほおばる場面が描かれます。
このシーンは何を示唆しているのか謎が深まりましたが
これを植えたのがウンジュであるならば
それは彼女の罪の一部を示しているのではないでしょうか。
スミの前に現れた実母と思われる幽霊の足の間から
現れた小さな手、他にも人形や透明な液、そして鳴き声から
連想するのは実母が妊娠していた可能性です。
そしてその赤ちゃんが生まれることはなかったことから
流産してしまった過去があるという疑念でした。
調べてみたら鬼灯の根や茎の部分には子宮収縮作用を引き起こす成分が
含まれていて妊婦にとって鬼灯は禁忌なのだそうです。
そんな鬼灯が庭に植えてあるのは偶然なのでしょうか。
ウンジュはその根や茎を料理に混ぜて実母に出していたのではないでしょうか。
そして子どもを失った実母はその理由にも気づいてしまった。
しかも彼女は夫の恋人。
そんな事実を突きつけられてしまった実母は精神を病み
自ら命を絶ってしまったのかもしれません。
後悔と復讐の末路(本物のウンジュがしたこと)
それはウンジュが開いた食事会の日でした。
この屋敷を牛耳るウンジュに嫌気がさしたスミとスヨン。
ウンジュに辛くあたられ部屋で泣き崩れるスヨンをそっと慰めたのは
自らも蚊帳の外にされた実母でした。
しかししばらくして泣き疲れ眠ってしまったスヨンが目覚めると
母の姿はありませんでした。
少し開いていた箪笥を開けたスヨンはその中に自ら命を絶った母を
発見してしまいます。
母を助けようとした拍子に箪笥が倒れて、
スヨンは下敷きになってしまいました。
その物音を聞いたスミや親せき、ウンジュの面々でしたが、
最初にスヨンの部屋に駆け付けたのはウンジュでした。
しかしウンジュは何もせず部屋を後にします。
すると部屋から出て来たスミと出くわし、
「物音がしなかった?」かと尋ねたのです。
もう一度スヨンの部屋へ助けに戻ろうとしたのでしょう。
しかしこれにスミは答えず、『家族のことに関わるな』と
ウンジュを挑発する言動を浴びせました。
スミへの怒りから
お前は、この瞬間を一生後悔するかもよ、忘れないで。
と告げます。
ウンジュが知っているスヨンの危機をスミに告げることもなく、
自分を嫌っているこの姉妹を助ける気持ちも消失した瞬間でした。
スヨンの元に戻ることはなく、スヨンが助からないのは
私を怒らせたスミのせいだと通告したのです。
この言葉を深く受け止めなかったスミは一人屋敷を後にしました。
ウンジュの罪はスヨンの危機を知っていながら
スミへの怒りから見殺しにしたのです。
そしてムヒョンに対し、その事実を隠蔽し続けているということです。
後に事件を知ったスミは、ウンジュから告げられた
「後悔する」というあの言葉に押しつぶされ病に侵されていきました。
ウンジュは間接的にスヨンを殺め、
スミの精神もむしばんでしまったのです。
その結果、自己防衛から別人格を作っスミは思いのたけを
空想のウンジュに込めました。
ウンジュは意地悪な継母で、スヨンはこの継母に
殺されたのだと思い込んだのです。
そんなスミとスヨンを見殺しにされた母の復讐は
果たされる結末になりました。
『箪笥』もうひとつの深読み
ウンジュの人格を有していたスミは、
父のベッドにもぐりこんだり、
スミの姿で眠っている父の頬に触れていました。
筆者はこの行動をスミの中に実母が入ったからだと
解釈しました。
しかしもしもそうではなかったのなら・・・。
それはスミ自体が父親に男性として愛情を持っていた
という解釈もできます。
その場合は真実も少し違うのかもしれません。
気になるのは終盤で現れた本物のウンジュが
少し地味(失礼しました)なことでした。
ウンジュはスヨンを見殺しにした後、
心を入れ替えたのでしょうか。
それは少し苦しい言い訳のような気がします。
ムヒョンがスミに言った
「何もかもお前の誤解なんだ」
という意味は何だったのか?
ムヒョンはウンジュに思いはなかったのか?
ウンジュは継母でも悪人ではないのか?
ウンジュはスミの別人格だったわけですが、
もし真実だと思った回想シーンの中のウンジュもスミだとしたら・・・。
そうなると本物のウンジュはスヨンの事件に関与していない
のかもしれません。
実在しない存在が複数出てくること、
別人格を作るスミの病気が重なることで
幾通りの解釈も楽しめる、
そんな一作なのかもしれません。