前作『きさらぎ駅』のその後を描く
『きさらぎ駅Re:』
前作で、きさらぎ駅から生還を果たした宮崎明日香。
しかし、あれから3年後、明日香は再びきさらぎ駅へ。
ラストで明かされた驚愕の真実とは何か?
明日香が秘めた本当の目的に迫ります。
前作『きさらぎ駅』の記事はこちら
『きさらぎ駅Re:』あらすじ
今から3年前、きさらぎ駅から奇跡的に帰還した
宮崎明日香。
ところが、きさらぎ駅ではたっ1日の出来事だったはずが、
明日香が現実世界に戻ると、そこは20年の時が過ぎていた。
しかも明日香自身の外見は20歳のままだった。
かつての同級生たちが開催してくれた
「明日香を励ます会」に出席するものの、
彼らとの外見の隔たりや生活の違いは顕著に表れ、溶け込むことは困難だった。
孤独感にさいなまれた明日香に希望を与えてくれたのは
ドキュメンタリーディレクターとして名高い角中瞳だった。
「きさらぎ駅」に取り残された堤春奈を救うため、
その存在を認知してもらうべく、明日香のドキュメンタリー番組が制作された。
しかし番組の完成もむなしく、放送は白紙に戻ってしまう。
明日香は一人、きさらぎ駅に取り残された春奈を救うため
再び電車に飛び乗るのだった・・・。
キャスト
本田望結、恒松祐里、佐藤江梨子、瀧七海、芹澤興人、寺坂頼我、
大川泰雅、柴田明良、中島淳子、奥菜恵 他
★U-NEXTでは初めてのご登録で31日間の無料トライアルを利用できます。
しかもトライアル期間でも600ポイント貰えるので、『きさらぎ駅Re:』も
ポイントを使って視聴できますよ!
以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年10月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。
『きさらぎ駅Re:』ラストで明かされる真実
3年前、明日香がきさらぎ駅を脱出できたのは、
今もなお、きさらぎ駅に囚われている堤春奈が
明日香を扉へと誘ってくれたからに他なりませんでした。
現実に戻れたものの、いまだ囚われの身となっている
春奈を救いたい
それが明日香が「きさらぎ駅」へ再び向かった動機だと思われていました。
しかしラストで今まで見ていた動機が覆ることになるのです・・・。
目的は堤春奈を救うこと!?
明日香を助け、今もなお帰ることが出来ないでいる
春奈を現実世界へ戻すことが当初の目的でした。
そうしてきさらぎ駅で春奈と再会した明日香。
しかし、「きさらぎ駅」での脱出劇の記憶は
誰かが生還すればリセットされてしまうのです。
春奈は明日香とのことを覚えていませんでした。
そこで明日香は自身が春奈に助けてもらったこと。
実は春奈は、
「扉を先にくぐった者は犠牲になり2番手こそが生還できる」
という明日香を助けるためについた純子の嘘を信じて、
明日香をはじめ4人の人物を現実に生還させたことを告げます。
春奈は自分の行った行為が卑劣な真似であると感じ驚きを
隠せませんでした。
しかし明日香の方は自身が助かるために人を先に扉へと導いたという
春奈の本心がわかってもなお、実際に明日香が帰還できたことは
事実であり、春奈を戻すという決意は揺らがなかったのです。
ルールは変わっていた
現実への架け橋である光る扉を通れば生還できる。
それが「きさらぎ駅」ルールだったはずでした。
しかし新たな仲間と共に力を合わせ、やっと最後の光る扉へとたどり着いた
明日香たちを大きな目玉の怪異が襲います。
前回とは正解が異なるミッションに四苦八苦しながらも、
仲間たちが囮になっている隙をついて明日香が春奈を扉へ導こうとしました。
ところが目玉はそれを許さず、とっさに春奈は自身が犠牲になり
明日香を扉へと押し込んだのです。
しかし明日香は現実に戻ることはなく扉が消失
してまた振り出しに戻ってしまいました。
「きさらぎ駅」に降りない選択
なすすべがないことに絶望感を隠せない春奈や仲間たち。
これは明日香が「きさらぎ駅」を体験するのが2度目だということ
が要因になってクリアが難しくなっているのだと謝ります。
ここへきて「やっていないこと」は何なのか?考えました。
次の瞬間、明日香は皆がきさらぎ駅へ降り立ち、
続いて降りようとする春奈を引き戻し、自身は車外へ一人で
電車を後にしました。
明日香は気づいたのです。
いつの時も、当たり前のようにこのきさらぎ駅に
降り立っていたことを。
きさらぎ駅に降りずにそのまま乗っていたことはなかったのです。
春奈だけを乗せた電車は発車しました。
そして気づけば、あの出口の森で泣き叫ぶ春奈。
そこには明日香が再びきさらぎ駅へ向かったことを察知した
角中が居ました。
春奈は明日香の思いを届けて欲しいと角中に哀願します。
角中もまた春奈という生き証人を目撃したことで
何としても放送しなければと強行に踏み切り国外で
明日香のドキュメンタリーは放送されました。
明日香は番組内で「きさらぎ駅」への行き方を露呈することは
ありませんでした。
しかし放送を見た人の中には、明日香が散りばめた番組内のヒントから
「きさらぎ駅」へたどり着く方法を割り出すことで承認欲求を果たす者たちが現れ、
行き方は拡散されて行きました。
角中は明日香がきさらぎ駅のことを「人は体験しなければ信じない」と
言っていたことを思い出し、最初から明日香には春奈とは関係なく、
何等かの目的があったことを察知します。
そうして、明日香は、沢山の人たちが面白がって、きさらぎ駅へ降り立つ姿を
その目に焼き付け、笑みを見せ言うのです。
「ようこそ、きさらぎ駅へ」
明日香が秘めた本当の目的
明日香が再び「きさらぎ駅」へやって来た目的は、
春奈を現実に戻す他に、もう一つ、大きな目論見があったのです。
空白の20年が生み出したもの
春奈に助けられた・・・そう思って現実の世界に戻った
明日香でしたが、そこは彼女にとってもう居場所のない世界だったのです。
20年という空白は残酷な現実を明日香に見せました。
母親は明日香を探したい一心でオカルト商法にまで手を出し、
詐欺にあってしまった結果、鬱状態で心神喪失に陥っていたのです。
明日香のことを娘であると認識することはもうできませんでした。
20年前には存在しなかったネット社会の進歩も
明日香にとっては地獄そのものだったのです。
明日香は自分だけではなく春奈も脱出させるべく
区役所にきさらぎ駅の捜索を願い出ますが、
その姿は動画として拡散され、明日香は「オカルトクレイマー」と
称され、街を歩くだけでも揶揄されるようになっていました。
明日香という人物が誰なのかはネットで顔にモザイクをかけようが、
悪質な者たちによって、ほんのちょっと映り込んだヒントからいとも簡単に
特定し晒されてしまったのです。
信じさせること
明日香が現実に戻った後、松井美紀、岸翔太、花村貴史、葉山凛
もまた、春奈によって現実の世界に舞い戻っていました。
しかし、岸は自ら命を絶ち、松井も自傷行為が激しく入院中で、
花村は家族に捨てられ助けてくれた(と勘違いしている)春奈を
思うだけのすさんだ日々を送っていました。
先に戻った純子は同居する姪の凛を明日香の二の舞にしないため
家の中で監禁していたのです。
つまり現実に戻って幸せになっている人は皆無でした。
それは「きさらぎ駅」での恐怖のトラウマがなしたことなのかもしれません。
しかし少なくとも明日香は彼らの不幸の影には、世間の悪意が隠れている
ことを確信していたのではないでしょうか。
なぜならば、自らが世間の非情さを痛感し、排他的な扱いを受け、
やっと戻れたその地に居場所が存在しなかったからです。
皆が「きさらぎ駅」の存在を信じてくれないせいで。
だったら信じるしかない手段を・・・それが明日香が導き出した答えでした。
信じない、馬鹿にする全ての者を理解できない者を排除する世間を
「きさらぎ駅」へと導くこと
それが、明日香が抱く本当の目的だったのです。
「きさらぎ駅へようこそ」
悪質なネット民たちは、きさらぎ駅を信じることなく
遊び半分で訪れてしまいました。
これまで閑散としていたきさらぎ駅がネット民たちで
ごった返す様子を見て、明日香は微笑みを浮かべ
「きさらぎ駅へようこそ!」
と囁き幕を閉じました。
生還者たちを馬鹿にし、排除し、不幸のどん底へ突き落とした彼ら世間の悪意。
信じないのならば体験してみればいい。
明日香のそんな思いは実現したのでした。
目的のために
前作で自身を助けてくれた春奈を救い出すこと。
それも目的だったことには違いないのでしょう。
しかし、そこには、春奈に絶対に帰って貰いたい理由があったからに
他ならないでしょう。
明日香の本当の目的のためには角中の番組の放送は不可欠でした。
しかし、上層部からの番組公開の阻止を受けて角中自身もまた
その意欲を失くしてしまったのです。
それは、角中自身もまた「きさらぎ駅」の存在を信じていなかったからです。
そこで明日香は番組公開のために、角中には信じてもらう必要がありました。
そのための春奈脱出だったのです。
春奈自身を心から助けたいことが目的であれば、
春奈の本心が判明しても少しの乱れも抱かなかった違和感も残り、
またクライマックスの場面でも春奈を助けるためとはいえ、
車内に投げ飛ばすかたちになった明日香の行為がいささか乱暴に見えました。
春奈が「きさらぎ駅」の存在を信じて降り立ってくれたことには
感銘を受けている。
でも春奈は明日香にとって目的を達成する鍵に過ぎないのです。
何としても春奈を戻さねば・・・という焦りのようなものが
あの場面には表れたように思いました。
『きさらぎ駅Re:』感想
これはReturnではなくRevengeの物語だったのだと
判明するラストは驚愕でした。
「きさらぎ駅」に降り立った者たちは
それぞれ壮絶な結末を迎えたと言えるでしょう。
被害が少ないように思えた純子でさえ、
姪を監禁するという奇行に及んでいました。
姪が明日香の二の舞にならないため守っているという
言い訳でしたが、明らかに守っているのは自分自身だった
ように思います。
純子は明日香を救うためとはいえ、代わりとして春奈の命を
犠牲にしました。
その行いが明日香にはもちろん、世間に露呈したならば、
どんな目が向けられるかは明日香を見れば一目瞭然な世界
に住んでいるのです。
そんな風に、悪意にのまれてしまった者、自ら終わらせた者、
・・・とこぞって不幸を募らせる生還者たちのその後が描かれ、
それらが多くは語られないことの方がむしろホラーでした。
春奈もまた無事に生還できましたが、その先には何が待っているのか?
角中も正義感を信じて番組を放送した結果、多くの人たちをきさらぎ駅へ
送り込む手伝いをしてしまったのだと気づいてしまうラスト。
一方で、きさらぎ駅で大きな目玉の怪異に阻まれる者たちは、
全員ミッション失敗で記憶を引き継いだまま車内に戻ることから
彼らは次第に親しくなり、名前で呼び合い、絆も生まれます。
何人かを自身の犠牲にするべく扉へと追いやった
春奈でさえも、明日香の気持ちにうたれ
自身が犠牲になる道を初めて選択するに至るのです。
こんな世界に居る方が、温かな気持ちになれるなんて
何とも皮肉な現実でした。
明日香はもはやきさらぎ駅の住人と化してしまいました。
その後、明日香はそこに住み続け、迷いこんだ者たちの脱出の
邪魔をするのか?
それとも一定期間、彼らのあがきを見届け自身は脱出するのか?
またまた続編が期待できそうな一作です。(あるのかわかりませんが)