豪華キャストでおくる【真実】を探るミステリー
【星が丘ワンダーランド】
この映画を観終わった後、
見た人の心境によっては悲しくもハッピーにも感じるかもしれない
不思議な作品です。
しかし台詞や説明が少な目なうえ複雑な心理描写から
理解するのがやや難しいと感じる本作。
そこでこの記事では、以下の項目を中心に
筆者なりの考察をまとめてみました。
・母の事件の真相
・『残された者の気持ちがわからない』の真意とは
・ラストシーンの電話の相手
❄突然の母の死ー
— 星ガ丘ワンダーランド (@hoshigaoka_com) January 25, 2016
なぜ死んだのか、そして本当に自ら命を絶ったのかー。
中村倫也、新井浩文、佐々木希、菅田将暉、杏、市原隼人、木村佳乃、松重豊、豪華キャスト競演によるミステリー『星ガ丘ワンダーランド』が3月5日公開! #星ガ丘 pic.twitter.com/hfKMd4EJ68
あらすじ
「星ヶ丘ワンダーランド」
— SHOW YANAGISAWA (@SHOWyanagisawa) June 30, 2015
主演:中村倫也
出演:荒井浩文、木村佳乃、佐々木希、菅田将暉、杏、市原隼人、松重豊
監督・脚本:柳沢翔
プロデュース・脚本:前田こうこ
この冬公開予定。
長編映画初監督です。
お楽しみにーー! pic.twitter.com/rPkK6WonzC
雪の降るある日、車内で口論を始めた父と母。
見守る幼い兄弟・哲人と温人。
父に激しく叱責されて雪の中一人で去って行こうとする母を
追いかける温人に母は自分の赤い手袋の片方だけを
差し出した。
『必ず取りに行くから。』と言って・・・。
それから20年経過したある日、星が丘の駅員になった温人に届いたのは
母が観覧車から飛び降りて自殺したという連絡だった。
キャスト
役名 | 演者 | |
瀬生 温人 | 中村 倫也 | 星が丘駅の駅員 |
瀬生 哲人 | 新井 浩文 | 温人の兄 |
清川 七海 | 佐々木 希 | キーホルダーを落としたと駅に現れる |
清川 雄哉 | 菅田 将暉 | 七海の弟 |
大林 津奈子 | 杏 | 温人の母の事件を担当する刑事 |
楠 仁吾 | 市原 隼人 | 清掃会社職員 |
清川 爽子 | 木村 佳乃 | 温人と哲人の母 |
瀬生 藤二 | 松重 豊 | 温人と哲人の父 |
以下ネタバレを含みます。
見視聴の方はご視聴後お待ちしております_(._.)_
【星が丘ワンダーランド】ネタバレ考察
母・爽子の事件は不可解なことばかり。
果たして自殺は本当なのか?
あの雪の日の出来事にはまだ決着がついていない。
疎遠になった兄弟のそれぞれの心情、新たな出会い、などから紐解く
心のミステリーをまとめました。
哲人と温人の母への想い
母のことが大嫌いだと言う兄・哲人は
爽子のことを『母さん』と呼びます。
それに対し、母が会いに来てくれるのを20年も待ちわびている温人は
爽子のことを『あの人』と呼ぶのです。
哲人が高所恐怖症の母抜きで乗った観覧車の上から見た景色は残酷なものでした。
母を見下ろす父の表情。
地上で見知らぬ男性とその娘と仲良く話す母の姿。
哲人は恐らく知ってしまいました。
あの雪の日、車内の喧嘩が無くても、父と母はどこか昔と違っていて
家族は別れる未来がくるということを。
去って行く母を追う弟と追わない兄
母は観覧車の上から見た見知らぬあの人たちと一緒に去ってしまう。
そう悟った哲人は、母が出ていくのを追うことはできませんでした。
残された父の気持ちを思って。
一方で幼い温人は残された父の気持ちは知る由もなく
ただただ置いて行かれたくない自分の思いが先行し、迷わず母を追います。
そして母は片方の手袋を預けてくれました。
母の好きな赤い色の大切なはずの手袋を。
大切な物を預ける相手。それは大事な人、信頼している人
また会える人・・・なはず…。
しかしながら大切な忘れ物を取りに来ない母の
自分への愛情に自信がもてなくなってしまった温人。
母親は我が子が大事なはず。我が子に会いたくてたまらないはず。
そんな自分の中の母親像が崩れ去った温人は
爽子を『お母さん』と呼べないのです。
【Cinema】
— NANO universe (@nanouniverse_jp) March 10, 2016
映画『星ガ丘ワンダーランド』松重豊&木村佳乃&新井浩文https://t.co/TWlo3oIXW0 pic.twitter.com/ICTkTn2RGF
母の事件の真相|犯人は誰?
母は観覧車から落下したと伝えられましたが
高所恐怖症の母が、わざわざ高いところから飛び降りる手段をとるはずが
ないと疑問を呈します。
さらに、爽子は哲人にお金を渡しにワンダーランドへ向かったのだという
七海の証言。
そんな状況を整理した温人は
疎遠になっている哲人への疑念がわいてしまいます。
犯人は存在しない
不可解な爽子の最期。
それは2人の幼い兄弟が紐解いてくれました。
観覧車の階段から落ちそうになった弟を助けようとして
爽子自らが落下してしまったというものでした。
そしてその際、その弟に向かって
『温人』と呼んだ爽子。
幼い頃、母の傍へ駆け寄る途中で階段から落ちて
ケガを負ってしまった温人と弟を重ねたのでしょう。
哲人の言葉『残された者の気持ちがわからない』の真意
物語はずっと温人の心情を中心に描かれます。
家族で行った楽しいはずのワンダーランド。
幼い温人が観覧車から見る景色は
幸せな家族が崩れ去る前兆のようだった。
そして帰り道、家族を置いて車を降りた母を追いかけるも
もう二度と会えなくなった母を思い続ける温人。不憫な温人・・・。
けれども哲人や父側から見た風景は違うものでした。
父はあの日、自分が設計したワンダーランドの観覧車を
爽子の好きな赤いイルミネーションで飾りました。
爽子が喜ぶ姿を想像して・・・。
しかしそのイルミネーションの『赤』にさえ
もう眼もくれることはなかった爽子。
観覧車からの無情な景色を一番悲痛な思いで見ていたのは
父です。
そしてそれに気づいた哲人でした。
車を降りた爽子、そして爽子を追った温人。
車内に残された父はそれでもなお
『見せたかった』
と呟くのです。
そんな父と兄の気持ちなど知る由もなく
知ろうともしなかった温人は
ただただ自分の母への想いだけを見ていました。
母が手袋を引き取りに来なかった理由
『赤い手袋』の片方を幼い温人へ預け、
『引き取りに行く』と約束したはずの母・爽子。
温人は、母・爽子の忘れ物を大切にするように
星が丘の駅員として駅を利用する人たちが忘れて行った落とし物を
大事に扱い、引き取りに来る人を想像しながら待っていました。
ですが爽子は結局忘れ物を引き取りには来ませんでした。
幼い兄弟を残し、自分の幸せのために前進した爽子。
新しい家族と新しい息子を手に入れた爽子は
残された兄弟の気持ちを理解することが出来ず、
ただただ後ろめたさを理由に温人に会いに来なかったのでしょう。
残された者の気持ちがわからない爽子
『赤い色が好き』な人の印象は
情熱的でパワフルという良い面がありながら
自分の意にそうことならば後先考えずに行動してしまう
というちょっとした難点も浮かびます。
劇中で『赤い色が好き』な爽子もまた
自分の気持ちを抑えられず突っ走ってしまった結果、以下のように
残された者の気持ちがわからない行動を取ってしまった感がありました。
- 夫との口論の末車を飛び出す際、
同乗していた幼い子供に声をかけることも
親権を争う素振りも見せず去って行った。 - 新しい家族の血の繋がらない七海と実子である雄哉。
七海と雄哉の喧嘩に爽子は雄哉の片を持ち七海をぶった。 - 元夫の最後にも会いに来なかった。
- 元夫の亡きあと
会社を継いだ哲人に精神面ではなく金銭的な援助を申し出る。 - 哲人に連絡を取った際も温人には連絡していない。
楠の存在とラストの電話の相手
清掃会社の職員でゴミの集積所に在中する楠仁吾と
落とし物保管所にて持ち主を待つ温人。
楠はゴミの中でクラッシックのCDを響かせ
温人は落とし物の持ち主を想像して似顔絵を描きます。
2人はどこか合わせ鏡のよう。
そんな二人は、
子供が絵を描いたビニール傘を忘れ、温人の元に探しに来た母親が
ビニール傘が駅のルールーにのっとって処分されたことに激怒したことをきっかけに
出会います。
激怒した母親にとって、そのビニール傘が大切な物だと悟った温人は
仁吾に頼み込みゴミの山から徹夜でビニール傘を探すのです。
温人と仁吾の喧嘩の理由
仁吾の協力のもと、ビニール傘を探し出した温人でしたが
その女性は新たに子供が絵を書いたビニール傘を手に入れたことから
落とした方の古いビニール傘の存在を邪険に扱い、
返却して間もなく捨ててしまうのです。
それを見た温人はまるで落としたボロボロの傘を自分のように
思ってしまいます。
新しい家庭を手に入れた爽子が自分に見向きもしなくなったように。
そんな事情は知らない仁吾に傘のことを聞かれ
温人は認めたくない事実に傷付き激高してしまったのでしょう。
そして指揮者になりたかったが今はゴミ集積所でクラッシックを響かせて満足気な
仁吾に自分を見た気がして、仁吾にも罵声を浴びせてしまったのではないでしょうか。
あの雪の日の幻影とはじめの一歩
あの雪の日から20年。
20年後の温人は駅での仕事をこなし
忘れ物の引き取りに喜びを見出し、一見
順風な毎日を送っているかのようでした。
しかしながらそんな温人の〖見た目〗は実は
砂上の楼閣であり、
あの雪の日の出来事にはまだ決着がついてはいませんでした。
そして取り繕った〖見た目〗はちょっとした衝撃で
崩れ落ちてしまいました。
その結果新しく出会った気の合う仁吾をも傷付けてしまいます。
一方で
新しい家庭を築き幸せだったはずの爽子は軽いうつ病を患っていました。
それは爽子が負った
2人の兄弟を失った傷は、例え新しい姉弟が傍にいても
癒えることはなかった・・・ということ。
そして爽子が最後に呼んだ名前は〖温人〗でした。
温人はあの雪の日のあの場所に向かい
『あの人』の幻影に呟きました。
『さよなら、母さん』
・・・と。
20年の時を経てようやく温人はあの雪の日の決着をつけ
始めの一歩を踏み出すことができたのです。
ラストの電話の相手は楠
仁吾は温人のもろく高い壁をぶち壊しました。
そのせいで一端は激しい口論になり
傷つけた楠との連絡は途絶えます。
でもラストの温人はもう残された者の気持ちがわからない弟ではありません。
あの日、罵声を浴びせて集積所に残していった楠がどんな思いをしたのか
今の温人ならば理解ができ、だからこそ素直に謝罪の電話を入れました。
まとめ
心で紐解くミステリー【星が丘ワンダーランド】。
温人の母親の事件は幼い子供を助けようとして起こった事故でした。
母が温人に預けた忘れ物は結局引き取りにくることはなく
温人を苦しめたあの雪の日の出来事。
しかし温人から母を奪ったあの日の少女もまた苦しみを抱えていました。
父や兄も苦しんでいました。
そして母は・・・温人を思ってくれていた。
全ての真実を思い出した温人はやっと前に進むことができました。
赤く彩られた観覧車を最愛の人には見せられなかったけれど町の多くの人が感銘を受けているシーンが印象的でした。
※本記事は2023年4月時点のものです。
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