コロナ禍の不安や閉塞感が漂う東京を舞台に、
息子への歪んだ愛情に苦しむ母と、
母親の愛情に飢えた孤独な少年を描いた
『親密な他人』
主演は『冷たい熱帯魚』で観客を震わせた
黒沢あすか。
孤独な青年役を神尾楓珠が演じています。
そんな物語は衝撃展開を迎え、ラストに何が起こるのか?
そしてあの段ボールの中身は何だったのか?
ネタバレ解説、考察しています。
『親密な他人』あらすじ
【本日4.4(月) オンエア情報】
— 映画『親密な他人』公式 / Intimate Stranger official (@IntimateStrang) April 4, 2022
📺フジテレビ
9:50-「ノンストップ」#行きつけ教えます!#神尾風珠 さん 生出演(10:20頃-予定)
📻#かわさきFM
13:00-「シネマストリート」@CinemaStreet_ #中村真夕監督 生出演(13:30頃予定)#黒沢あすか さん電話出演予定📞 https://t.co/E3ZXBd7i1S
シングルマザーの石川恵はベビー服店に勤務しながら、
突然消えてしまった最愛の息子・心平の帰りをずっと待っている。
そんなある日、恵が作った心平のサイトを見た青年から
息子の件で話したいことがあるので会いませんか?
という連絡が入る。
待ち合わせ場所へ行くと、そこへ息子の情報を握る謎の若者・井上雄二が現れた。
雄二は心平の所持品を恵に渡す。
なぜこの若者が息子のものを持っているのか?
疑問に思いながらも恵は藁にも縋る思いでまた会う約束をする。
そうして雄二を自宅に招いた恵は、
漫画喫茶で寝泊まりをしているという彼を
同居させることにした・・・。
キャスト
黒沢あすか、神尾楓珠、上村侑、尚玄、佐野史郎、丘みつこ 他
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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年8月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。
神尾楓珠に迫る衝撃展開のラスト
心平の部屋で暮らすことになった雄二と恵は、
疑似親子のようになっていきました。
しかし雄二は元々詐欺の受け子として恵に近づいたのです。
早く成果をださないと心平のようになる・・・と上役に脅されて
恵の所持品を物色するも、何も得られませんでした。
実母に捨てられた雄二
そんな雄二のことを警察が追っていました。
恵は刑事に雄二や心平のことを聞かれますが、
いずれも知らないと答えます。
そして恵は雄二に告白します。
最初から雄二が騙そうとしていたことはわかっていた
・・・と。
心平も詐欺の受け子をしていたと言います。
だから雄二と心平は同じなのだと・・・。
雄二は幼い頃に実の母親に捨てられた光景が
消えない傷として心に刻まれ苦しんでいました。
しかしそんな雄二を恵は詐欺の受け子と理解した上で
庇い、一緒に生活しようと言ってくれます。
そんな恵に雄二は時には母のように、時には一人の女性のような
感情を抱いてしまうのでした。
一方の恵も、心平の代わりになった雄二に息子のように
愛情を注いでいく・・・という歪んだ関係は
聞いてはならなかった秘密の暴露へ向かっていきます。
恵の秘密
ある夜、取り乱した雄二は恵を押し倒します。
すると恵は雄二に首を締めて欲しいと哀願するのです。
恵には雄二の前に、「他の子たち」の存在があったのです。
心平も、その他の子たちも恵の実の息子ではありませんでした。
恵は自分を騙そうと近づいてくる詐欺師を騙されたふりをして迎えて、
息子のように愛情を注いできたのです。
恵の本当の息子は三か月という短い人生で亡くなりました。
ひどく泣いた後、突然息をしなくなったといいます。
雄二が詐欺の受け子であるという秘密、
心平が恵の息子ではなかったという秘密は
露呈し、母性の行き場を失くした恵と、
母親の愛情を欲する雄二は、お互いの足りないものを補うべく、
疑似の母と息子として新たな生活へと向かうことになりました。
決して開けてはならないもの
心機一転、引っ越しをすることにした恵と雄二。
恵は管理人さんに雄二を息子だと紹介します。
すると雄二に「お母さんを大切にしなさい」
と言う管理人。
2人は引っ越し準備を進めていました。
その時、恵が買い物へ行くと出て行きます。
一人部屋に残された雄二は、恵から禁じられていた
押し入れの中を探ってしまいます。
そこは哺乳瓶や沢山の消臭剤に囲まれていました。
その中にあった一つの段ボール箱を取り出す雄二。
段ボールの中身を見てしまいます。
その時、お財布を忘れたという恵が帰ってきました。
恵は雄二に
勝手に開けちゃダメって言ったのに・・・。
と悲痛な声で言いました。
パソコンに向かう恵。
行方不明になった井上雄二を探す掲示板が
作成されていました。
その時、電話の着信音が鳴り響きます。
「オレ、オレ、母さん?・・・・・・・・」
という若者の声を聞きながら幸せそうな表情で
うなずく恵でした。
段ボールの中身は何か?
新たな生活を前に、傷を癒し合う疑似親子の
明るい日々が見えそうになった時、
一つの段ボールによってその未来は消滅してしまいました。
そんな威力を持つ、段ボールの中身とは何だったのでしょうか?
沢山の消臭剤と共に映る哺乳瓶、箱の大きさから、
その中には実の息子の亡骸だったと推察しています。
雄二の思いとは裏腹に
そしてその中身を見てしまった雄二は心平と同じ末路を辿ってしまいます。
しかし実際の息子はわずか三か月で亡くなった事実は
すでに雄二に露呈しており、箱を開けた雄二自体にそれほど
大きなショックもみられませんでした。
一旦帰宅した恵の気配を感じても隠すこともうろたえることも
しなかった恵は、実はその中身を見ても『狂気』を感じなかった
希少な人物だったのではないでしょうか。
短い人生をとじることになった息子を
何年経っても傍で見守り続けている愛情深い母だと、
母の愛情に飢えている雄二ならばあるいはそう思ったのかも
しれません。
雄二は虚像の道具にすぎない
しかしそれは恵にとっては禁忌でした。
なぜならば本当の息子は今でも三か月で亡くなった赤ちゃん以外
あり得ないからです。
心平や雄二を息子のように扱っている最中にも
働く店でベビー服を盗んでほおずりをしたり、
他人の赤ちゃんにも興味が隠せない行動がありました。
それは恵が自分の息子が生きているという虚像の中に生きている
からなのではないでしょうか。
段ボールの中身を見てしまうということは
その虚像から恵を引きずり出すことと同意だったのでしょう。
いわば、心平や雄二は世間に向けた偽物の息子。
本当の息子が生きていることを証明する道具にすぎなかった
のかもしれません。
『親密な他人』感想
母親の愛情を知らない雄二は
恵の母性を大きな愛情だと認識して、息子として生きていく決意を
していたのでしょう。
少しの幸せも感じながら。
しかしその幸せはラストシーンで崩壊してしまいました。
雄二にとっては恵は傷を補い合える相手であり、母親への愛情を持てる
相手だったのかもしれません。
しかし恵にとっては本当の愛情を注げるのは実の息子だけだった
ということです。
雄二の愛情と恵の狂気が合い交えることはありませんでした。
ところで雄二が心平の祖母を騙した後、わざわざ引き返してまで
渡していた青い羽が印象的でした。
目の前のターゲットを騙し、お金を奪うという行為に対する
罪悪感はあって、せめて幸せを運ぶ青い羽を置いてくることで
少しでもその罪が軽くなることを期待していたのでしょうか。
一方でマンションの管理人さん?大家さん?役で出演された
佐野史郎さんも意味ありげでしたね。
もしかしたら佐野さんは何かを察知していたのではないかと思っています。
意味深に『お母さんを大事にね』という言葉も、
出て行こうとした心平の末路を見ていての忠告だったのではないか
という深読みもしてしまいます。
キッチンに洗濯機があったり、その洗濯機の上に食器を置いたり、
という描写が自分の生活は二の次のような不思議な空間で、
まるで恵の狂気の演出のようでした。
大切な人の消失は自分を壊し、自分さえも騙してしまうという
痛みをつきつけられた悲しい一作でした。