【ネタバレ感想・考察】映画『悪魔を見た』の異なる結末が示唆する意味を深掘り

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2010年に制作されたイ・ビョンホン主演の韓国映画
【悪魔を見た】

その評判は『閲覧注意』を促すものばかり。
それでビビった筆者は鑑賞をためらっていました。

ところが最近、立て続けにイ・ビョンホンの作品を見た関係で
あの甘いマスクに油断して手を出してしまった本作。

結果は・・・やはり鑑賞には注意が必要です!

最大の衝撃はその結末の残酷さにあります。
しかし本作には別のエンディングも存在したというのです。

そこで本記事では

・通常エンディングの解説
・別エンディングが示唆する意味

に着目して解説、推察しています。

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【悪魔を見た】あらすじ

国家情報院の捜査官であるキム・スヒョン
ある夜、婚約者のジュヨンと電話で会話を交わしていた。

ジュヨンは雪道の中で車のタイヤがパンクし
立ち往生しているというのだ。

レスキューは手配済みだがまだ来てはいなかった。

待機していたところ、偶然通りかかった車の男性が
タイヤを見てあげようと声をかけてくる。

レスキューが来るので大丈夫だと断るジュヨンだったが
引き下がろうとしないのだ。

その男の行動は異様だとしたスヒョンは
車のドアに施錠をし開けずにレスキューを待て
とジュヨンに助言し、仕事へと戻った。

しかし、その後、スヒョンが目撃したのは
ジュヨンのあまりにも無残な姿だった・・・。

キャスト
イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナ、チョン・グファン、
チョン・ホジン、キム・ユンソ 

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以下、ネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2024年7月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

【悪魔を見た】のエンディング解説

ジュヨンの父が元重大犯罪を扱う刑事であることから
容疑者の情報を得て、自身の後輩からはGPSカプセルを
受け取り、犯人に辿り着いたスヒョン。

しかしこの連続殺人鬼ギョンチョルはジュヨンの事件以降も悪事を
繰り返す、良心の欠片もない男だったのです。

殺された当初、ジュヨンのお腹には新たな命も芽生えていました。
ジュヨンは殺される間際にギョンチョルに願っていたのです。
妊娠しているから命を助けて欲しい、と。

その悲痛な言葉さえも笑いの種にする悪魔のような人間。

スヒョンはその悪魔にジュヨンが課せられた恐怖や苦しみの何倍もの傷みを与え、
その絶頂で抹殺したかった
のです。

そのために、一度で抹殺するのではなく、
痛めつけては解放することを繰り返すと共に、
徐々に残酷さをエスカレートさせることを画策していました。

一方でスヒョンの目的を知ったギョンチョルは追跡を断絶するべく
最後にジュヨンの父と妹を襲ってから自首しようとしました。


スヒョンはギョンチョルの自首を阻止して拉致し、ジュヨンが殺された
場所へと連れて行きます。

その後に及んでもその悪魔は悔い、懺悔をするどころか
全く恐怖や傷みを感じることはない
と言い放ちます。

ギョンチョルを甘く見ていたこと、
復讐をするどころか更なる犠牲を増やしてしまったことで
スヒョンは今までの行いが、それ自体をも楽しむギョンチョルにとって
無駄だったことを痛感します。

そして
悪魔と対峙するために自身も悪魔になることを決意します。

悪魔の所業

犯人の独自捜査をする上で保険会社を装いギョンチョルの家族
会いに行っていたスヒョン。

そこで見たものは息子のことを『ろくでもないヤツ』だと罵倒し、
それより保険金は貰えるのか?と問う父親。

そして息子の悪いところは見て見ぬふりをして
庇うだけの母親は、保険金の話になった途端に
目を輝かせてしまう。

そんな両親に納得してしまった感のあるスヒョン。

彼は最後の、そして悪魔の手段として、
家族の手で、ギョンチョルの命を奪う計画にでます。

ギョンチョルを拘束して、繋いだギロチンと扉、
そのロープをくわえるギョンチョル。

そこへ現れるギョンチョルの両親と息子。

父親が扉を開けようとする。
開けたらギョンチョルの命が絶えるのを知らずに。

ロープを加えた口で懸命に『開けるな』と叫ぶギョンチョル。

人の命を簡単に奪ってきた悪魔は
やはり人間だったようです。

しかし無情にも良かれと思って扉は開かれる。

家族の悲鳴・・・

現場に置いて来た盗聴器から
一部始終を認識したスヒョンは嗚咽する。

復讐は成し遂げられたのに・・・。


こんなにも残酷なことを成し遂げても愛する人が
戻って来ない現実
に絶望しての涙なのか?

自身も犯人と同等の悪魔と化してしまったことになのか?

それとも、もう何も残っていないことを痛感してしまったから・・・
なのか?

恋人を失い生きる糧にしていた復讐も終わりを告げスヒョンの
複雑な感情があふれ出した幕引きでした。

しかし、この物語には本編では『上手く意図が伝わらないかもしれない』
と危惧されカットされた
その後を描いた別エンディングの存在がありました。

以下、別エンディングのネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。

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別エンディングの意味とは

従来のエンディングは
復讐を成し遂げ絶望の景色を見たスヒョンが
悪魔から人間に戻った涙だと解釈しました。

しかし、別エンディングでは、そんなスヒョンのその後が
描かれます。

復讐は続く・・・のか⁈

復讐を成し遂げたスヒョンに対し、
国外待機を命じる国家情報局。

そのため空港で飛行機を待つスヒョンでしたが、
なかなか飛行機に乗り込むことが出来ずにいました。

そんな時、空港を後にするべくエスカレーターに乗る女性の後を
付け狙う男性
の存在を目撃します。

その男を見つめるスヒョン。
その男の姿が見えなくなると、少しの間、葛藤した後、
立ち上がったスヒョンはエスカレーターの方へ・・・。

という別エンディングのラストでした。


シンプルに考えれば、
飛行機に乗り込めば、やり直す道もあったかもしれないスヒョンは
絶望感を拭うことが出来ずに、
まだ復讐の延長戦を彷徨うことになる・・・
ということでしょうか。

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【悪魔を見た】感想

個人的には『復讐劇』を描いたら韓国映画やドラマの右にでるものは
ない・・・と思っておりましたが、
まさかここまでとはな・・・な一作です。


復讐のキャッチ&リリースと聞くと
日本のあるドラマを思い出すのは筆者だけでしょうか。

あの時にもそのような復讐のかたちには衝撃を受けましたが
着地点が全く異なり、息子にも心の傷を負わせるという点では、
より悪魔的な復讐者を見た気がしてゾッとしました。

もっとも、ギョンチョルを死んでもなお苦しめる
ことを実現する手立てとしてはこれ以上の残酷な仕打ちは
ないといえるでしょう。

ギョンチョルは一瞬でもそれを目撃した息子の将来を
危惧し自分の行いを悔いたのでしょうか?

生きたいという欲望は持っているギョンチョルは
奇しくも最も警戒しない存在である
家族にその命を奪われようとしている
その苦しみや恐怖は味わったのでしょうか?

さて、2つのエンディングについてですが、
本編のエンディングは、ジュヨンの妹が危惧したように
復讐は復讐を生むだけだった
という結論に達し、スヒョンの虚しさや苦しみがむしろ
倍増した結果になりました。

しかし別エンディングもまた、
再び、女性を餌食にする悪魔に対する復讐を続ける構図と
見ることもでき、一度悪魔と化してしまったスヒョンが
もう戻れないことを示唆したのだと感じました。

一方で、監督がこのエンディングをカットしたのは
〖うまく意図が伝わらないかもしれない〗ことを危惧した
ことを考慮すれば、
もしかしたら、その男を追って行ったのは復讐ではなく
逮捕するためだったという
捜査官としての人生を少しずつ取り戻して行く
という光の入口なのかもしれません。

人の命はあっけないし、取返しがつかない。
だからこそ許されないことを知りつつも
奪われた者は復讐や悪魔になることさえ厭わない。

そんな気持ちは理解できるだけに
辛く重い一作です。

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