1960年アラン・ドロンが主演を務めた映画『太陽がいっぱい』
といえば有名な作品ですが、
マット・デイモンによる『リプリー』は
同じ原作を元に映画化された作品になっています。
1999年の作品であるがゆえに、今視聴してみると
若き日のスターたちの競演によるサスペンス・スリラーは
見応えがありますね。
この記事ではそんな『リプリー』について
・トムの犯行の動機
・衝撃の結末
・ディッキーの謎
などの気になることを『太陽がいっぱい』にも言及しながら推察しています。
あらすじ
来週25日(月)#テレビ東京 #午後のロードショー は
— 午後のロードショー (@tx_gogoro) April 22, 2022
『#リプリー』(99年/米)
主演 #マット・デイモン
名作「太陽がいっぱい」をリメイク🎬
アメリカ人の富豪から放浪息子を連れ戻してほしいと頼まれた男👨
その息子を殺し、入れ替わろうとするが…⚠
青春の光と闇を描くサスペンス
午後1時40分🎥 pic.twitter.com/oOdRKvU8Hz
劇場でボーイとして働く貧しく孤独なトム・リプリーは
ある日、パーティー会場に借り物のプリンストン大学のジャケットを
はおり、ピアノ奏者の代役として出席する。
同じくパーティーに出席していた資産家のグリーンリーフは
トムのジャケットが息子の通う大学のものだと気づき、
声をかけてくる。
咄嗟にグリーンリーフの息子とは友達だと嘘をついたトムに
グリーンリーフはイタリアで遊び惚けている息子を連れ戻して
欲しいと依頼する。
この依頼を引き受けたトムは息子のディッキーがジャズを好んで聞く
ことを知ると、自らもジャズについて学び、イタリアへと飛び立った。
ディッキーにも同級生だと嘘をついたトムは
彼と彼の恋人マージとの交流に成功する。
ディッキーもまた、最初こそ煙たがっていたものの、
トムとはジャズの好みが合うこともあり、
つるむようになる。
依頼はディッキーを連れ戻すことであったが、
トムはディッキーとの優雅な生活に憧れ、
性格に難はあるものの華やかなディッキーという人となりに
魅了されていくのだった・・・。
キャスト
マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、
ケイト・ブランシェット、ジャック・ダヴェンポート 他
『リプリー』を視聴するには
U-NEXTで見放題配信中です。『太陽がいっぱい』も配信中なので見比べちゃうこともできますね! Huluでも見放題配信中です!マット・デイモン主演の『ボーン』シリーズも堪能してはいかがでしょうか!以下、『リプリー』『太陽がいっぱい』のネタバレを含みます。
未視聴の方はご視聴後のご来訪をお待ちしています。
本記事の情報は2024年5月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。
トムがディッキーを殺す理由
ディッキーに憧れ以上の気持ちを描き、恋焦がれていたといえる
トムがディッキーの命を奪ってしまうという背景には何があるのでしょうか。
この部分は『太陽がいっぱい』と『リプリー』では
少しニュアンスが異なるのです。
計画的か衝動的か
トムがディッキーの命を奪ってしまう動機ですが、
『太陽がいっぱい』においては、フィリップ(ディッキー)は
トムをあからさまに見下しており、小間使いのような扱いをします。
自分が邪険に扱われているのを認識しながら
お金をもっていないトムはそれに従うしかなかったことで
妬みや怒りの感情が積もっていきます。
それはやがてフィリップの財産や暮しが欲しいという、
フィリップ自体に成り代わりたい欲望に変わっていきます。
そうしてフィリップの殺害はとても冷静に計画的に練っている
そんな印象を受けるのではないでしょうか。
『太陽がいっぱい』においてトムが愛したのは『富』です。
一方で原作に忠実になっているとされる『リプリー』の方では、
トムはディッキーとの生活を大切にしたかったというのが
一番の希望でした。
トムがイタリアに残り、共に生活することを望んでいたのです。
しかしディッキーはマージとの結婚を望みました。
他の女性との浮気や懐妊をさせたりと
マージに誠実ではない行動の裏で
自分ではなくあまり大切にしているとはいえない女性との
結婚を決めるディッキーに対し憤りを隠せませんでした。
トムは自分とディッキーの間に友人以上の特別な何かが存在すると
信じていました。
『自分に正直になれ。君は一体何がしたいんだ』
と忠告します。
しかしその忠告は結果的にディッキーの感情を逆なでし、
トムは屈辱的な暴言を吐かれたあと、
あらわになったディッキーの暴力的な一面と対峙することになります。
トムの本意ではない状況下になり2人はもみ合いになります。
そしてトムは衝動的にディッキーを殺めてしまいます。
ディッキーの息が途絶えた後も彼に寄り添うなど、
トムが心からディッキーに愛情を抱いていたことを印象づけました。
衝撃の結末とは
『太陽がいっぱい』には
メレディスもピーターも存在しないことが
『リプリー』と違う点のひとつです。
『リプリー』にはこの2人のキャラがトムを追いつめる
重要な役割になったのではないでしょうか。
トムは逮捕される?
『太陽がいっぱい』では、マージュとの恋を成就させ、
目的の金銭的にも安泰かのように思われたトムでしたが
ラストで海の底へ沈めたはずが実は船に絡みついていた
ディッキーの亡骸が発見されてしまうのです。
劇中ではトムは太陽が溢れ、広大で綺麗な海が広がる光景
を堪能しながら幕を閉じるのですが、
その向こうには警察が待機しているので、
この後トムは逮捕される・・・ということが示唆されています。
ところが『リプリー』ではディッキーを殺めたのはトムである
と確信するマージとは裏腹に
父親のグリーンリーフがトムのシナリオを信じ切ってしまい、
トムは逮捕されません。
罪を逃れたばかりかディッキーへの仕送りも手に入れることに
成功します。
こうして全てがうまくいったうえに、
新たな恋人のピーターと共に船旅へ出ました。
しかしその道中で、
トムがディッキーとして出会い交際していた
メレディスと再会してしまうのです。
トムをディッキーだと信じているメレディスと
トムとして出会ったピーターは知人でもあり、
2人が出食わせば今までの完全犯罪は水の泡になってしまいます。
ひとまずピーターとの船室へ籠ることにしたトムでしたが
ピーターは先般で仲睦まじい様子のトムとメレディスの姿を
目撃していました。
完璧にやり過ごした計画がほつれていくのを予見した
トムはピーターをも殺めてしまうのでした・・・。
ディッキーの謎に迫る
一見、華やかで男前で傲慢な性格の資産家の息子。
そんな彼の本当の顔に迫ります。
アメリカに帰国しない理由
トムが罪を逃れた理由には、
ディッキーの過去が大きく影響しています。
ディッキーはアメリカに居た当時、
女性がらみでの暴力事件を起こしていたのです。
ディッキーと争った相手の男性は大けがを負い、
その事件から逃げるように海外へ飛び立ちました。
ディッキーはこの事件のことを作中誰にも話す描写はなく、
〖秘密〗というワードが出てきても動揺する様子もなく、
果たしてこの事件に対する感情はどんなものだったのかを
知る由はありません。
しかしながら、アメリカへ帰りたがらなかった理由の一つには
この事件を思い出したくないから。
すなわち
起こったことを悔やんだり、罪の意識すらもつことが怖い
というように人を傷つけたディッキーもまた深い痛手を負い、
それと向き合うことが難しいのではないでしょうか。
事件を起こした時、彼の父親はディッキーに責任を取らせず、
隠蔽して逃がしました。
償う機会を奪われたディッキーに
立ち直る術は見つからないのかもしれません。
『親も子を選ぶことはできない』
アメリカで女性関係という理由で傷害事件を起こした息子に対し
グリーンリーフは失望していました。
事件を隠蔽し、ヨーロッパへ旅立たせたのは
〖グリーンリーフ〗の名に傷をつけないためです。
そんな父親は何処の誰かも把握していない男性を
〖同じ大学に通っている〗からという理由だけで
息子の元へと向かわせます。
このことからも自分の息子に対し、それほど重要視していないことが
垣間見れます。
息子が行方不明である状況で
〖親も子を選ぶことはできない〗
という本音を露呈します。
そしてその心情が顕著に表れるのは、
トムが隠し持っていたリングを持って来た恋人のマージの言葉ではなく
過去の事件の先入観にとらわれ、今回も同じ過ちを犯したのだろう
という思い込みをしてしまうことです。
自分のことを父親はどう思っているのか
をディッキーは理解していました。
自分をどうしようもない犯罪者でグリーンリーフの恥
だと思ってやまない父親のいるアメリカに
帰国できなかったのでしょう。
ディッキーの本当の顔
トムが思う、ディッキーとの間には何か特別なものがあった。
という言葉はディッキーによって否定されていました。
トムの感じた特別なもの
それは全くの勘違いだったのでしょうか。
筆者は実はディッキーは同性にも愛情を持てる人物なのではないか
と思います。
マージがトムを慰めるために言っていた
男友達をとっかえひっかえする。
飽きると他へ行く・・・という表現や、男友達の中に
ピーターが居たこと。
アメリカでの事件も元々は男友達の恋人を巡って起きたこと。
イタリアの浮気相手も男友達の婚約者だったということ。
これらは偶然なのでしょうか。
本当はその男友達の方に好意があった可能性もゼロではない
と推察しています。
ディッキーの本当の嗜好をマージが怪しみ、
本人もまた葛藤している最中だったのではないでしょうか。
しかし、恐らくそのことを好まない厳格な父親を持つが故に
真実を露呈することは何としても避けたい
そう思っていたのでは?と思うのです。
しかしそんな痛いところをトムは突いてしまう。
だからトムは離れなければならない相手だったのではないでしょうか。
まとめと感想
本作のジュード・ロウのような美貌を持ち、
資産家の息子で華やかな生活、(一見)悩みもなさそう。
そんな人物が近くにいたら羨ましいと思ってしまいますよね!
しかしながら嘘から始まったトムの幸せが成就することは
ありませんでした。
憧れのディッキーに成り代わることに成功し、
富も得て、恋人も出来ました。
孤独で貧しい少年のサクセスストーリーのようですが、
全て嘘から成り立って手に入ったものは
その嘘が露呈してしまえば待っているのは破滅のみです。
誰にも言えない破滅の秘密を抱えて生きるトムは
結局は孤独な青年のままなのかもしれません。
トムが逮捕される『太陽がいっぱい』と
完全犯罪を成功させる『リプリー』
何故だか『リプリー』の方が悲しさを誘うのは
本作では愛する人を2人も手に懸けてしまうからなのかも
しれません。
そんなトムのその後を解く続きの物語があるのだそうです。
こちらも見逃せない一作です。
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