映画【虐待の証明】母親からの虐待 ペク・サンアの過去と結末をネタバレ考察

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産まれてくる子が両親を選ぶことはできない。
もしも、その家が暴力の巣窟だったら・・・
その子にとってそこは地獄だ。

いくつかの実話を元に制作されたという2018年の韓国映画
【虐待の証明】
はNetflixほかにて配信中です。(2024年5月現在)

本作は〖虐待〗という卑劣な暴力に苦しむ女性と女児の物語です。

虐待は何故行われ、傷を負った少女の未来は
どうなるのか?

この記事では

・サンアの母親の真意
・ペク・サンアの結末

に着目して解説、推察しています。

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【虐待の証明】あらすじ

アパートの一室でその部屋の住人と思われる女性が
孤独死しているのが発見された。

死後1年以上が経過していた。
現場検証に訪れた刑事のチャン・ソプは、その後、
極寒の中、洗車場で働くペク・サンアの元を訪れる。

サンアと食事をするチャンはいつもと様子がおかしいことを
指摘され、孤独死していた女性の件を切り出す。

その女性はサンアの母親だったのだ。

しかしサンアは悲しむどころか、
〖どんな最後を遂げたのか見たかった〗と言うと
適当にあしらうように弔いもせず、足早にその場を去って行く。

実はサンアは母親によって虐待を受けただけではなく、
母親はサンアを捨てたのだった。

幼いサンアは父を亡くしており、母親にも見捨てられ施設で
辛い生活を送ることになります。

実の母親を亡くしたにも関わらずそこまでドライな態度を
とれるサンアを不憫に思ったチャンはサンアの母親のことを
調査するのだった・・・。

キャスト
ハン・ジミン、キム・シア、イ・ヒジュン、クォン・ソヒョン、ペク・スジャン 他

以下、作品の結末までのネタバレを含みます
未視聴の方はご注意くださいませ。

本記事の情報は2024年5月時点のものです。
最新の配信状況などは各サイトにてご確認くださいませ。

ペク・サンアの過去

チャン・ソプとサンアの出会いは一件の傷害事件でした。
サンアは婦女暴行事件の被害にあった際に、
相手の男性にケガを負わせてしまいます。

男性からの暴行に抵抗したにすぎないサンアの行動
でしたが、身寄りのないサンアに対して、相手の男性の
父親が権力者であったことから、
サンアは逆に傷害事件の容疑者として逮捕されてしまうのです。

その事件を担当し、サンアの正当防衛を立証できず、
不本意ながらサンアを逮捕した刑事がチャンでした。

こうしてサンアには前科がつきまといます。
仕事を選ぶことも出来ず、自分の幸せにも消極的に。

子ども時代には虐待や孤独から救って貰えることはなく、
大人になっても権力の前に尊厳でさえ踏みにじられるという
生きているその世界がいかに残酷なのかを
思い知らされるはめに・・・。

物語はサンアの母親が亡くなったところから始まりますが、
サンアとの関係が冷めきっていることが気にかかり
チャンが母親のことを調査していくと、意外な真実が浮かび上がります。

母親はこの傷害事件の本来の加害者である男性を
轢き殺した罪で逮捕された
過去が明らかになったのです。

母親と虐待の関係とは

サンアの母親は夫を失くし、酒におぼれる日々を送っていました。
失意の中で、心の余裕がない母親は
苦しみの矛先を娘へと向けてしまうのです。

しかし、その一方で、サンアに
〖私から逃げなさい〗
と警告しています。

母親もまた自分では制御できずに虐待を犯すことに苦しみ、
苦肉の手段が娘から離れるということだったのでしょう。

その後、母親はサンアに言われなき罪をかぶせて
前科者にした男性に復讐をします。

その件をサンア自身は認識しているのか、
劇中では語られなかったと思います。

しかしながら娘に虐待を行う裏では
深い愛情
も持ち合わせていました。

母親は自分が罪に問われたとしても
抑えられない怒りと憎悪を、娘を傷つけた相手に向けました。

その方法は間違っているのですが、
そんな行動はやはり母親だからできるのではないかと
思うのです。

虐待の理由は自分が制御できなかったからであり、
捨てた理由は娘を守るため

気持ちの奥底ではちゃんと、娘に愛情を持っていた
という真実がそこにはありました。

ジウンとの出会い

妻にも母親にもなる気がないと言うサンアに対して
プロポーズをしてくるチャンと口論になったサンアは
家を飛び出すと、うずくまっている少女と出会います。

ジウンと名乗るその少女の怯えた姿から
虐待を受けている・・・とサンアが感じとるのは
容易でした。

なぜならばかつての自分と良く似ていたから。

いちばんの難関は証明すること

父親とその恋人から虐待を受けるジウンを
何とか助けたいと思い警察に訴えるも、
父親もミギョンもジウンの身体の傷を誤魔化してしまいます。

そしてジウンもまた父親とミギョンの顔色を伺い、
〖自分で転んだ〗
という嘘をつくのです。

家庭の中で起こる虐待を第三者が救済する難しさ
まさにここにあると言えるでしょう。

小さな子どもが親に逆らい真実を言えないのは、
その後、もし家に戻されたら何が起こるかを
想像すれば、ごく自然なことです。

そして子ども自身が助けを欲しない以上、
第三者もまた手が出せないという悪循環になります。

もう一人の被害者

チャンによって、ジウンの父親とミギョンは虐待の罪で
逮捕されました。

取り調べでは、ジウンの父親が自分も虐待を受けていたこと
を暴露し、助けてくれなかったくせに何故自分ばかり責められるのか?
(自分も被害者だったのに)
という心の叫びが発せられます。

ジウンの父親も子ども時代は被害者だったのです。

虐待を受けて育った子どもは将来大人になると
自らもが虐待の加害者になってしまう例は
少なくないといいます。

被害者であるうちに救ってあげられたら
負の連鎖も止めることができたのでしょうか。

ペク・サンアの結末と未来

ジウンの父親に警察の手が迫り、自らも追われる身となった
ことを悟ったミギョンはジウンを抹殺しようとします。

チャンの姉のところで匿っていたジウンを連れ去り、
その頭上に瓶を振り上げ、監視カメラを気にして一瞬
止まったところに、サンアが殴りかかります。

ジウンを車内に避難させると、サンアは
ミギョンと対峙します。

2人はもみ合いになって、ミギョンは石に頭部をぶつけて
意識を失いました。
するととどめをさそうとしたサンアを
チャンがやって来て阻止します。

数日だけでもジウンの母親になってやれと言って、
サンアとジウンを逃がしました・・・。

1年の時が経過し、ジウンの父親とミギョンはそれぞれ
罪が確定
しました。

ジウンはチャンの家に引き取られ、
小学校へ通って健全な日々を過ごしていました。

ジウンが下校しようと、学校の門をでると、
喫煙禁止のその場所でタバコを吸い、
注意をされている女性が・・・。

ジウンが近寄っていくと振り返ったのはサンアでした。
そこにはほほ笑みあう2人の姿がありました・・・。

サンアは消えていた?

チャンの計らいで、数日間、母親と娘のように過ごした
サンアとジウン。

しかし、その一年後にはサンアの姿だけありませんでした。
サンアは何故消えたのでしょうか。

実父やミギョンから逃れても、
前科があるサンアが里親になれる可能性は低い
と示唆されていました。

またサンアも母親や妻といった存在に身をおくことには
消極的
でした。

しかしジウンと過ごした日々は
サンアに変化を与えたのかもしれません。

そしてサンアは虐待の記憶に苦しむ日々と
母親との決着をつけることに時間を要し、
1人になったのではないでしょうか。

自分の虐待の過去、母との確執、母が自分を思ってしたこと、
その全てと向き合い、今は亡き母が眠る場所へ
行きたいと望んで行けるまで、
自分がジウンの母親になることはしない。

そう決意していったんジウンとは離れて
1人で過去と向き合ったのだと思うのです。

虐待という記憶、苦悩、それに付随して起こる負の出来事を
完全に避けることは難しい。

しかしながら
ジウンの前に笑顔で現れたサンアは少なくとも
自分を不幸のままでいることをやめ、
前に進もうとしているのだと思います。

〖虐待の証明〗感想

母親になるためには妊娠、出産という困難を乗り越えなければ
いけないし、小さな命を誕生させるのは、それだけで奇跡。

どういった事情がそんな我が子を苦しめるに至るのか
理解はできませんが、見ているのも辛い本作が、
その内容は実話が元になっているというのです。

劇中で小さなジウンは、自分が生まれてきたことを謝罪していました。
そんな風にして被害者の子たちは自己肯定感をなくしていくのですね。

そして自分も虐待を受けているのに、サンアの過去の虐待の傷を見ると
サンアのことを気遣います。

ジウンが負っている痛みが想像を絶するほど深いことが
わかります。

ジウンの父親は虐待に1人で耐えた結果、
自身も加害者となってしまったという現実、
自分の娘などろくな人生を送れないという疑念が
残酷です。

それでもジウンやサンアはこの残酷な世界を
一緒に生き抜く相手を見つけたことで
負の連鎖は止まるのだというエンドを迎えます。

どうか、こんな不幸は起こらないで欲しい。

一個人がせめてできるのは、
こんな恐ろしいことが起こっているという現実を
知るということ。
それが、改善の第一歩なのかもしれません。

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