【ネタバレ考察】映画『ロストケア』ラストシーンの意味をどう解釈する?その救いに答えはない

邦画
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松山ケンイチ×長澤まさみ主演の映画
【ロストケア】
は介護の現場をテーマとする社会派ミステリー。

誰もが関係者になりえる物語だけに、
重く、興味深い作品です。

『ロストケア』を救いだとして正義を語る
42人もの命を奪った介護殺人犯と、
どんな理由があろうとも人の命を奪うことなど許されないとして
罪を追い求める検事。

2人が対峙するラストはどう解釈すのか?
ネタバレ解説、考察しています。

この記事のポイント
『ロストケア』の意味
ラストシーンの解釈

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『ロストケア』あらすじ

検事の大友秀美はある日、孤独死して2週間の後に発見された
ある人物の現場に向かいます。

そこは荒れ果てて、異臭や虫も沸く壮絶な現場でした。

大友の母は看護の手厚い老人ホームに入居しており、
1ヵ月ぶりに手土産を持って会いに来た娘に
同じ話を何度も繰り返すなど、
認知症を患っているようでした。

一方、ケアセンター八賀で働く斯波宗典は訪問看護に従事し、
高齢者にも、その家族にも親切な温かい人物でした。

その姿は高齢者からも、その家族からも
そして同僚にも厚い信頼を得るとともに慕われていました。

そんなある日、斯波の勤め先である介護センターの
センター長の遺体が介護者の自宅で発見されます。

そこに住む高齢者も亡くなっており、
センター長は殺人と窃盗の容疑で被疑者死亡のまま
捜査が開始されることになり・・・。

キャスト
松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、
峯村リエ、加藤菜津、藤田弓子、柄本明 

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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意くださいませ。

本記事の情報は2024年8月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

『ロストケア』の意味

同僚には慕われ、大変な介護という仕事にも常に真摯に向き合い、
真心と笑顔をもって接する介護のエキスパート。

そんなイメージを誰もが描く信頼の厚い斯波が行っていたのは
42人もの人を手にかけた介護殺人でした。

斯波はそれを『ロストケア』つまり
『喪失の介護』
なのだと言います。

失うことにより救われるものがあると言うのです。

斯波に使命が課せられた日

斯波自身、介護士になる以前には
父親の介護をしていたという過去がありました。

認知症を発症した父親を斯波は1人にはしておけず、
自身の仕事を止めてアルバイトをしならの介護が始まります。

自分を忘れ人格さえも変貌していく父親と向き合うのには
心もお金もどんどんすり減っていきました。

そんな時に悩んだ末に救いを求めたのは生活保護の窓口

しかしそこでの対応は
〖斯波自身は働けるので却下〗
という冷たい宣告でした。

社会から見放された斯波は、傷つき、疲労し、
成す術が見つかりませんでした。

その風貌も白髪交じりの髪になり、
1日3度の食事を摂るという普通のことでさえ
ままならなくなっていました。

そんな時、父親が囁きます。

『息子を覚えているうちに殺してほしい』

・・・と。

葛藤と苦悩の末に、斯波は寝ていた父親の腕に
ニコチン注射を突き刺しました。

その枕元にあった父親が折った赤い折り鶴には
斯波への感謝と愛情のメッセージが仕込まれていたのです・・・。

『ロストケア』とは家族の呪縛から救うこと

介護をする人は懸命に自分で頑張ることが多い。
それはその人が家族だから

しかしその大変さや苦しみは計り知れません。
実際に介護を苦にして自ら命を絶つ人は後を絶たないのだと
いいます。

斯波もまたその地獄を目の当たりにした1人。
そしてその苦しみが導いたのは誤った選択でした。

けれども、できることならば、家族の呪縛を断つのを
誰かに助けて欲しかった
というのが本音だったのではないでしょうか。

自ら父親を手にかけた罪の意識から逃れることはなく、
償う覚悟はできていました。

しかしその覚悟とは裏腹に下されたのは
〖事件性はなし〗
という判断。

その時に斯波のその後の人生は決まったのかもしれません。

人にしてもらいたいと思うことは何でも
あなたがたも人にしなさい

(マタイによる福音書 第七章 十二節)

という一節は斯波にとっては、自分が経験した認知症の父親の介護
という苦しみ。

同じような苦しみの渦中にいる人を救ってあげることが
自分の生きる意味になるのだと言われているようだったのです。

ラストシーンの解釈

42人もの殺害を犯した斯波の尋問を担当した大友。

それは〖殺人〗ではなく〖救い〗なのだと主張するも
大友には納得のいく主張ではありませんでした。

しかし斯波は、納得ができないのは大友が安全地帯に
いるから
なのだと言いました。

大友は母親を看護の手厚い高級老人ホームに預けて、
1か月に1度程度、面会に行くのみでした。

さらには20年前に音信普通になった父親からの
久しぶりの連絡を無視し続けました。

そしてその直後、父親は孤独死したのです。

そのうしろめたさを指摘されたような
〖大友が安全地帯にいる〗
という斯波の言葉は大友の胸に突き刺さりました。

介護とは無縁で、父親からの助けも無視した
大友に憤りの感情が芽生えるのは、
斯波の罪の重さ故だけではないのでしょう。

自身が母親の介護をしないという罪悪感、
父親を間接的に見殺しにしたといえる罪悪感、
それを心の奥底で自覚しながらも埋もれさせていたものを
斯波が浮き彫りにさせたからではないでしょうか。

大友の正義

それでも検事としての正義を全うする大友にとって
斯波への極刑を課すのは当然の行為であり、
そこに迷いはありません。

どんな過酷な介護生活の中にも
その家族間にしかわかり得ない深い感情が存在する。

だからその人生を救いと称して終わらせる、
大切な家族の絆を断ち切る、
そんな自分勝手な権利は斯波にはない。

それが検事の職を全うする大友の至極当然の正義でした。

しかし、父親を殺された娘が斯波に向かって
『人殺し、父を返せ』
と罵倒する一方で、

斯波に感謝していると話し、
介護していたらなかったであろう
新たな幸せに踏み出す家族も目にします。

正義という名のもとにある救いは存在したのか?
その答えは1つではないのかもしれません。

正しさと救い

裁判にかけられた斯波は
自分のしたことは正しかったという姿勢を崩すことは
ありませんでした。

被害者遺族たちの言葉、斯波の裁判での主張を聞いた大友は
ラストで斯波に会に行きます。

実は大友は、できることなら母親は老人ホームに
入りたくなかったという本心
と、
その後も1人でのホームの生活の寂しさを
薄々感じ取っていました。

それをわかった上でもなお女手ひとつで
育ててくれた母を老人ホームへ追いやったという罪悪感
は重くのしかかっていたのです。

父からの連絡を無視しなければあるいは
助けられたのかもしれない
という後悔や罪の意識
と、そんな父親の死を母に伝えられない葛藤も。

しかし大友は嘘をつき続けたのです。
あれは自分の責任ではなかったと。

それが検事の大友としての存在証明だったからです。

けれども斯波の事件があって、
斯波の正義を目の当たりにして、
検事ではなく1人の人間として
自分の心の嘘と向き合うとその答えはまた違ってくるのです。

沸き上がってくる父親への後悔、母親への謝罪。

社会の穴の底へ落ちないように見たくないもの
から目を背けていた
のは自分でした。

そう理解した時に大友の頭に浮かんだのは
誰でもなく自分が追い詰めた斯波でした。

それは大友が人として斯波の言う正義、
『ロストケア』を理解したということ。

とはいえ、シングルファーザーとして愛情深く
自分を育ててくれた父親を手にかけた
こと、
そしてその直後、父親からの愛情あふれるメッセージを
目にした斯波に、後悔や罪悪感が芽生えないはずは
ありません
でした。

斯波もまた、父親を手にかけたことには、
自分の心に嘘をついていたのではないでしょうか。

ともすれば、検事としての自我を保とうとする大友のように、
斯波も自分の行った『ロストケア』を
これは『救い』なのだと自身の心を納得させて
正義を行使していた
のではないのかと推察できます。

大友の理解と懺悔は、大友自身の心だけではなく
斯波の救いにもなったという涙だったのでしょう。

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【ロストケア】感想

人の命を奪える権利など誰にもない。
そのことは大前提だとしても、
介護というのはきれいごとだけではないというのも
厳しい現実なのかもしれません。

本作を鑑賞していて
突き刺さるのは、法の正義である大友の言葉よりも
圧倒的に斯波の台詞であったことは
残酷な世界に自分も属していることの証なのではないか
と思わずにはいられないのです。

だとすれば、介護制度の見直し、改善なくしては
救われることは難しいという
将来の不安ばかりがよぎってしまいます。

家族だからという言葉に縛られないことは
大切で、人を頼ることは全然悪いことでは
ないのだと思うのです。

大切なのは自分1人で背負わないこと、
しんどい時には誰かにお任せする、
助けてもらう、
それができる社会になっていくことを
願わずにはいられません。

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