【ネタバレ考察】映画『ボーはおそれている』の真実は何?現実と妄想が交錯する世界が怖い

ドラマ
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『ヘレディタリー/継承』(2018年)や、『ミッドサマー』(2019年)
を放出したアリ・アスター監督が今作でも鑑賞者を衝撃の渦へ誘うホラーコメディ
『ボーはおそれている』
が配信されたので視聴しました。

あっけにとられる展開の連続が待ち受ける本作。

鑑賞者によって様々な見解ができるものとしては
アリ節がきいていて興味深いものとなっています。

見せられた3時間の中の真実は何だったのか?

という視点に着目してどこよりも超弱考察しています。

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『ボーはおそれている』あらすじ

ボー・ワッサーマンには、実業家で女手ひとつで育ててくれた母
モナがいた。

そんなボーだったが、極度の不安症に悩まされ、
カウンセラーに通いながら恐れる日々を送っていた。

父親の命日に久しぶりに実家に帰省することになるが、
出発の当日、寝坊をしたうえに、家の鍵とスーツケースを盗まれてしまい
飛行機に乗ることができなかった。

モナに帰省できない報告をするボーだったが、
モナは激高し、正しい事をしろと言って電話を切る。

ボーは不安になりながら、カウンセラーから処方された薬を
服用した後、その薬が水での服用を必須とされていることに気付く。

しかし部屋の水道は止まっており、
鍵を失ったままだが向かいの店へ出向き水を飲んだ。

ボーが危惧した通り、その隙に部屋は占拠されてしまう。

仕方なく屋外で夜を越したボーは翌日、
モナに謝罪の電話をかける。

ところが電話口に出たのは通りすがりの配達員だと言い、
モナが絶命した状態で発見したと証言した・・・。

キャスト
ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、
パーカー・ポージー、パティ・ルポーン 

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以下、ネタバレが含まれます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2024年9月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

ボーの恐れるものとモナの性質

大前提として、ボーはいつもおそれている
ということです。

母親モナの機嫌を損ねることが怖い。
他人の訳のわからない悪意が怖い。
起こり得る不幸そして人生が終わることが怖い。

という風に。

そして母親モナもまた厄介な性質をもっている点も
重要です。

冒頭のボーの誕生シーンでの出来事。

産まれ落ちたボーを医師が落としたのではないか?
と攻めたてます。

医師はこの時『落としていない、ぎりぎりで受け止めました』
と否定するのですが、画像の証拠はないので真相は不明です。

赤ちゃんの身体を滑らせたとしたらそれに激高するのは
当然のことですが、
なかなか産声を上げないボーのお尻を叩くという医師の行為にも
激高し、ヒステリックにわめきちらしています。

赤ちゃんを落としたわね?
赤ちゃんに何をするの?どこへ連れて行くつもりなの?
といった、喜びではなく、ネガティブな光景が映し出されます。

この場面から想像できるのはモナの
被害妄想や思い込みが強く、他人を信じることが苦手だという
人物像です。

ボーが帰宅できなかった理由になる
〖鍵をなくした〗
ことさえも嘘だと決めつけています。

そしてこの嘘だときめつけた一件が悲劇を突き動かす決定打となっているのです。

『ボーはおそれている』の真実は何なのか?

本作は簡単に言えば、息子の帰りを心待ちにしていたモナは
ボーが嘘をついてまでモナの元に帰るのを拒否することに
裏切られた気持ちになりショックを受けます。

ならば何が何でも帰宅させてやるということで、
自身の経営する会社のスタッフを総動員した計画を施行しました。

ボーに自分への愛情がどれだけあるのか
を図るテストと称して、自身の死を偽装し、大芝居をうったのです。

一刻も早くボーがモナの元へ帰ってくること
それだけの目的のために・・・。

その計画に乗らされモナの元へ向かう悲惨な旅路は
真実なのか?推察します。

ボーが住む地区の治安が悪すぎる謎

後に判明するのですが、実はボーの住むマンションの周辺は
モナの経営するMW社が運営する「ビッグWハウジング」というプロジェクト
の地区だったのです。

そのプロジェクトは薬物依存だったり精神疾患を抱える人たちが
社会復帰を目指す
ために作られました。

そのため、そこに住む人々が、不穏な動きや落ち着きがないといった風に映るのは
そのためだと思われます。

注目すべきなのは、その住人たちはMW社の薬を乱用したことによる、
依存や疾患を抱えた人たち
だということです。

例えば、ボーが助けを求めた警官が銃を持つ手を震えさせながら
〖俺に撃たせないでくれ〗
と哀願まじりに言っていたのも、
彼は誰かを撃ったトラウマに悩まされ、MW製品を乱用した結果、
今はこの地区に住んでいるからという裏話があったのかもしれません。

とはいえ過剰に過激な住民たちの正体は
ボー自身に処方された薬による幻覚、幻聴、妄想といった
副作用も発生しているからに他ならないでしょう。

ロジャーとグレースは夫婦ではない⁈

当初は、ボーがロジャーグレース夫妻に車で轢かれ
病院へ搬送されたまま昏睡状態に陥り、
その後の描写は脳内が映し出した自身の一生という
悪夢のような精神世界なのかもと思いました。

そうではなくて、これも現実とする場合でもその中にも嘘が混ざっている
ことが考えられます。

まずはロジャーとグレースは本当は夫妻ではないと思いました。
モナの家で示されたMW社の社員なのはロジャーだけです。

グレイスはロジャーとは相反して
度々ボーに真実を告げようとしていました。

過去も未来も映る監視カメラの存在チャンネル78の存在も
教えています。

息子を失った傷みの温度差が夫婦間で垣間見えること、
息子についての呼び方でさえ異なり、詳細も把握していない?こと
は怪しさに拍車をかけます。

娘のトニがロジャーのことを『新しいパパ』と呼んだのも、
ボーの養子縁組を匂わせただけではない含みがあるように思いました。

また、社員ではないのにも関わらず、
恐らくモナと電話で『契約について』もめていたのは
グレースの方です。

そしてモナと口論していたと思われるグレースの言葉に
『そんな契約ではなかった、私が母親なのよ・・・』

というような内容がありました。

そこで気になったのはネイサンの存在です。
もしかしたら、失ったのではなく、
実はネイトがジーヴスなのではないでしょうか?

さらに言えば、ジーヴスがMW社の薬による副作用
が発症している状態を疑ってしまいます。


トニがこの家に空き部屋はない
皮肉交じりの言葉を発するのも、
兄がそこに存在するからこそかもしれません。

そう捉えると、トニが度々ジーヴスに近づく光景や
トニを失ったグレースが頼るのもジーヴスであることにも
納得がいくのです。

そのトニは何故ペンキを飲むに至ったのでしょうか。
彼女も何等かの薬を服用していた様子が描かれています。

ロジャーが『薬を混ぜるな』と忠告していましたが、
トニがきちんと新しいパパの言いつけを守っていたかは疑問です。

そうしてもし薬を乱用していたのだとしたら、
咄嗟的に自ら命を絶つことを思慮してしまうほどの
副作用が出た可能性もあるのではないでしょうか。

というように
ロジャーとグレイスは実は夫婦ではないという真実が隠されている
のかもしれません。

森の中の劇団はMW社とは無関係

唯一MW社とは無関係だったのが森の中の劇団でした。

しかしその中に、ボーの父親を知る人物が潜んでいたのです。

彼はボーに言いました。
モナに借金があり、モナに絡んだ人には言えない仕事を請け負っていたこと。

嬉しそうに昔話をするその人物はボーの足に着けられた発信装置を
見つけると顔色を変え、
〖今のは冗談だ、忘れてくれ〗
というようなことを言って急ぎ足で立ち去ります。

つまり彼は元モナの部下であり、モナを恐れていたが、
現在はモナの支配から逃れていると言えます。

そして父親が生きているという真実が判明しました。

ところでこの森の劇団が見せる劇中劇にどんな意味が
あったのでしょうか。

ボーにも劇のような人生を送れる可能性があった
ことを示唆しているものでしょう。

劇の中でボーは3人の息子がいますが、
誰とも関係を持てないボーに何故子どもができたのか?
と息子たちに問われます。

そう・・・
〖主人公は気づくのが遅すぎた〗
のです。

モナの言った父親の嘘、ボー自身も誰かと関係をもったら
命を落としてしまうという嘘に・・・。

その代償は、ボーにはもうこの劇中の人生は叶わないこと、
を思い知らされるのです。

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屋根裏に隠された記憶

実家でエレインに再会するボー。

エレインを待っていたと告白するボーとエレインは
ついに結ばれました。

しかしそんな幸せな時間も束の間、ボーと関係をもった
エレインの方が既に息絶えていたのです。

そこへ現れたのはモナでした。

モナが生きていたのはボーも気づいていました。

それはモナだという亡骸にあったアザが
ボーの大好きだったメイドのマーサのものだったからです。

モナはボーを帰宅させるそのためだけに、
マーサの家族に充分な報酬を与えるとして
命を投げ出させたのです。

それだけではなく、屋根裏に幽閉された
やせ細り見覚えのある服装をした男父親?の存在も明らかになりました。

森で出会った、父の世話をしていたと言う人物の
言葉通り、父は生きていて、世話をされるような状態
であったのです。

ボーが度々思い出す、もう一人の自分

母親にNOをつきつけることができた本来のボー
彼は屋根裏部屋へ連れて行かれたまま
その存在を消されたのでした。

つまりこの屋根裏部屋で見た光景はイメージということです。

もう一人の自分はボーの自我であり、もう一人の人間ではないのです。
同様に父親もあの怪物みたいな姿ではないのでしょう。

あくまでモナが子どもを作る為に利用しただけの相手であり、
モナに出産の傷みをもたらした憎い相手であったというイメージ
が膨らみ見せた結果なのかもしれません。

ボーのおそれていたこと

モナだけではなく、そこにカウンセラーも現れました。

ボーとのカウンセリング内容はモナに筒抜けでした。
ロジャーとグレイスの家でも監視下にあったように、
ボーのアパートさえカメラか監視員が存在したのかもしれません。

そんな風にボーとの距離はあっても
ボーの住む場所もモナの監視下にあり、
ボーの通うカウンセラーもモナの手のものでした。

そしてボーからエレインを奪い、マーサも奪ったのです。

帰宅させるというその目的のためだけに、
人の命が奪われてしまいました。

これまでの経緯もその殆どがモナの仕業であり、
全ては、
帰宅をしようとしていたボーが鍵と荷物を奪われたことにより
動けなくなった
というその心境と出来事を勝手に嘘だと認定した母親の
自分勝手な計画。

その種明かしが成された時、
とうとうボーの気持ちが限界に達するのです。

本当はボーは母の機嫌を損ねることよりも
自分が母を憎いと感じてしまうそのことの方を
おそれていたのかもしれません。

咄嗟にモナの首を絞めてしまうボー。

慌てて手を放し、モナに謝罪をするボーでしたが、
モナはそのまま空の水槽?に突っ込んで倒れてしまいます。

ラストの裁判は現実ではない

ラストでその場から逃げ出したボーは、
モーターボートに乗り、発進させますが、
洞窟の中へ入るとそこは海に浮か試合場のようでした。

目の前には殺したと思った母親と弁護士のコーエン
そして周りを大勢の観衆が囲んでいます。

モナにとって自分勝手極まりないボーに対する
断罪裁判が行われます。

迷子になったボーを必死に探すモナを柱の陰で
見ていたこと、その際、転んで靭帯を痛めた母にさえも
助けに入らなかったこと。

同級生に母親の下着を盗ませていたこと・・・

水槽の魚には水をやるのに、物乞いする人間は見て見ぬふりを
する良心があるのに使わないボー

反論も助けも受け入れられることはなく、
ボートは爆発して沈んで行きます。
足が動かせずにボートと共に運命を辿るボー。

大勢の人間に囲まれながら、母親がそこいいながら
誰も助けてくれるものはいませんでした。

そして
〖私のベイビー〗というモナの叫びが聞こえるのでした・・・。

このラストは、
モナを殺めてしまったと思ったボーが自らの命を絶つ
その過程で自らの罪とは何だったのか?を振り返る
場面なのではないかと解釈しました。

しかし実際はモナは生きており、
間に合わなかった光景を見て叫んでいる・・・
のではないでしょうか。

ボーは最恐の世界に生きている

如何様にも解釈できる本作ですが
筆者的にはラストの裁判場面だけがイメージである
としました。

しかしながら、治安が悪すぎるボーの住居環境は
現実とするには過酷すぎますね。

これは社会復帰していない人の集まりだからということに
限らず、ボー自身の見え方にも問題があるものと思われます。

物語の悲惨さの全ての根源はモナの性質からくる
被害妄想や思い込み、解決法なのではないでしょうか。

自身の身体の中に居た際のボーは安全だったけれど、
出産した途端、落とされる、泣かない、揺さぶられるは叩かれるは
で、モナにとっては悲惨な息子の光景だったのでしょう。

そのことがその後のボーとの関りかたに支障をきたします。

もしかしたらボーは特にどこも悪くはなかった可能性
ないでしょうか?

少し肌が赤くなっただけで、アレルギーではないかと疑い、
落とされたから脳に支障をきたしたに違いないとか、

母の言う事を聞かない、母への愛情はあるのか?
こんな時に泣くなんて自分勝手すぎる、病気なのではないか、

そんな理由で完璧な愛を求め沢山の薬を処方したのではないでしょうか。

そのためボー自身、薬の依存症となり、
当初は反論や自身の意見、主張ができたボーは
屋根裏部屋に閉じ込められ、幽閉されてしまいました。

こうした経緯があって、ボーの恐れる気持ち、不安な気持ちは
膨張していき、大人になる、自立することを拒まれた結果、

ボーは母親が居ない環境では自分の部屋以外は最恐にあふれている世界
の住人に陥ってしまったのではないでしょうか。

無論、これはモナが望んだことに他なりません。

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『ボーはおそれている』感想

本作の真実とは何か?という点に着目してみました。

しかし、冒頭のセラピストがノートに書く
『guilty(有罪の)』に着目すれば、
最初にモナを襲った場面から始まると言う具合に、
実は時系列が反対だったという推察。

あるいは、ロジャーとグレイスの家で見せられた監視カメラ映像で、
未来が見られるのことに疑問が残ったり、
一度命を落としたと思われたジーヴスが
再び襲ってくる場面から、やはり全てがボーの脳内で起こっている
ことであるという推察もできるでしょう。

しかし本当のところは、何が真実なのかは
さほど重要ではないのかもしれません。

観客と演者の境界線をあいまいにしたい

というテーマがみえる本作で、
身に覚えはないですか?
と問われているような気がして、
同時に、この物語が自分とは無関係だとは
言い切れないやるせなさを痛感します。

水なしで服用してはいけない薬
が象徴するように、少量の水は自身の安全を守ってくれるもの。

けれど、その量が大量になれば
ラストシーンのようにボーの命を奪う脅威にも
なり得てしまう。

これこそがモナとボーの母親と子の不均衡な関係の
危うさなんだと体感しました。

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