2022年にアメリカで公開された犯罪スリラー映画
『エミリー・ザ・クリミナル』
ただいまNetflixにて配信中で話題を呼んでいる本作を鑑賞してみました。
奨学金の返済も借金も抱える崖っぷちなのに、
就職もできない主人公に救いの道は存在するのか?
そんな本作の衝撃のラストに着目しています。
『エミリー・ザ・クリミナル』あらすじ
Aubrey Plaza is set to star in Hulu’s “Olga Dies Dreaming”.
— Aubrey Plaza Online (@aubreyplazanet) August 2, 2021
It follows a brother & sister (Plaza) from a gentrifying Sunset Park, Brooklyn, reckoning with the absent, politically radical mother and their glittering careers among New York’s elite in the wake of Hurricane Maria. pic.twitter.com/mEjEm0GUSR
ロサンゼルス在中のエミリー・ベネットは
フードデリバリーで配達員の仕事をしていた。
芸術家になりたいという夢を持つエミリーだったが、
学生ローンの返済など、借金に追われる日々を送っている
ためその夢は叶っていない。
また前科の経歴を持する彼女は、割の良い正社員の仕事にありつくのは困難で、
面接さえ上手くこなすことが出来なかった。
そんなある日、同僚から時給200ドルが貰える仕事があると聞いたエミリーは
その説明会に参加する。
一度は引き返そうとするエミリーだったが
高額な時給にそそられた彼女は仕事を引き受ける。
しかしその仕事内容とはクレジットカード詐欺だった・・・。
キャスト
オーブリー・プラザ、テオ・ロッシ、メガリン・エキカンローク、
ジーナ・ガーション、ジョナサン・アヴィドリ、ベルナルド、ヴァディーヨ 他
以下、結末までのネタバレを含みます。
見視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年1月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
エミリー流生きる選択の行方
エミリーの最初の仕事は偽造したクレジットカードで
テレビを購入してくることでした。
恐る恐る会計をするエミリーでしたが難なく成功します。
一瞬にして200ドルを受け取ったエミリーの次の仕事は
またしても偽造クレジットカードでの高級車の購入でした。
しかし今回はぎりぎりのところでディラーにカードが偽物であることが
露呈してしまい揉み合いになってしまいました。
殴られ出血しながらも逃げ出したエミリーは、待っていた
詐欺グループを取りまとめるヨーセフに危険にさらされた怒りをぶちまけます。
そんなエミリーの様子を受けてヨーセフは彼女を自宅まで送り
負傷した顔を冷やしながら夢について語り合うのでした。
ヨーセフの夢は母親のために不動産を購入すること。
エミリーは好きな絵を描く仕事と南米を訪れること。
ヨーセフは南米に行くのは難しいことではない、
と応援してくれました。
ヨーセフとの意気投合で、エミリーはもっと深いところまで
詐欺組織に踏み込んでいくことになります。
偽造クレジットカードの作り方も教わり、自ら偽造に手を染めて
いきました。
そんな詐欺組織には掟がありました。
同じ店には1週間のうちに2度行ってはいけないということ、
そして盗品の販売を自宅でしてはならないということでした。
最後の砦
エミリーの友人のリズは、彼女の勤め先である広告代理店に
空きが出たと言い、エミリーを面接へ導いてくれます。
しかしその面接は、正社員の雇用ではなく、
インターンとして数か月間にわたり無給で勤務しなくてはならない
という内容だったのです。
これに激怒したエミリーはリズの上司のアリスに罵声を浴びせ、
アリスもまたそんなエミリーに呆れ顔で、面接は決裂して終わりました。
一方、ヨーセフのパートナーであり従兄でもあるカリルは、
ヨーセフとエミリーの親し気な様子に不信感を覚えていました。
ヨーセフはエミリーの詐欺組織の深い関与を否定します。
しかしその最中に、焦燥感に駆られたエミリーは
同じ店に頻繁に訪れてはいけないという掟を破ってしまうのでした。
ヨーセフと母親との会食に乱入したカリルは
エミリーが掟を破ったことで激高します。
頻繁に同じ店に訪れたエミリーの動画は拡散され、
そのことは組織全体の危機に繋がるからです。
この一件からカリルとヨーセフの間の信頼は崩れ、
ヨーセフは組織で稼いだ金を強奪することを決意しますが
カリルに先を越され、共有名義の預金口座さえも空になっていました。
絶望にかられるヨーセフを激励したエミリーは
2人でカリルの元へ襲撃に行き金を奪い返す計画を立てます。
襲撃前の車内で有罪判決を受けた暴行罪の内容について尋ねるヨーセフに、
エミリーは元彼を襲ったのだと話します。
その時のことを後悔していると言うエミリー。
しかし後悔しているのは暴行を加えたことではなく、
徹底的にやらなかったことだと言いました。
もっと完膚なきまでに打ちのめしていれば
通報されることはなかった・・・と。
裏切りの結末
カリルの隠れ家に侵入するもカリルは見つからず、
エミリーは振り返ったその時、
ヨーセフの背後から凶器を振りかざすカリルを目にするのでした。
ヨーセフはカリルの一撃に倒れ、エミリーもカリルに首を絞められますが、
ポケットに忍ばせていたナイフに手を伸ばし、
形勢を逆転させると金を奪うことに成功し、ヨーセフを連れて車に戻ったのでした。
しかしヨーセフは車のカギを失くしており、
ヨーセフ自身もカリルに負わされた傷が致命傷になっているようでした。
エミリーたちの元に近づくサイレンの音と、意識が遠のいていくヨーセフの姿。
エミリーはもう意識のないヨーセフに謝罪すると、お金を持って一人でその場を後にしました。
その後、南米に飛んだエミリーは好きな絵画を描き、
いつかのヨーセフのように、自身がとりまとめ役を担って
詐欺の説明会を開催するのでした。
『エミリー・ザ・クリミナル』感想
まるでドキュメンタリーを見せられているような映画でした。
それは
オーブリー・プラザの演技力が為せる技なのか、
それとも、往々にして詐欺の類の犯罪に手を染めるのは
生きようとしているだけの普通の人間だからなのでしょうか。
エミリー流の数々の破天荒な選択も
元をたどれば生きるためと言っても過言ではないかもしれません。
欲に任せて人生の街道を堕ちて行くのは案外簡単なことなのかもしれなくて、
今自分の生きているこの国も
堕ちて行く背中を押すような格差社会が着実に根付いている光景が
なんとも、本作に現実味を帯びさせていて恐怖心を掻き立てます。
とはいえ、本作のヒロインは、普通の人とは言い難く、
どこでどんな環境のもとに道が違えてしまったのか?
心を許し、信頼できる誰かが存在せず、
世界は自分中心に回ってしまった人なのでした。
暴行罪に至る喧嘩の原因は不明ですが有罪になるほどの怪我を
元彼に負わせても、
〖なんで、もっと徹底的にぶちのめさなかったんだろう、馬鹿な私〗
という具合におかしな方向に後悔してしまうのですから。
そんなエミリーが奇しくも夢を叶えて南米で優雅に絵を描く生活を
手にした背景には、多数の被害者が存在していわけです。が、
それでもあの人は罪の意識など抱くことはなく、
組織を自ら立ち上げ、まるで自由を得たかのように、
天性の才能を発揮しているところで物語の幕は閉じました。
もしも振り返ることがあったのなら、
救いの環境が整っていたなら、あるいは
許してくれる人の存在に出会えたかもしれません。
しかし突き進むことしかできなかった彼女がこれから何処へ向かうのかといえば、
それは暗く悲惨ないばらの道であることは想像に難くないのでしょう。
本当の孤独を持することになった彼女は
『犯罪者』と化してしまったのです。
お金が欲しくない人なんて居ないのでしょうが、
お金では買えない人生の財産を大切にしたいな
と思える一作です。