第2回日本ホラー映画大賞で大賞を受賞した
近藤亮太監督の同名短編映画を長編映画化した
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
本作が映画監督デビューとのことですが
Jホラーファンの間では、『怖すぎる』と話題になっています。
そんな本作の結末と謎に迫ります。
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』あらすじ
第37回東京国際映画祭 #ワールド・プレミア
— 映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』 (@mcv_movie) October 24, 2024
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山で遭難した少年の前にボランティアの青年が現れ救助してくれた。
その青年はすぐに立ち去ってしまったが、
消えたボランティアの青年を取材している記者の久住美琴は
兒玉敬太がその人だと察知し取材を試みる。
敬太は幼い頃のある日、弟の日向と摩白山の廃墟で、かくれんぼをしていた。
しかし敬太は弟を見つけられず、日向はそれ以来失踪したまま
という過去を持っていた。
久住は敬太に接見することが出来ず、
ルームメイトの司に接触する。
司は敬太の取材には協力できないが、
久住自身が悩まされているストーカーのような何かについては
話を聞くことが出来ると名刺を渡しました。
司は、いわゆる「見える人」だったのです。
一方、敬太の元に母親から届いた荷物に入っていた
一本のVHSテープを司と2人で見てみることにした。
するとそれは日向が行方不明になった当日に敬太自身が録画した
映像で、日向が消える瞬間が映されていた・・・。
キャスト
杉田雷麟、平井亜門、森田想、藤井隆 他
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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年7月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
一本のテープは衝撃の結末へ
母親から送られてきた一本のVHSテープ。
それにただならぬものを感じ取った霊感の強い司は
そのテープを廃棄することを敬太にすすめます。
しかし敬太は実家へ帰郷し、母親に直接
なぜこれを送ってきたのか?
もう送ってこないで欲しいと話したいと言います。
心配した司は帰郷に同行することにしました。
実家に帰っても誰もおらず、特に収穫はありませんでした。
しかし2人は山の中に、大量の骨壺が不法投棄されているのを
目撃します。
山には何が
一方、久住は司と約束していた取材をキャンセルされ、
山のことを調べると、古くからその場所では集団失踪など
不可解な事件が相次いでいたことが判明します。
そしてその中に地図にはない敬太と日向が訪れた廃墟にたどり着いた
者もいたのです。
敬太と司はその夜、近くの民宿に宿泊することにします。
入浴してくると出て行った司は久住に連絡を入れ、
彼女が調べた山の不可解な事件を知ります。
そしてもう一度敬太の実家を訪れた司は
そこで自殺した敬太の母親の亡骸を発見します。
捨ててもいい場所
司を探していた敬太でしたが、民宿の息子・雪斗から
外出したと聞き、雪斗に山のことを聞きたいと打診しました。
雪斗は祖母から聞いた山についてのことを語りはじめました。
村の大人たちはその山に、神物を捨てる場所だと言うのです。
他にも縁を切りたいものを捨てることもあり、
雪斗の祖母も自身に生理が訪れたことを隠すために
血液の付着した下着を山に捨てたところ、
祖母にはそれ以来、生理がくることはなかったと言うのです。
しかし、それなら自分は祖母の何なのだろう
という疑念に恐怖を覚えた雪斗は、
それ以来考えないようにしたのだそうです。
日向の行方
司と合流するため山を訪れた久住は敬太を見つけると
司からの電話を受けました。
司は敬太はすでに山に取りつかれている、
山へは連れて行かないように話ますが、
久住に聞こえていたのは反対に
「敬太を山へ連れて行け」
という言葉でした。
敬太は久住に司を待つように打診すると
一人で廃墟へ向かいました。
司が到着すると久住と2人で敬太の後を追い、
存在しているはずのないその廃墟にたどり着きます。
敬太の気配を察知し二階へ向かう司と、
その後を追おうとした久住の手を何者かが掴んでいました。
司は二階へ向かうと敬太が「日向を見つけた」と言います。
その存在を日向が見た「ぷよぷよ」だと察した司は
ずっと黙っていたけれど司の横には出会った日から
日向の霊の存在が見えていたのだと言います。
その言葉を受け、敬太は、そっかと返し、
謎の存在の方を向いて謝りました。
恐怖はまだ続いている
しかし直後、司は突然、
日向が失踪した当日の世界に迷いこんでしまいます。
ビデオカメラで録画をしながら日向を探す
敬太の姿も見えます。
その姿を追って行く司は、階段の下で倒れている
日向を発見するのでした。
そして敬太と日向のかくれんぼの始まりの場面に戻った司は
自身がこの世界に閉じ込められたことを察知します。
一方、久住と合流した敬太は階段の下で
日向の服と血痕の跡のようなものを発見し号泣しました。
敬太と久住は無事に下山することができたものの、
司は行方不明となってしまいました。
三か月後・・・
久住は「まだ終わっていない」と、
記事にならない山への執着を捨てきれずにいました。
そんな久住のデスクにはいつのまにかVHSのテープが。
そして背後にいる何かの気配に怯えるのでした。
一方、山では雪斗が日向を探すチラシを眺めていました。
するとその時、何者かの気配を感じ、撮られていると
思った時、突然、雪斗は消えてしまいました。
帰宅した敬太は「ただいま」と言って部屋に入りますが
そこは無人の部屋でした。
しかし背後に気配を感じた敬太は思わず
「司」と口にします。
ところが司はおらず、敬太は何者かに撮られているのでした。
回収されない謎を考察する
この悲劇が結局何の仕業だったのか?
がわからないという本作は
視聴者の想像力をかきたて恐怖を持続させるような内容でした。
そんな視聴者次第の怖さが味わえる本作ですが、
回収されなかった謎について、個人的な一つの解釈を推察してみました。
2階怖い?
敬太は母から送られてくる荷物を止めたくて
実家に向かいました。
その際、同行した司が2階に上がってこない様子を見て
「2階怖い?」
と問うのです。
2階と言えば、廃墟では「ぷよぷよ」が居る場所
であるのも意味深です。
しかしこの言葉は、過去に山で行方不明になった
大学の山岳部の部員たちが収めたカセットテープの中でも
同じ質問が投げかけられていたのです。
司も気にしていた共通するこの言葉に何の意味があるのでしょうか。
この質問をするのはすでに山に影響を受けているもの、
何かを捨てる側の人間
だったのではないかと思いました。
山岳部の部員の中に何人か地元の人間が居たということから
大学生の失踪事件でもその中に山の影響を受けているもの
が居たのではないでしょうか。
敬太には母の姿が見えない理由
謎に送られてきたビデオテープの真意を探るため、
実家を訪れた敬太と司。
しかしその二階には自ら命を絶った母の姿があったのです。
二階へ上がった敬太は一階で待っていた司に
母は留守だったといいます。。
しかし後日、その二階で司は敬太の母の亡骸を発見したのです。
司に見えた母を敬太には見えなかった理由とは何なのでしょうか。
筆者的には敬太は並存している別の世界を見たのではないか
と思っています。
それは罪の意識からの逃避が生み出した世界。
日向を失くしたあの日、自身が背負ったものと
両親からの弟を殺したのではないか?と疑念を抱かれることから
逃げずにはいられなかったのです。
敬太の中では日向はおそらく命を落としているのではないか?
という恐怖がうずまき、
家族はみんな、弟が居たビデオテープの中に記録したのです。
それ以降はもう敬太にとって、
両親と日向はビデオテープの中で生きていたのかもしれません。
母親に会いたくないと言うのも、それが本物であると
認めたくない心理からきていて、
ラストに廃墟で見かけたぷよぷよを日向だと断言するのも
成長した日向ではなくビデオに映るままの弟を求めたから
なのではないでしょうか。
ラストの方で階段から落ちた日向の上着だけが見つかり、
泣き叫ぶ敬太視点の場面がありました。
現実ではもう敬太には日向が見えないのでしょう。
同じように敬太には日向だけではなく、両親の姿もまた
もう見ることが出来ないのかもしれません。
敬太の家で突然ついた誕生日会のビデオ。
ビデオ内に記録された母が見せたのかもしれませんね。
久住を掴む手の正体
敬太の取材のため司と接見する久住は
ストーカーのようなものに悩まされていました。
そしてそれは司曰く、見える人にしか見えないもので、
何も対応しなくていいものだと言います。
そんな久住の元に亡くなったはずの敬太の父親から連絡が入ったと
いうのです。
会話にならなかったという父は
「息子をよろしくお願いします」と久住に告げたのだとか・・・。
見える人であり、敬太のパートナーではなく、
久住に息子を託した理由とは何なのでしょうか。
敬太曰く、父親はその役を演じているようだった
と言います。
子供からそんな風に思われていた父親は
子供たちとの向き合い方に後悔の念があったのではないでしょうか。
はたまた父は山の真実を理解し、
敬太にもまた何かが起こるかもしれないと予見しながら
助けられなかったことに悔いがあったのでしょうか。
いづれかの念はつきやすい人物を探し、
偶然にも敬太を取材するために接近する久住が
その人に合致したのではないでしょうか。
ならば廃墟で司が二階へ向かった後、
久住の腕を掴み引き留めた手の主も、
司の巻き添えを息子のために阻止した
敬太の父親だったのではないでしょうか。
しかしこの疑問のポイントはその手が救いの者か否か
というところにあると思っています。
救いであった場合は敬太の父ではないかと思いましたが、
否であった場合は解釈が少し異なります。
捨てていい場所である山に入った久住が捨てたいものは
常に怯えている、彼女に付きまとう何かの存在ではないでしょうか。
久住が一緒に山に連れて来たそれは捨てられないように
彼女の腕を掴みますが、捨てる側の者となった彼女は
それと縁を切ることに成功し、その腕は消えたのかもしれません。
そしてラストで彼女の元にはビデオテープが
届くのです・・・。
摩白山の謎
民宿の息子、雪斗は、祖母から聞いた山の裏側を
敬太に話ました。
そこは神さまを捨てる場所だと言うのです。
さらに祖母の経験談から、縁を切りたいもの、
背負いたくないものを捨てていい場所なのだとか。
想像を絶するものが捨てられ続けたその場所は、
何らかの力を持って成長し、誘うものだけに見える廃墟を創り出したのです。
それは長い間、捨てられ続けた様々な縁を切られたものの
パワーは抗うことのできない何か巨大な力を持ってしまった
結果なのではないでしょうか。
そこは確かに、村人たちの抱えきれないから手放したい、
縁を切りたいという願いを叶えてくれたのかもしれません。
しかし叶えてくれるだけではなかったのではないでしょうか。
そのような場所にビデオという記録媒体を持参して
入ってしまった結果、その力はビデオテープにまで
及び、それに触れてしまった敬太と司は
再びあの廃墟へ誘われてしまったのです。
なぜ司は閉じ込められた?
廃墟に向かった敬太を追いかけてそこにたどり着いた司
でしたが、一人だけ日向が失踪した日の中に
閉じ込められてしまいました。
司が閉じ込められる前に起こした行動といえば、
敬太に真実を告げたことでした。
それは敬太を現実へと引き戻す行動であるとともに、
触れてはいけない真実へと近づく行動でした。
何もしなくてもいいものではない
と司が言ったこの廃墟の力は、
司を脅威とみなし、慕っている敬太が
隠したかった真実がある場所へと閉じ込めたのではないでしょうか。
あの日の世界の中で司は日向を追って行き、
日向が落下している姿を発見します。
まさにこの行動があの日の敬太のそれだったのでは
ないかと思っています。
つまり、敬太は弟の落下を目撃しながら
一人で山を去ったのでしょう。
何度も名前を変えるその山は
その記憶さえも変えることが可能だったのでしょう。
ビデオを上書きした可能性もあると思っています。
ともすれば記録には残らなかった真実を呼び起こす司は
邪魔な存在としてとばされてしまったのではないでしょうか。
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』感想
多くの謎を残して幕を下ろした本作ですが、
上に記した以外にも、多くの難題が立ちはだかったままです。
みなさまはどんな風に解釈したでしょうか?
例えば母がビデオテープを送った真意は何だったのか?
それは敬太が弟を忘れて楽しく暮らしていると想像した故のことか?
同じ息子でありながら日向を失くした傷ゆえに、
敬太に愛情を注げなかった母親としての自身に罪の意識を覚えたのか?
民宿の息子の話が印象深い本作ですが、
そんな息子はラストで山へ近づき消えてしまいましたね。
あれはどういう意味なのでしょうか?
「考えないようにしていた」ことで保たれていた自身
という存在が、再び疑念を抱き、真実に触れてしまったことで
本当は産まれてこれなかった存在として
上書きされてしまったのでしょうか。
わからない謎は見終わった後も、様々な想像を掻き立ててくれますね。
また本作では家族という難しさも浮き彫りになっています。
家族を一人失くしてしまったことの重さは残された家族を
追い込んでしまいました。
ぶつけられない悲しみをもう一人の息子を疑うことで
対処していたのでしょうか。
それともそういった疑念は存在せず、
敬太の妄想だったのでしょうか。
この家族の真実は不明のままですが、
敬太自身が家族をビデオに閉じ込めていたのなら、
ラストでは自らもそこに加わるような示唆がされており、
敬太の家族という呪縛は終わりそうもありません。
一人、無限ループに取り残された司のその後が気になって
仕方がない一作です。