『罪と悪』交差する2つの事件の真相に迫る/財布が意味するものとは?

邦画
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著名な監督者とで助監督としてキャリアを積んでいた
齊藤勇起監督の長編デビュー作
『罪と悪』

閉鎖的な街を舞台に、22年の時を経て交差する2つの事件。
その真相と正樹の財布が意味するものに迫ります。

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『罪と悪』あらすじ

阪本春の家はすさんでいた。
妹を失くしバラバラになった家族の中で暴力的な父親と暮らす春。
母親は家を出て育児放棄状態である。

しかしそんな春の暗闇も、同級生の晃、朔、そして正樹が支えてくれていた。

ある日、橋の下の川で正樹の遺体が発見された。
春たち3人は正樹が訪れていた、「おんさん」という男性の家を
訪れる。

するとそこにで朔は正樹の血が付着したスパイクを発見し、
3人は、おんさんが正樹を殺めた犯人だと確信して激高する。

揉み合いになった春たちとおんさん。
こぶしで応戦する春だったが、背後から朔がスコップを振り下ろし、
とどめをさしてしまう。

春は晃と朔には立ち去るように告げると、一人で罪をかぶり、
おんさんの家に火を放ち、朔と晃の背中に別れを告げた。

それから22年後、刑事の父親の死を境に
地元に帰郷してきた晃。

刑事になっていた晃は川で発見された少年の遺体を
見て驚愕する。

それはまるで22年前の正樹のようだったからだ。

キャスト
高良健吾、大東駿介、石田卓也、村上淳、市川知宏、勝矢、奥野壮、
しゅはまはるみ、守屋茜、中野英樹、椎名桔平、佐藤浩市
 他

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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2025年9月時点のものです。
最新の配信、販売状況等は各サイトにてご確認くださいませ。

2つの事件の真相とは

たちの同級生で22年前に14歳でなくなった正樹の事件。

一人でその責任を負った春。
そしてそれ以来3人は距離を置いていました。

そして現在になった今、再び一人の少年が殺される事件が起こります。
刑事の晃はその少年の所持品の中に正樹の財布が含まれている
ことに気づき驚愕します。

22年後の真実

故郷を出ていた刑事のは父親が亡くなったのを境に
地元に戻って来ました。

そんな晃は父の別れに来てくれたの元を訪ね再会を果たします。
一度は家庭をもった晃に対し、朔も双子の兄弟・直哉も独身のままでした。

朔は自分は人殺しだから幸せになれないとこぼします。

いつからか引きこもりになってしまったという直哉でしたが、
部屋の窓から顔をのぞかせ、晃に手を振っていました。

そんな晃は、小林大和という少年が殺されたのをきっかけに、
春に会わざるを得なくなりました。

春の現在は建設会社や飲食店などを営みながらも、裏では、やんちゃな少年たちの
面倒を見つつ裏の世界とも共存していました。

そして今回の事件の被害者である小林は春が面倒を見ていた若者の一人
だったのです。

再会した春と晃は同じ疑念を抱きました。

それは正樹の仇だと信じ襲撃したおんさんが
犯人ではなかったこと、すなわち別に真犯人がいるということです。

真犯人説を考えると晃には22年前の罪の意識が
より重くのしかかってくるのでした。

2つの事件の真犯人

しかも小林の所持品の中に22年前正樹が使っていた
財布
が見つかったのです。

22年前の正樹が亡くなる直前、春は一緒にやきそばを食べました。

そして正樹が春の家に財布を忘れて行ってしまったため、
直哉に渡してもらうように財布を託したのです。

その財布が小林の事件で露呈したため、直哉に会いに行くという晃に
春も同行します。

むりやり家に押し入ると直哉の部屋へ突入しました。
すると直哉は服毒して自ら命を絶っていたのです。

また直哉のベッドの下からは小林事件の凶器である石もみつかり、
22年前の正樹と小林を殺害した犯人は直哉であるという
結論に至りました。

決別と決断

地元の夏祭りの夜、再会する春、晃、そして朔でした。

朔も春に謝罪しハグするのでした。

朔は直哉の事件で居ずらくなったこの地を離れ北海道で一から出直すと言います。

朔との別れの時、春と晃が問います。

おんさんの家で正樹のスパイクを見つけたのも、
最初に殴りかかったのも朔だった。
本当に直哉が犯人だったのか?・・・と。

春と晃の推理は、
朔も正樹と同様に、おんさんから性的暴行を受けていた。
しかし閉鎖的な街で暮らす朔はその一件が露呈することを恐れた。
だから口封じとして正樹を手に掛けたのではないかということでした。

そして春は言います。
正樹が事件の直前に自身に会いに来たが
何も言わなかったことを。

一方の朔は春と晃の推理を全否定して
酷いなと残し去って行きました。

春は晃に、友人としてでさえも、もう会うことはできないと言います。

元気で、と別れの挨拶を交わす2人。
春も去って行きました。

春はその足で誰かに電話をしています。
そして行動を起こす合図を示しました。

横断歩道に居る朔が一人、歩き始めた時、
猛スピードのトラックが朔を襲いました・・・。

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正樹の財布が意味するもの

劇中で朔は犯行を否認しています。

そのことから解釈は一つではないのかもしれません。

しかし筆者は一連の事件の真犯人が朔であると受け取りました。

ではその裏付けともなった財布の意味とは何だったのでしょうか。

晃の帰還

春が正樹にあった最後の日、財布を忘れて行きました。
それを正樹と家が近い直哉に託したのです。

正樹の財布の行方は直哉で終わっていたということです。

同じ地に住みながら一度も春には会おうとしなかった朔。
それは罪の意識からでした。

しかしその罪の意識はおんさんのことではありません。
正樹を過失で手に掛けてしまった罪でした。

その事実を隠し、おんさん殺害の罪までもすり抜けて
日々を暮らしていた朔は故意に春を避けて来たのです。

ところが地元を離れた刑事の晃が帰ってきたことから
事態は一変します。

正樹の事件があってから引きこもりになってしまった
直哉が、窓越しに晃に手を振ったのです。

それは直哉が刑事である晃と接触してしまう可能性を秘めていました。

そこで焦った朔は春が面倒を見ていた小林に目をつけました。
新たに事件を起こし、正樹の事件を彷彿とさせ、
そこにあの財布を残すことで
正樹も小林も直哉の犯行であるという証拠を演出したのです。

秘密を守るため

おんさんに性的暴行を受けていたのは正樹だけではありませんでした。
朔もまた、被害者だったのです。

しかし2人が住む町は閉鎖的なデメリットを持していました。

男性に中学生が暴行された
その衝撃は町での格好の噂となり広がってしまいます。

朔にとっては何としても漏らしてはいけない秘密だったのです。
しかし正樹はふと口にしてしまったのです。

刑事の父を持つ晃に助けてはもらえないかと。

正樹は誰かにこの秘密を喋る可能性がある。
そんな疑心暗鬼に囚われた朔は、正樹が春に会いに行った
と知って激高してしまったのです。

そうして朔ともみ合った結果、突き飛ばされた正樹は
打ち所が悪かったことで命を落としてしまったのです。

そこへ通りかかったのは直哉でした。
詳細は描かれていませんでしたが、直哉は朔がしたことの
隠蔽を手伝い、その罪がおんさん、そして春に及んでしまったことに
押しつぶされ精神を保てなかったのでしょう。

罪の意識に囚われた直哉が刑事の晃に手を振っている光景は
朔にとって、悪夢でしかなかったのです。

晃や春を手に掛ける画策よりも、返せなかった正樹の財布を利用し、
直哉に全ての罪を被ってもらう計画の方が、容易だと考えました。

朔は小林に財布を持たせ、凶器の石を直哉のベット下に隠し、
直哉を自殺に見せかけて毒を飲ませたのでした。

衝撃が襲う結末

ラストで朔は春が面倒を見ている若者が運転する車に轢かれてしまいました。

そしてその直前に、春は誰かに、始める合図を出していたのです。

もう正樹の事件の再捜査などこの町の警察はしないだろう。
ならば自らの手で裁きを下したという見解なのではないでしょうか。

それは正樹の人生を奪った罪、
小林の命を利用した罪、
春の人生を狂わせた罪、
そして、あの日の4人を消し去った罪だったのです。

正樹の仇をとったと信じていたからこそ
一人で被ることができた罪。

それは春なりの正しい決断でした。

しかしそのための代償は重いものでした。

そこまでして守った友人たちの思いが真実ではなかったとなれば話は変わってきます。
あの時の春たちはただの悪になってしまうのです。

春の腹心が言っていた
正当な理由があるのならそれを罪だと感じる必要はない
それは春の教えなのでしょうか。

だとしてもその正当な理由を失ってしまったのです。

しかし朔を裁くという春の決断もまた悪のもの。
正義を信じ、この町を変えようとする晃とは
道を違えるしかないのです。

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『罪と悪』感想

結局、無罪放免への道は遠すぎることに痛感する
結末となってしまいました。

22年前の3人で犯した罪を一人で被った春が
ラストの回想で友人たちの背中に『じゃあな』と言って流す涙が印象的でした。

罪を被るのは今の日々が最悪でぶっ壊したかったから
そんな風に強がっていた春にとって、
晃や朔、そして正樹といった友人たちに囲まれる日々が
何より大切だったのでしょう。

その大切な人の幸せを奪わせないという春の決意、
晃の刑事になる夢は春が叶えてあげたも同然なのではないでしょうか。

そうしてあの頃の春は、大切な友人たちの人生を守ったと思っていました。
ところがそれは幻だったのです。
真犯人だった朔は春の気持ちごとあの日の思い出ごと
春を裏切ったのです。

朔はあろうことか正樹を手に掛け、偽の復讐に
加担させたに他ならず、春を利用したと言っても過言ではないでしょう。

その結果、春自身も悪に飲み込まれるラストを迎えてしまいました。

これは個人的な見解で複数の解釈ができる演出も
面白味がありました。

春にとっても、正義を追い求める晃でさえも
この先もずっと罪と歩いて行くことしか道がないのかもしれません。

罪を犯すことはそれほど人の心を蝕んでいくものなのでしょう。

本当の悪は誰だったのか?
それは朔でも佐藤でもないのかもしれません。

人の心を閉鎖的に重圧を課すあの町こそが
悪をまとっているのではないでしょうか。



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