映画『cloud』結末の考察・ネタバレ感想/謎多き佐野の正体と目的

邦画
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菅田将暉が本気の転売ヤーを演じ、黒沢清監督がメガフォンをとる
サスペンススリラー映画
『cloud』

鑑賞後にも残る謎が気になるところです。

そこで本記事では

あのラストシーンに込められた意味とは何か?
そして謎多きアシスタントの佐野の正体とは?

という気になるポイントに着目して深読み推察しています。
あくまで一個人の解釈なのでご参考程度にお楽しみいただけたら幸いです。

この記事のポイント
映画『Cloud』のラストを考察する
佐野の正体とは?!

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『cloud』あらすじ

工場勤務の吉井良介は『ラーテル』という名で転売屋の副業をしていた。

真面目で誠実という評価の工場内とは異なり、
転売の仕事では売り手の足元を見る不当な金額で買いたたき、
高額な値をつけ売り捌き利益を得ていた。

勤務先の工場の上司である滝本からはその手腕を買われ、
昇進を打診されたが興味のわかない吉井はその誘いを断る。

高専の先輩で吉井を転売業に誘った張本人である村岡にも
儲かる仕事があるから一緒にやろうと言われるが
誘いにのることはなかった。

一方で転売業の方は上向きだった。
3年もの間、誰かの下で働くことに疲れた吉井は
工場を退職し、転売を本業にする決意をした。

狭いアパートも引っ越し、恋人の秋子を連れて
群馬県にある湖畔に一軒家を借りて、自宅兼倉庫とした。

アシスタントとして地元に住む、佐野をバイトとして雇い、
順風満帆な生活を送っていた。

しかしそんな矢先に、自宅の窓が何者かに割られる事件が起こる・・・。

キャスト
菅田将暉、奥平大兼、古川琴音、岡山天音、赤堀雅秋、吉岡睦雄、
山田真歩、松重豊、荒川良々、窪田正孝
 他

以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2025年1月時点のものです。
最新の配信情報は各サイトにてご確認くださいませ。

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映画『Cloud』のラストを考察する

転売業に本気を出すために仕事を辞め、湖畔近くの一軒家に引っ越し、
アシスタントも雇って順調だった吉井でしたが、
転売ヤーの売り上げは思うようにいかず、
本物か偽物かが不明なブランドバッグにも手を出していく吉井でした。

しかしそんな吉井に訪れたのは
何者かに自宅の窓を割られるなどの事件や、
吉井が偽ブランドのバッグを扱っているとタレコミをする業者などの洗礼でした。

さらに、当初は新居の大きなキッチンを喜んでいた秋子もまた
吉井の留守中に荷物をまとめて出て行ってしまいました。

そんな中、吉井の留守中のに無断でパソコンを使用したアシスタントの佐野は
吉井から信頼は崩れたとされ、解雇されてしまいます。

それでも佐野は『何かあったら声をかけてください』
と言い残して吉井の元を去っていきました。

吉井が知らぬうちにネットでは消費者感情を無視した『ラーテル』への不満や
憎悪
があふれ出していました。

その不満や憎悪は加速し膨れ上がり、ラーテルへの怒りを持する者たちが
実際に集合してラーテルを潰す行動へと発展してしまいます。

そうして囚われた吉井が拷問される様子をネット動画として流すというその集団。
その中には、滝本や村岡の姿もありました。

絶体絶命になった吉井でしたが、秋子は囚われた吉井を尾行していました。
吉井の携帯にGPSを仕込んでいた佐野もまた
吉井のピンチに駆け付け、吉井を潰す会のメンバーを射殺していきます。

佐野は吉井にも拳銃を持たせると、吉井は佐野を狙っていた殿山を背後から
撃ちました。

吉井を『命の恩人だ』と感激した佐野は吉井と共に窮地を脱しますが、
そこへも待っていた秋子は吉井のクレジットカードを奪い取ろうとして、
吉井に銃口を向けました。

ところが銃の扱いに慣れていたい秋子はしくじり、
その隙に佐野が秋子を射殺しました。

倒れる秋子に号泣する吉井でした。

佐野は吉井に
『これからは売ることだけ考えて、その他の仕事は自分に任せて欲しい。
そうすればきっと世界を破滅させられる物だって手に入る』
と言いました。

吉井は笑みを浮かべながら
『地獄だな・・・』

と言うと暗雲立ち込める渦の中へ二人の乗った車は
走り去って行くのでした。

最後のシーンが示すもの

ラストシーンで佐野が吉井に言った

世界の人を破滅させられるものも手に入る

佐野の目的がまさにこれだったのではないでしょうか。
つまりは、佐野がほんまもんの相当ヤバい奴であるという証なのです。

そしてそのために、必要だったのが吉井という存在。

佐野が吉井のどこに何の可能性を見出して
手を組むことを選んだのか。

それは興味深い謎ですが、思えば滝本も村岡も自身の人生を台無し
にしてまで、吉井を潰す会に参加しました。

裏をかえせばそれほどまでに吉井に執着したということ。

『好き』の反対は『嫌い』ではなく『無関心』という言葉がありますが、
滝本も村岡も自分に対して『無関心』を貫いた吉井に激高したのだと言えるでしょう。

しかし同様に吉井の『無関心』の対象だった佐野はそれでも吉井を助けに向かいました。
そしてそんな訳のわからない佐野に、吉井は初めて人に関心を抱いたのではないでしょうか。

最後のセリフ、『地獄だな』という言葉とは裏腹な吉井の表情がその心境を
語っていたように思います。

しかし忘れてはいけないのは佐野は吉井との間に友情を形成したいわけでは
ないのです。

利用価値がなくなり、目的が異なったその時、
地獄の入り口をくぐる時は一緒だった佐野が去った後、
たった一人の吉井がどうなるのか?

想像を絶する恐怖が待ち受けるのかもしれません。

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佐野の正体とは?!

出会ったばかりの吉井を命がけで守り抜いた元アシスタントの佐野。

吉井から解雇されたにも関わらず自分の勝手とばかりに
行動する佐野とは何者なのでしょうか。

佐野は組織に属していた?!

佐野は吉井を助けに行くために松重豊さん演じる謎の紳士を呼び出し
武器やGPS機器を調達しています。

その際、松重さんが言ったのは
『組織の力は借りないのか?』
ということ。

そして松重さんは支払いを、信用しているから『ツケ』でいいと言っており、
長年の付き合いであることも示唆しています。

この闇の世界と思しき組織に属していたか、
組織御用達の清掃員であったことが示唆される佐野。

武器の扱いに慣れ、人に銃口を向けることを躊躇しないその描写は
佐野がただものではないことを物語っていました。

しかしながら吉井を潰す会メンバーとの抗争後、
『掃除屋』を手配している素振りから、
組織との関係は良好であるか、完全に抜けたわけではないことも伺えます。

また『会長によろしく』と告げており、
自身は頻繁に会長と会うことはないが、関係性は良さそうです。

このことから会長に関しても、吉井同様に何かを見出して近づき、信用を得て
その先の目標を達成したのち、また別の目的をもって
会長の元を去った
と推察することもできると思います。

ともすれば、佐野はその時々で自分の好きなように、
誰にも縛られることなく自分の勝手に生きており、
その時々の関係性を重視する人物
と言えるでしょう。

かつては会長に対しても危険を顧みず尽力したのかもしれません。
しかし時や目的が違えば、仕える人物もまた異なるのです。

その他の謎に迫る

吉井はいつから誰に狙われていたのでしょうか。

悪意の正体

本作で吉井には様々な悪意が押し寄せます。

ねずみの死骸から始まり、ロープのトラップ、
ネットの誹謗中傷の書き込み、運送業者のツゲ口、自宅への襲撃、誘拐、監禁などなど。

それらは元上司や先輩の逆恨みと確定しているものもあれば、
誰の仕業なのかわからないものまでありました。

そんな悪意の正体とは?

ことの始まりである序盤のねずみの死骸とトラップについては実は
吉井という特定の人物に向けられたものではなかったのだと推察しています。

そのように、吉井に向けられた悪意が特別なのではなく、
この世の中には、悪意と言う名の不特定多数への嫌がらせや逆恨み、魔が差す行為など
がありふれている現状
が描かれたのではないでしょうか。

しかし吉井は自身には悪気がないとはいえ、
倒産寸前の工場の社長の足元を見て高額な医療機器を破格で買い取り
高値で売り捌き自分だけ利益を得るというようなこの行いに対する批判に
心当たりがないわけではないので、恐怖するのです。

その後に起こる事件では、自宅の窓を割った犯人は佐野の後輩ということが判明しました。
しかしそれも吉井への嫌がらせではなく、実はそこへ出入りしている佐野への
嫌がらせ
だったのではないのか?と勘ぐっています。

本作のキャッチコピーのように

【君も(誰しも)】狙われている(狙われる可能性がある)


ということなのでしょう。

秋子の裏切り

意外と佐野以上に訳のわからない存在が秋子なのではないでしょうか。

一言でいえば『悪女』
それにつきるのかもしれません。

当初は吉井からの同棲の誘いを『物が多いから』という理由で断っています。

浪費家そうであるが故に物が多いのは事実なのでしょうが、
もしかしたら吉井の他にも恋人が居て、
交際中の誰が最も自分を幸せにしてくれる存在か品定め中であったという可能性も。

湖畔に立つ一軒家に引っ越した後も、
吉井の留守中に佐野を誘惑していることから
吉井に対する愛情があるのかわからず
秋子が浮気性であることも示唆されています。

そして恋人にさえ深い関心を寄せない吉井が相手だから
恋人の浮気にも気づかないのです。

そうしてしばらくは夢の大きなキッチンを相手に
満足気だった秋子。

ですが次第にそのキッチンは荒れ果て、
デパートもモールも近くにないその地で、
愛情の大きさ=自分に貢いでくれる金額
と考える秋子にとって吉井は物足りない存在となっていったのではないでしょうか。

吉井の人生の雲行きが悪くなるのを悪女本能で察知した秋子は
吉井から金銭だけを抜き取り、新たな人生を歩むための手切れ金と
したかった。

そのためには彼氏に銃口を向けてでも欲しいものは奪い取る。
そういう女性が秋子という存在だったのではないでしょうか。

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『cloud』感想

筆者はどちらかと言うと、
人からどう見られているかがとても気になったり、
ちょっとした他人の言動で落ち込んだりもアガッたりもする
超絶自意識過剰人であります。

なので、吉井の様に人に無関心、人から指図されたくないから自身で事業を立ち上げる。
そんな志向は羨ましくもあります。

とはいえ、吉井に起こった出来事は人からの善意や妬みという感情などに気づけず
自分本位な行動や言動を発すれば、社会の中では孤立してしまう
危うさをはらんでいるという教訓なのでしょう。

それでもその道を歩むことを決めた吉井のラスト。
その後、吉井はどうなると思いますか?

謎のキャラ佐野の存在のせいで、
吉井のその後は如何様にも想像が膨らみ、
見る人によって感じ方が異なるラストが本作の醍醐味ですね。

筆者は佐野は例えば海外ドラマ『ブラックリスト』での
レッドが会長ならば、ケイト(ミスターキャプラン)のような立ち位置にある人なのかな?
と想像してみました。

しかしながら興味深いのは『ブラックリスト』とは異なり、
本作の会長は佐野にとって、レッドのように絶対的な権力を持しては
いないのかもしれないということです。

ところで、吉井のハンドルネームの『ラーテル』
佐野が反応して『流石ですね!』と感激していました。

そんなラーテルとは、見た目のかわいらしさにそぐわず、
至極狂暴でどんな大物にも挑発を受ければ襲いかかり、
その手口も残虐で、ほぼ天敵が存在しないと恐れられるイタチ科の陸生動物なのです。

そんな『ラーテル』を自分に選んだ吉井と、それを選んだ吉井に感銘する佐野。
もしかしたら2人の心中には同じ狂暴性が潜んでいる同じ種類の人間なのかもしれない
と思わされる一作でした。

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