映画【市子】の動機をネタバレ考察/母親の『ありがとう』が狂気を生んだ⁈

邦画
スポンサーリンク

※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

戸田彬弘監督が主催する舞台『川辺市子のために』
という原作を杉咲花主演で映画化された
【市子】

衝撃作と評されるとともに主演の杉咲さんの圧巻の演技が
凄いと話題になりました。

恋人の元から突如失踪した市子には
秘密があったのです。

その秘密が左右する結末はどうなるのか?
またそこに至る3つの事件の謎を紐解きます。

本記事では

・市子の結末とは
・3つの事件の動機と繋がり

に着目して推察しています。

スポンサーリンク

『市子』あらすじ

3年間の同棲を経て恋人の市子にプロポーズをした長谷川
市子は号泣して喜んでいたが、
その翌日、失踪してしまう。

市子の捜索をするべく警察に失踪届を出す
長谷川だったが、捜査の結果、川辺市子という人間は存在しない
と判明する。

動揺しながらも市子と再会したい長谷川は
市子がかつて関わった幼馴染や同級生などの元へ
足を運ぶのだが・・・。

キャスト
杉咲花、若葉竜也、森永悠希、渡辺大知、
宇野祥平、中村ゆり
 他

『市子』を視聴するには

〖市子〗はHuluでレンタル配信中!映画だけじゃない!人気のアニメやバラエティまで楽しめます

DVDなら好きな時に何回でも見直せますね!タワレコで好評販売中!

以下、ネタバレを含みます。
未視聴の方はご視聴後のご来訪をお待ちしております。

本記事の情報は2024年7月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

市子の動機をネタバレ考察

長谷川の元から逃げ出した市子に一体何が起こったのでしょうか。

前日には同棲中の恋人にプロポーズをされますが、
TVから流れてくるニュースに驚愕し、
旅立つ支度を始めます。

失踪の動機

失踪したのはニュースの事件の犯人は市子だったからです。

まもなく警察に追われる身になる市子は逃走
選びました。

プロポーズを聞いた際の市子の涙。

あの涙にはもちろん大好きな彼から『一生を共にしたい』
と望まれた喜びがあふれたのでしょう。

しかしあそこまでの号泣には他の意味もあって、
市子の方も長谷川とずっと一緒に過ごしたい。

でもその願いが叶うのはありえないことを
察して流れたしずく。

そしてその瞬間幸せをくれた長谷川との別れは
目の前まで訪れてしまったことへ流す、
悲しみと絶望の涙だったのではないでしょうか。

市子と北の運命は?

ある事件の共犯という同じ秘密を抱える市子と北

北は市子の境遇を知った上で市子を守っていくと決め
失踪した市子を探し回ります。

しかし市子は『ヒーローになる』と言ってストーカーのように
付きまとう北を煙たがるなど2人の温度差は歴然でした。

そんな中、自殺願望のある冬子と知り合った市子は
冬子の手助けをする見返りに戸籍を貰う約束をします。

身分証を持って北のもとに現れた冬子は
北と共に市子が待つ海へ。

その後、その海から身元の不明な男女2人が発見されます。

そして母親と同じ鼻歌を歌いながら歩いて行く市子・・・
で物語は幕を閉じます。

スポンサーリンク

3つの事件の繋がり

市子には戸籍がありませんでした。

いわゆる『離婚後300日問題』で
市子の父親となる人物が母親なつみにDVをする男性だった
のもあって出生届を提出しなかったのです。

その後、なつみの恋人になったソーシャルワーカーの小泉
との間に生まれた月子は戸籍を持っていました

しかし月子は難病のため進学するどころか
1人では生きることも出来ずに寝たきりの生活を
送っていました。

市子は月子の戸籍を利用し、年齢も名前も偽って
月子として進学
します。

月子の事件と母親の『ありがとう』の言葉

その一方で月子の看護もしていた市子でしたが
なつみが仕事へ出かけたある日のことでした。

いつものように月子の身の回りの世話をやいていた
市子は、月子と見つめ合った次の瞬間
月子の人工呼吸器をはずしてしまいます

呆然とするように座り込み、帰宅して異変に気付いた
なつみに何かを言おうとした市子でしたが、
なつみはそれを遮り
『ありがとう』
と告げます。

そして何事もなかったかのように
鼻歌を歌いながら家事をこなすなつみを
市子はどんな気持ちで見つめていたのでしょうか。

なつみが市子に告げた言葉は

〖殺めてくれて〗ありがとう

なのです。

本来ならば、月子の姿を見て、
取り乱し泣き叫ぶ姿を想像したのではないでしょうか。

大切な子供を失った母親の率直な感情
想像していたのだと思うのです。

しかしそうではなく、聞いたのはお礼の言葉でした。

社会から自分の存在が認められないばかりか
父親も不在で、母親と思っていた存在さえも
失ったような疎外感、孤独感
を感じたのではないでしょうか。

同時に罪の意識を感じることも奪ってしまったのです。

ちなみに母親の放った
『ありがとう』
は咄嗟に出てしまった言葉であり本心は
心が痛まなかった訳ではないと思うのです。

それ故のあの鼻歌なのではないでしょうか。
発狂してしまいたい自分を押し殺すような歌。
市子に悟られないように歌うことしかできなかったのだと
思います。

小泉の事件

市子が小学生の頃の小泉と比べて明らかに堕落
してしまったような小泉の姿は
なつみとは対照的でした。

小泉は父親として実の娘を失った傷みを
感じていたのかもしれません。

しかしその矛先を市子へ向ける小泉。

市子に暴言を吐き、罪の意識を与え、
暴行しようとします。

そんな小泉を市子は刺してしまうのです。

その現場を目撃していた北は市子の秘密を知り
彼女を守っていくと決意しました。

市子と共に小泉を運び出し事故に見せかける画策をはかり
共犯関係になりました。

2人の男女の心中事件

海辺で発見された身元不明の2人の男女。
実は視聴者にとってもその身元は明確に
明かされていません。

しかし1人は北で間違いはないでしょう。

そして女性の方は冬子なのだと思います。

時系列が交差する本作ですが最後のシーンの
鼻歌を歌いながら歩いて行く市子は
最新のものではないかと推察できます。

だとしたら冬子はともかく、
〖こんなことをしてはいけない〗
と強く主張していた北は無理心中に応じたのでしょうか。

筆者は市子にとって北が消えることにも意味があったので
殺したのだと考えています。

一つ目には北の不在によって、他人の戸籍を乗っ取る計画までの
全ての秘密を知る人物はいなくなるからです。

そしてもう一つは、同級生である北と心中した女性
の身元を市子だと誤認させる
という目的です。

2つの動機

市子にとって異父姉妹である月子。
話すことも出来ない月子は市子の目をじっと見つめていました。

まるで月子が
〖もういいよ〗
と言っているように市子には見えたのではないでしょうか。

月子の名をなのり、年齢もサバをよみ歩いて行く人生は
市子にとっては偽りのもの

社会において本当の自分は存在しない。

戸籍を持っていてもどこへも行けず、
誰とも会えない月子もまた、存在していない苦しみ
同等なのではないか。

市子はそう思ったのではないでしょうか。

冬子もまた生きていることの方が辛いと思ってしまう
何かを抱えていました。

自ら命を絶つのは絶対ダメな行為です。

しかし冬子に自分の姿を見た市子は
冬子の手助けをすることで市子自身に見立てて
自分の存在を抹消しようとしたのではないでしょうか。

戸籍を貰うのは付随した特典であり、
本当の動機は、暗い秘密を知ってもなお
市子のことを思い探しつづける長谷川を解放するために。

そのように月子と冬子の事件に関しては
相手のことを思った犯行だったのではないかと
思いました。

また小泉と北に関しては
2人とも自分が市子に与えているという認識を
持っていました。

しかし市子本人にとっては
自分の自由を奪う存在であった2人を
普通の人生を歩むために手にかけたという
自分のための犯行だったのかもしれません。

スポンサーリンク

〖市子〗感想

冒頭でプロポーズされた市子が号泣するシーンに圧倒されました。

めっちゃ泣いてるやん!

と思った違和感の理由が物語が進むにつれて
回収されていくのが演技にも脚本にも圧巻でした。

あまりにも重くデリケートな問題に関しては
筆者ごときが触れては安っぽくなるので割愛します。

しかし『家族』という存在はやはり人格形成に重大な
影響を与えるのだと思うのです。

母親としてのなつみは充分だったとは
言い難い気がします。

しかし長谷川の決意と『あなた母親でしょ』
の怒号を受けたなつみ。

その後フェリーに乗って帰る長谷川を
肌の露出の少ない
きちんとした格好で見送りに来たのが印象的でした。

長谷川に向かって深々と頭を下げるなつみに台詞があるとしたら
〖娘をよろしくお願いします〗
なのではないでしょうか。

その姿は別人のようで
母親になったんだなぁという印象を受けます。

そしてこの続きを妄想するとしたら、
なつみはこの後出頭して、
月子の事件はなつみが1人でかぶるのでしょう。

北も冬子も手にかけた市子ですが(筆者の推察)
検証では無理心中という結論になりおとがめなしで。

長谷川は市子を探し続けるけれど、
もう会うつもりはない市子は冬子として
遠いどこかでひっそり暮らす

2人が再会するのは何十年か先の話・・・。

そんな展開を想像してしまいます。

市子という人はどんな人だったのか?
それを断言することは難しいように思います。

幼少の頃から自分の人生に嘘をついていた
市子は、人を操ることや万引きに対して
罪の意識はないようでした。

そのまま成長したから
恩人と言っても過言ではない北のことも
簡単に手をかけることが出来てしまうのか。

もしかしたら北が目撃しているのを承知の上で
小泉を故意に刺した可能性もあるのではないか?
とさえ思うこともできてしまいます。

それは愛情を受けず、生きてきたとは言えない
人生を払拭し、生きることに執着するあまりの
所業なのでしょうか。

しかしながら心中事件のあと、
市子はかつて母親が月子を失くした時に歌った鼻歌
口ずさむのです。

それはやはり自分の気持ちを押し殺す
手段
だったのでしょうか。

そしてそこまでが月子、または無戸籍として生きた
嘘の人生で、
本当の自分の人生を手にいれた新しい市子(冬子)には
また違った生き方が待っているということなのでしょうか。

なかなか忘れられない一作になること
間違いなしです。


error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました