映画『月』結末をネタバレ解説・感想/事件が起こった原因と洋子の決断

邦画
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神奈川県で実際に起こった事件をモチーフにしたフィクション
映画『月』

その衝撃的な結末は視聴者に強烈な疑問を投げかける問題作でした。

賛否両論が巻き起こり、直視できない視聴者も続出した問題作の
衝撃の結末について解説、感想を綴っています。

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『月』あらすじ

元有名作家だった堂島洋子は現在は書けなくなっていた。

しかし一緒に暮らす夫の昌平は人形を使用したアニメーション映画作家
の夢を追いかける身である。

生活のために洋子は新たな仕事を求め、森の奥にひっそりと佇む
重度障害施設で働くことを決める。

初出勤日、洋子は
施設へ向かうと若い女性の職員が笑顔で出迎えてくれた。

彼女も同じ陽子(ヨウコ)という名前らしい。

陽子は作家志望で洋子のことも知っていたため一緒に働ける
ことを喜んでくれた。

また紙芝居を制作し、入居者に聞かせる、さとくんという職員
にも挨拶を交わす。

しかし働き始めて間もなく、職員による入居者への暴行とも
とれる現場を目撃してしまうのだった・・・。

キャスト
宮沢りえ、磯村勇人、長井恵理、大塚ヒロタ、笠原秀幸、板谷由夏、
モロ師岡、鶴見辰吾、原日出子、高畑淳子、二階堂ふみ、オダギリジョー
 他

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以下、結末のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2025年6月時点のものです。
最新の状況は各サイトにてご確認くださいませ。

『月』の結末をネタバレ解説

視聴者に向けて『あなたはどうですか?』
投げかけてくるような本作。

その結末で洋子はどんな決断をしたのでしょうか。

『また起こるかもしれない』という恐怖

洋子と昌平の夫妻にはかつて息子がいました。

その息子は生まれつき心臓に疾患を抱え、手術をきっかけに重度の障害
負ってしまうのです。

それから息子は一言も話せないまま、3歳というあまりにも短い命を
終えて旅立っていったのです。

月日の経過は夫妻の悲しみを癒してはくれませんでした。

重度障害者の施設での勤務を選択したのは
もしかしたら我が子に何もしてやれなかったという母親の
罪の意識がもたらしたものなのではないでしょうか。

しかし働き始めて早々に洋子の懐妊が判明しました。

洋子の脳裏に真っ先に浮かんだのは喜びではなく恐怖だったのです。

かつて起こったことはこれからも起こる

という旧約聖書の言葉を重く受け止めている洋子は40歳を超えての妊娠であり
再び、障害をもった子どもが生まれてくるかもしれないという恐れでした。

それゆえ、その懐妊を昌平にも告げることができず、
一人で中絶を悩む洋子なのでした。

洋子の中の善と悪

さとくんに不穏さを感じとった洋子は彼と対峙して
計画していることを止めようとします。

さとくんは『重度の障害者は意志疎通ができない。それは心がないのと一緒』
だと言い、そういう人は社会には必要ないのだと言うのです。

そしてその思いは洋子さんと同じだと言うのです。

洋子が出生前診断を行いお腹の子が障害者なら生まないという決断をする
その命の選択が自分の思いとどう違うのかと問うのです。

洋子を問い詰めるさとくんはいつの間にか洋子自身に
なっていました。

意志疎通ができない入居者を手に掛けようとしているさとくんと
障害を持った子どもをなかったことにする洋子との違いは何か?

押し問答するのはまるで洋子の中の善と悪の
争いのようでした。

洋子はさとくんに『あなたを絶対に認めない』と反論していましたが
洋子が認めたくなかったのは、洋子自身の中にも潜む、差別思考や優性思考
だったのではないでしょうか。

絶望とかすかな光と

さとくんは政治家にも犯行予告文書を送っており、
これが問題視され精神病院へ入院することになりました。

しかしわずか2週間で退院したさとくんは
ネットで入手した凶器を手に、髪を金色に染めて
施設へと向かい計画を決行するのでした。

その頃、小説を書き上げた洋子と作品が受賞した昌平は
久しぶりに夫婦として向き合い、お互いの前進を喜び合うのでした。

出会いのきっかけとなった回転寿司を食べに行った夫妻でしたが
昌平は店のTVに映ったニュースでさとくんが犯行に及んだことを
知ります。

洋子は昌平とこれからも2人で生きていくことを
力強く確認した後、施設へと走って向かいました。

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『月』のメッセージと洋子の選択

洋子が出産前診断をするのか?もし陽性ならどうするのか?

その部分の結論は劇中では描かれませんでした。
しかし、ラストで夫婦がお互いを大切に思う気持ちを言葉にした時、
明るい未来を見据えた希望が垣間見れた気がしました。

そして筆者には洋子が出生前診断をするかどうかはさておき
何があっても産む決意をしたのだと受け取りました。

『月』が問いかけていること

さとくんは、重度障害者たちの意思疎通ができないことは
『心がない』ということ。

だから人間ではない。と言いました。

本作は果たして
人間とは何か?
人は何故生まれてくるのか?
生きる意味とは?

など思いテーマを投げかけてきます。

社会に向けて存在意義を掲げたさとくんを何が突き動かして
しまったのかは、本人以外わからないことでしょう。

しかしその一つの背景には自身の生きている意味がわからず、
重度障害者の姿に自身を投影し、生産性がないという共通点
見出してしまったのではないかと思います。

ある意味、生産性がない自分の否定や自分の生きている意味を証明するため
の歪んだ正義が彼を突き動かしてしまったのではないでしょうか。
(個人的には人に向けて生産性などという表現自体が間違いであると思っていますが)

それでも視聴者が本作から感じ取らなければいけないのは
人が人の命を奪うことなど許されないという基本のルールなのです。

劇中に映る重度障害者はまぎれもなく人間でした。

彼らが『あなたには心がありますか?』の問いに
答えられなければ意思疎通ができないことにはならないとも思います。

実際の現場を知らないから簡単にそんなことが言えるのかもしれません。

それでも、それ以外の回答はありえない
そんな社会を期待したいのです。

洋子を照らす光

入居者に対して真面目に誠実に対応する洋子にも
心の奥底には闇がはびこっていました。

3歳の息子を失くした傷が癒えぬまま
新たな命が芽生えたことで恐怖が押し寄せたのです。

幼い息子の喪失は洋子の生きる意味まで失わせてしまいました。

その上で年齢的なリスク、そして再び障害のある子が誕生することを
恐れたのです。

その恐れから、妊娠を昌平にも告げずに中絶することを
考慮していました。

そんな洋子の気持ちに変化が表れるのは奇しくも
さとくんの歪んだ思考を知ったのがきっかけになりました。

そうしてラストで『できることをしなければ』として
絶望の施設に向かった洋子にはもう迷いはなかったように思います。

例えどんな苦悩が待ち受けようとも愛する夫との間に芽生えた
大切な命を守っていく
ことを決意したのではないでしょうか。

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何故事件は起こってしまったのか?

洋子は施設で入居者が暴行や暴言にさらされている事実を
所長に訴えます。

その際、所長はさとくんも始めは同じように訴えてきたと言うのです。
彼が当初は入居者に寄り添った職員であったことがわかります。

そのさとくんが何故事件の加害者となってしまったのでしょうか。

自分とは違う存在

入居者に聞かせてあげるために、絵の得意なさとくんは手作りの紙芝居
作って、練習をしていました。

しかしそんなさとくんの行動に、先輩職員たちは余計なことと罵倒します。

さらに先輩たちは何を言われても微笑むさとくんのことを
お前もあっち側か?と言って紙芝居を破り捨てたのです。

この一件こそが、さとくんの心に影を落としてしまった
言っても過言ではないかもしれません。

その後、さとくんは、
破れた紙芝居を月の形に整え、窓が閉鎖されて外の景色が見れない
きーちゃんのために月を壁に貼ってあげるのです。

しかしその後、洋子と陽子が現れ、
入ることを制限された部屋で大きな物音がすると報告に来たのです。

洋子と陽子とさとくんで向かった部屋の実態は
さとくんにとって犯行へのトリガーとなってしまったのかもしれません。

その部屋を開けた途端、鼻がもげるほどの異臭が漂い、
洋子も陽子も顔を歪ませ口元を抑えました。

部屋の奥に居た老人の男性は裸で自身の糞尿を身体に塗りたくっていました。
その部屋は入ることを制限された、いわば社会から見放されたという象徴だったのです。

そんな場所に隠されたその老人は社会の役に立っているとはいえず
人としての尊さが欠けた存在だとさとくんは思ったのです。

そして先輩たちが言った『お前もあっち側か?』という言葉が頭をよぎり、
その男性と自分が重なります。

自分は違う

とさとくんは強く思うのでした。

入居者を明確に差別した瞬間でした。

そして彼らとは違う自分の生きる意味を見つけて
履き違えた使命感に囚われてしまったさとくんは凶行へと突き進んで行くのです。

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『月』ネタバレレビュー

本作の試写会では実際に施設等で働く関係者たちが招待されたのだと
いいます。

そして本作に対する嫌悪を示した方たちもいらしたのだそうです。

筆者が本作を鑑賞していた当日に、ある施設の入居者が職員に対し
暴行を行った旨のニュースを見ました。

劇中でモロ師岡さん扮する所長が言ったように、暴れる入居者も存在する
という事実があるようです。

しかし暴れられた際もくれぐれも虐待と疑われないようにと、
誠実に仕事に向き合っていればいるほど、
職員の方々には苦悩が絶えない現実があるのでしょう。

本作のさとくんも当初は自作の紙芝居を披露したり、
入居者への虐待を所長に報告するなど真面目に向き合っていたと
言えます。

しかし会話が成り立たず、暴れたり、奇声を発したり、
時には糞尿をなすりつけられたりと、それだけでは
そんな日々に順応することは多くの人にとって困難なのかもしれません。

例えば、せめてたった一言
『ありがとう』
の気持ちを受け取っていたなら何か違っていたのかもしれません。

さとくんが思う、人間ではない可哀そうなきーちゃんを
手に掛けた後、駆け付けた高畑淳子さん扮する母親は
娘の訃報に嗚咽と叫びをあげていました。

それこそが『殺してはいけない』理由だったのではないでしょうか。

母親はまぎれもなくきーちゃんを大切に思っていました。
もしかしたらきーちゃんだけが生きる糧になっていたかもしれません。

しかし母親はあの後、娘が奪われた悲しみと犯人への憎しみ、そしてあの施設に
娘を預けてしまった自責の念を
その先一生抱えて生きていくことになるのです。

さとくんは、娘の命を奪っただけではなく、
娘を思う母親の人生までも奪ってしまったのです。

ところで、本作には実際の障害を抱えた方たちがご出演されています。

その意味はどこにあるのか?

障害者と力を合わせて一本の映画を作り上げた。
それは、意志疎通もできるし、社会にも貢献している
という証明であり希望なのではないでしょうか。

出演された方々自身の身にも撮影を通して良い変化が
表れたのだと言います。

成長が出来ることこそ生きている意味と言えるように思います。

何をもって人間とするのか?
人間としての容姿であればそれは人間なのではないでしょうか。

また中島みゆきさんの曲にもあるように
命とは心の別名なのだという意見に一票です。

あんなに世間を騒がせた実際のあの事件さえ、
日々起こる事件に上書きされようとしています。

本作はとても衝撃が強い作品ではありますが、
『また起こる』を引き起こしてしまわないためにも
不可欠な映画だったのかもしれません。

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