ネタバレ考察【バビロン】ネリーが姿を消したのは何故?蛇と闘うスターの意味とは?

洋画
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1920年代のハリウッド。
それは映画史上最も輝いた黄金時代と呼ばれたのだそう。

そしてサイレント映画からトーキー(音の入った)映画へと
進化を遂げる時代でもありました。

そんな移り変わりに翻弄される名優をブラッド・ピットが演じた映画
【バビロン】

監督・脚本は『ラ・ラ・ランド』や『セッション』で知られる
ディミアン・チャゼル

前半と後半でガラっと雰囲気が変わる本作の
後半部分に着目し、

・ネリーの行動の意味
・ジャックの行動の理由
・蛇のシーンについて
・ラストのマニーの涙

などについて解説、推察しています。

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【バビロン】あらすじ

1926年、サイレント映画の大スタージャック・コンラッド
毎晩にように開催される映画のような豪華なパーティーの主役だった。

そんな場所で、ハリウッドに憧れる青年マニー
大スターになることを目指す名もなき新人女優ネリーは出会う。

2人はその後、ジャックに見初められて映画制作に関わるマニーと
スター女優へのチャンスを掴むネリーという風に
ハリウッドへ進出していく・・・。

キャスト
ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、
ジーン・スマート、ジョヴァン・アデポ、リー・ジュン・リー、
P・J・バーン、ルーカス・ハース、オリヴィア・ハミルトン、
トビー・マグワイア、マックス・ミンゲラ 他

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以下作品のネタバレを含みます。
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本記事の情報は2024年4月時点のものです。
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ネリーのモデルは実在の名女優

本作のヒロインであるネリー・ラロイ
ネリーは当時の女優たちをモデルにしたというキャラだそうなのですが
中でもクララ・ボウという当時の人気女優色が濃くでているらしいです。

実際のクララ・ボウさんですが、父親は彼女に虐待をしており、
母親は精神を病んでいたという、辛い幼少期を過ごしたと
いわれています。

クララさんも当時の名女優として人気を博したものの、
その後はスキャンダルなどもあって映画から遠ざかっています。

しかしながらネリーと異なるのは
クララさんの方は引退後、パートナーや子どもに囲まれ
その余生を過ごしたというこです。

失墜したスター

一度はスターの座を掴んだものの、
時代の変化の波にのまれ失墜してしまうネリー。

彼女はギャンブルに溺れ、多額な負債を抱えてしまうことから、
逃げることを余技なくされる運命に陥ります。

しかしながらネリーに思いをよせるマニーが
奮闘し、ネリーを助けるべく、メキシコへ一緒に逃げようと
誘います。

その際にネリーにプロポーズするマニー。
それに応えてプロポーズを受けるネリーでしたがその後、
マニーが荷物を取りに行った矢先に1人姿を消してしまいます

それは何故なのでしょうか。

ネリーが姿を消した理由

プロポーズを受けたにも関わらず、1人で暗闇へと消えた
その理由は何なのでしょうか?

それは、ネリーがスターだった当時、
再会したマニーとの会話で示唆されていました。

アイスクリームのトッピングが嫌い。
(必要ないし、アイスのいいところを台無しにする)
私は全部自分で決める。用がなくなったら自分で夜の闇に消えてやるわ。
私は一切誰の言いなりにもならない

この台詞でいうネリーはアイスクリームなのです。

自分を表現したいから映画業界への進出をはかり、
それこそがネリーの生きる理由であったと言えます。

あのネリーの復活計画のパーティーという短時間でさえ
自分を押し殺すことに耐えられなかったネリーには
結婚して家庭の一員になるという選択肢はありませんでした

プロポーズを受けたのは、
自分を思い、スターの座を失った自分に結婚しよう
と言ってくれるマニーに、
涙を自在に流せるネリーが感謝を込めて贈った演技だったと言える
のではないでしょうか。

奇しくもハリウッドの一員になりたかったマニーにとっては、
ハリウッドスターのネリーとの結婚でその願いは成就し、
ネリーにとっては、そのプロポーズを受けることがハリウッド
で自分が用済みになったことを意味し、
マニーとの終わりを告げるという皮肉な結果になったのです。

蛇が象徴するもの

蛇は『永遠』、『執着』、『再生』などの意味をもつ象徴
だといわれています。

ジャックやネリーが蛇と対峙するあのシーンでは
彼らの運命についてが示唆されていたと思われます。

コトの発端は、家族だからという理由だけで、
マネージャーをさせているネリーの父親が仕事をこなさないだけではなく、
あまりにもお金に執着し、嘘をつきまくってもてようという醜態をさらして
いたので、蛇の退治をけしかけたことから始まりました。

結局父親は蛇に触れることさえできないという結果に終わります。
映画界という生半可な覚悟では成功しない世界に足を踏み入れることさえ
叶わない人物だったといえるでしょう。

そして自らも蛇に立ち向かうネリーでしたが、
蛇に噛まれ、みるみる毒がまわってしまいます。
ネリーもまた、変わりゆく映画界で再生できなかった運命が示唆されます。

そんな中、傍観者のように立ちすくんでいたジャック
パートナーが助けを求めたことで蛇に立ち向かうべく向かうジャック
でしたが、蛇のもとに辿り着く前に車に轢かれてしまいます。

脅かされることのなかった大スターの座は永遠ではなく、
ジャックの時代が終わり失墜していく未来を示しているようでした。

そうしたドタバタの中をただ1人半ば見下すように冷静に見守り、
蛇を断ち切ったのはフェイでした。

フェイはハリウッドでの仕事を失うことになりますが、
ハリウッドへの未練を断ち切り、拠点をヨーロッパに移すことで
波乱の映画界の闇にのまれなかった人物だといえます。

ハリウッドの光と影

ジャックやネリーが成功したサイレント映画界。
それは時代の波と共に終わりを告げ、
代りに到来したのはトーキーの時代でした。

かつてのサイレントスターたちは、演技をすることを強いられます。
それに伴って、俳優の顔や表情だけではなく『声』が重要視されるのです。

時代の流れに逆らってはいけない
がモットーのジャックはトーキーの時代に対応するべく
尽力をするものの、その壁は高くはびこっていました。

そして実際の出来上がった自分の映画を見にいってみると、
ジャックの『愛してる・・・』という台詞の連呼は観客の失笑を
さそっていたのです。

サイレント映画のような台本ではトーキー映画では通用しない
と共に、ジャックの演技や声もまた通用しないのだという証でした。

ジャックの時代の終わり

旧知の仲であるエリノアが自分に対する酷評を書いたことに
憤りを隠せず、話をしに行くジャックでしたが
エリノアからは意外な言葉が発せられます。

【あなたが悪いんじゃない。時代なのよ。…中略…
でも100年たってもあなたは(映画の中で)蘇る
才能を与えられたことに感謝なさい】

多くの人たちは、消えてしまえばそれまでである。
それに対し、安定やお金といった生きている間にだけ通用するもの
ではなく、自分の居ない100年先であっても忘れ去られることのない
卓越した存在であり、それを成し遂げられるのが
映画界でスターになるということ。

それに気づかされたジャックは
お礼を告げるとエリノアのもとを後にします。

しかし・・・。

ジャックが自ら命を絶った理由

魔法のような場所の中心にいたジャックは
その魔法がとけていくのを実感するのです。

ジャックの才能を見出してくれた、サイレント映画を繁栄させた同志である
ジョージの死は、ジャックに打撃を与えました。

ミュージカルスターの妻からの演技の助言
大スタージャックのプライドを傷つけました。

加えて一流の俳優は引き受けないような駄作への出演オファー

そうして自分の時代が終わりを告げたことを悟ります。

そんな変わりゆく時代に逆らってはいけない・・・
そう感じながらも、逆らわないで順応しようとすることに疲れたのです。

ジャックは魔法の時代のようなサイレント映画の世界が好きでした。
映画製作に誇りを持つ、その魂は本物だったのです。

誰よりもこよなく映画を愛するジャックにとって
その映画に携われないことは、生への執着を失くすことと同じ
だったのではないでしょうか。

ラストのマニーの涙の理由

マニーはネリーが1人で消息を絶った後、
恐らく1人で逃亡し、ネリーではない違う女性と家庭を築きます。
そうして何年か経ったある日、ハリウッドを訪れたマニー。

かつて夢見て働いたその場所で
映画を見るマニーは思わず涙を流さずにはいられませんでした。

ジャックやネリーたちの魔法は崩れてトーキーの時代が
映画界を牛耳ったとき。

ジャックもネリーもこの世界から消えてしまいました・・・。

けれど技術が進化したその映画の中に、
かつてのジャックやネリーが見えた気がしたからです。

革新的な映画の中にサイレント映画の歴史が
垣間見れたのです。

そのことはサイレント映画とそれに携わった作り手たちを肯定
されたことと等しかったからです。

かつて描いたハリウッドという大きなものの一部になりたかった
という夢が叶った気がしたのでしょう。

【バビロン】感想

かつて映画と言えば映画館へ足を運ぶものでした。
しかし近年は便利で優秀なサブスクが充実しており、
最新作を今すぐ見たいというこだわりさえとっぱらえば、
自宅にいながら沢山の映画を見ることができます。

そんな風に時代の変化とともに
求められるものもまた変化していきます。

なぜ人は映画を鑑賞するのでしょうか?

それは人それぞれかもしれませんが、
筆者にとってその答えは
人生に潤いを与えてくれるもの〗
だからです。

ジャックが魔法のようだと表現したその場所で作られた映画には
自分の本当の人生だけでは味わえない、
ドキドキや感動をもらえるのです。

そして時として、作り手が込めたそのメッセージは
励ましと生きるためのヒントをくれることもあります。

本物の人生を生きるために、
時には嘘にまみれた世界=映画の世界に足を踏み入れたくなるものです。

ところでサイレントの時代が黄金期といわれるのは
お金でも名声でもなくて映画をこよなく愛したジャックたちのような
作り手により出来上がったものだからなのでしょうね。

本作は約3時間の物語。
それを長いと感じる方もいるでしょう。
そして劇中の、過激描写の数々は、
好き嫌いが別れる映画かもしれません。

実際、筆者も汚物系はかなりきました(笑)

しかしそこには華やかで憧れの的であるハリウッドスターになるために
おどろおどろしい貪欲な行動によってチャンスを掴みとったり、
そうして一躍光をまとえたとしても、
いつしか多くの者がそこから落ちていく運命にある。

そんな
華やかな中に宿った暗いものも確実にあるのだという
描写なのかもしれません。

ジャックやネリーも素晴らしいアクターでありながら、
時代という抗えないものに敗れ、消えていきました。

それでもお金とかではない映画愛によって作り出された魂は
映画界の歴史として永遠に残るのだろうと思うのです。

見る者だけではなく作る者をも魅了する、
そんなすばらしい『映画』だから、過去にも未来にも存在し、
どんなに時代が変わったとしてもそれがなくなるということは
ないだろうと思える一作です。

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