コロナ禍において劇場公開予定だった映画がやむなく延期になり
Netflixでの配信に切り替わったという本作
【ザ・コール】
劇場公開するはずだったのも納得の丹念に作り上げられた
タイムミステリー。
緊迫感と怪演は後を引きます。
そんな本作ですが、
ラストはどういうこと?
なんでああなったの?
という疑問が沸いてくる方も多かったのでは?
本記事では賛否両論のラストシーンについて
深堀考察しています。
〖ザ・コール〗あらすじ
韓国発のコンテンツと聞いて「恋愛」をイメージする方は多いかもしれませんが、いま最も話題になっているジャンルのひとつが「ホラー」です。ハリウッドやJホラーと異なる魅力を持つ韓国ホラー。その最前線で何が起きているのか、宇野維正さん @uno_kore が解説します。https://t.co/8cGXnjPDHa pic.twitter.com/z6GgrclRwb
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) January 27, 2021
入院中の母親を見舞うため、久しぶりに故郷に戻る28歳のソヨン。
母親にきつくあたり、病院を後にする。
しかし実家に帰る道中で携帯を紛失してしまう。
仕方なく、家にあった使われていない旧型のコードレス電話を引っ張り出してみる。
失くした携帯の持ち主に繋がり、返してもらおうと話すソヨンだったが
相手の女性は謝礼を要求してきた。
また懸けると言い残して切れた電話。
途方に暮れていると、着信が。
それは助けを求めるヨンスクと名乗る女性からの電話だった。
最初は人違いだと言って相手にしなかったソヨンだったが
その女性が助けに来て欲しいと言って告げたのは
まさにソヨンが居る実家の住所だった・・・。
キャスト
パク・シネ、チョン・ジョンソ、キム・ソンリョン、イエル、パク・ホサン、
オ・ジョンセ、イ・ドンフィ 他
以下、作品の結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意くださいませ。
本記事の情報は2024年4月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
母親との絆、「ザ・コール」のラストに迫る
1999年と2019年という違う年代を生きるヨンスクとソヨンの2人の女性が
一本の電話によって繋がりました。
二人は時こそ違えど、同じ家に存在し、1999年のヨンスクが起こすことは
2019年のソヨンの運命を変えていきます。
また2019年を生きるソヨンが知っているヨンスクの未来を教えることで
ヨンスクもまた運命を変えることができました。
ソヨンは父親を取り戻し、ヨンスクは自身の命を救えました。
幸せの奇跡のように思えたことでしょう。
2人の友情が続いているうちは・・・。
それは過去からの惨劇へと変わっていく
ソヨンは父親を取り戻し、生活も一変して、
幸せな家族の時間を送っていました。
そんな中でヨンスクからの電話をおざなりにしてしまうのです。
それは通常ならば取返しのつかないことではありませんでした。
しかしヨンスクは精神を病んでいました。
一度電話を無視されただけでも、被害妄想は膨らみ、
どんどん闇の方へとひきづられていってしまいます。
見捨てられた、裏切られた、憎い女・・・という風に。
さらに家では義母に半ば虐待じみた仕打ちを受けており
心のよりどころといえばソヨンとの電話だけだったのです。
そしてヨンスクの怒りはソヨンへの憎しみへと
変わっていき、過去の襲撃と現在の逆襲が始まるのです・・・。
過去を人質に取られた先に
ヨンスクは運命が変わったばかりのソヨンの父を手にかけ、
1999年の頃の幼いソヨンを人質にとります。
助けに来た1999年のソヨン母と電話で繋がる2019年のソヨン。
母娘は励まし合い、1999年では母VSヨンスクが、
2019年では現在のヨンスクVSソヨンがそれぞれ対峙します。
1999年で娘を守る母はヨンスクと共に転落してしまいます。
動かなくなった二人。
時を同じくしてヨンスクに襲われ絶体絶命だったソヨンは
目を閉じて最後の時を覚悟したようでした。
しかし目の前のヨンスクの姿は消えていました。
その家から抜け出し病院へ行くも母親は見つからず。
父が眠る墓地へ向かうと、古傷を負った母が姿を現す。
ヨンスクと対峙してできた傷跡を眺めながらも
母が生きていたことにホッとしたソヨンは
母と腕を組み歩いて行く・・・。
そしてエンドロール。
ラストシーンの意味を徹底考察
豹変するヨンスクによって巻き起こる惨劇も
恐ろしいものがありました。
しかし娘を思う母は強かった。
母娘の思いは勝ったのだ・・・そう思った矢先、
不吉なエンドロールと共に本当のラストが
見ているものを突き落とすのです・・・。
腕を組んで歩く母娘に異変が起こる
ソヨンは母へのわだかまりも解け、母娘は肩を並べ歩いてゆく。
そんなハッピーエンドと思われた物語の結末に暗雲が立ち込めます。
エンドロールが流れる中で、並んで歩く母の姿だけが突如消えたのです。
その頃、1999年では倒れていたヨンスクが目を覚ましました。
エンドロールで何が起きたのか?
最大の謎はその時系列とソヨンと母に何が起こったのか?
ではないでしょうか。
ありのままを受け入れれば
①1999年でヨンスクとソヨン母が転落
→2019年でソヨンを襲おうとするヨンスクが消える。
②過去ではソヨン母が先に意識を取り戻し、幼い娘を連れて脱出。
→現在でソヨンと古傷の残る母が再会。
③過去でヨンスクが目覚める。
→目覚めたヨンスクがソヨン母を殺害し、ソヨンを監禁する。
→現在でソヨン母が消え、大人ソヨンは監禁されていた。
という時系列になるかと思います。
そしてそうなったいきさつの裏には
現在のヨンスクが1999年のヨンスクに電話で
電話を手放さないで。未来が変えられなくなる。
と忠告をしていたことが明かされました。
不可解な謎
過去の書き換えにより変化していく警察手帳はソヨンが持っていました。
リアルタイムで変化するその内容を知らない限り
1999年のヨンスクに忠告をするのは難しい気がします。
2019年のソヨンがヨンスク宅に侵入してまもなく
ヨンスクが誰かに電話をかける様子の描写がありましたが
そのタイミングではソヨンが所持する手帳を見ることは
できないのでタイミングが早い気がします。
さらに電話は1999年ではソヨン母が所持し、
2019年ではソヨンが所持していました。
つまりヨンスクは電話を手放してしまったと言えるのでは
ないでしょうか。
そのようにあのラストシーンにはいくつかの謎が
存在します。
そこで少し無理やりな深読み考察をしてみました( ´艸`)
パラドックスを修正する力
ソヨンが生きている現在では
ソヨンの父親は存在しない。
ソヨンの母親は病気のため人生の残り時間は少ない。
ヨンスクもまた義母の手によって存在していない。
これが正しい運命だとすれば、
ヨンスクによって変えられた運命を
再調整しようとする力が働いた可能性はないでしょうか。
ソヨンの父親は再び亡くなってしまいますが、
これにヨンスクが関与はしているものの、
父親に起こった結果は元通りの運命に修正されたことを意味する
出来事だったのかもしれません。
同様にエンドロールで母親が消えたのも
1999年で目覚めたヨンスクはソヨン母を殺したかもしれませんが
母親が消えたのは本来の寿命がきたため。
そして
義母の暗殺を乗り切ったヨンスクもまた
生きていてはいけない存在なのです。
2019年のヨンスクがソヨンに勝利する寸前で消えたのは
1999年のヨンスクとソヨン母が転落したことによるものではなく、
1999年のヨンスクが生存していることを受けてループした結果
だったのではないでしょうか。
では、最後の最後で幼少のソヨンが監禁されていたように
現在のソヨンが監禁されていたのは何故か?
それは2019年までは生きていた証があるソヨン。
1999年で監禁されていたとしてもそこで命が消えることは
なく結果として生かされたのではないでしょうか。
しかしまだ起こっていないこと、つまりラストのその後のソヨン
に起きる運命は誰も知る由がありません・・・。
『ザ・コール』その他の考察と感想
イギリスの映画【恐怖ノ黒電話】を原案にしたという本作。
本家の結末も十分恐怖を感じることができますが、
〖ザ・コール〗は、これでもかという過去隊の圧勝を見せつけられ
主人公がバッドエンドを迎えてしまうラストが斬新すぎました。
解くのが難解なラストシーンゆえに、
何通りも考え方が広がる気がします。
筆者は再調整する力が作用していると考えましたが、
今まで過去からしかかけられなかった電話を
未来のヨンスクが過去のヨンスクにかけていた描写から
途中から電話のルールが変わった
と受け取ることもできますし、
そうなるとやはりパラレルワールド系だととることもできますね。
さらに劇中に提示されるソヨンとヨンスクの2人の病気も気になります。
特にソヨンの空想虚言症。
物語上は父を失くす原因となった火災の責任は自分にあるにも
関わらず、母のせいにして母を憎んでいたという設定で使われました。
しかしだとすると、いわゆる『信頼できない語り手』となってしまい
劇中で起こった何が本当で何が幻想なのかという問題が発生します。
エンドロールの母親が消えてしまうシーンに関しても
そもそも母親はそこにおらず1人で歩いていた
という描写だったということも考えられます。
もっとさかのぼると、ソヨンがあの火災を起こし
現場の検証や家族の証言、ソヨン自身の証言を聞いた専門家は
ソヨンを病院へ入院させる必要があると考えた。
じつはそれ以来ソヨンはずっと病院の中にいた
・・・という可能性もゼロではないかもしれません。
有能な霊媒師だった義母が起こしたヨンスクの事件
その現場であるあの家。
あの家自体に踏み入ってはいけなかったのかもしれません・・・。
緊張感と絶望感とイヤミス全部味わえる
ホラーMAXな一作です。