ジョニー・デップの娘リリー=ローズ・デップと
ザ・ウィークエンド(エイベル・テスファイ)が主演を務めた
『THE IDOL/ジ・アイドル』
『SATC』や『ゲーム・オブ・スローンズ』で有名なHBOと
数々の話題作を放出している
A24のコラボが実現したTVドラマなのです。
他にもBLACK PINKのジェニーやトロイ・シルヴァンの出演などで
話題を呼びました。
しかし
本作は、全5話という短いストーリーで打ち切りとなりました。
批評家やファンに及ぶまで視聴者からの物議を醸しだしたとされる
『ジ・アイドル』は酷いのか?
そんな本作はどこで見られるのか?
実際に視聴してみたネタバレありの感想まで、
『THE IDOL /ジ・アイドル』に関して徹底解説しています。
この記事のポイント
・『THE IDOL/ジ・アイドル』は何処で見られる?
・『THE IDOL/ジ・アイドル』炎上の理由とは
・『THE IDOL/ジ・アイドル』はどんな物語?
『THE IDOL/ジ・アイドル』のあらすじは?
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華やかな音楽業界で活躍してきたポップスターのジョスリン。
しかし彼女は母親を亡くしたことをきっかけに
神経衰弱に陥り、自身のツアーもキャンセルとなった。
そんなジョスリンの再起をかけて集まったチームは、
新曲を皮切りに再びツアーの計画を立てていた。
さらにカバーの撮影やMVのリハーサル、ダンスの練習など
新曲のリリースにむけて動き出していた。
しかし当のジョスリンはこの新曲を気に入ってはいなかった。
加えて、まだ本調子とは言えない様子の
ジョスリンに広報担当は懸念していた。
そんな折、仲間と共に訪れたクラブで
ジョスリンはクラブオーナーのテドロスと出会う。
2人はすぐに意気投合し、ジョスリンはテドロスを
自身の豪邸に招き入れたことから事態は急変していく・・・。
キャスト
リリー=ローズ・デップ、エイベル・テスファイ(ザ・ウィークエンド)、
スザンナ・ソン、トロイ・シヴァン、ジェーン・アダムス、
ジェニー(BLACK PINK)、レイチェル・セノット、ハリ・ネフ、
モーゼス・サムニー、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ 他
『THE IDOL/ジ・アイドル』は何処で見られる?
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『THE IDOL/ジ・アイドル』炎上の理由とは
一般の視聴者や映画評論家などプロのレビューでも
『酷い』と酷評するものが一定数存在するようです。
その理由とは何なのでしょうか。
過激すぎる描写に批判の声
主演のリリー=ローズ・デップ(以下リリーと明記)が常に露出度が高いことも
さることながら、必要性が感じられない過激な性描写も多く、
時に暴力的にも感じられる描写などは厳しい批判の的となりました。
しかし主演のリリーは、そのような演出方法も、監督に対しても
『最高だった』と明かし、自身の露出に関しても、
感情の露出を表していると前向きな発言をしています。
一方でリリーの父親のジョニー・デップは娘の過激な場面の連続や
露出について怒り心頭なのかといえばそうでもなく、
娘を賞賛し評価をしている模様です。
俳優の演技力に厳しい評価
出演俳優の演技力の低さについても厳しい評価が
なされているようです。
特に演技力が心もとないとして名前が挙がってしまったのは、
テドロス役を演じた
エイベル・テスファイ(ザ・ウィークエンド)の演技です。
『棒読みすぎる』、『演技力皆無』とまで
言い切る批評家もいました。
相反して主演のリリーの演技に関しては
『彼女の演技は面白い』
『違う作品での彼女を見たかった』など一定の高評価が
見られるようです。
ちなみにリリーが本作の出演にあたり参考にしたのは
『氷の微笑』のシャロン・ストーンなのだそう。
批判が集まる背景には監督の交代劇が
ウィークエンドが主演、企画、制作総指揮、脚本を担当
サム・レヴィンソンが製作総指揮を担う本作。
ですが、その脚本には整合性がないといった
内容に対しての批判も見受けられました。
そもそも本作を仕切っていたのは『ガールフレンド・エクスペリエンス(TV版)』など
を手掛けたエイミー・サイメッツという女性監督だったのです。
ストーリーの8割の撮影を終えていた時点のサイメッツ監督に
突然の降板劇がふってわきました。
その後を継いだのが、『ユーフォリア/EUPHORIA』のサム・レヴィンソン監督。
しかしこの時、ストーリーが大幅に変更されたと言い、
多くの場面が撮り直しになったと言います。
そしてその変更されたストーリーの中に組み込まれた要素こそ
性的で暴力的なものへの美化だったと言われています。
もしも監督の交代がなかったら
ここまでの物議は起こらなかったのかもしれません⁉
続編はない
本作を手掛けるHBOは
〖シーズン2への更新をしない〗ことを熟考の末に
決定したのだそう。
さらに全6話の予定も最終的には5話へと
短縮されました。
継続をしない主な理由には次シーズンに向けたストーリーの
展開が用意できなかったとしながらも
様々な憶測が飛び交いました。
過激な描写に視聴者や評論家からの
批判や非難が殺到したことで物理的に続けられなくなった
というもの。
制作総指揮も務める主演のウィークエンドの横暴さに
制作陣の嫌気がさし、これ以上、共に仕事をしたくないとする噂。
その過激なストーリーには制作内部のスタッフたちでさえも
不快な気持ちを持っていたとされること。
どれが真実でどれが憶測なのかは不明ですが
全5話での打ち切りが決定したのです。
以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴のk他はご注意ください。
本記事の情報は2024年8月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
『THE IDOL/ジ・アイドル』はどんな物語?
過激な表現や描写にばかり注目が集まってしまった本作ですが、
本来ならば描かれたテーマは興味深く、憶測を呼び起こし、
刺激的で怖い物語なのではないかと思うのです。
不必要な性的シーンや女性軽視を連想させるような場面は
置いておくとします。
主役は悲劇のポップスター?!
元人気子役のポップスターであるジョスリンは
母親の喪失から神経衰弱と共にキャリアが終わるという危機に
面してしまいます。
再起を図るためにチームが用意した新曲の
リリースに向けて撮影やリハーサルなどが始動します。
しかしその楽曲に不満を持つジョスリンは
そんな葛藤からか、心に響くものがあったのか?
クラブのオーナーのテドロスと恋に落ちてしまいます。
ところが恋のお相手はカルト的な人気で人の心を自在にする男性で、
すぐさま信者たちを引き連れて
ジョスリンの豪邸に移住してきました。
テドロスは自身の信者たちをも売り込むために
ジョスリンの家だけではなく心も支配しようと試み、
裏切者と称してジョスリンのスタッフを見せしめにしたり、
アシスタントの親友を邪険に扱ったりします。
そんなテドロスの心と身体の支配に溺れていく
ジョスリン。
何もかもテドロスの思惑通りになってしまうのでしょうか。
結末に本当のジョスリンが描かれる
ジョスリンの友人であり、新曲のバックダンサーを務めていた
ダイアンとテドロスが裏で繋がっていたこと、
テドロスとの出会いは仕組まれていたことを知ったジョスリンは
テドロスと決別します。
エージェントを使ってテドロスを豪邸から追い出し、
二度と目の前に現れないように仕向けると、
一方で
元テドロスの信者たちの才能は開花させるべく尽くし、
自らのステージの前座に推し進めます。
そしてテドロスを託されたエージェントは
手切れ金を受け取らないテドロスに対し、
クラブを奪い、これまでの罪を暴露し、
何もかもを奪うのです。
それでもジョスリンの復活のステージに忍び込んだ
もう失うものもないテドロス。
ジョスリンに愛の言葉をささやくと彼女もまた同じ気持ち
でした。
やはりテドロスがいないとダメみたいだ・・・と。
そんなジョスリンのドレッサーに置かれていたのは
真新しいブラシでした・・・。
そしてそれは母親が虐待に使っていたブラシなのか?
と問うテドロスは何かを察し怪訝な様子を見せます。
それでも舞台にテドロスを
最愛の人として招き入れたジョスリンは耳元でささやくのです。
あなたはずっと私のもの。脇で見ていて。
・・・と。
テドロスの悪夢から逃れたジョスリンが無事に復活するのかと
思えば、やはりテドロスが必要だと告白する姿は
洗脳された歌姫、というラストなのか?
そう思った矢先に全てが覆るのです。
操っていたのはジョスリンの方だったのだと。
母親から虐待された際に使われたブラシは
真新しかった。
それは何を意味するのでしょうか。
母親からの虐待などなかったということなのでしょうか。
それとも、虐待はあったが、それは彼女にとってトラウマなどではなく、
わざわざ同じブラシを新調する皮肉と余裕が込められた
ジョスリンという女性の芯の強さなのではないでしょうか。
結末のどんでん返しであらわになった
本当のジョスリン。
果たしてジョスリンの思惑はどこにあったのでしょうか。
ジョスリンの涙
復帰作のMV撮影のリハーサルで
ジョスリンに手本を見せるべく踊るバックダンサーのダイアンを見つめ
ながらチームに手を振られ涙を拭うジョスリン。
思えばあの時が始まりだったのではないのでしょうか。
エージェントや広報やプロデューサーを担う彼らは
ジョスリンを腫物を扱うような笑顔で手を振って見せます。
しかし声の届かない彼らが集う場所で交わされる会話は
ジョスリンへの思いではなくお金の心配にまつわる話。
一方で、自分のバックを担うダンサーに劣ってしまう今の自分
に対する悔しさ、
チームが抱いている自分への感情、
自分の復帰のためでありながら自分らしくない楽曲。
それらが入り混じった感情があふれ出してしまたのでしょう。
ジョスリンとチームに隔たる壁
ジョスリンを商品として扱うチームが彼女の再起をかけて用意したのは
セクシーで挑発的な新曲でした。
ところがこの新曲に満足しないジョスリンはせめて
完璧なものにしたいという気持ちでMV撮影に挑みます。
そのため満足がいくまで何度も撮り直しを依頼するジョスリンとは裏腹に
時間やお金のことが気になる撮影スタッフたちの呆れと苛立ちが
垣間見れます。
完璧に踊ったと思えば撮影機材の不具合で録画ができておらず、
打ちひしがれたジョスリンの足もまたその心を表すように
血だらけでボロボロでした。
それでも撮影を強行しようとするジョスリンのチーム。
ジョスリンが母の名前を呼び泣き出すというギリギリで異様な
光景を目の当たりにしてようやくスターの異変に気付いたチームは
撮影を中断する決定に踏み切ったのでした。
テドロスを手放さない理由
テドロスとの出会いは偶然ではありませんでした。
それでも、テドロスには見出す才能、引き出す才能がある
ことは事実で、彼と制作する音楽は魅力的で
これこそ再び飛び出す新しいスターに適したもの。
そう感じたのではないでしょうか。
実際、テドロスを毛嫌いするエージェントやプロデューサーでさえ
テドロスが見出した才能に感銘し、お金になることを痛感して
目を輝かせています。
そしてその全てを牛耳るべく順調に進んでいるように思われた
テドロスの思惑ですが、
子役時代からその世界に属したジョスリンには
テドロスの洗脳ははなから通じてはいなかったのです。
それどころか、
テドロスからまだ蕾の才能を奪い、
ステータスを奪い、ジョスリン自身も奪い、
全てをなくさせることで、彼の方がむしろ
思惑があって近づいたはずのジョスリンへの執着は
さらに高まっていきました。
ジョスリンにとってテドロスは
自らの力で、輝きで闘うための武器を作ってくれる
ミューズだったのです。
しかしながらジョスリンに夢中になってしまい、
手切れ金も受け取れなかったテドロスの愛情は
本物だったのかもしれません。
だとすればジョスリンにとってテドロスは
才能の開花と心の安定を与えてくれる存在だったのでしょう。
ジョスリンのモデルは誰なのか?
ジョスリンのキャラクターは、私が実際に目の当たりにしたアーティスト
の経験からインスピレーションを得ました
と脚本や制作総指揮も務めたウィークエンドは公言しています。
実際に目の当たりにしたアーティストと言われ
思い浮かんでしまうのは、彼が過去に交際していた
セレーナ・ゴメスではないでしょうか。
セレーナと言えば、7歳の頃から女優活動をしている子役として
名高く、その名を知らしめたディズニーチャンネルの
『ウェイバリー通りのウィザードたち』はティーン世代に絶大な
人気を誇るドラマでした。
シンガーとしても活躍している彼女にも
アシスタントの親友がおり、SNSの投稿も任せているほど
信頼は厚いのだとか。
セレーナは病気を患い、ツアーを途中でキャンセルせざるを得なかった
過去もあり、病院のリストバンドを着けて撮影したこと、
ファンを大切にし、ファンサービスを欠かさないのも有名なことなど、
ジョスリンとの共通点は多い。
ともすれば、セレーナもまた、
華やかなスターの道を行く裏側では苦しみ葛藤し
闘っているというバックストーリーが存在するのでしょうか・・・⁈
『THE IDOL /ジ・アイドル』の本質とは
そのように、『THE IDOL /ジ・アイドル』の本来のテーマは
とても興味深く斬新で怖い。
恐らく『歌うことが好きだった』というような可愛らしい動機から
始まった夢は1人の少女をアイドルの成功へ導いたとします。
それでも彼女を支えるチームにとってアイドルの存在は
自分たちの生活を維持するために万能でなくてはならない商品
にすぎません。
そんなアイドルにはびこるのは、
商品としての自分を見る目、むけられる重圧、
利益のための駆け引きや裏切り。
ジョスリンの身も心も搾取され利用され続けました。
誰も彼女を1人の人間として親身に心配するものなどそこには
存在しないのです。
それでも
そこは1度失敗すれば、掌を返されかねない世界。
華やかさと闇深さが表裏一体となったその世界で
生き残ることができるのは、
自分を信じ、自分のための野望をもち、
自分の武器で闘えること。
『THE IDOL /ジ・アイドル』の物語は
こうした斬新で怖いテーマが本質なのではないでしょうか。
そしてただそれだけではなく、そんな物語を
あのウィークエンドが執筆し、実際に見た光景において
警鐘を鳴らしているのだとすれば
それは一見の価値がある一作と言えるのかもしれません。
『THE IDOL /ジ・アイドル』レビュー
結局のところ、ロブが言っていた
『欲しいものは必ず手に入れる』
その言葉にジョスリンという人の真意があるのだと思いました。
そしてそんな逞しさを持つアイドルを育て上げた
影の立役者こそデスティニーだったのでしょう。
デスティニーはクロエの才能と純真な歌声に感銘を受け、
それはクロエのものだから誰かに奪われないで、と
忠告します。
同じように出会ったばかりのジョスリンに、
自身の才能を奪われることに屈してはいけないと忠告し、
欲しいものをその手で掴む強さを教えたのではないでしょうか。
カイムやニッキが蚊帳の外でジョスリンの復活を喜び合う最中、
ジョスリンとテドロスの再会を許したデスティニー。
テドロスに、ジョスを傷つけるようなことをすれば必ず殺す
と凄んだあの言葉は本心であり、
デスティニーがどれほどまでに『アイドル・ジョスリン』を
大切に思っているかが判明した場面でした。
一方でジョスリンはテドロスを彼女のファンに向けて
大切な家族であると紹介し、復帰の舞台に上げ、
『あなたはわたしのもの』だと耳打ちしたあの瞬間に、
テドロスとチームに宣言するのです。
アイドル・ジョスリンの実権を握っているのは
他の誰でもなくジョスリン自身なのだと。
不必要とされる過激な描写だけが悪目立ちし、
酷評まみれになった『THE IDOL /ジ・アイドル』。
しかし個人的には音楽と才能と欲とそれらを巡って巻き起こる
人間の業があらわになった見応えのある一作でした。
続編は実現しませんでしたが、
まだ幼いアイドルが最愛の母を失くし、挫折していく中で
味わった搾取や裏切りにまみれたハイエナの群がる世界で
〖私らしい復活〗を勝ち取った
というキレイな終幕でこれはこれでスッキリしたのではないでしょうか。
欲を言えば、親友でアシスタントのレイアが、
自らもハマってしまった闇と友人としてのジョスリンの喪失を
感じて去って行くという心中の中で書いた手紙の内容は
どんなものだったのか気になります。
そしてジョスリンがついたザンダーに関する嘘と裏切り行為。
それを受けてロブを破滅させるまでに追い込む画策に身を投じてしまった
ザンダーが心に秘めているジョスリンとの確執はもう少し見たかったかも。
とはいえ実際のスターや目撃したことにインスピレーションを
受けたとされるウィークエンドの
ショービズ界に向けた反乱?革命?とも解釈できてしまいそうな
物語は、本作にとって本来マイナスとなるような
過激な描写により酷評という注目を浴びることとなりました。
しかしこのことは、多くの人に本作を知らしめる結果を招いており、
ある意味制作サイドの成功を意味すると言えるのかもしれません。