マイホームという人生の夢が突然悪夢へと変化していく・・・
そんな恐怖を描いた韓国発のNetflix映画『84㎡』。
本作の主人公・ウソンはマンションならではの
騒音問題の首謀者として追い詰められることになります。
果たしてウソンを追い詰める人物とは?
ラストは何を意味するのか?
読み解きます。
『84㎡』あらすじ
Netflix映画『84m²』キーアート公開!
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) June 19, 2025
ローン地獄
騒音トラブル
悪いのは…俺?
7月18日独占配信スタート。#WalltoWall pic.twitter.com/7dD90U7wpf
ソウルのマンション価格は高騰し続けていた。
そんな中、サラリーマンのウソンは高値を提示されたマンションの一室を
新開発が行われる場所でもあり、将来的に有望な物件であると考え、
全財産をつぎ込み念願のマイホームを購入した。
自身の収入にそぐわないマンションを購入してしまったウソンは
退職金を前借りし、会社でローンも組んだ。
そうして自分の家を手に入れ、結婚を前提とした恋人の存在もあり、
ウソンの人生は順調かに見えた。
しかし住宅価格は無残にも急落していく。
結婚も破断になり、金利も上昇し、ローンの返済を一人で返す
極貧の日々を送っていた。
その額はもはや収入を超えていたため、副業に励む苦しい日々になる。
そんな中、マンション内での騒音もウソンを苦しめていた。
しかし、階下の住人は騒音の出どころをウソンの部屋だと決めつけ
毎日のように苦情のメモを張り付けていた・・・。
キャスト
カン・ハヌル、ソ・ヒョヌ、ヨム・ヘラン、カン・エシム、
チョン・ソンイル、パク・ソンイル 他
以下、ネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年9月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。
『84㎡』騒音が隠す衝撃の真実
全財産をはたいても足りないソウルのマイホームを
購入したウソン。
サラリーマンとして働く傍ら、副業もせざるを得なかったのです。
さらに不動産価値は暴落、金利は爆上がりし、恋人とも別れてしまったため
一人で住宅ローンを抱えることになったウソンの日々は切迫したものでした。
そんな生活から脱却するためウソンは同僚が持ってきた
GBコインの仮想通貨取引で儲けようと考えます。
しかし資金がないウソンはマイホームを売却することで資金を得て、
お金を設けた後、売買契約を解除する作戦でした。
金銭的な苦悩にとどまらず、
マンション内に響く耐えられないほどの騒音もまたウソンを苦しめていました。
ウソン自身、騒音に悩まされているにもかかわらず、
13階(階下)の住人はウソンに執拗に苦情申し立てをしてきます。
何度潔白を主張しようとも、信じてはもらえず、
真犯人を探そうと上階へと昇っては確かめていきますが、
騒音の張本人が判明することはありませんでした。
ウソンはついに最上階のオーナーでもあるウンファの部屋まで
たどり着きました。
ウンファは騒音はマンションの構造のせいだと言います。
そしてウソンにしつこく迫る13階の住人には出て行ってもらうので
それまで耐えるように促しました。
しかし騒音が止むことはなく、とうとう住人たちがウソンの部屋を
訪れ部屋の中にスピーカーがないか確認させろと迫ります。
13階の住人の部屋も調査することと引き換えにやむなく部屋を見せることを
承諾したウソンでしたが何者かが部屋にスピーカーを仕掛けていたことから
やはりウソンが張本人であると証明するかたちになってしまいました。
さらに13階の住人の夫がウソンに殴られたふりをして倒れたため、
ウソンは警察に連行されて行きました。
しかしその日はGBコインを売却をしなければいけない日だったのです。
警察官の目を盗んでパソコンにアクセスしたものの
上がり続ける数字をみたウソンは欲を出してしまった結果、
売却は失敗してしまいます。
それでも13階の住人がウソンの部屋を盗撮していたことが判明し、
容疑が晴れたウソンをウンファが迎えに来ます。
しかし帰宅したウソンが見たものは、
全財産の99%が失われたという現実でした。
騒音を出していたのはジノ
何もかも失い、自ら命を絶つことを決めたウソンのもとに
15階(上階)に住むジャーナリストのジノが、
騒音の犯人捜しを手伝うので考え直せと励ましてきました。
しかしジノに疑念を抱いたウソンはこっそりジノの部屋へ忍び込むと
そこはウソンの行動を監視していた証拠やマンション内をハッキングしている
様子など不穏なものに囲まれていました。
騒音を出していた装置もみつかり、他でもないジノが
真犯人だったことが判明します。
証拠をカメラに収め部屋を後にしようとした時、
ジノが帰宅してしまいます。
急いで隠れたウソンでしたが、13階の住人も現れ
ジノと口論していました。
しかしその内容はジノの目的が手抜き工事業者から賄賂を受け取っていた
最上階のオーナー・ウンファの罪を暴くことで、その目的のためにウソンを利用していたという
衝撃の内容でした。
口論の末、13階の妻を撲殺するジノをウソンは息をひそめて
見ていました。
ところがウソンもジノに見つかり、命を狙われます。
ウソンは自身の部屋を奪い返したいだけだと言って
協力を申し出ました。
絶望の淵へ
そうしてジノとウソンはウンファの部屋へ忍び込み、
13階の妻もウンファに罪をなすりつけるために運びこみました。
ウンファとその夫を縛り上げ、帳簿のありかを尋問する
ジノでしたが、ウソンはジノの目を盗んでウンファのロープを
ほどきます。
しかしウンファの夫はジノに刺殺され、ジノもまた重傷を負って
倒れていました。
ウンファはウソンにジノを殺せと迫りますが
ウソンは何もしないまま、ジノの意識が途絶えました。
それを見届けて安堵したウンファは帳簿の在処を明かし、
ウソンを手に掛けようとしました。
しかしジノは倒れたふりをしていただけで、
ウンファを返り討ちにしたのです。
傷を負って立ち上がれないジノはウソンに帳簿をよこせ
と促しますが、ウソンは自身の売買契約書を見つけ
それをレンジに放り込むと燃やして、部屋にガスを充満させ、一人で出て行きました。
ウソンがマンションの外へ出たその時、
最上階は爆破し、火の煙が上がり残骸が落ちてきました。
ウソンは検察局に呼び出しを受けますが、
上層部からもみ消しを依頼された検察官は
なかったことにしてください
と言ってウソンを解放します。
ウソンの母はもうソウルには行かないでと、
ウソンを実家に連れて帰りました。
ところがウソンは再び自身の部屋へ戻ってきます。
手にした登記簿には所有者がウソンであることを示しています。
ウソンは不気味な高笑いを上げるのでした。
そして部屋には再び騒音が鳴り響いていました・・・。
ラストの狂気を読み解く
13階の住人も、騒音の濡れ衣も、騒音自体を出していたのも、
親切に近づいて来たジャーナリストのジノだと判明した時、
自身もその毒牙にかかり絶体絶命に陥ったウソンは、
自身の部屋と引き換えに罪を犯す
と言い放ちました。
84㎡の城を手にして未来は明るいはずだったウソンは
悲劇に見舞われどんな変貌を遂げたのでしょうか。
人生の価値を分けるもの
ソウルに家を持つこと、
それはウソンや多くの人にとって人生の成功と安泰、そして幸福を
意味していました。
恐らく地方の実家に住む母親、もしくは実家に住んでいた頃の自分が
幸せではなかったこともその妄信を後押ししたのかもしれません。
マイホームを入手することこそ人生の価値を分けるのだと信じていた
ウソンにとって、マイホームを手に入れただけではなく、それがソウルという一等地に
存在すること。
それを思えば、全てをつぎ込み、未来の資産までつぎ込んででも
入手する価値を見出していたのでしょう。
しかしそれは身の丈に合っていない代物でした。
決して手放さないという執着はウソンの正しさを奪いさったのかもしれません。
母親はそんな息子に何かを感じ、もうソウルには来ないように
促すと実家へ連れて帰ります。
それでも直後にはソウルの部屋に舞い戻って来たウソンは
何を思って高笑いを上げたのでしょうか。
思えば、あのマンションには狂人が複数人存在していました。
元検事のウンファはお金のために手抜き工事を見逃していた
金の亡者でした。
13階の住人は子どもの受験のためには他人を追い詰めても
何食わぬ顔で生きていけるモンスター。
そして人の人生を狂わせ、命まで奪うことも辞さない
その目的は自身のプライドと名声を欲したから。
そんな狂人たちに囲まれ、彼らの末路を体験した
ウソンもまたラストで狂気に飲み込まれてしまったのではないでしょうか。
母親の助言を無視してソウルに戻ったウソンには
もうマイホームと共に堕ちて行く未来しか残っていないのでしょう。
『84㎡』まとめ
マイホームを持つことで人生の安泰を図ろうとしただけの
ウソンは様々な欲望が渦巻くその住処で悲劇に巻き込まれて行きました。
騒音問題の濡れ衣を着せられたウソンでしたが、
真犯人はすぐ上に住むジャーナリストのジノでした。
そしてジノは13階の住人を使って騒音問題を引き起こし、
その首謀者にウソンを仕立て上げ罪もなすりつける計画だったのです。
結果、ウソンはマイホームを守るために、刺し違えたウンファ夫妻とジノを
部屋ごと吹き飛ばしてしまいました。
マイホームを取り戻した代償は、
自身も狂人になってしまったという結末。
筆者はそんな風に読み解きましたが、
このラストにはいろんな解釈の余地があるように思いました。
例えば、マイホームを奪われ、全財産を失くし、命まで危なかった
ウソンは自身のことだけを考えて最後は最上階を吹き飛ばしはしたものの、
我に返るとその罪の重さに押しつぶされるような思いだったのかもしれません。
そうなるとラストで聞こえた騒音は上階も下の階の住人も不在の今、
ウソンの幻聴であり、それはウソン自身がもう正気ではないことを意味している
のでしょう。(あの青い錠剤も原因の一つ?)
そして正気ではないウソンがとるこの後の行動は・・・。
はたまた登記簿を見て高笑いするウソンは
マイホームのために自身がしてきたことへの
さげすみのようにも聞こえます。
いずれにせよ、他人ごとではないマイホームと騒音問題。
生涯で得をするのは賃貸か?分譲か?論争を始め、
戸建てか?マンションか?と家に関する事情は
全ての方に無関係ではないことも本作の怖さを痛感する要因と
なっています。
他人に惑わされず、どうみられるかに価値をおかず、
何より自分が後悔しない、自身を追い込まない選択をしようと思わされる一作でした。