『先生の白い嘘』風間俊介も愛せなかった早藤とは?/驚愕のラストを紐解く

邦画
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主演女優の奈緒が撮影にあたり「インティマシー・コーディネーター」の起用を
申し入れたものの、製作陣がその受け入れを回避したこと、
不適切な文言が問題視され回収されたパンフレット、
といった物議が話題になった映画
『先生の白い嘘』

物語の内容もいわゆる「胸糞」と表現されるような衝撃な作品になっています。

そんな中、最も視聴者の嫌悪を生んだであろう早藤を演じた風間俊介
初めて演じた役柄を愛せなかった
と語っています。

そんな早藤はラストで救われたのか?
驚愕の結末について独自考察しています。

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『先生の白い嘘』あらすじ

高校教師の原美鈴は常々思っている。

人間を2つに分けたとしたら、
どちらか一方が少し取り分が多くなる。

そして私はいつも取り分が少ない方だ・・・
と。

ある日、受け持つ生徒の新妻が人妻と不倫関係にある
という噂が拡散されていた。

同僚たちは新妻から「噂は事実無根である」という証言を
とるために、担任教師である美鈴に話を聞くようにすすめる。

仕方なく新妻を呼び出した美鈴が事情を聞いてみると、
新妻は噂は本当だと答えたのだった。

そして教え子の口から発せられる、さらなる証言が
美鈴の心を震わせることになる・・・。

キャスト
奈緒、猪狩蒼弥、三吉彩花、田辺桃子、井上想良、小林涼子、
ベンガル、板谷由夏、風間俊介
 他

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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はお気をつけください。

本記事の情報は2025年11月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

風間俊介も愛せなかった早藤とは

奈緒が演じる美鈴には、美奈子という学生時代からの友人がいました。
そしてその美奈子の婚約者・早藤を演じたのが風間俊介でした。

風間俊介と言えば、無類のディズニー好き(好きというレベルを超越している)でも
有名である他、俳優としても優しい人柄はもちろん、
笑いも、影も操ることができる実力派です。

しかし今回、風間が演じたのは、
思わず視線を遠ざけたくなるような憎しみを秘めた狂気を振りかざす
暴力男でした。

これまで自身が演じた人物に愛情を注いできたという風間が
初めて本作の役柄を愛せないかもしれない
と語っています。

早藤雅巳という男

美奈子の婚約者である早藤は不動産関係の職に就いています。

4年前、美鈴が美奈子の引っ越しを手伝いに行った際、
美奈子を外出させた隙に美鈴に暴行を加えたのが始まりでした。

美鈴にはそれまで男性経験がありませんでした。

そんな美鈴をもてあそぶかのように、
乱暴にそこに感情を持たずに暴力を加えるという鬼畜行為が
美鈴を闇へと誘った
のです。

その後も度々美鈴を呼び出してはひたすら
性的暴行を加える卑劣さを持つのが早藤という男。

母親を象徴する美鈴

※原作のネタバレあり

早藤の家庭環境も良好とは言えませんでした。
映画では描かれませんでしたが、
早藤の父親も母親にDVを繰り返す男性だったのです。

しかも助けを差し伸べる息子・早藤に対し、母親はそれを拒否し、
自身の責任だという姿を見せたのです。

結果的にそんな両親の背中は早藤が女性を卑下し続ける性質を
形成してしまった
と言っても過言ではないのでしょう。

しかしながら複雑なのは、女性を卑下する裏にはびこる
母親への嫌悪感でした。

暴力にさらされる母親を助けようとして早藤の行動の裏に
母への愛情があったに違いないのです。

ところがそんな母親は私が悪いとだけ繰り返し
その暴力を受け入れる日々を送っていました。

母を思う反面、そんな姿に苛立ちや嫌悪感といった
複雑な感情も秘めていたのではないでしょうか。
加えて、そんな暴挙に耐えられる母への恐怖も。

美鈴は早藤にとって母親を象徴するような存在だったのでは
ないでしょうか。

母親と同じように、男性からの暴力を甘んじて受け入れ、
しかもそれが自身の責任だと勘違いしている。

そんな美鈴に母親を重ね、苛立ちや憎しみといった負の感情を
ぶつけていた
のかもしれません。

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『先生の白い嘘』驚愕のラストをネタバレ考察

美鈴の教え子である新妻祐希は、男子生徒でありながら大人の女性からの
性被害
を受けてしまったことでトラウマを抱えていました。

美鈴はそんな新妻の傷ついた心に非難を浴びせてしまいました。
しかしながらこの出会いから新妻との距離が縮まり、
美鈴の心を動かす手助けとなっていったのです。

この苦しみに立ち向かうということ

美鈴が早藤の搾取に苦しめられながらも声を上げることが
出来なかった背景には、自身が女だからという可能性
信じていたことがありました。

しかし新妻もまた男性でありながら性被害にあったことで
深く刻まれた傷を癒せることなく抱えていました。

そんな彼を目の前にして美鈴は自分に言い聞かせた
「女だから」という自分についた嘘が崩れ始めるのを
容認せざるを得なかったのです。

本当は「女だから」という理由で他人から身体を搾取されることが
あってよい訳がない
のだから。

美鈴が新妻を大切に思う自分の気持ちに気づいた頃、
美奈子は早藤との子どもを懐妊します。

喜びにあふれる美奈子とは裏腹に早藤は絶望感にさいなまれていました。

美鈴は・・・というと、これまで嫌悪していた身体の一部は
新しい命を誕生させる尊い部分でもあるのだと
気づかされるのです。

そして新妻のために、自分のために、前に進む決心をするのでした。

最悪な男の最悪な人生

新妻と2人で来い
と美鈴を呼び出した早藤でしたが、美奈子の口紅をひいた
美鈴は一人で待ち合わせの部屋へ向かいます。

そして早藤につきつけるのです。
美鈴が抱いていた恐怖、早藤の中に君臨する恐怖を。

しかしこれに激高した早藤は美鈴に馬乗りになり
殴打を繰り返すのでした。

美鈴を殴り倒した後、帰宅した早藤は大きいお腹を抱えた
美奈子に対しても暴言を吐いた後寝てしまいました。

美奈子はふと早藤の爪に付着する血痕に気づきます。
不審に思った美奈子が早藤の携帯を覗くとそこには
美鈴を呼び出すlineの形跡が残っていました。

急いで美鈴の元に駆け付けた美奈子は血だらけで倒れていた
美鈴を介抱しながらも、(早藤を)許して欲しいと乞い続けます。

しかし早藤の方は、美鈴に重傷を負わせたことへの罪悪感からか
自殺未遂を図っていました。

慌てて助け出した美奈子は、それでもなお殺してくれと哀願する
早藤に

「あんたが最悪なのは知っている。
その最悪な人生をこれからは私と子どものためにだけ生きろ。」

と罵倒にも似た激励をします。

次の瞬間、破水した美奈子はタクシーを呼ぶように早藤に頼みますが、
早藤が電話を掛けたのは警察でした。

そうして自首をした早藤
そんな早藤に赤ちゃんを抱えて面会へと足を運ぶ美奈子でした。

また来るね。と立ち去る美奈子に早藤は、
「お願いします。」
と答えるのでした。

美鈴の白い嘘

一方、怪我が治りきらない痛々しい顔のままで教壇に戻った
美鈴でしたが、新妻との密会写真が校内を騒がせていました。

新妻の時のように、「何もなかった」という証言を聞きだしたい
同僚たちでしたが、美鈴は「何かあった」のだと告白し、
教師を辞職するのでした。

学校を去ろうとする美鈴を呼び止めた新妻は、
下駄箱を挟んで、美鈴に語り掛けます。

酷い目にあっている先生を助けられない自分が悔しい
・・・と。

一方でそれを聞いた美鈴は、結局、
相手が誰であってもそれが「男」である限りダメだった
と言って、新妻に別れを告げました。

聞こえないように「ありがとう」と声のないつぶやきを発して。

そうして訪れた2人の別れから
二年の月日が流れ、美鈴は自身が住んでいる祖父から引き継いだ家の
庭の手入れを業者にお願いしていました。

そこには植木職人として美鈴の元を訪れた新妻が立っていました。

『先生の白い嘘』ラストの意味は?

美鈴はずっと声を上げられない辛い自分に、
『女であることが原因なのだ』
という嘘をついていたと言えるでしょう。

しかし男でありながら自身と同じ痛みを持つ新妻と出会ったことで
少しずつ心境の変化を迎えます。

「先生のことが好きです」
というまっすぐな新妻の思いは搾取ではない暖かい感情
美鈴に体感させたのではないでしょうか。

しかし教師としては生徒である新妻を傷つけないように
守らなければいけません。

自分への思いも、同じ傷を持つゆえの同情心かもしれない。
少なくとも二人の始まりの根底には同情が大きくかかわっているのです。

美鈴を思う新妻にかけた

「相手が誰であっても男である限り無理だった」

という言葉は美鈴が新妻を傷つけないように遠ざけた白い嘘
だったと言えるのではないでしょうか。

そうして美鈴と新妻の関係には終止符が打たれ、
二人は別々に一人の男と一人の女として自分だけの人生を
歩んで行きました。

それから2年の月日が絶ち、再会した美鈴と新妻。
再び出会った2人の間に同情は存在しません。

傷は決して癒えたわけではないけれど、
それらも引き連れて歩き始め2人の見る景色はこれまでとは
違ったものになる
のだという前進の未来が示唆されている
ラストだったのではないでしょうか。

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『先生の白い嘘』感想

性被害者の苦悩やそれでも声をあげることを阻まれる事情
といった重いテーマが潜む本作で、
インティマシー・コーディネーターの一件が話題を呼びました。

製作サイドはもしかしたら繊細なテーマを扱うからこそ、
演者との間に人を介することで描きたいものがぶれてしまうことを
恐れたのかも?しれません。

それでもコーディネーターの導入を拒否されたこと自体に
主演女優不安がなかったとは考えにくい気がしました。

女性として傷つくことがあったら言って欲しい
と言ったという監督。
それは監督が出来る最大の気遣い。

それでも個人的な見解ではありますが、
女性が声を上げられない心理として男性に対して言いづらいという
側面もあることを考慮すれば、この提案も意味をなさないのかも
しれないと思ってしまいます。

このようなテーマだからこそ、コーディネーターの起用を
大々的に採用し、性の平等を掲げて欲しかったなぁと思いました。

当事者たちの詳細な思いが不明な以上、
本当のことは何もわからないのに勝手なことを綴ってしまいました。

もしも生まれて初めて『性的』に関わる相手が人の身体を搾取する
者だった場合、その行為自体が悪いもの、醜い者、辛いもの
という具合に色黒く残ってしまうのでしょうね。

そしてそれを上塗りするのは相当難しい。

早藤も暴力を受け入れる母親に対する、
愛情、嫌悪、恐怖といった複雑な感情が要り混じってしまった
結果、自身をも壊してしまいました。

赤ちゃんを連れて面会に足を運ぶ美奈子に対しても
感謝の言葉というより、彼女らがまた来ることを願うというラストは
まだ、妻や子どものために生きていない早藤の描写なのではないか
と解釈しました。

こちらも根が深そうです。

本作を通して
声を上げることができない心理への
理解が深まるといいなと思う一作でした。

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