映画【花腐し】ネタバレ考察|結末の意味と栩谷が流した涙の理由とは?

邦画
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綾野剛主演で映画化された『花腐し』
原作は松浦寿輝の芥川賞を受賞した中編作品『花腐し』です。

本作はお色気要素が非常に濃く出ている作品のため、
誰かと鑑賞するのは気まずいかもしれません。
ということは、誰かと話し合うのも気まずいかも⁈

とはいえ、

ラストのシナリオって誰が書いたの?

栩谷の涙の理由は?

など謎も多い本作。
それはこの映画の作り手の
鑑賞者による感じ方を楽しんで欲しいという意図なのだと思います。

そこで本記事では

・ラストのシナリオを書いたのは誰か
・栩谷の涙の理由
・祥子の選択の意味

などを筆者の推察をふまえ解説していきます。

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〖花腐し〗あらすじ

栩谷修一はピンク映画の監督を職業としていたが
上映する映画館は次々に閉館に追い込まれ、
もう5年間も映画を撮っていなかった。

そんな折、同棲していた恋人の祥子が栩谷の友人であり監督をしている
桑山と心中してしまった。

葬儀に訪れ、恋人の顔を一目みたいと言う栩谷だったが
彼女の両親に門前払いをされてしまう。

それから半年ほどの月日が経過したが、
仕事がなく、余裕のない栩谷は、住んでいる賃貸部屋の
オーナーの依頼を引き受ける。

それはそのオーナーが所有している古いアパートから
1人だけ居座り続ける男性を
立ち退かせて欲しいという内容であった。

加えてオーナーは中の様子も見てきて欲しいと言うのだ。

問題の部屋へ向かった栩谷は、その部屋の住人である
伊関と出会う。

うさん臭さを感じながらも、部屋の中を確認するという
依頼を全うするべく、栩谷は伊関に招かれるまま
部屋へと入っていく。

伊関はその昔脚本家志望で映画のシナリオを執筆
していたという。
そんな伊関は栩谷に過去に付き合っていた女性の話を
し始めるのだった・・・。

キャスト
綾野剛、柄本佑、さとうほなみ(ゲスの極み乙女)、
吉岡睦雄、マキタスポーツ、奥田瑛二 

『花腐し』の配信情報

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以下、作品のネタバレを含みます
未視聴の方はご視聴後のご来訪をお待ちしています。

本記事の情報は2024年5月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

〖花腐し〗のシナリオを書いた人物

いけないマッシュルームのパーティーが終わり、
いつの間にか寝てしまっていた栩谷は
伊関のアパートで目を覚ますと、そこには誰もおらず、
目の前には『花腐し』というタイトルのシナリオ
がありました。

それは誰が書いたものなのか?
筆者は栩谷が執筆したのだと思いました。

その内容は今まで栩谷と伊関が話していた
祥子の物語でした。

栩谷はそのシナリオの中の決定的な瞬間を
書き直します。

シナリオの中の祥子

過去の事実では祥子の不貞に気付いた栩谷は
相手の名前を聞き出します。

祥子は桑山の名前を口にしますが、
栩谷はたったひとこと

『そうか・・・』と言いました。

この時のやり取りを、シナリオの中では
見つめて抱きしめた…
という風に改変するのです。

現在の栩谷があの日のあのやりとりを後悔し、
自分にとって祥子が何よりも大切な存在
であったことを認識した証でした。

もしも、あの日に戻れるならきちんと向き合う
という決意と、
報われなかった女優の祥子に、せめてシナリオの中だけでも
幸せを実感させてあげたかったという願望だったのでは
ないでしょうか。

伊関は幻なのか

伊関のアパートで目を覚ました栩谷が1人きりだったこと
を筆頭に、乱れていた部屋が何事もなかったようにきちんと整っていたこと、
陽が射す中、伊関の部屋へ繋がる階段の辺りだけに
雨が降っていた
こと、
更には伊関のアパートのオーナーが
伊関を追い出すだけではなく、古くて取り壊しが決まっている
アパートの室内を見てきてくれと言ったこと。

それらをふまえると、伊関は栩谷が部屋を訪れた時にはもう
この世に存在していなかったという推測もできます。


しかしそこで疑問に残るのが
伊関が話した祥子との思い出は真実だったのか?・・・です。

栩谷は伊関の幻と会話をしていたのか。
〖花腐し〗のシナリオは伊関が書いていたものなのか?

様々な可能性は考えられますが、筆者は
〖花腐し〗のシナリオの伊関の部分は
栩谷が願望や想像をもって書き上げたもの
自分と祥子の物語も加えたのではないかと思うのです。

今思えばこうするべきだったという後悔と、
祥子に聞けなかったことの言い訳を込めたのが伊関という存在

そうして、かつて祥子が望んでいた、
〖祥子の映画〗のシナリオを完成させたのではないでしょうか。

栩谷の涙の理由

ラストシーンで幻の祥子が伊関の部屋へ入っていくのを追うようにして
開けた伊関の部屋の扉。
その中の光景を目にした栩谷の頬を涙がつたっていきました。

栩谷が見たものは何だったのでしょうか?

筆者的には栩谷の涙の表情からは悲しみに近いものを受け取りました。
その光景から、もう取返しがつかないことを改めて悟ったというような。

そして祥子は栩谷の書いたシナリオを手に
2人が幸せだった時の屈託のない笑顔を見せたのではないでしょうか。

栩谷が流したのは、何年経ってもずっと心にひっかかってやまなかった祥子が、
もうこの世に存在しないことを初めて実感してしまった涙なのでしょう。

しかしながら、やっと栩谷の本当の感情が芽生えた
という瞬間だったとも言えます。

エンディングの祥子と楽しくデュエットをする場面は
書き変わったシナリオの未来であり、
栩谷にとっての救いなのです。

祥子と桑山の関係

祥子は桑山の気持ちに気付いていたからこそ、そして
相手に届かない気持ちが理解できる祥子だから
不貞の相手は彼だったのです。


そして祥子はそんな桑山と心中したとされています。

祥子の最愛の相手は栩谷でした。
女優という夢をおざなりにしても、
栩谷との家族をつくりたかったのです。

しかし栩谷の方はというと、家族を作りたくないと言い放ち、
子どもを産まないで欲しいと願います。

祥子の思いは報われませんでした

桑山が祥子に夢中でありながら届かない思いに苦悩していることは
エンディングで歌う祥子を見つめる視線
そして栩谷がデュエットとして加わった途端に
目を逸らした光景で気付くことができます。

栩谷や伊関はしなかった、祥子が主演の脚本も書き上げました。

それでも桑山がどんなに祥子を大事に思っても、その心の中に
居座るのはあくまで栩谷
であり、自分ではありませんでした。

桑山は報われない恋愛をする祥子のたった一人の理解者なのです。

2人の心中は、祥子が自らの人生を終わらせる旅に
桑山が同行したのだと推察しています。
そうすることで桑山は祥子の最後の人になれるからです。

祥子の選択の意味

では祥子が命を絶つ理由は何だったのでしょうか。

確かに大きな犠牲をはらってまで選んだ女優の道も、
女優の道を諦めても大切にしたかった自分の幸せも、
叶わなかった祥子には生きる理由が見つからなかったのかもしれません。

しかしながら、この世界から消える決意をしたのには
やはり栩谷が関係しているのです。

祥子の不貞が露呈した時にも感情をあらわにすることもなく、
その後、実家へ帰ると言う祥子を見送りも引き留めもしない。
祥子を見ていない栩谷。

永遠に消えることで、ちゃんと見て欲しかった
そして栩谷が忘れられない存在になりたいという願いもあったのだと
思います。

どんな酷い言葉でも構わないから、例え傷ついたとしても、
栩谷の本当の答えが欲しかったのではないでしょうか。

そして、祥子を失って本当の答えを得たのは栩谷の方でした。
彼女の居ない現在には希望も色もなくなるほど
大切な人だという動かぬ答えを・・・。

〖花腐し〗の感想

本作は過去と現在のパートが色分けされており
視聴者が混乱しない演出になっていました。

しかしながら、カラーなのはむしろ過去の回想の方であって、
現在はモノクロなのです。

ふと筆者も、あの頃は夢とか目標、希望にむかって
突き進む自分が居て、したいことも選べる道も沢山あったな・・・
と、悲しい気持ちになりました(笑)

伊関という人物には様々な解釈があり、
筆者は架空の存在であると位置づけました。

その前提で、『花腐し』のシナリオは同じ書き手(人物)であるのに、
栩谷と伊関では
真逆だと言っても過言ではないほどの違いに
哀愁が漂ってしまいますね。

きっといつの時代であってもどんな2人の間にも
恋愛の複雑さはそこにあるのではないでしょうか。

いずれにしても、恋人同士の2人には
逃してはいけない瞬間というのは存在するのだと
思います。

栩谷はその瞬間にも雨の中を漂っていたため
自らをも腐らせてしまったのでしょう。

それでも、栩谷はシナリオを書き換え、
本当の気持ちに向き合い、
これからも生きていくのだろうと
予想する一作です。

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