TBS系の人気ドラマ『MIU404』と『アンナチュラル』とは
同様の世界線で描かれる映画『ラストマイル』
ブラックフライデー前夜の物流センターを舞台に
働く者の心の闇と愛情ゆえの悲劇を
満島ひかり主演で描いています。
中村倫也が扮する山崎佑が選んだ最後の道に隠された意味と
彼の婚約者である筧まりかの動機に迫ります。
『ラストマイル』あらすじ
「#アンナチュラル」「#MIU404」の
— 映画『ラストマイル』公式【BD&DVD好評発売中】 (@last_mile_movie) January 19, 2024
世界線が交差するー
══ 映画『ラストマイル』 ══
本日より、全国の劇場にて
ティザービジュアルを使用した
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※一部劇場を除く
ぜひ劇場へ足をお運びください!📦#満島ひかり#岡田将生
𝟐𝟎𝟐𝟒 𝑺𝑼𝑴𝑴𝑬𝑹… pic.twitter.com/PzORmUxGo9
アメリカに本社を持つ世界的なショッピングサイト・DAILY FASTデイリーファスト
(以下、デリファス)の日本支社である西武蔵野ロジスティックセンターに
新しいセンター長としてやって来た舟渡エレナ。
エレナの着任早々のブラックフライデー前夜に自社から発送された荷物が
顧客先で爆発するという事件が起こった。
エレナは部下で2年西武蔵野に勤めている梨本孔と共に
爆破事件の対応に追われることになる。
エレナと梨本の元にやってきた刑事の毛利忠治と刈谷貴教は
西武蔵野センターから発送された荷物が次々に爆発していることを受け、
全商品の出荷を止めるように打診するのだが・・・。
キャスト
満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、大倉孝二、酒向芳、中村倫也、宇野祥平、火野正平、阿部サダヲ、仁村紗和、安藤玉恵、綾野剛、星野源、石原さとみ、井浦新、窪田正孝、松重豊、橋本じゅん、麻生久美子、丸山智己、市川実日子、薬師丸ひろ子 他
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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
本記事の情報は2025年9月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。
山崎の選択に隠された意味
5年前、デリファス西武蔵野ロジスティクスセンター(以下LC)の元チームマネージャー
だった山崎佑は、LC内のベルトコンベアに向かって飛び降りてしまいました。
事件後、東央医大に運ばれた山崎は現在植物状態となったままでした。
しかし病院に運ばれた当初、まだ意識があった山崎は自分の選択に対して
「バカなことをした」
と呟いたと言います。
その言葉を聞いた当時研修生だった久部は
自殺でも事故でもないと思うと呟きました。
かすかな希望と変わらなかった絶望
当時、チームマネージャーという立場だった山崎は
デリファスが「お客様のため」だと言って従業員に課す
過酷なノルマと厳しいルールによって心身ともに押し潰されていたのです。
さらにその重圧を部下たちにも強いなければいけない立場でした。
その実質部下たちというのも殆どが契約社員で、
最低賃金での重労働だったのです。
デリファスは「お客さまのため」という盾で、売り上げのために
社員の心と身体を蝕むモンスター会社でした。
その場所で真面目に勤務する過程で、とうとう心身ともに蝕まれてしまった山崎は
全うな思考が出来なくなってしまったのでしょう。
【辞めればいい】というのはきっと心の健康な人の思考なのかもしれません。
恐怖のブラックフライデーを回避するための方法は、
ベルトコンベアを止めればいい。
・・・そう思ったのです。
そんな尋常ではないアイデアはその作戦が成功することを信じ、
飛び込む山崎に遊びに行く子どものような眼差しをさせました。
その場を山崎の上司である五十嵐の怒声が響き渡ります。
死んでも止めるなって山崎に 伝えろ!
そして、無情にも飛び込んだ血だらけの山崎は
運び下ろされ、再び何事もなかったようにベルトコンベアは動きだしたのです。
その光景を見た山崎には絶望が映っていました。
ここまでしたのに、何も変わることはなかったのです。
バカなことをした
それが山崎の残した言葉でした。
ロッカーの暗号
梨本曰く代々のセンター長が消さないようにと
引き継いできたロッカーの中の暗号がありました。
それは山崎が書いたものでした。
7m/s → 70kg 0
これはベルトコンベアの速度(7m/s)と耐久重量(70㎏)を表し、
山崎は自らが飛び込めばベルトコンベアが止められる。
そして稼働率も0になる
と考えたのです。
それが成功するということは恐怖心を抱いていたブラックフライデーが来ないこと
を意味しています。
しかし暗号の0は二重になっていました。
これは山崎が自身とそこで働くみんなの苦悩を救うためだけではなく、
愚痴をこぼして心配をかけていた婚約者の筧まりかと結婚に向けた
障害(自身の苦悩)も0になることを意味していたのかもしれません。
山崎は自身の苦悩、みんなの苦悩、まりかとの未来を救うために
実行に移したのです。
結婚に向けてマイナスの方向に悩んでいたという事実は
見つかりませんでした。
『ラストマイル』筧まりかの動機
婚約者の山崎を失くしたまりかにはさらなる仕打ちが
待っていました。
山崎の同僚が
「彼は婚約者のことで悩んでいた」
と証言したのです。
しかし山崎から
「ブラックフライデーが怖い」と相談を受けていた
まりかにとって、その証言は寝耳に水状態であり、
会社を訴えるべくSNSなどで拡散しようとしていました。
それを山崎の父親が止めたのです。
山崎はデリファスを訴えないという誓約書を交わしていたため
それを破れば違約金が課されるからということでした。
しかし婚約者の真実を確かめたいまりかは
ニューヨークにある本社に勤務する舟渡エレナを訪ねます。
そして山崎の事件にデリファスの過失があることを告発したいこと、
さらにエレナに協力を求めました。
しかしエレナはまりかに協力することはありませんでした。
What you want?
エレナはデリファスの偽の広告を山崎の名前で
作成を依頼していました。
そこに使われた
What you want?
の意味・・・
会社のために過酷な労働を強いられてきた山崎の人生を
犠牲にしてまでデリファスが欲しいものとは何なのか?
人の命より重いものなど存在しない
そんな悲痛な胸中を訴えるべく
まりかはデリファスの荷物に12個の爆弾を仕掛けました。
しかし爆弾の制作者は一つだけスイッチが壊れている爆弾が
出来てしまったと言いました。
まりかはそれを一番最初に自身に使ったのです。
事前にまりかは他人の戸籍を買い取ってアパートを借りていました。
そのため一番最初の被害者でありまりかのアパートで起きた爆発の被害者が
買い取った戸籍の持ち主、里中浩二の名前になっていたので。
ただ止めたかった
まりかは山崎の意志を引き継ぎ、ベルトコンベアを止めるために
爆発計画を企てました。
そして自身の命をもってそのベルトコンベアが止まることを願って
一番最初に自身を犠牲にしたのです。
そうすれば、自身の命によってデリファスが対応を行い、
他の犠牲者が出ないという可能性に賭けたのです。
ところがまりかの願いは虚しく、デリファスの出荷が止まることはなく、
次の犠牲者は出てしまいました。
エレナは共犯だったのか?
西武蔵野に新センター長として赴任したエレナは
当初、福岡から来たと嘘をつきます。
そして山崎のデータベースを消したことを
ホワイトハッカーだった梨本に見破られ、
警察への通報も阻止するなどの怪しい行動から、
山崎の婚約者なのではないかという疑念を持たれてしまいました。
ニューヨーク本社からの使者
エレナは本当はニューヨークの本社に勤務していました。
1年目は期待を胸に、二年目までは順調に過ごしていましたが、
責任ある仕事に就任するとその責務は重くのしかかり、
とうとう眠れなくなってしまい休職して治療を受けることになったのです。
そうして休職していたエレナでしたが、
ニューヨークの本社からの直接の辞令で西武蔵野へやって来たと言います。
そしてその任務は山崎佑の件を隠蔽することでした。
エレナが山崎のデータベースを消去したのはそのためでした。
エレナは共犯ではない
エレナが休職に追い込まれた時、まりかのことを思い出した
と言っていました。
そして休職中にまりかの痛みを理解せず協力も頭ごなしに
拒否してしまった自責の念がずっと離れなかったのではないでしょうか。
きっとまりかの痛みが現在も進行中であること、
デリファスが罪を償うことを強く求めていたことを考えずにはいられなかったの
かもしれません。
そしてきわめつけは山崎のロッカーを見たことでした。
梨本にはわからなかったロッカーの暗号を
同じ苦悩を背負ったエレナには瞬時に理解できたのです。
エレナは、まりかを探さなくてはと強く思います。
そしてこれをもっと早くまりかに伝えることができていたら
と、過去の自信を非難します。
暗号を理解したエレナは、
山崎はともすればエレナの未来だった
そう思ったのではないでしょうか。
そうしてエレナはデリファスの労働環境を改めるために、
まりかとは違うアプローチで戦うことを決めたのだと思います。
ラストの意味
ニューヨーク本社に勤務するエレナを送り込んだ張本人である
サラに「爆弾はまだある」と言い残し、
ロッカーのカギを梨本に託してデリファスを去って行くエレナ。
サラとの関係、そしてまだある爆弾の意味とは?
エレナは使い捨ての駒
エレナはサラが相談に乗ってくれてるふりをするときだけ
日本語でしゃべる
と言いました。
これはサラが真剣にエレナのことを考えてはいなかったことを
示唆しています。
あなたには期待していたと言いながら、
わざわざ日本に送り込んで山崎の隠蔽をさせることに
どんな意味があったのでしょうか。
もしかしたら山崎の件でまりかからの強迫メールを受け取ったサラは
この隠蔽が露呈した時にはエレナを首謀者にすることを画策していたのでは
ないでしょうか。
さらに山崎がデリファスを訴えないとサインした誓約書も
本物なのか怪しいところです。
爆弾はまだある?
エレナが言ったデリファスをおびやかす爆弾はまだある
という言葉。
エレナは今回の爆弾事件の犯人が自分ならば、
11個しかない爆弾を12個あると公表し、
存在しない爆弾を探し続けさせると言いました。
ともすれば正確には明確に機能する爆弾はもうないのかもしれません。
それはサラや隠蔽に加担した五十嵐らの罪の意識を
永遠に植え付ける手段であったのでしょう。
しかしながら明確に機能するとは限らない爆弾を仕掛けたのも事実です。
山崎の暗号が残るロッカーのカギを梨本に託したのです。
そこには山崎が婚約者のせいではなくデリファスのせいで
人生を壊された証拠が残っているのです。
そしてそれを知るエレナと梨本が存在します。
エレナはその後、警察車両に乗せられ、
山崎の件を話したのかもしれません。
しかしその時日本に居なかったエレナの証言を立証するには
梨本の協力や五十嵐の告白は不可欠です。
託されたのは希望
鍵を託された梨本は初めて山崎の暗号の意味を知り、
驚愕します。
自信はブラック企業から抜け出して現在は楽しく働いている
と思っていました。
しかし実際はそうではなかったのです。
自信が抱えたのと同じ苦しみをこのデリファスで抱えた人物がいたのです。
その苦しみが理解できるからこそ、梨本は告発に踏み切るのか?
それとも消せはしないが何もできなかったこれまでの人のように
梨本もまた継承者へ託すのか?
梨本に託された爆弾がどうなるのかは
視聴者もわからないように、サラや五十嵐らも
分からず、見えないものに怯え続けるのでしょう。
自分が壊したものを知る五十嵐
サラからエレナが言う爆弾を探せと指示を受けた五十嵐もまた
ロッカーの暗号を目にします。
五十嵐もベルトコンベアーを見下ろし、山崎がしたかったことを
初めて理解するのです。
そしてそれは自身の責任かもしれないと察知したのでしょう。
あれは自殺ではなかったのだと。
『ラストマイル』感想
出演者が豪華で感慨深くて重く、見た人によって色んな解釈ができる
見ごたえのある映画でした。
もしかするとエレナが共犯なのではないか?
そんなミスリードも素晴らしく、演技派の満島ひかりが担うことで
見た者によって様々な解釈が出来たのではないでしょうか。
日ノ本電機は本当に客のための機能を付けたことで
他社との価格競争に負け倒産したこと、
しかし結局その日ノ本電気の商品が爆弾から命を救ってくれたことが
印象的でした。
消費者は本質を見抜けなくてはいけないのだと思わされます。
結局、デリファスの労働環境が改善されることは描かれません
でしたが、山崎の犠牲がまりかに繋がれ、目覚めたエレナは
その橋渡しを担い、次の梨本につなぐ・・・
そうしていつかその思いが報われることがあると信じたい
ですね。
『ラストマイル』それはカスタマーに荷物を届ける最後の一区間。
そこで事件は起き、それでも荷物を届けることに懸命になってくれる存在も
そこにいる。
今日、ポチった物が明日届く。
それは全く当然のことではなく、影で奮闘してくれている
存在があることを肝に銘じなくてはいけないでしょう。
しかし恐らくこの問題はデリファスに限ったことではないのです。
きっと現代の社会の至るところにそれは蔓延しているのだと思います。
デリファスのように、経済的な利益や効率性を重視するあまり、
従業員たち一人一人の自己が犠牲となっているのかもしれません。
金太郎として送り込まれたエレナは
自らの意志で桃太郎になる道を選択しました。
今生きている中で見えない何かに悩み、違和感を覚えるならば、
自分が壊れてしまう前に、
エレナのように自身で選び、自分の生き方で前に進まなければ
いけないのだと思わされる一作でした。