『愚か者の身分』結末の意味をネタバレ考察/タクヤの末路と梶谷の罪

邦画

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闇ビジネスの世界へ足を踏み入れてしまった若者たちの3日間を
描いた西尾潤氏の同名小説を北村匠海主演で実写映画化した
『愚か者の身分』

驚愕の展開の末に迎えるのはどんな結末なのか?
暗闇に紛れ込んでしまったタクヤの末路と梶谷が犯した罪に迫ります。

※続編『愚か者の疾走』は未読につき、
映画を鑑賞した個人的な解釈になります。

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『愚か者の身分』あらすじ

歌舞伎町で生活する松本タクヤとその弟分・柿崎マモル

彼らはSNS上で女性を装って孤独な男性に接近しては
報酬と引き換えに戸籍売買に持ち込むという闇ビジネスに手を染めていた。

ある夜、タクヤはマモルの主導で戸籍売買を行うべく、
前田という男性を呼び出すことに成功する。

タクヤらの仲間でパパ活にも手を染めている希沙良
前田の対面での相手を担い、個人情報を聞き出した。

そうして今回も戸籍売買を行う上で完璧な身の上の事情を持つ
前田をターゲットにした取引は容易に遂行された。

後日、戸籍売買を仕切る半グレ集団メディアグループ佐藤に誘われ
会食をするタクヤとマモルだった。

しかしタクヤが席をはずした隙に佐藤はマモルに対し、
明日はタクヤと会うことも連絡を取ることもしないように
と警告する。

佐藤を見送った後、意味がわからないマモルは、
一人で何処かへ向かうタクヤを尾行した。

するとタクヤが見知らぬ男と密会している現場を目の当たりにしたのだった・・・。

キャスト
北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、田邊和也、
嶺豪一、加治将樹、松浦祐也、綾野剛
 他

以下、作品のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2026年1月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

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『愚か者の身分』結末の意味をネタバレ考察

尾行をしたマモルはタクヤが見知らぬ男から偽造の身分証を受け取ったのを
目撃します。

見知らぬ男の正体はタクヤの兄貴分で同じ闇ビジネス界の梶谷剣士でした。

しかしその光景はマモルには、タクヤが自分一人でこの世界を抜けること
を画策した裏切り行為に映ったのです。

ショックを隠しきれないマモルはタクヤに背を向け去って行きました。

翌日になってもタクヤを無視していたマモルの元に現れたのは、
佐藤と戸籍売買を仕切るメディアグループの幹部ジョージでした。

佐藤がジョージに「マモルはシロ」だと報告します。
しかしそんなことはどうでもいいジョージに暴行を加えられた
マモルは倒れ込み意識を失ってしまいました。

ほどなくして訪れたタクヤはアパートのドアを叩き、マモルを呼びますが
ジョージらに拘束されて声を出せないマモルは何も答えることはできませんでした。

そんなマモルに佐藤はタクヤはジョージの金に手を付けた(タタキをした)
のだと告げました。

一方でマモルが不在である様子に諦め、帰宅の途についてタクヤが
自室へ入った直後、その屋内からは物騒な物音が響き渡ったのでした。

誰かにつけられている
という不安にかられタクヤの部屋を訪れた希沙良
が目撃したのは・・・ジョージらの制裁によって眼球を失った
タクヤの姿
でした。

知ってはいけない中身の正体

組織の海塚からとある荷物を運ぶように指示された
梶谷はその中身を目の当たりにし、驚愕します。

それは変わり果てたタクヤの姿だったからです。

梶谷に命じられたのは視界を奪われたタクヤの腎臓を摘出するために
闇病院へ運ぶという仕事だったのです。

仕方なく拘束したタクヤをバッグに詰め込み移送する梶谷でしたが
タクヤが目を覚ましたことで何があったのかを聞き出します。

タクヤは佐藤の口車に乗ってしまった末に
佐藤の罪を背負わされ裏切られたのだと告白しました。

それでも視界を奪われた絶望と痛みに絶叫するタクヤを運ぶしかありませんでした。

闇病院に到着した時、海塚から梶谷に着信が入り
到着はまだかと聞かれます。

梶谷はすでに到着しているにも関わらず、渋滞にはまってしまった
嘘の言い訳をして時間稼ぎをするのでした。

梶谷はタクヤが自分に2つの偽造身分証を依頼した理由を尋ねました。

するとタクヤは自分にはマモルという弟分が居るが彼は
タタキにも関わっておらずまだこの世界に染まり切っていない今の
うちにマモルを連れて組織から抜けたかったのだと答えました。

マモルをこの世界に引きづり込んでしまったのは
自分だから・・・
と。

梶谷は震えながら「めんどくせぇな・・・」
と呟くと闇病院を後にし、恋人の由衣夏に身の回りの荷物を
持ってくるように頼みました。

そうして途中でジョージらの追跡にあいながらも逃亡に成功し、
何とか由衣夏の元勤務先である神戸のスナックに身を寄せたのでした。

アジが守ったもの

マモルは佐藤にタクヤの部屋の掃除を依頼されていました。
屋内には血液が飛び散りその壮絶さに不安を抱いていると
一通のメールを着信するのです。

差し出し人はタクヤでした。

このメールをマモルが見ているということは、
自分は既に命がないか、治験体にされているか・・・

という内容で始まるメールを見てタクヤに起こったことを
察知したマモル。

そこへ佐藤が現れ、タクヤに預けていたぬいぐるみ
金目の物を物色していました。

マモルにも何か持っていけと助言する佐藤に
マモルは冷凍庫のアジを選びます。

もっと良い物を持っていけとあきれ顔の佐藤に、
マモルはいつかタクヤが川に投げたギャルソンの白いシャツ
選ぶのでした。

マモルは帰宅してアジのお腹を開きます。
すると中からはマモルの偽装身分証と鍵が出てきました。

タクヤからのメールの続きには
冷凍アジに隠した物があるから持っていけと記され、
出て来た鍵は佐藤の企みに協力して盗んだジョージの金
が隠してある倉庫の物だとありました。

その金の中から2千万はタクヤが戸籍を奪った
江川に渡して欲しい
とありました。

そして残りの金はマモルに託すから東京を離れ組織の目が届かない
都会ではない場所に隠れ、人生をやり直せと書いてあったのです。

マモルは託された通り、江川に会いに行き、
タクヤからの罪滅ぼしだと告げると2千万を手渡しました。

希沙良からは、
私たちは狙われている。上手く逃げ切って。
という別れの挨拶が届き、
実際、尾行していた追っ手を振り切ってタクシーに乗り込んだマモル。

何とか逃げ切ったマモルは
たどり着いた橋の上でタクヤのシャツをまとい、
タクヤと眺めたあの川を思い出して空を見上げるのでした。

前田の正体

冒頭でマモルが初の主導権を握って遂行した
戸籍売買契約がありましたが、
その被害者である前田の本当の姿がラストで明らかになりました。

タクヤと梶谷が身を潜めている間に
ジョージや佐藤といったメディアグループの人間が逮捕され
組織は壊滅への一途を辿ったかに見えました。

2人で逃げ切ってアジの煮つけを食べるタクヤと梶谷の表情には
ほんの少し、安堵と笑顔が戻ってきたかに思われた部屋の外には、
2人を張り込んでいる刑事がいたのです。

冒頭でタクヤらに騙された憐れなおじさんは、
ベテランの刑事だった
のです。

前田はわざとタクヤらに騙されジョージらへと繋がる証拠を
集めるためにタクヤらを泳がせていた
のでした。

そうして幹部が逮捕されるも、まだ全滅ではないと
意欲を見せる前田が狙う視線に映るのは
タクヤと梶谷の姿でした・・・。

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タクヤの末路は救いか?否か?

劇中でタクヤはおばあちゃんに伝授された「アジの煮つけ」
マモルにふるまい、梶谷に教えていました。

それをタクヤが幸せそうにほおばるのは
たった一つのその料理が唯一の愛情の証だったからなのでしょう。

タクヤが闇に染まることになったきっかけと言える
自身の戸籍売買の経緯は弟を助けるための資金が必要だったから
でした。

人生を懸けたその資金で弟を助けることは叶いませんでしたが、
タクヤは大金欲しさの闇落ちではなく、
誰かと温かい日々を楽しみたいという愛情への渇望
その原点となっていたのではないでしょうか。

お金を手にしてもドブ川でも釣れるアジを選ぶこと、
ギャルソンのシャツを川に投げ捨ててしまう潔さ、
さっさとお金を持ち逃げせずにマモルへ全てを託す手配を
進めていたことも。

すべてはタクヤの心の底には誰かを思い、誰かと笑いたいという
根底の願い
が潜んでいたからの選択だったのかもしれません。

その結果、タクヤは利用され裏切られ光を奪われるという
残酷な末路を辿ります。

しかしながら唯一信用していたという梶谷はマモルを守ったタクヤと
同様に、自身の危険に変えてもタクヤを守り抜くという道を
選ぶことになりました。

それはタクヤにとって暗闇に輝くネオンよりも眩しい光だったのではないでしょうか。

梶谷の罪

運び屋として知らなくて良いことは見ずに仕事を淡々とこなす
ことでどうにか平静を保っていた梶谷の日々でした。

しかしあの日、梶谷は知らなくていい荷物の中身を見てしまうのです。
それは弟的な存在だったタクヤの無残な姿でした。

これまで運んだ荷物も恐らく似た様な姿の中身であったことを
もう見て見ぬふりをするのは不可能になったことで
自身の行く道の是非を自問自答する時がきたのです。

それでも組織に逆らえば自分の身に危険が及ぶことは
その仕事を遂行させる大きな要因
になり得ました。

闇病院へ到着してもすぐには中に入ることができない梶谷の迷いを
タクヤが弟分を思う気持ちが後押しします。

タクヤが本当の弟のように大切な存在になったマモルを
黒くて暗い世界の住人にしてしまったことへの後悔と自責の念

無残な姿になってもなお抱く、
マモルには明るい場所で自分のしたいことを
全うさせてあげたいという願い。

ふと梶谷の胸中によぎるのはタクヤを自分に重ねた姿でした。

佐藤にはめられ視界を奪われ、さらに臓器まで奪われた挙句
命を消される目の前のタクヤをこんな目に合わせているのは誰なのか?

佐藤でもジョージでもない。
それは俺自身の罪なのではないか。

自分にとってもタクヤは弟のようにかわいい存在なのに
その彼を自身の保身を理由に見殺しにしようとしていたなんて。

後悔と恥ずかしさと自身への怒りとタクヤに対する尊敬は
めんどくさくて温かいものになって梶谷の頬を伝わったのでした。

結末が示すもの

梶谷を心配する由衣夏の声を聞いて
良い人だと断言した
タクヤ。

そんなタクヤはきっと目では見えない感情を映す、
自分に向けられた人の善意や人から受けた悪意
のった声を忘れずにいるからなのでしょう。

それはタクヤに優しかった(と思われる)おばあちゃんの声
そしてタクヤ以外に誰もいない弟の見送り会場に
たった一人で姿を現した梶谷の声でもあったのかもしれません。

牛乳の賞味期限について話す由衣夏の声もそれらと同様だったのでしょう。

その場面にふさわしいとは言えない会話の裏には、
賞味期限を超えたその先に梶谷との未来が存在することを
匂わせ、梶谷が自分との日常に帰って来る希望が潜んでいること
を会話を聞いたタクヤは受け取ったのだと思いました。

タクヤはそんな由衣夏のわかりづらい優しさも感知し、
牛乳の賞味期限の話をする声に隠れた心配や不安も読み取った
のではないでしょうか。

お金の力はこわいと言ったタクヤでしたが
その彼が本当に欲しかったのはそんな優しい声だったのだと思いました。

本作に登場するのは、
人は生まれながらに平等ではない
そんな言葉を痛感させる、環境に恵まれなかっただけの若者たち。

そんな彼らが普通の生活を夢見て足を踏み入れてしまった場所で
待っていたのは残酷すぎる現実でした。

だとすれば彼らには夢を持つこともなく希望など存在しないのか?

そんな問いかけに対する答えをラストで示してくれた気がしました。

彼らは取返しのつかない過ちを犯してしまったのかもしれません。
そしてその過ちはタクヤに壮絶な試練を強いるのです。

しかし最後に待ち受ける刑事はやっと穏やかに食事を囲む
タクヤと梶谷を追い詰める存在でありながら、
再生の道を示す存在でもあるのだろうと思いました。

人は誰もが多かれ少なかれ過ちを犯す者。
でもやり直しがきかない人はそう多くはないのだと。

そしてタクヤには、梶谷には、マモルには、
自分を犠牲にしてでも守ってくれる絆が存在するのです。

それこそが誰しもが得ることはできない、
お金では買えない深い繋がりという一級品なのではないかと思える一作でした。

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