近未来のドイツが舞台の、
自分の寿命をお金に変えることができたり
お金を払うことで人の寿命が手に入るという理想郷⁇のお話。
人生の提供という残酷な製品を扱う状況では
失う者と得る者では立場が大きく違い
何を選択するのかによって見える景色は違うのだと思います。
本作では途中までソフィーの娘に寛容だったエレナでしたが・・・
なぜ最終的に闇医者との取引を決行したの?
という気になるコトについて推察します。
この記事では
★エレナが決断をした理由
★選択を迫られた2人の運命は?
★ラストの意味と作品のメッセージとは?
に着目して綴っています。
【パラダイス -人生の値段-】あらすじ
◆配信開始
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) July 27, 2023
Netflix映画『パラダイス -人生の値段-』(ドイツ)
多額の借金返済のため、40年分の寿命を奪われた妻。
妻を救おうと奔走する夫が目の当たりにしたのは、時間を操るバイオテック企業の陰謀だった。
時間と金の意味を問うSFサスペンス。#パラダイス人生の値段 pic.twitter.com/M1SgrL4DKG
ドイツのベルリンに本社を置く企業〖AEON〗。
その業務内容は人生を売買するというビジネスだった。
寿命を売る者には莫大な金額の報酬が与えられ、
寿命を求めるレピシエントは若さを手にすることを可能にしたのだ。
その業務内容ゆえの高額な給与に惹かれ入社したマックスは、
自身も過去に学費のためドナー登録をしたことがあった。
そんなマックスは日々、寿命を提供してくれる若者を
匠な話術によって口説き、営業成績をあげていた。
マックスには医者の妻・エレナがおり、二人は妻が購入した
高級マンションで幸せな暮らしを送っていた。
そんな折、マックスたちの住む部屋でろうそくの消し忘れによる
火災が起きてしまう・・・。
キャスト
コスティア・ウルマン、コリンナ・キルヒホッフ、マルレーネ・タンチク、
イリス・ベルベン、リサ・マリエ・コロール、ローナ・イシェマ他
以下、作品のネタバレが含まれます。
コスティア・ウルマンの他の作品を視聴するならHuluがおすすめ 松平健主演『バルトの楽園』にも出演しています!本記事の情報は2023年11月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。
エレナがマリーの人生を奪う決断をした理由
自分の寿命を担保にして手に入れた憧れの高級マンション。
しかしろうそくの不始末が原因で火災が起きその城は堕ちてしまいます。
過失として保険もおりず、残されたのは多額の住宅ローンだけ・・・。
しかもその借金を返済する術は担保に入れていた
エレナの40年分の寿命のみでした。
成す術がなく40年分の寿命を差し押さえられたエレナは
数日で老婆の姿に・・・。
最初の決断
強制的に寿命を奪われたエレナが味わったものは
身の丈に合わない物件を自分の身を担保にしてまで欲しがった後悔と
若さ(人生)を失う恐怖と残された暗黒の未来だったのではないでしょうか。
兼ねてからの願いだった待望の妊娠も
流産という結末になってしまいました。
そんなエレナは年老いてからも医者の仕事に熱中し
同僚から〖働きすぎだ〗と助言されるほどに従事していました。
そして最初の決断をするのです。
共に年齢を重ね歴史を作るはずだった夫・マックスと別の道を歩む
という決断を・・・。
罪のない命
しかしマックスは諦めませんでした。
エレナの寿命はAEONのCEOであるソフィー・タイセンに移植
されたことを知るのです。
そこでソフィーから寿命を取り返すべく闇医者と取引をし、
ソフィーを誘拐します。
ところが若返ったソフィーだと思ったその女性は
ソフィーの隠し子マリーだったのです。
エレナはマリーから、マリーは母親から寿命を移植すればいい
そんなマックスの計画の元3人は取引へ向かいますが
エレナはそれでも乗り気ではありませんでした。
それは、自分の意志に背いて
奪われるという恐怖を体感しているからです。
この時のマリーは、寿命を奪われたエレナと同じ。
自分のことのように可愛そうに思い、
エレナを気遣い、逃走して溺れそうになったエレナを救助します。
マリーに罪はない
マリーからは奪えない
そう思うエレナでした。
そんな3人の前にAEONに反旗を振りかざす組織アダムが現れます。
アダムのリーダー・リリスによると
ソフィーは兼ねてから自身の適合者であるエレナに目を付け、
高級マンションを購入させ寿命を担保にさせたのも、
そのマンションに火災を起こさせたのも
ソフィーの策略だったと言うのです。
それを踏まえて、一丁の銃をエレナに手渡します。
自分かマリーかを選べと。
エレナは自分の分身のように気にかけていたマリーを
選べませんでした。
奪う者と奪われる者
マックスたちの隠れ家はAEONとアダムの抗争へと発展しました。
ソフィーもリリスも銃弾に倒れ、
(実際は防弾チョッキを着ていたソフィーは生還していた)
マックスたち3人は脱出を試みます。
その際マリーを丁寧に誘導するエレナでしたが
隙をみてマリーは銃をエレナに向け
迷うことなく引き金を引きました。
しかしその銃には弾が込められておらず、マリーの思惑は失敗します。
その光景を目の当たりにしたエレナは、ソフィーに40年の人生を奪われ、
気にかけていたマリーに残りの人生を奪われそうになり
気付かされたのです。
マリーは決して奪われる側の人間ではないということを。
選択をせまられた2人の運命は?
AEONで働き、難民キャンプに住む若者から寿命の提供をさせていた
マックスでしたが、実際の血や命が終わる瞬間を目にして
初めて人生の意味やお金には代えられない大切さに気付いた
のかもしれません。
脱出の最中、エレナにこの計画を断念するよう説得するのです。
しかし、すでに決意しているエレナにはその声は届きませんでした。
搾取する側へ
覚醒したエレナは自分の人生は自分で取り返す決意のもとに
マックスを振り切り、闇医者の元へマリーを乗せた車で
向かいました。
マリーの寿命を移植して晴れて人生を取り戻したエレナが見たのは
まだ幼い子どもたちの寿命が富裕層の人たちに売られている光景でした。
命の大切さに気付いた2人の運命
難民キャンプや貧困に悩む人たちの寿命をお金にかえることを
生業としていたマックス。
自身も学費のために寿命を差し出した経験から
『数年長く生き伸びるよりも裕福な方がいい』
という価値観だったのでしょう。
しかしそんな命の取引を発端に争いは激化し
エレナの寿命はおろか、自分の命も危ぶまれる状況で
マックスの中で何かが変わりました。
罪のないマリーを犠牲にすることは出来ない。
そう主張します。
しかし分かり合えあなかった夫婦は決別を迎えます。
マリーの人生を搾取し、待望の懐妊をして、マックスとは別の男性と
仲睦まじく暮らすエレナは幸せいっぱいそうでした。
まさに楽園のような場所に居ました。
そんなエレナを目の当たりにして、マックスは
人生の売買に心から反感を覚えるのです。
そしてAEONの最優秀営業マンからアダムのリーダーへと
転身していました。
ラストの意味とテーマを考える
2人は命の大切さに気付いたのでしょうか?
自分の命の大切さに気付いたであろうエレナは
大切なものが戻ってきて、それをマリーから奪ったことに関しては
微塵の後悔もない様子でした。
一方でマックスは自分とエレナを引き離し、幸せの絶頂から突き落とした
ソフィーやAEON、人の人生をわが物にする人たちにむけた
復讐心が生まれてしまったのではないでしょうか。
人生を売った経験がある夫と策略にはまり人生を奪われた妻。
そんな夫妻を主人公に繰り広げられた物語の結末は
目の前の小さな幸せが壊れ、
妻はその苦しみを味わったにも関わらず奪う者へと化してしまいました。
夫も戻れない道のりを歩み始めます。
自分の数年をお金に代え、その報酬として大学で学ぶことを
経験済みだったことから、
ほんの数年ならばアリでしょう・・・という気持ちだったのかもしれません。
しかし人の欲というものはコントロールするのは難しいものです。
CEOのソフィーもかつては亡き娘の早老症という病気に対峙するため
研究を始めたに違いないのに、最終的には自身の欲で病気のことはおろか
目の前に老いてしまったもう一人の娘が居ても悲しむことも
自分が変わってあげることもしようとしませんでした。
母親でも女でもなくまるでモンスターです。
欲にまみれるとはそういうことなのでしょう。
人生の売買という、人としてあってはいけない部門に関わる選択
をしてしまった代償は大きいということなのです。
長生きしたい。
いつまでも若くありたい。
そんな願いを持っている人は五万といることでしょう。
しかしそれが数年だったとしても
人の命を奪うことに代わりはないのだということ。
自分の臓器を売るのと代わりはないのだということ。
幸い、現在ではこの物語のように寿命の売買は不可能な訳ですが
もしも可能だとしても
自分の欲のために道を踏み外すようなことにはならないように
という願い、そして
あなたの人生はあなたが精いっぱい生きてね
と、心に投げかけられた気がしました。