阿部サダヲ主演映画『アイ・アムまきもと』賛否両論の結末を考察する

邦画
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イギリス・イタリア合作映画
『おみおくりの作法』を阿部サダヲ主演でリメイクした
『アイ・アムまきもと』

年々増え続ける『孤独死』をテーマにしている本作
だけあって涙を誘う一作になっています。

しかしその結末は賛否両論が展開されました。
果たして待ち受けるのはどんなラストだったのか?

賛否両論が起こった理由は何故なのか?
に着目して考察しています。

この記事のポイント
賛否両論を引き起こす結末
『頑張った』の意味

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『アイ・アムまきもと』あらすじ

市役所福祉課で働く牧本壮は48歳で独身。
牧本は〖おみおくり係〗として孤独に亡くなった人物の
遺品からその人の情報を集め、遺族を探したり、
葬儀への打診や宗派ごとの式を行うなど
埋葬までを丁寧に1人で執り行っていた。

牧本自身、両親は他界し、身寄りがなく
1人で暮らしていた。

そんな牧本は自分の墓は見晴らしの良いお気に入りの
場所に購入済みだった。
何度かそこへ訪れては寝そべってみた。

そんな折、刑事の神代から連絡が入り、
甥が居るものの疎遠であるため引き取りを拒否されたとして
蕪木という男性の情報を伝えられた牧本。

その住所は自身が住むアパートの向かいの建物だった。
蕪木の部屋を訪れた牧本は、
アルバムに写る少女の姿を目撃する・・・。

キャスト
阿部サダヲ、満島ひかり、松下洸平、でんでん、松尾スズキ、
宇崎竜童、坪倉由幸、篠井英介、國村隼、宮沢りえ 

『アイ・アムまきもと』は何処で見られる?

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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2024年8月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

賛否両論を引き起こす結末

蕪木の部屋で少女が写るアルバムを発見した時から
葬儀に参列してくれる遺族がいることを信じ、
諦めないで探し回る牧本でした。

新たに局長として赴任してきた小野口
そんな牧本の仕事に理解がなく、
おみおくり係を廃止することを忠告します。

蕪木の弔いがおみおくり係としての最後の仕事になる
牧本でしたが諦めることはありませんでした。

その結果、津森塔子という実の娘や、過去に同棲していた今江みはる
そして蕪木を命の恩人だと言う槍田幹二に出会います。

塔子は蕪木に捨てられた怒りをおさめることは
できずにいました。

しかし牧本の説得により葬儀への出席に前向きに
なっていく塔子。

そしてそんな蕪木に、牧本は自身の購入済みの墓を
譲る
のでした。

ところが塔子と打ち合わせをした帰り道のこと、
カメラを携えながら横断歩道を渡っていた牧本は
車に轢かれてしまいます。

地面に横たわる牧本は
『頑張った、頑張った』と呟きながら
涙を流し息を引き取るのでした。

蕪木の葬儀には塔子やみはる、槍田をはじめとする
牧本が会いに行った、蕪木を思う数人が参列していました。

泣き崩れる塔子を支えるみはる、それは心温まる
式になりました。

奇しくも同日に共同墓地に牧本の弔いにやってきたのは
神代
でした。

神代は蕪木の惜しまれながらも心温まる式を眺めながら
牧本に呟きます。

『あなたの粘り勝ちですよ』

そんな牧本の眠る地に、生前、牧本がおみおくりをした
人物たち(の魂)が訪れ、感謝をするように牧本に手を合わせる
のでした。

残酷すぎる結末に納得できない⁈

納得できない派の理由には
ラストの残酷さがあったのではないでしょうか。

これまで孤独に旅立った人たちに寄り添い
幾度となく人生の最後を目撃してきた牧本でした。

牧本は他人の感情をくみ取るのが苦手で
察しの悪い性格でしたが、
蕪木のおみおくりに際し、出会った人たち、
複雑でありながら芯の通った蕪木の人生は牧本に
共感を与えたのです。

これまで身近にはいなかった
〖生〗を授かったばかりの赤ちゃんというも然り。

それは弱くて柔らかく、愛おしい存在。

そんな存在に触れて初めて感じる生きるということ。

牧本に蕪木の娘の塔子は、
牧本の口から父親の人生の話を聞きたいと告げます。

おみおくりの全てが終了したら
今度は牧本の新たな人生として塔子と会う予定でした。

そうやって他人に同調するのが苦手だった牧本は
他人からの影響を受け、変わっていきました。

昔の牧本ならば青信号でも左右を見渡し、
車が来ないことを二度三度と目視してから渡っていたほど慎重でした。

しかし牧本は変わったのです。
信号は確かに青でした。
でも左右を確認する代わりに
カメラのレンズ越しの景色を頼りに歩き出した牧本は車に轢かれてしまうのです。

孤独だった牧本の孤独ではない人生が始まろうとして居た矢先の
事故はあまりにも残酷
過ぎました。

それでも救いはあった⁈

突然の牧本の退場は残酷すぎました。
加えて、自身の墓を譲ってしまった牧本は
家族や親しい人に見送られる蕪木とは対照的に描かれました。

おみおくりに来たのは刑事の神代のみ
入るのは共同墓地。

しかし、全く救いがなかったわけではありませんでした。

確かに牧村の方に現れたのは神代のみでした。
それでも神代は牧村をきちんと理解し称えた1人
だったのです。

牧本の弔いの近くにいた塔子だけは
確かに何かを感じ取っていた様子でした。

言葉には表さなくても塔子の視線は
牧本の不在を不穏なものとして受け取っていたのです。

あの時には知らされなかった牧本の不幸は
いずれ塔子の知るところとなり、
牧本はが購入していた墓のことも知らされ、

もしかしたら蕪木と共に眠るという可能性
あるのではないでしょうか。

そして、新たな局長からは散々な言われようだった
牧本の仕事でしたが、ラストで
その牧本の元には沢山のありがとうが届きました。

〖葬式は遺族のためのもの〗
と言った小野口の言葉とは裏腹に
その思いを受け取った弔われる人たちには
きちんと届いていた
のです。

『頑張った』の意味

牧本は最後にその命が消えゆくのを感じ、
『頑張った、頑張った』と呟いて涙を流します。

この『頑張った、頑張った』という言葉は、
牧本が担当した人の飼っていたオウムが何度も発していた言葉でした。

飼い主は1人で『頑張った』と自分に言い聞かせていたのか。
オウムに励ましてもらいたくてその言葉を教えこんでいたのか。

その理由によっても意味が変わってくるこの言葉。

みはるは
『しんどい』とか『疲れた』というようなマイナスの言葉より
『頑張った』と言い換えた方が前向きな気持ちになれるというような
ことを言っていました。

そんな言葉を最後の主張とした牧本の真意はどこにあったのでしょうか。

筆者は実は牧本の最後の言葉『頑張った、頑張った』は
『しんどかった、疲れた』という意味だったのではないのか
と思うのです。

自分の仕事に誇りを持ち、見知らぬ人のためだけではなく
自身の励みにもなっていたであろう、おみおくりの業務。

それでも周りの人に怒られたり、苦労して見つけた遺族にも
簡単に受け取りを拒否されたり、挙句には新居長は
おみおくり係を廃止すると宣言します。

何よりも傷ついたのは新局長の言った
〖葬式は生きている人のためにある〗
という言葉でしょう。

それは間違いではないのかもしれません。

しかしその言葉を肯定することは牧本の使命を
否定すること
になってしまうのです。

牧本にとっては生きづらかったこの世界。

そんな世界でも自分は、しんどかったけれど懸命に
生きたのだ
という実感のこもった言葉でした。

しかしながら蕪木の人生を辿って知り合った人たちの影響は
確実に牧本に変化を与え、孤独だと思っていた牧本の人生には
人が集まってくる兆しがありました。

残酷にも牧本の人生が、その光景をみることはなく
ここで閉ざされることの悔しさは
涙となって流れていきます。

奇しくも本人が不在となったその世界には、
牧本という1人の人間を思い、感謝し、理解し、称えるもの、
そして懐かしむもの
が存在するのでしょう。

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『アイ・アムまきもと』感想

セレモニーは遺族のためにあるもの
だとは知りませんでした。

それは、遺族にとってはその人ともう二度と
会うことは出来ないという残酷な現実を
突きつけられる辛い場所だから。

それでも何とか出席しようとするのは
弔われる人から別れを告げには来られないから
行ってあげなければいけないのだと思っていました。


孤独死というのが決して他人事ではないところが
怖い現実です。

だとすれば孤独で寂しい最後だからといって
その人生が寂しかったとは限らないし、
懸命に駆け抜けたであろう人生の物語を
せめて『頑張ったね』と称えてあげる人が居たら
希望になりますね。

牧本さんもそんなことを考えたのかなと
思いました。

しかしその牧本さん自身にも変化が表れます。
やっぱり本当に身寄りのない人は少なくて、
人の数だけ出会いや思い出が存在し、
そういうものに触れて自身にも共感できるもの
感動できるものを見出します。

人のために動いてきた牧本自身もまた
満たされていったのです。

そんな矢先に奪われた人生だったから
そのラストは納得できない~
と思ったりもします。

その一方で逆にそのラストがあったからこそ
牧本がおみくりをする理由や救い、
された側の思いが際立って感銘を受けたという面も
あったのかもしれません。

命が絶えるその瞬間の牧本は
自分は『頑張った』と呟いており
流した涙はやり遂げた証に思えました。

あんなに牧本に反発していた神代が
徐々に協力的になり、最後にはたった一人で
牧本のおみおくりをするまでになったという
ラストにこの物語の醍醐味はあるのかもしれません。

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