室井慎次はなぜ『敗れざる者』なのか?タイトルに秘められた意味を探る

邦画
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『踊る大捜査線』柳葉敏郎が演じる室井慎次を主人公に
描いたスピンオフ作品の前編『敗れざる者』

前作『踊る大捜査線THE FINAL新たなる希望』から12年の時を経て
その後の室井慎次の姿を描いています。

警察を去った室井慎次はなぜ『敗れざる者』なのか?
タイトルに秘められた意味に迫ります。

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『敗れざる者』あらすじ

かつて警察庁組織改革推進委員会の委員長を務めていた室井慎次
だったが、5年間従事した後、思うような成果を上げることが出来ずに
その職務を解かれ委員会は解散に追い込まれた。

自身の責任を感じた室井は定年を待たずに警察を去ったのだった。

警察の職務から退いた室井は故郷の秋田に戻り、
山奥の民家を借りて移住していた。

単身者の室井だったが、母親を殺害され孤児となった高校生の森貴仁(以下タカ)
犯罪を犯し服役中の父親を持つ柳町凛久(以下リク)の2人の里親となり
3人での生活を送っていた。

そんな折、室井の民家からほど近い場所から異臭が漂い草木が枯れ果てた
場所を見つけ、不穏な予感をかぎ取った室井は警官に調査を依頼した。

するとその地中からは腐乱した状態の亡骸と洋梨が発見された。

そしてその身元は室井がかつて担当した事件の犯人グループの一人だった。

キャスト
柳葉敏郎、松下洸平、福本莉子、齊藤潤、前山くうが、前山こうが、
矢本悠馬、甲本雅裕、生駒里奈、加藤浩次、小沢仁、飯島直子、佐々木希、
升毅、真矢ミキ、稲森いずみ、筧利夫、いしだあゆみ
 他

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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はお気をつけください。

本記事の情報は2025年12月時点のものです。
最新の情報は各サイトにてご確認くださいませ。

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室井慎次はなぜ『敗れざる者』なのか?

室井慎次を語る上ではずせない人物と言えば
言わずもがな、本作には登場しない青島俊作です。

そして室井と青島は2人が交わした約束
その絆は繋がっていました。

青島は現場から、室井は偉くなって警察の内部から
組織を変える
こと。

それが2人が交わした約束でした。

室井は青島との約束を守るべく上へと上がって行き、
警察庁組織改革推進委員長まで上り詰めたのものの、
心半ばにしてその道は閉ざされてしまったのです。

変えられなかった組織を前に
自責の念と青島との約束を踏みにじってしまった
という無念は室井を引退に追い込みました。

タイトルに秘められた意味

警察組織を変えることは出来ずに、青島との約束も果たせなかった
自分は敗北者である。

それが秋田の山奥でひっそり暮らす室井の心情でした。

そんな時に室井が住む民家のすぐそばで事件は起きたのです。

埋められていた被害者はかつて室井が担当した
「レインボーブリッジを封鎖できなかった」事件の犯人グループの一人
瀬川吉雄でした。

瀬川は18年服役した後、出所後も再び詐欺に手を染めていたのでした。
その瀬川が何者かに殺害された事件。

警視庁捜査一課の桜章太郎は瀬川を良く知る室井に捜査の協力を求めます。

それを機に現在は同じく捜査一課に所属している緒方薫と、
そしてタカの母親を殺害した犯人との面会先では看守部長を務めている
森下との再会を経て、引退してもなお、室井という存在がその信念が、
今もあがき続ける彼らの中にしっかり受け継がれている
ことが描かれています。

ともすれば、それは敗北にあらず。
室井はまさに『敗れざる者』だったと言えるのでは
ないでしょうか。

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警察を辞めた室井が見る景色

『敗れざる者』ではで既に警察を辞めて隠居生活のように
ひっそりと暮らす室井の姿が描かれますが、
かつての室井からは想像もつかない里親という立場になって
2人の子どもの面倒を見ています。

事件ではない室井が見る景色とはどんなものなのでしょうか。

継承される信念と正義

高校生のタカは、母親を殺害されたため室井は
里親になることを申し出ました。

そんなタカの元にまだ裁判中の犯人の弁護士・奈良育美が接触してきます。
犯人に有利な証言をして欲しいと願い出るのです。

何通も送られてくる犯人からの手紙に目を通すことすら
できないタカでしたが面会する決意をします。

一筋縄ではいかなそうな室井をけむたがり退けようとする奈良でしたが、
室井は逆に被害者であるタカの母親に敬意も払わない奈良の無礼さを指摘し
一刀両断しました。

室井が付き添い、犯人と面会するタカでしたが、
犯人は反省するどころかタカのことすら眼中にないようでした。

そんな犯人に向けタカは言います。
あんたのように悪人ではない大人を知っている。
自分はその人のようになりたいのだと。

引退した室井自身が見たのは、敗れたと思い退いた
彼の信念やまっすぐな正義に影響を受けるタカやリクといった
未来を担う若者たち
だったのです。

真奈美さまの娘

タカとリクからの信頼が厚い室井の元に
日向杏が訪れます。

元々の里親は杏に手を焼き、同じく里子を引き取っている室井宛に
手紙とお金を持たせた杏を送ったのです。

ところが杏の本当の母親は青島が逮捕して服役中の猟奇殺人犯・日向真奈美
であることが判明します。

そんな杏はタカとリクの前で室井がお金目当てで里親になっている
というデマや、自分に暴力を振るっていると信じこませたり、
リクが作っていた室井へのプレゼントを捨てたりと、
平穏だった室井家に波風を立てます。

リクは杏を信じてしまい室井との間に溝が出来てしまうものの、
タカはむしろ杏を恐怖の対象として見るようになります。

果たして杏の目的とは何なのか?

青島は窓際族?

本作では登場しない青島俊作ですが、
新城から青島の現在は警視庁の捜査支援分析センターという場所に
在籍していると聞きます。

つまり青島もまた居るべき場所である
『現場』の人間ではなくなってしまったことを意味しています。

それでも青島もまた敗れ去ってはいません。

現場ではなくてもまだ警察という組織の中で諦めることなく
あがいている
のです。

室井の家族

室井と新城の会話を聞いていたリクに
組織とはこうして一緒にいることだと説く新城。

しかしリクはそれを『家族』だと表現します。

本作『敗れざる者』では青島はおろか、すみれ真下も登場しません。
それは視聴者に寂しい感情を沸き立たせるとともに、
室井の現在が「孤独と戦っている」かのようで切ないものだったのではないでしょうか。

しかしそれはミスリードであって、
室井は警察にはおらずとも室井の思いと正しさをもって
誰かに手を差し伸べることを怠っておらず、
それはタカとリクを通して室井が決して孤独ではないことを
視聴者にしらしめたのだと言えるでしょう。

不穏なラスト

秘密基地でリクとの和解に成功した室井でしたが、
そこを出ると小屋が炎に包まれていました。

小屋の前にたたずんでいた杏とタカの姿があり、
室井の警察時代を象徴するコートが少しずつ火にのまれて行く
光景を止められない室井が見つめる様子が描かれます。

火をつけたのは誰なのか?
そしてその目的は何なのか?

室井に立ちはだかるのは村人か?
犯人か?
それとも・・・?!

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『許されざる者』感想

現場で頑張る青島と出世して内部から組織を変える室井。
立場や階級の異なる2人の刑事の固い約束は果たされることは
ありませんでした。

室井は出世した真矢みきが演じる沖田のはからいで
秋田県警本部長の花道を用意してもらうも
それは辞退して警察そのものから去ることを選びました。

室井にとっていかに青島という存在が大きかったのか?
が伝わってきます。

しかし本作を鑑賞すると、今もなお自称『負け犬』の室井
を必要とする者は沢山いることわかります。

室井を知る多くの警察関係者はきちんと室井の信念を引き継いでいる。
そう思えば、決して室井は敗れてはいないのだと痛感します。

そして何より遠くの警視庁では青島もまた苦境に置かれながら
今も諦めず闘っている。

それを思えばこそ室井もまた敗れてはいられないと
思わされる一作でした。

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