『コン・エアー』などに出演している
ジョン・キューザック主演のサスペンス【アイデンティティー】
有名作品とは言い難いものの
サスペンスとしての評価が高い一作です。
ですが少し難解な点もありますので、
この記事では以下の内容についてわかりやすくまとめています。
・『アイデンティティー』はどんな作品?
・事件のポイント
・真犯人は誰なのか?
・怖い結末になった理由
【アイデンティティー】あらすじ
連続殺人犯マルコム・リバースは極刑の罪が下されていたが、
解離性同一性障害(多重人格障害)の疑いがあることが判明し、
罪を犯した人格のみを消し去ることで
刑の施行見直しを行おうと再審議が行われていた。
時を同じくして、ある田舎町のモーテルでのこと。
支配人ラリーに、ジョージという男性が
息子ティミーと共に交通事故による重傷の妻・アリスの救助を求めに訪れた。
しかしモーテルから救助を呼ぶことが出来ず
アリスに大けがを負わせてしまった女優キャロラインの運転手・エドは
病院へ向かうが悪天候のためモーテルに引き返すしか術はなかった。
他にも激しい雨により、囚人(ロバート)を移送途中の
刑事(ロード)や、娼婦のパリス
夫妻(ジニーとルー)の身動きがとれなくなった10人が
集まったモーテルで惨劇の幕が開ける・・・。
果たして一体誰が犯人なのか・・・⁈そして目的は何なのか。
見どころ1・個性的且つ演技派俳優たちに騙される
モーテルに集まった10人と支配人1人の顔ぶれ。
視聴者はまず顔を覚えるのが大変・・・となりそうですが、
本作の俳優たちは、映画・ドラマ好きさんならば
観たことのある顔ぶれではないでしょうか。
そんな訳で覚えるのも比較的容易で、
みんな怪しく見えちゃうから犯人がすぐにわかっちゃう
なんていうこともありません。
見どころ2・散りばめられた伏線
ラストに辿り着いて全てがわかった時、
う~ん、なるほど。
とうなってしまう伏線が散りばめられています。
もう物語を知っている。
そんな方も、わかった上で確認する伏線が楽しめる映画になっています。
見どころ3・見抜くのが困難なラスト
伏線が沢山ある故に、真実が惑わされやすい作品です。
どこかの場面に隠された重要ヒントが存在します。
でも1回目の観賞ではむしろ伏線・ヒントは気にしない方が楽しめそうです。
がっつり騙されちゃってくださいませww
以下
内容のネタバレを含みます。
ご鑑賞後の再訪をお待ちしていますm(__)m
【アイデンティティー】ネタバレ考察
いかにも怪しい悪天候のせいで
いかにも何か起こりそうなモーテルに集合してしまう者たち。
そしてその一方で極刑の再審議がお行われている場面が何度も映し出されます。
この2か所で起こる事件がつながったとき
アイデンティティーが浮き彫りになるのです。
以下、
事件のポイントについてまとめました。
ルームキーと部屋番号
モーテルでの被害者は最後の瞬間、皆、その手にルームキーを握っていました。
そして書かれた部屋番号。
なにやら意味深だし、一体誰が何の目的で握らせたのか?
時にはあの人にキーを握らせる時間はあったかしら?
とも思える超人的な仕業のその部屋番号の意味は
生存者の数でした。
モーテルでの事件は現実ではなかった
視聴者が釘付けで目撃していた惨劇、
その中で狙われた者たちは被害者の共通点として
誕生日が同じこと
名前に州名が含まれていること
をつきとめた。
そしてついにマルコムの再審議の場面と
モーテルの惨劇がつながります。
惨劇の最中、エドが突然、意識が飛んでしまうのです。
そしてエドがとんできた場所はなんとマルコムがいるはずの空間。
鏡に映るエドの姿はマルコムでした。
エドたちモーテルの被害者たちは
マルコムの人格の一人にすぎなかったのです。
マルコムの中の悪人の人格のみを消し去ろうという医師の作戦。
それが事件現場であり、惨劇の全てはマルコムの意識下で繰り広げられた
人格削除のための交戦であったのです。
真犯人の正体
モーテルの人たちの中で唯一
自らがマルコムの人格の一つにすぎないことを知らされるエド。
消し去りたい極悪な人格は誰なのか
それはエドに託されたも同然でした。
そして犯人を見誤ってしまったエド。
元警察官のエドでさえも欺くことができた
頭脳明晰で演技派で残酷な真犯人は子供のティミーでした。
ティミーは確かに爆発に巻き込まれた描写がありました。
しかしその後見つかってはいませんでした。
冷静に考えると事故現場から見つからないなんて怪しい
のですが
それは家族で過ごしていた大人しい子供という最初の設定が起こさせる
先入観にとらわれた油断でした。
最後の生存者があの人である理由
モーテルの惨劇の最後の生存者は2名でした。
犯人は何故一人だけ生かしたのか?
幼少のマルコムの傷は深い
マルコムは幼少の頃、娼婦であった母親にモーテルに捨てられた
そんな過去がありました。
マルコムが患っていた解離性同一性障害
それはその人が耐えがたい苦痛を感じた際、心を守るべく働く本能。
そして解離性同一性障害によって生まれた人格は
適当なものではなく、それぞれの生まれた理由があるのだとか。
パリスに母親の影をみた
明らかに幼少の頃の傷から生まれた人格である
大人しいティミーと娼婦のパリス。
まさしく幼少のマルコムと息子を捨てた母そのものですね。
最終的に残ったのが自分に一番近い人格のティミーと母に似たパリス。
凶悪犯になったティミーは
生存したパリスに夢の農場で幸せの絶頂を味わわせておいて
一気に突き落としました。
憎しみにあふれたティミーの顔は
その傷がどれだけ深かったのかを匂わせ、
最後まで生存させたのは自らの手でパリスとの決着をはたすべく
最初から決めていた復讐のシナリオ⁈
救いのないラストの理由
マルコムを救おうと尽力した精神科医は
解離性同一性障害を患ってしまった患者の悲惨さがわかるからこそ
同情し救済を願ったのでしょう。
しかしながら、
凶悪犯だった人格は、マルコム本人と一番近しい人格のティミーだった
という結果になりました。
そしてそれに気づかず極刑を退けることに成功した弁護人たち。
なんとも救いがなく悲しいのは、
マルコムを救おうとしていた医師の差し延べた手に
触れることもなければ、自分を思ってくれる他者の気持ちさえ届かず
完全な決別で迎えられたラスト。
精神科医はマルコム(ティミー)の手にかかってしまいます。
それはもう取返しはつかないし、マルコムを救える術はないということ。
数々の人格を作り出すことで心を守らなければ生きられなかった。
それ自体は罪ではないのに、
防御の本能で生まれた人格はいつしか完全無欠の攻撃性に変異してしまった悲劇。
ラストの後のマルコムが待ち受けるのは
終わりしかありません。
まとめ
犯人がなかなか見抜けない
そんな上々サスペンス【アイデンティティー】
モーテルでの惨劇の実体は
連続殺人犯マルコムが生み出した人格を統合するためのものでした。
そしてその目的はマルコムの中の凶悪な事件を起こした人格を抹消することで
マルコム自身を救済するというものでした。
しかしながらその作戦は失敗に終わり
唯一残った人格・ティミーこそが凶悪犯の正体でした。
一度ストーリーが判明したあとも
もう一度確認してみたくなる。
そんなサスペンスです!
※本記事の情報は2023年4月時点のものです。
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