何を信じ何を疑うのかそれは観客次第だ
と語ったナ・ホンジン監督(『チェイサー』、『哀しき獣』)
からの挑戦状
【哭声/コクソン】。
韓国では大ブームを巻き起こした本作。
日本からはベテラン俳優・國村隼(『キル・ビル』、『進撃の巨人』他)
がその大ヒット社会現象に一役かいましたね。
しかしながら、物語自体は
『結局犯人は誰?』
『あの人は良い人悪い人?』
『あのラストはどういう意味?』
などなど…数々の謎を残したまま幕をおろしました。
そこで本記事では本作の主要人物3人に着目し
一つの答えを導いてみました。
本作においては監督自身が
『様々な解釈ができるように制作した』よって『答えはない』
と語っていらっしゃいます。
なので本記事の内容も様々な答えのほんの一つにすぎないと思って
ご視聴後の疑問のヒントにしていただけたら幸いです。
本記事の内容は物語のネタバレを含みます。
ご視聴後再訪いただけると嬉しいです!
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【哭声/コクソン】あらすじ
『 哭声/コクソン』をU-NEXT無料トライアルで視聴する韓国の奥地の村・谷城(コクソン)で
村の住人が自分の親族を手にかける猟奇殺人事件が発生する。
その現場は、動物の亡骸が散乱し、何らかの儀式をしたような祭壇と
放心状態の加害者の身体に発疹が見つかるなど
それらの異様さに住民たちは恐怖と疑念に襲われた。
警察の調べでは、毒キノコによる幻覚作用などが起こした事件だと発表される。
しかし事件勃発と同時期に村に住み着いた日本人の男に目を付けた住人たちは
この男こそが怪しいと噂をし始める…。
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— 映画『哭声/コクソン』公式 (@kokuson_movie) March 19, 2017
絶賛コメント、続々。
板尾創路さん(芸人)#コクソン pic.twitter.com/g2qudEiJD8
謎の日本人の正体
「フィガロジャポン」最新号の映画特集「徹底的におもしろい作家主義! アジア映画に夢中。」で紹介している韓国映画『哭声 コクソン』。この作品で韓国のアカデミー賞である青龍賞の2冠を獲得した國村隼にインタビュー!https://t.co/ZyrMKq4BjG#國村隼 #哭声 pic.twitter.com/MwdVB5W4rM
— madame FIGARO japon (@madameFIGARO_jp) January 20, 2017
謎の怪奇事件が起こった時期と同時期に村にやってきた
日本人は、村人からすれば、怪しいよそ者なのです。
且つ日本人の家の
何かの儀式をするようなモチーフであふれた部屋と
事件の関係者の生前と後を写した大量の写真に
村人の疑惑は益々増幅していきました。
次々に出て来る
日本人の悪い噂
村人たちの証言は本物か?
一体この日本人は何者なのでしょうか。
日本人が行っていたこと
〖旅行〗だと語っていた、村に来た理由ですが、
本当の目的は何だったのでしょうか。
理由は明確になりませんでしたが、
日本人が行ったことの一つに
トラックの中で亡くなっていた男性の写真を前に儀式を行っている
場面がありましたね。
その結果
人を蘇らせゾンビが誕生したわけです。
しかし日本人は、ゾンビが村人を襲う様子を驚いた表情で眺めていた
様子から察すると、あの儀式は失敗に終わったのだと思います。
蘇らせたかったのはゾンビではなく元通りの人の姿だったのでは⁈
どちらにしても
蘇らせる能力を保持している者だということでしょう。
神父見習い・イサムの疑心が生んだもの
当初は日本人が悪霊だという噂を信じ込む村人に対し
神父見習いのイサムだけは悪霊は実体を持たないのだと否定気味でした。
しかし日本人の男を抹殺するため向かった村人たちとイサムは
ゾンビ男?に遭遇し、イサムは頬をかじられてしまいます。
ゾンビに〖復活〗を目撃し、自身が搬送された病院で
事件の加害者が普通ではない最期を迎えた現場に遭遇します。
それらの出来事に混乱したイサムは疑念に襲われ
自らの信仰心に揺らぎが生じはじめます。
その状態で悪魔だと疑う日本人の元へ向かうイサム。その手には凶器を握りしめて…。
一度命を落としたはずの目の前の日本人には実体があるにもかかわらず
当初は否定していた悪霊の存在を恐怖のあまり認めてしまうイサム。
〖復活〗や〖聖痕〗といった神の申し子の象徴を認識してもなお、
イサムの中の疑いは揺るがず、信じぬくことが出来なかった結果、
日本人の姿が悪魔にしか見えなくなってしまいました。
その日本人は救い主だった
イサムの前でみるみる悪魔の姿に変貌していった日本人でしたが
その姿は、イサムが信じた姿にすぎません。
手の平には聖痕があり、死者を復活させ、
罪深き者(よそ者を迫害し抹殺しようとする村人)の救済のため自らの命を落とし、
後に自身も復活する…
キリストを彷彿させるその日本人は神だったのです。
祈祷師が日本人とグルは真実か
公開まであと2日!絶賛の声続々!
— 映画『哭声/コクソン』公式 (@kokuson_movie) March 9, 2017
その⑤小泉今日子さん(俳優)#コクソン pic.twitter.com/uHjy2ke1bp
本作の祈祷師は高名という噂通り、腕の立つ優秀な祈祷師であると思います。
ただ…少々悪徳なだけww
では、
祈祷師イルグァンと謎の日本人はグルなのか?
という疑問は個人的には
後にグルになったということだと思いました。
ヒョジンの悪霊を追い出そうと尽力している時に
謎の日本人をヤバイ悪霊だと信じ込んでいたのは演技ではなく
敵対関係にあったのでしょう。
しかしソウルに向かう途中で虫の大群に道を阻まれるという
幻覚を見て、謎の日本人が悪霊ではないことを認識したのだと思います。
もう一つのエンディングからみる2人の関係
本作には描かれなかったもう一つのエンディングが存在していると耳にしたので
確認してみましたww
以下もう一つのエンディングのネタバレです
迎えを待ってベンチに座る日本人が
通りの向こうでバスを待ってベンチに座っている女の子に何かを差し出し手招きしています。
すると女の子は日本人の方へ向かおうとしますが、母親に阻止されます。
そこへ1台の車があらわれ、日本人がその車に近寄ると、
その車を運転していたのは祈祷師イルグァンでした。
2人は挨拶するでもなく、ほほ笑むでもなく
日本人が無言で乗り込むと車は発車し、
不穏なBGMが流れる中、去って行く車をムミョンが見つめる
簡単に書くとそんなシーンでした。
この場面からわかるのは確かにイルグァンと日本人はグルですねww
しかしながら2人は昔からの知り合いというより
お互いの利益のため仕方なく結託している…
そして白い服の女性が2人を見送る悲痛な表情が印象的でした。
彼女にとって2人は、去って行く災い…なはずですが、
全ての真実が理解できて落胆している…
そんな風に映りました。
白い服の女性は何者か
公開まであと7日!絶賛の声続々!
— 映画『哭声/コクソン』公式 (@kokuson_movie) March 4, 2017
その②中野量太さん(「湯を沸かすほどの熱い愛」監督)#コクソン pic.twitter.com/iuF6OdbbBR
白い服の女性・ムミョンは村人を救おうとしていました。
そんな女性の正体は
ジョングが信じている信仰の神だったのではないか?と考えました。
ムミョンの力は村人の信仰の深さによって支えられていたのです。
しかしよそ者がやってきたことにより
村人に混乱が生じてやがて信仰心も揺らいでしまい
その力を存分に発揮することが出来ず、
村の惨劇を救うことが出来ませんでした。
先に起こった事件の時も、ジョングの自宅にも
自分を信じる村人を救うため手は尽くしていました。
よって信じてさえくれたらその力を発揮し、救ってあげられたのです。
でもジョングは自身の救世主を信じることは出来ませんでした。
その結果結界は解かれ待っていたのは壮絶な家族の姿でした。
白い服の女性(村の神)と日本人(よそ者の神)の対立で
村人たちに生まれた〖疑う心〗によって
白い服の女性は敗北してしまったのです。
事件の真相
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— シネマート心斎橋 (@Cinemart_Osaka) March 8, 2017
物語の序盤で警察の司法解剖の結果、
加害者の体内から幻覚性毒キノコの成分が大量に発見され
自宅からも毒キノコが見つかったという
〖物証〗が示されています。
そして途中でもTVのニュースで
健康食品会社による製品に毒キノコが混入されており
幻覚性が強いという趣旨の報道が流れていました。
つまりはそもそもこの事件の真相は
毒キノコにより恐ろしい幻覚に侵された加害者が
精神錯乱状態になって凶行に及んだもの。
加害者全員に発疹が出ていたのも同じ成分を摂取していたからだと
考えるのが妥当かなと思います。
(毒キノコが原因にしては異常すぎる…ということはおいておいてww)
悪霊の正体
事件の原因は毒キノコによるもので悪霊ではありませんでした。
しかし村人たちはこの事件と村に突然やってきた得体のしれない日本人
を結び付けてしまいます。
得体のしれないということは
村人にとって恐怖でしかありませんでした。
そして事件内容も親族間だけで起こっており、
動機などもみつからず残虐性も高い。
加害者の状況も不可解など。
そんな事件もまた意味が分からない得体のしれない事件であり
村人がそこから得るのは多大な恐怖心。
そしてその恐怖心がそこに存在しない
悪霊を生み出してしまったのではないでしょうか。
信仰と信仰の対立
謎の日本人は神を象徴していました。
そして白い服の女性もまた村人が信じ、救いを求めていたはずの
神でした。
しかし白い服の女性が度々日本人にはりついて正体を探っていたことから
日本人が神であるという認識はなく
むしろ事件の首謀者であり村人たちの言う悪霊だと
見誤ってしまったのではないかと思います。
本来は村の神とよそ者の神の対立の構図なのですが
村の神はよそ者こそが悪霊だと見誤り、
よそ者の神も白い服の女性を(祈祷師が『女が悪霊だ』と証言)
悪霊だと
互いに互いを疑ったのです。
偶然巻き起こった毒キノコ事件によって
信じたいものを信じ、疑いたいものを疑った結果の悲劇でした。
白い服の女性もまた疑う心をもち、
自分の守るべき者たちに最後まで信じてもらえずに
ジョングらを救うことはできませんでした。
タイトル『哭声』は
この女性の自分の無力さを嘆いた叫びだったのではないでしょうか。
まとめ
本作の解釈は難解で何通りにも考察できる不思議な作品でした。
今回は
・事件は悪霊によるものではなく幻覚を見せる毒キノコによるもの。
・謎の日本人はよそ者の神である。
・祈祷師イルグァンと日本人はグルになった。
・ムミョンは村の守護神である。
と考察しました。
しかしながら、
日本人が悪魔でも、祈祷師が悪魔でも、白い服の女性が悪魔でも
筋書きは出来そうな、
見る人、信じる人の目線によって全然違うものになり、
何度も見返したら違う考えがどんどん浮かんできそうな作品です。
ただ・・・
愛犬家の私は目を覆いたくなるシーンがありました。
そして怖かったり残酷な描写もありますので苦手な方は要注意かもしれません。
ホラーとか大好き。または上記のシーンでも大丈夫な方は
何度も見返して色んな解釈を楽しむのもアリですね!!
※本記事の情報は2023年5月時点のものです。
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