【ネタバレ考察・感想】映画『渇水』の結末は意味不明?答えは原作の中にある⁈

邦画

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第70回文學界新人賞を受賞した河林満氏の同名小説
生田斗真主演で映画化された
『渇水』

レビューでは『意味がわからなかった』とする人も一定数存在する本作。

特に劇中での重要なシーンが何を意味するのか?は難解ですが、
その答えは原作の中にあるのではないでしょうか?

という解釈に基づいてネタバレ推察しています。

この記事のポイント
映画『渇水』の結末は意味不明?
答えは原作の中にある

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『渇水』あらすじ

降雨が途絶え、給水制限が発令された市で
水道局職員の岩切俊作は後輩の木田拓次と共に、
水道料金の滞納をしている家庭等を回り、分納計画をすすめたり
料金の徴収を担っていた。

しかし4ヵ月以上、料金が払えず分納計画もまもられなかった家庭においては、
給水を止める停水執行をせねばならなかった。

岩切は慣れた言動で停水執行の務めを果たしていたが、
木田の方はまだこれに慣れることができず、
水がタダならいいのに…と漏らしていた。

ある日、3年にわたり水道料金を滞納している小出有希の自宅を
尋ねた岩切と木田。

岩切は過去に有希の夫の秀作と会ったことがあるのだが、
もうこの家には帰ってきていない様子であった。

水道料金を払うことができないと言う有希に
停水を実行しようとしたとき、有希の2人の娘が帰宅した。

その日は停水の執行をすることができなかった岩切だったが、
後日、有希の不在のある日、2人の娘に、
家中の容器に水を汲み貯めておくことを促した後、
停水執行をする・・・。

キャスト
生田斗真、磯村勇人、門脇麦、山崎七海、柚穂、宮世琉弥、
宮藤官九郎、柴田理恵、田中要次、大鶴義丹、尾野真千子
 他

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以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。

本記事の情報は2024年9月時点のものです。
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映画『渇水』の結末は意味不明?

『水』を止めた岩切と、母親にも見捨てられ、水さえも
与えて貰えず成す術がない幼い姉妹。

それぞれの結末はどうなるのでしょうか?

母親の有希はレストランで出会った男性と
駆け落ちをするように家を出て行ってしまいます。

そうして2人きりになってしまった有希の娘たち。

娘たちは、水をえるために、夜の公園や他人のガレージから
水を汲んでくるという日々を送っていました。

しかし公園の水も給水が止められ、
他人の家から盗むこともうまくいかず、
とうとう姉の恵子は妹を養うため、万引きをしてしまうのです。

その現場に居合わせた岩切は財布ごと恵子に渡しますが、
全ての大人に対して不信感を持ってしまった恵子
それを受け取らず走って行ってしまいました。

結末をネタバレ解説

娘たちの不在時に荷物を取りに来た有希につめよる
岩切でしたが、有希曰く『水のにおいがする』という岩切は逆に

 あんた私にとやかく言える男なの?あんたの家族は幸せなの?

と論破されてしまいます。

岩切が娘たち2人にしてあげられること

それは水を解放してあげることでした。

彼女たちの家の水はもちろんのこと、
公園の水を放出して姉妹と水遊びをしたため、
水道局員が駆けつけ、岩切を取り押さえます。

木田になら自分の気持ちがわかるだろう
と助けを求めますが、恋人が妊娠して守るものができた
木田
は岩切に謝罪し、水道局側に加勢しました。

結局取り押さえられた岩切でしたが、
その時、空から恵の雨が降り注ぐのでした。

岩切はすぐに釈放されたものの、
会社は辞職し、姉妹とも接近禁止令が出されてしまいます。

しかしながら別居中の息子から着信があり、
『海に行きたい』
と誘われるのでした。

一方で恵子と久美子は、児童相談所に保護されると、
給水制限がとかれたために、
近くのプールに水が溜まっているのを目撃します。

2人は手を繋ぎ、笑顔でプールに飛び込むのでした。

ハッピーエンドかバッドエンドか

劇中で結局、有希は姉妹の元には帰って来ませんでした。

必ず髪を切ってあげるからもう少し待っていて

という置き手紙を残した母は、
娘の存在を言えない『火のニオイ』がする男性と一緒に
いるのでしょう。

そして、自分の欲求を優先させた結果、娘たちより自分の幸せを選び、
いまだ娘の存在を言えず、言う予定もないのではないでしょうか。

そんな中、児童相談所に保護され、もう飢餓などの心配はいらない
はずの姉妹の表情はうかないものでした。

そして2人で手を繋ぎ笑顔で飛び込んだプール。

それは自ら命を絶ったことを示唆するという描写に見えなくはありません。

しかし、筆者は、水遊びをしたのだと解釈しています。

岩切曰く、公園での『しょぼいテロ』を決行した結果、
それが姉妹が命を絶たなかったという功績を生んだのだと思うのです。

岩切が確保され職を失った代償は、姉妹の大人に関する不信感の
排除と、2人で生きていく希望
を見出したのだと思います。

姉妹にそんな明るい希望を思い起こさせてくれるのは、
岩切との『水遊び』だったのではないでしょうか。

だからこそ、服のままプールに飛び込むその行動は
希望の象徴だと思うのです。

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答えは原作の中にある

原作の結末は詳しくは記しませんが、
バッドエンド以外の何ものでもない幕引きになっています。

そして映画のクライマックスが意味不明だと思ったならば、
その答えは原作の中にあるのだと思いました。

言うなれば原作と映画は合わせ鏡のようであり、
原作の岩切の無念や後悔を映画の岩切が晴らしたのだと
という救いになっていると感じました。

そこから読み取れる一つの解釈を記してみました。

受け取られるテーマの違い

〖水〗は生命を維持するためになくてはならないもの。

その水をテーマに、幼い命の行く末を描いたのは、
水道問題の重要性だけではなく、
岩切という、人から水を奪わねばならない辛い仕事を
担う者の目を通して、自身の渇きを描いたのではないでしょうか。

岩切の渇きとは何だったのでしょか。

原作では、有希の夫の秀作に招かれ、自宅にあがったという
描写があります。

その場面に、岩切の葛藤や苦悩が垣間見れるような気が
します。

岩切にも、内心、料金を払えない人から水を奪うこと
何を意味するのか。

その答えを自分の心の中ではぐらかして、
封じ込めてしまっている
という苦悩があったのではないでしょうか。

映画の方の劇中で、岩切と対照的に、
停水施行をすることに違和感を覚え、
気が変になりそうだと苦悩する社員の存在がありました。

岩切にも同意を求めたその社員に、魚のような目で
〖何も感じないふり〗
を決めこんだ岩切。

『水』が希望や人を思う心の象徴だとすれば、
その水を奪わなければならないことに苦悩する気持ちを
抑え込み気づかぬふりをすることで
心の水気も段々と奪われていったのでしょう。

原作に『希望』を見出した映画『渇水』

一方で、映画版の岩切は、
しょぼいテロを実行することで、姉妹の心を救っただけではなく、
自身の渇きからも脱する
のです。

岩切が捕えられる場面とは裏腹に
まさに岩切がしたかった〖流れを変える〗ような
慈雨が降り注いだことは、本作が希望を見出した証なのではないでしょうか。

原作では描かれなかった岩切の行動によって変えることができた流れ
それは水と姉妹と自身を解放したのです。

つまりは原作の救いのないラストを食い止めることは可能なのだ
という希望を与えてくれたように思います。

『渇水』感想

映画を先に鑑賞した筆者には、岩切のショボいテロの
意味合いがよくわかりませんでした。

しかしながら、劇中でのクライマックスだと思われる
そのシーンが原作にはなかったものだと知り、
原作にも触れてみました。

ちなみに原作の方は、読んだ後、酷く後を引き、落ち込む
類のラストなので、元気いっぱいの時ではないと
ずしんと響きます。

そんな原作に触れる中で、
あの岩切の行動は、姉妹と自分を救うものだった
ということが理解できます。

よって姉妹は相談所に保護され施設か里親の元で
その後も頑張って生きている・・・
そんな未来が見えてきます。

そして岩切自身も、職員として、人としては、
犯罪に至る行為をしてしまったものの、
吹きあがった水のように、閉じ込めていた感情もまた
解放されたのでしょう。

乾ききった自身の心は再び潤いをおびて、
その結果、妻も息子も帰ってくる兆しがみえています。

実際には岩切のように、水を解放することなどできないでしょう。

しかしながら、岩切が職員としてではなく、人として行った、
自分ができることは、誰かを救い、見て見ぬふりをする自分を救いました。

人が人を思う気持ちは偉大であり、人のための
ほんの小さな行動が誰かを救う可能性を秘めている
ことを痛感させられる一作です。

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