稲垣吾郎×新垣結衣主演映画【正欲】意味深な結末と繋がりのテーマの深層解説

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『何者』『桐島、部活やめるってよ』で知られる朝井リョウ氏の
原作を稲垣吾郎×新垣結衣で映画化された衝撃作。
【正欲】

近年では『多様性を尊重すること』は至極当たり前のこととして
認識されています。

ところがこの物語を鑑賞後はその根底から覆ってしまうかもしれません。

この記事では以下の項目に着目して、解説、考察、感想をまとめました。

★意味深な結末
★本作のテーマは『繋がり』
★『正欲』の謎を考察

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映画『正欲』のあらすじ

会社員の佐々木佳道は、この世界は『明日生きていたい人』のために
あるのであって、『明日を希望していない』自分のものではない
と思って生きていた。

そんな矢先、両親が交通事故にあったとの連絡が入る。

一方佐々木と元同級生の桐生夏月は地元の寝具店で働いていたが
ある日、仕事先を訪れた同級生から
結婚式が開催されることを聞く。

そしてそこに佐々木佳道も出席することを知り、
ある思いが駆け巡る。

エリート街道をわたってきた横浜地方検察庁の寺井啓喜には
妻と不登校の息子がいた。

学校へ行かなくても価値があることは沢山学べるという
人気ユーチューバーに感化された息子に、
自分もユーチューバーになりたいのだと告白される・・・。

キャスト
稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇人、佐藤寛太、東野絢香
山田真歩、宇野祥平、岩瀬亮 他

〖正欲〗を視聴できるサービス

U-NEXTでは7登録時に付与されるポイントで視聴することができます!

Huluではレンタル視聴が可能です!

原作『正欲』には映画では描かれなかった真実も⁉

以下、結末までのネタバレを含みます。
未視聴の方は上記のサービスで視聴することが可能ですよ!

本記事の情報は2024年3月時点のものです。
最新の配信状況は各サイトにてご確認くださいませ。

意味深な結末を解説

やっと、理解者を得ることができて
共に平穏な日々が送れる・・・。
そう思った矢先にラストで逮捕されてしまった佳道

それは同じ水フェチであると思っていた仲間のうちの1人が
小児性愛者だったからです。
その仲間が逮捕されたことにより、
共に動画に映っていた佳道も連行されてしまいます。

そして佳道の罪を裏付けたい寺井は佳道の妻である
夏月と面会をします。

やっと明日も生きたいと思えたに違いないのに
そんな小さな幸せは一瞬で崩れ去ってしまいます。

あまりにも残酷なラストでの
佳道と夏月の言動は意味深なものでした。

そんな言動の裏に隠された意味について推察していきます。

本当のことを供述しない佳道の真意

小児性愛者という容疑がかけられた佳道。
その疑惑をはらうには
あの場所で何のために何をしていたのか?
という水フェチであるという秘密の話を
しなければいけませんでした。

そうすることで罪を逃れるか軽くする
ことができたかもしれません。

しかしながら、『小児性愛者ではない、水が好きだ』と主張した大也とは
異なり、本当のことを供述しない佳道の真意はどこにあったのでしょうか。

おそらく、佳道だけの問題ではなかったから
だと思われます。

佳道の秘密を暴露するということは夏月の秘密も勝手に
暴露するということだからです。

夏月が懸命に隠してきた秘密を
自分の身の潔白を表明するために勝手に暴露することは
佳道にはできなかったのだと思いました。

それだけ当事者にとって〖自分がマイノリティである〗というのは
繊細で重い真実なのです。

ラストの夏月の伝言に隠された意味とは

未知なものをわかり合おうとするスタートラインにも
立とうとしない寺井に対して、
諦めることしかできない夏月が最後に言った佳道への伝言には
どんな意味があったのでしょうか。

普通のことです。『いなくならないから。

という台詞。

今まで誰にも言えない特殊でありながら共通の秘密を
もっていた佳道と夏月。

2人は同窓会での再会を機に、
生き抜くのが難しい世界を明日も生き抜くための協力者
としてお互いを必要としました。

それは言い方を変えれば、お互いを失くしてしまったら
生き抜くことができないということです。

だから『いなくならない』という伝言は
『共に生きよう(自ら命を絶とうと思わないで)』という意味でもあるのです。

そしてもう一つの意味合いも含まれていると思いました。

夏月がこの伝言を語る前に、佳道のことを理解しようとしない寺井に対して
『家族は戻って来たのか』
と問いました。

何が普通のことなのかは人それぞれです。

結婚したのなら最後まで添い遂げるのが普通だという人も
沢山いるでしょう。

そんな人たちからしたら、
妻と子どもとの暮らしを諦める寺井は普通だとは言えないのかも
しれません。

『どんな伝言ですか?』と問う寺井に対して
『普通のことです・・・』という言葉は

自分たちの嗜好に対して『ありえない』の一言で片を付ける。
そんな寺井に対する、『あなたも普通とは限らない』という
夏月の精一杯の反撃だったのではないでしょうか。

本作のテーマは『繋がり』

明日も生きていたい。
そう思う理由は何ですか?

多くの人が大切な人と別れたくはないからという
理由が大きいのではないでしょうか。

逆に言えば、もしも孤独であったなら、
特別長く生きたいとは思わないのかもしれません。

希望をもって生きるために、
笑うためには、自分にとって大切な人との繋がり
必須な要素なのです。

一度は自ら命を絶とうとした夏月も佳道も
生きるために手を組んだ(結婚した)相手がいるから
生きることが出来るのです。

誰しもが他者との繋がりなくしては
前向きに生きてゆくことは困難なのでしょう。

夏月と佳道の間に存在するのは愛情では無いのかもしれません。

しかし愛情とかそういうものを超えた
生きる理由としての繋がりが強固で深い絆であることに
何ら変わりはないのです。

『正欲』の謎を考察

矢田部の供述

そもそも芋ずる的に佳道と大也が逮捕されてしまったのは
先に逮捕された矢田部が水フェチであるとともに
小児性愛者でもあったからでした。

『他の2人も仲間なのか?』
と問う寺井に対し
矢田部が明確な返事をする描写はカットされていました。

矢田部が2人も共犯だと供述したのでしょうか。

その答えはイエスでありノーであると思います。

矢田部は明確に2人も小児性愛者であるとは供述していない
と思います。

しかしながら、水フェチとして初めてつながった仲間である2人
これまでには感じたことのなかった喜びが沸き上がったのだと思うのです。

2人は同志であり、自分の理解者だという認識と繋がりを実感し、
もとの孤独な人間には戻りたくないという気持ちから
〖2人は仲間だ〗
と供述したのではないでしょうか。

夏月と佳道が同時期に命を絶とうとした理由

夏月は、中学の頃、学校の工事前の蛇口を佳道が壊して水浸しになった現場
を共有したあの時から、佳道との間には共通点があると実感しました。

夏月は1人ではないこと、どこかに居る佳道も同じ思いで生きている
ことだけを頼りに頑張ってきました。

しかし結婚式で再会した直後、他の女性と食事をしている姿
目撃して、佳道は自分と同じ苦悩を抱えてはいなかった・・・
というある種、裏切られたような気持ちが沸き上がってきます。

そして佳道の家のガラス窓を割った夏月は
同時に孤独になりました。

孤独では生きてはいけないと思ったのです。

一方の佳道は両親のためにだけ生きてきたのです。
〖(両親に)自分がどういう人間なのかばれる前に亡くなってホッとしている〗
と夏月に語った佳道は、両親を亡くして地元に戻りました。

そして微かな希望を胸に女性とデートをしてみます。
普通の自分になれることを願って・・・。

しかしその思いはむなしく、住む場所が変わっても
自分自身が変われることはなく生きずらいままでした。

両親も居ないいま、
もう思い残すことはないと覚悟を決めたのです。

そんな2人は同じ日に〖命を絶たない理由〗を失くしたから
自分の人生を終わらせる決意をしたのです。

『正欲』というタイトルの意味

〖学校へ行きたくない〗という息子に対して
寺井が取る行動は、
動画配信を始めた息子に非協力的で
学校へ戻る道を促し続けること。

寺井の行動の真意は
自身が見て来た犯罪者たちが、普通の生活を送ってこなかった
人物が多いという経験から
普通に学校を卒業する道をたどれば全うで幸せな人間になれる
というものです。

一見、根拠があり、正しい思考だと思える寺井なのですが、
結果的には息子とも妻とも
繋がりが途絶えてしまうのです。

寺井が思う正しいことはきちんと学校へ行くこと。
しかし寺井の息子が望んだのはなじむことができない学校で
誰からも認められない自分を脱却すること。
そのための動画配信だったのでしょう。

そんな息子の不登校の理由も追求せずに
誰かに認められたいという望みを阻止しようとした父親。

それはもちろん自分の経験値から判断した
息子が幸せになるための道筋でした。

しかし父と息子はわかりあえるどころか
親子としての繋がりを失ってしまいます。

正しい欲はひとくくりにできることではない
ということなのでしょう。

結局のところ、
本人が欲していることこそが『正欲』と言えるのかもしれません。

【正欲】を見た感想

以前に比べたら
マイノリティに対する理解度というのは
間違いなく徐々に上がっていると思っていました。

しかしマイノリティといっても
その内容に関しては計り知れないほど様々なんですよね。

わかったつもりでも、実は自分の経験してきたこと、
知っていることの中から探った理解では
乏しすぎるのだと猛省しました。

本作のガッキーは例えば『逃げるは恥だが役に立つ』の主人公
のような可愛らしさが微塵もありません(笑)
本当にガッキーだよね?と2度確認したくらいです。

あの可憐なガッキーでさえもあのような風貌にしてしまう
それがマイノリティーの苦悩であることが
見事に表現されていたと思いました。

欲を言えば、対象が〖水〗ではなかったら感じ方は
少し変わったのではないかなと思いました。

筆者は海や川を見ているのが好きなので、
〖水〗という綺麗で害のないものが対象
だった故に、主人公たちが抱く疎外感や絶望感が
あまりうまく感じ取れなかった気がしました。

なんて偉そうに失礼いたしました<(_ _)>

同じ人間として、誰しもが生きることに肩身の狭い思いをすることの
ないような社会になることを切に願わずにはいられない
一作です。

自分は〖多様性〗の本当の意味を理解しているだろうか?
という自信が無くなります。

『ありえない』と思ってしまうことは確かに存在する。
まずはそれを知ることから始めようと
思いました。

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